雨中紀行〜sleepless rainy days 作:お茶会おじさん
兄をさがして三千里、ってわけじゃないけどかなり歩いて疲れた。まだ足は棒になっていないから大丈夫だけど。
さっきのおじさんが教えてくれた神社まではもう少し。なはず。
さーて、もうひと踏ん張りだ!
10分後···
つ、疲れた......足が棒になっちゃったって思うぐらいだ。
でも、そのおかげでちゃんと着いた。まあ、まだ入り口だけどね。丘の上にある神社だから、ちょっとした山道みたいになっているはず。
前に来たことがあるような気がするけど、あんまり覚えてないや。帰ったら聞いてみようっと。
しばらく、木についた雨粒を見ながら、落ち葉や雨でぬかるんだ道を登って行った。
開けた場所にあった、屋根のあるベンチに腰掛けていると、のどが乾いたことに気がついた。お茶は持ってきてないから、飲み物はなにもない。どうしようかと考えていると、ちょーれーしほーについてる緑のランプがピコピコ点滅しているのが目に入った。
なんだろう、と思ってその下にあったボタンを押すと、ウォータークーラーみたいに水が出てきた。
あわてて、手でコップの形を作って水を貯めた。飲めるのかなと不安になったけどものは試しで飲むことにした。......まあ、美味しいかな。水だけの状態はあまり好きじゃないけど、ここまで歩いてきてのどが乾いたからか、いつもの倍美味しく感じた。それでも、お茶の方が美味しいけど。緑茶が一番だよね?
水を飲んで一休憩して、また開けた地面を進み始めたとき。
ふと足元を見ると足跡があった。大きさから考えて、お兄ちゃんの靴と同じくらいだからお兄ちゃんがさっきここにいたんだろう。そう思うと、目的地に近づいている実感がわいた。よく見ると、足跡はこの辺りで色々なところについてるけど私が進んでいる方向にも伸びていた。
お兄ちゃんみたいに例えるとしたら、ダイナミックコードの墓参りの足跡がある感じ。あれ、お兄ちゃんが見せてきたけどかなり酷くて、面白かった。
とと、話がそれちゃったね。私はその足跡をたどってみることにした。
ちょっと坂道を歩いていくと、鳥居があってその奥に神社があった。そして、その神社の顔(顔であってるかわからないけど)のところにある、おさいせん箱の前の階段に誰かが座っているのが見えた。
近づいていくと、その人が女の人で、お兄ちゃんより若そうに見えた。お兄ちゃん、ちょっと顔が年上に見えるんだよね。だからかもしれないね。(それじゃ、あてにならないな~)
そのお姉さんは下を向いてはいなかったけど、ぼんやりしている感じだった。だけど、私に気づいたみたいで「あー」って言った。
ちょっと怖かったけど、思いきってこっちから話しかけてみることにした。
私「あ、あの、ここにお兄...男の人が来ませんでしたか?お姉さんより年上ぐらいの人なんですけど...」
するとお姉さんはちょっとはっきりした目で、
「来たよ」と、答えた。そして続けてこう言った。
お姉さん「あなたは、誰?私を壊しに来たの?それとも、助けに来たの?」
私はびっくりして一瞬しゃべれなくなった。けど、気を持ち直して答えた。
私「どっちかっていうんだったら助けに来たと思うよ...?」
このお姉さんは疲れてるのかもしれないな、と思った。二ヶ月前のお姉ちゃんみたいだったから。
ぼーっとしていたら、雨が少し収まった。私も、お姉さんも落ち着いたかな。
と、まあ、ここからお姉さんとの話が始まったのです。
私「お姉さんはどうしたの?」
お姉さん「どうしたんだろう。わからないや。」
私「助けてほしいの?」
お姉さん「うん。きっと。」
私「そっかー。なにしたら良い?」
お姉さん「色々あるんだけど、まずは話を聞いてくる?あ、名前は花楽っていうから、そう呼んで?」
私「うん。わかった」
お姉さん「実は、家族と喧嘩してるの。将来何になるかでね。私としては別に巫女を継がなくても良いんじゃないかって思うんだけどね」
私「花楽さんは、みこっていうの?」
お姉さん「そうなの。本当はプロの、ダンサーっていうのになりたいんだけど、この神社、すごーく昔からあるから、ここの巫女になりなさいっていってるのね。伝統がどうとか言ってるわ。」
私は他人事みたいに言うなーって思ったけど、それだけ追い詰められてるんだろう。なんか、そういうことを前にお兄ちゃんが言ってた気がする。
だけどなんだか、さっきより目がはっきりしている。
お姉さんは軽いため息をついてから、話を続けた。
お姉さん「でね、したいことを否定されて、夢を否定されたらどうすれば良いのかなって思って。」
私はよく分からなかったけど、言ってみた。
私「...やってみればいいんじゃないかな?お姉ちゃんが前に言ってたよ『あたって砕けろ。砕けたものの中から何かしら見つかる』って」
お姉さん「そうか!そうね!確かに!失敗しても、そこにあるものね!」
お姉さんはすごく笑顔になって言った。前に本で読んだ、「気分屋」って言う感じの人だなって思った。だけどすぐにしょんぼりした顔になって、
お姉さん「でも、どうやって砕けに行けばいいのかしら?私がまず、砕ければいいのかしら?」
?なんか変だな。まあいいや。(良くない)
私「うーん...困ってるなら、誰かに相談してみるとかどう?」
お姉さん「...相談できたらいいんだけどね...気まずいっていうか...その...ねえ?...」
ピキッ、そんな音がした。
私「『ねえ?』で伝わるんなら便利だけど、そんなんじゃ伝わらないよっ!お姉さんが困ってることも何もかもできないよっ!!」
何だか、むっときた私はつい、言ってしまった。何で、そんなに思いっきりがないのよ!って思ったけど、この人、結構悩んでるんだった。だんだん気持ちが収まってきたけど、お姉さんの顔は下を向いている。
私「あ、ごめんなさい...」何で私、あんなこと言ったんだろう...なんだか、私じゃなかったみたいだ。
お姉さんから返事はなかった。ただ、ブツブツと喋り始めた。怖くなった私は、喋れなくなった。
しばらくたったあと、
私「あ、あの、お姉さん...?」意を決して話しかけた。
すると、お姉さんはガバっと顔を上げて、こっちをはっきりした目で見た。
お姉さん「ありがとう」
私「へっ?」
何でお礼言うんだろう。私、ちょっと嫌な感じだったのに...
お姉さんは続けて言った。
お姉さん「あなたが言った通り、私は曖昧になってたのね。あなたのお陰で吹っ切れたわ。本当にありがとう!」
私、そこまで言ってないけどな~。まあ、お姉さんの悩みが解決したのなら良かったかな。(良くない)
お姉さんは続けて言った。
「そういえばあなた、人が来なかったかどうか聞いたよね?その人、ここの神社を出て、右に真っ直ぐ行ったところにある、ヨモヤマに行ったわよ?」
私「ヨモヤマ?」聞いたことない山だな~。
お姉さん「そう。ヨモヤマ。確か行く途中に、アジサイ園があったはずよ」
アジサイ園...?って去年お姉ちゃんと行ったところか。
よし場所もわかったし、そろそろ出発しよう。
私「ああ、あそこか~。分かった、ありがとう!」
お姉さん「うんうん。雨が降ってるから気を付けてね」
そう言って、お姉さんは私に手を振りながら見送ってくれた。私も手を振り返しながら、考えていた。
人に何かを言うときはちゃんと、考えてからにしようと、感情まかせにしゃべるのはよくないと、思った。
ちゃんと今回の失敗で学ぶことが出来たから良かったと自分で思った。お父さんも言ってた。「人は失敗から学ぶ生き物だ」って。
だけど、そうやって真面目に考えていたのに、お姉さんが最後に言った言葉で、全部崩れた。
お姉さん「おーい!その人にあったら、『ちゃんと名前覚えとけ!』って言っといて~!」
えっ!私は思わず転びそうになった。お兄ちゃん、そんなこと花楽さんに言ったのか...見損なったよ、お兄ちゃん...。いくら記憶力悪いからって名前忘れるのはダメだよ。しかも、こんな優しくて、長い付き合いのありそうな人なのに。
まあ、そんなゴミみたいなお兄ちゃんのことはほっといて、アジサイ園目指して頑張ろ~!お~!
ま、ほっとくっていっても、目的はお兄ちゃんなんだけどね。
後ろを向くと、花楽さんが笑顔で手を振っていた。なんだか、変わってたけど気持ちを楽にしてあげれたのなら良かった。
そうして、私は雨に咲くアジサイを思い浮かべながらまた進み出した。
じわじわ頑張ります。次話も。