もしも鬼龍が初登場時のカモネギグヘヘのキャラのままだったら、そしてそんな鬼龍が本編鬼龍の前に現れたら。

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エアプ鬼龍のキャラ付けは適当。


大決戦 鬼龍VSエアプ鬼龍!

 

 

 

 

東京都、某所

 

 

大きく発展した日本の首都たる大都会、辺りには住宅地の他にも高層ビルが群れとなり、飲食店や娯楽施設には事欠かない。そこに住まう者達も千差万別にして雲合霧集。

 

爛々と街を照らす太陽の光が差し、車の走る道路の横、歩行者に設けられたとある歩道を歩く男が一人。

 

 

 

その顔!艶のある黒髪をオールバックに整え、鋭利な刃を思わせるほどに鋭い眼光、横に走る傷跡が恐ろしくなるほどその顔を厳しくする。

 

 

その体!長身にして屈強隆々、あらゆる箇所に搭載された筋肉は人間のそれを遥かに凌駕する、その人外的なスペックの肉体には、濃密に練り上げられた武が宿っている。

 

 

その頭脳!肉体同様にこの世の人間のそれを殆ど全て凌駕する、科学者ならば歴史の起点となり得、哲学者となれば時を超えてその言葉は響き渡った事だろう。

 

 

その精神!悪逆にして無道、傲慢にして残忍、悠久より大地に聳える山脈が如き高すぎる自尊心とプライド、これもまた人のそれではない。

 

 

風にはためくロングコート、胸筋と腿に押し上げられはち切れんばかりのシャツにズボン。

 

 

男が口を開く、その声は低く、人を惹き付ける様な魅力を孕んでいる。武神がもし実在するならこの様な声だと聞くものは思うだろう。

 

 

 

「ここもまた喧騒と欲望の気配に満ちている」

 

 

 

男の名は、 鬼 龍 ! 

 

 

傲岸不遜に都会の真ん中を練り歩いている!

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、腐っても先進国、それも首都か」

 

「芸術の都パリの絢爛な美には及ばずとも、暇を潰す為の場所に困るような事はない」

 

「生まれた国を無条件で絶賛する様な馬鹿にはなれん…だが暫く滞在するのも良いだろう」

 

 

 

鬼龍の思考は常人の想像が及ぶところには無い、だが今日の鬼龍の持つ思考というのはシンプルなものだった。

 

手持ち無沙汰、つまり暇なのである。次の行動の予定がない、その日は人生において非日常が日常である鬼龍の、珍しい程に真っ当な日常だった。

 

 

 

「憙一の起こした灘・真・神影流…その後の経過を暫し観察するのも一興か」

 

 

鬼龍が手持ち無沙汰で日本を観光するのは何も気紛れでそうなったのではない、ある目的のため日本で暗躍、その一連の騒動と予期せぬ出来事の果てを鬼龍はその目で見たのだ。

 

 

つまりある人物の辿った戦いの結末を。

 

 

宮沢憙一、鬼龍の双子の兄弟、宮沢静虎の息子であり鬼龍の甥。

 

同じ家計に生まれし灘神影流を収めし者、無関係では到底いられぬ運命と因果の元に鬼龍と憙一は激しい因縁を生み出していく。

 

 

静虎と鬼龍の宿命の死闘をその目に焼き付けた

 

鬼龍の放つ刺客の悉くを打ち倒した

 

やがて己の父たる静虎を遂に超え

 

鬼龍の後継者たる男との戦いを制し

 

そして姿を現した灘神影流を継承するはずだった男、鬼龍と静虎の兄である宮沢尊鷹と戦い、勝利を持って継承者の器だと認めさせた。

 

 

「幽玄を取り込んだ末にお前は何を成す…?憙一よ」

 

 

 

そして憙一の人生における一つの区切りとも言える戦いが幕を開けた。

 

幽玄真影流、灘神影流とは異なる進化を遂げた流派の使い手たち、その者達との戦いは予想を超えた、しかし運命に導かれた最後の決戦へと進んでいく。

 

 

今までのどれをも上回る、強く、高い壁が憙一の前に立ちはだかった。憙一は灘神影流の当主として挑み、想像を絶する究極の武闘の果てにそれを超えた。

 

 

そして新たに生まれた統合流派、それが灘・真・神影流。

 

そしてその当主が宮沢熹一、灘神影流にとっても新たなる時代が始まった事を意味していた。

 

 

(静虎がお前を支えるだろう、今まで通りにな)

 

(静虎が愛ならば俺は試練を与え続ける)

 

 

(それが俺の灘神影流愛だ)

 

 

 

断ち切れぬ事の無い己と灘神影流の因縁、鬼龍もまたその戦いに身を投じ、自分も灘神影流の魂を受け継ぐ一人だということに気付かされる。

 

 

鬼龍にとってもまた新たな日々が始まろうとしていた。

 

 

歩く鬼龍の行き先を知るものはいない、この蓋世不抜の超人の他にこの世の誰一人として。

 

 

 

 

 

 

「ここにおったか、ちょう待てや鬼龍」

 

 

しかし、超人のその歩みを止める者が前方に現れた。

 

 

「ようやく見つけたで」

 

 

短く刈り揃えられた髪、鬼龍に劣らぬ屈強な全身、両脚に秘められた強靭さは鬼龍を上回る、発達した胸筋で膨らんだ胸シャツに猛人注意の一文字。

 

 

青年の名は宮沢熹一、他ならぬ灘・真・神影流当主となった男その人である。

 

 

「噂をすれば、か?」

 

 

面と向かって並び立つ両者、鬼龍がポケットに仕舞っていた両手を抜き、その身から徐々に滲み出す様に剣呑な気配が放たれていく。

 

親族同士穏やかに談笑する雰囲気では決してない、それも当然、相手のその姿が己の前に立つ目的を如実に語っている。

 

 

熹一の目はしっかりと鬼龍ただ一人を見据え、眉間には皺と力が込められ、口内の均等に並んだ歯を食いしばり、両掌の拳は固く握られている。

 

その短髪が重量に逆らい上に逆立つ様にすら見える。

 

 

目の前に現れた宮沢熹一は明らかな、そして尋常では無い怒気をその身にまとっていた。

 

 

「俺と戦おうと言うのか」

 

「あぁそうや」

 

「静虎を倒し、尊鷹を倒し、あの日下部覚悟すら超えた今ならば俺も打ち倒せると?」

 

「そんなんやないわ、お前と今戦うのは…」

 

「お前のしでかした事が絶対に許せんからじゃ」

 

 

とうとう身に纏う怒気が、赤熱した溶鉄の如きその気迫が熹一の肉体から爆発して放たれる。

 

今まで横目には捉えながらも構わず横を通り過ぎていった通行人達が離れていき、誰もその道に寄り付かなくなった。

 

わけも分からず、しかし本能がここにいては危険だと警告を鳴らす。それに従い人は掃け、今その場に立つのは人を超えた二人の超人。

 

 

「その殺気、嬉しいぞ熹一よ」

 

「お前もようやく俺と殺り合えるほど強くなった、俺を殺せるだけの強さと憎しみを得たというわけだ」

 

 

鬼龍の顔面に喜色が浮かびだす、鬼龍は自他共に認める灘の厄災、高すぎる自尊心を持ちながらも己の破滅すら肯定する。

 

愛されるより憎まれることを好む、灘の当主がその妙技を持って厄災たる己を滅ぼさんとするこの構図を鬼龍は望んでいた。

 

 

「おうッやったろうやないか!鬼龍!」

 

「ワシがお前を完全にいてこましたるわっ」

 

 

「はーっ静虎ですら出来なかった事をお前が果たせるのか!本気で戦ってやるよ熹一!」

 

 

文字通り瞬きする間に両者が疾走し激突する!

 

そしてすぐさま人智を超えた攻防が繰り広げられた。

 

 

磨き上げた肉体と技の結晶たる拳打のコンビネーション、突きだす拳は肉眼に映らず、ぶつかり合う拳通しが衝撃と突風を巻き起こす、乾いた空砲の様な音を連続してたてながら両者一歩も引かず打ち合っている。

 

 

「鬼龍よ お前何であんな真似したんじゃあっ」

 

「ほう何のことだ、生憎心当たりが多すぎる」

 

 

まさに拳打による局所的暴風雨、その苛烈さはなお増していく。やがて二人が同時に蹴り抜いた両足が交差して激突、飛び散る火花を幻視させる。

 

 

「鬼龍!お前は救いようの無い悪党やけど美学に反する様な真似は死んでもせぇへん誇りと矜持があった!」

 

「お前がそれすら捨て去って欲望のまま戦えない人達まで傷つけるつもりならもう容赦せんわっ」

 

「灘・真・神影流当主として…ワシがお前を葬る!それがワシの責任であり最初の仕事や!」

 

 

両足が鍔迫り合い、拮抗の末に両者弾かれるように同時に後退。

 

攻防が仕切り直しとなる、しかし熹一の発言に疑問を抱いた鬼龍が問い掛ける。

 

 

「お前が俺をブチのめしたいのには納得が出来る」

 

「だが俺が“美学を捨てた”とはどういうことだ」

 

 

「やかましいっこの期に及んでシラを切る気かい!」

 

「それともあんな真似し腐って当然だと言う気か!」

 

 

「要領を得んな、お前は何に怒っている」

 

 

「あくまで知らんぷりかい…ならこれを見てみぃ!」

 

 

熹一がズボンのポケットから数枚の紙を鬼龍に投げ渡す、受け取った鬼龍が確認したそれは写真だった。

 

 

「さぁその写真を見てみんかい!幽玄の大観が教えてくれたんじゃあ!」

 

「これは……なにっ」

 

 

 

二日前────────────────────

 

 

 

「悪いな宮沢、突然訪ねるなんて」

 

「いや良いんや、今のワシにとってアンタは他人じゃないわけやしな」

 

「でも何の用や?幽玄死天王“犀の大観”よ」

 

 

その日朧山に立つ灘・真・神影流の新しい道場を訪ねたのはふくよかな恰幅の巨躯をほこる木村大観という名の男。

 

それぞれが幽玄の技を極めた達人達、幽玄死天王が一人にして数ヶ月前に熹一と死闘を繰り広げた武術家である。

 

 

「あぁ世間話も良いが本題を話そう、見てくれ」

 

「あーん?これは写真?写っているのは…」

 

 

「…鬼龍やないケ」

 

 

手渡された数枚の写真に写っていたのは見覚えのある男、忘れようがないほどその姿は記憶に刻まれている。

 

父親の兄弟、灘神影流の先達、かつて倒さんと誓った因縁の敵、悪魔を超えた悪魔と呼ばれし宮沢鬼龍そのもの。

 

 

「そうだ、宮沢鬼龍…お前に説明はいらないよな」

 

「何で鬼龍の写真なんか…まさか、鬼龍がアンタら幽玄にまで余計な事をしでかし始めたんか!?」

 

 

「いや、何もされてない “俺達は”な」

 

「俺達は?どういうこっちゃ」

 

 

「ウム…まず俺は公務員をやってるんだ、だから何か事件が起きれば直接関係がなくても情報が入ってくる時がある」

 

「これは監視カメラで取られた映像を写真にしたものだ、場所は美術館、強盗襲撃事件が起きた場所だ」

 

 

「強盗襲撃…ちょ、ちょう待てや、その写真がこれで鬼龍が写ってるてことはつまり…」

 

 

「そうだ、捜査本部は写真の男…つまり鬼龍が犯人だとして捜査を進めているらしい」

 

「な、なんやて…?鬼龍がそんなこと…いや、しゃあけど…」

 

「まぁ確定はしてないけどな、これ以上の情報も知らない…ただ知ったからにはお前に伝えるべきだと思ったんだ」

 

「この事件では怪我人や死者も出ている、強い力で一撃のもと殴り殺されていたらしい」

 

 

「殴り殺された…?」

 

 

「どう判断を下すのもお前次第だ、ただもし鬼龍が灘の技を戦えもしない無辜の民に平気で向けたとあれば…」

 

「……まぁ繰り返すがどうするのかは当主であるお前次第だ、俺はもう行くよ、俺が情報を渡したことは言わないでくれよな」

 

 

「…………………」

 

 

───────────────────────

 

 

 

「しゃあけどなあ、やっぱりワシにはお前がそないなことするとはどうしても思えんかったんや」

 

「ワシだけやない、オトンもそうや」

 

「だから現場も見に行った、被害にあった人達にも会いに行った、現場はもう警察が調べ尽くした後やったが…」

 

「そこに残った残気は、鬼龍!!間違いなくお前のもんやった!」

 

 

暫し写真を眺める鬼龍、先程までの炎の如く高ぶる闘気は完全に鎮火し消え去っていた。その顔は無表情、何を思うのか見て推し量る事は出来ない。

 

 

「知らんな、この場所には行った記憶は無い」

 

 

「シラを切るのもええ加減にせぇよ鬼龍!今更ワシとオトンがお前の気を間違うわけあるかい!」

 

 

「本当だ、俺では無い」

 

 

鬼龍とは対象的に熹一の怒りの荒波はその高さを増して今にも理性のダムを乗り越え吹き出さんとしている。

 

握り拳にあらん限りの力が加えられ、殴りかかって戦闘が再開されると思われたその時、それを止められる者が現れた。

 

 

「待て!熹一!」

 

 

その場に急いで駆けつけたのはスーツ姿の眼鏡をかけた中年男性、しかしその体つきはスーツごしでもわかるほど屈強。

 

慌ただしく駆けるも体の左右への揺れはまるで無い。

 

 

「おうオトン!鬼龍の奴を見つけたで」

 

 

この男こそ熹一の父親にして鬼龍の双子の兄弟、静かなる虎と呼ばれし武人にして灘神影流先代当主、宮沢静虎だ。

 

 

「今からブチのめすところや」

 

「それなんやがな…ちょっと待てや」

 

 

「え?なに言うとるんやオトン、あないおっかない顔してオトンもブチ切れ取ったやないか」

 

 

「事情が変わったんや、ワシは鬼龍の残気を辿り事件の真相を探った、その結果あることが解った」

 

「なんやあることって」

 

「今回の事件に絡んでいたのは指定暴力団“蟻川組”や、鬼龍と名乗る男に襲撃を提案されたこと、美術館の責任者に恨みがあったことを聞き出した」

 

「なんやヤクザ者かい、つまりソイツらと鬼龍が組んどったんやな」

 

 

「あぁ、そしてそこで…ワシは鬼龍と会った」

 

「遠目からやったが肉眼で見てワシもようやく気付いた、体つき、声、気、どれをとっても鬼龍そのものやが…」

 

「あれは鬼龍や無い、何かが違う」

 

「ど、どういうことや…オトン」

 

「つまり…」

 

 

「つまり何者かが俺を装い今回の悪事を働いた、気まで欺く方法とやらは解らんがともかく偽物だったわけだ」

 

 

一瞬の沈黙、そして全てを飲み込めた熹一。

 

 

「え?…な…なんや!そういうことやったんか!」

 

「いやーっそりゃあよかっ……あっ!」

 

 

 

真相を知り、勘違いであると解り安堵する熹一、それと同時に気が付く。

 

勘違いであったとはいえコチラから一方的に罵倒し戦いを挑んだようなもの、鬼龍でなくとも文句の一つもあるだろう。

 

ましてや悪魔に例えられるこの男、先程と一転、殺意のこもった激憤をぶつけられるのは今度は此方になるかもしれないと思い至る。

 

 

「あ、あはは…ま、まぁあれや、その…」

 

 

恐る恐る鬼龍の方を向く、思い返せば写真を見せたときから明らかに反論も口数も途絶えた、その無表情の奥に煮えたぎる怒りを爆発させんと貯めているのだろうか。

 

答えはそうじゃ無かった。

 

 

「この写真に写っている女は…」

 

 

鬼龍の手にする写真の中の隅に、血を流し倒れ伏す一人の女性の姿。スーツ姿で美術館の職員であろうか。

 

 

「伊織…」

 

 

「あぁ確かにその人は伊織さんだ、病院に会いに行ったとき話したぞ、重症だが一命は取り留めたらしい」

 

「知り合いやったんか?鬼龍」

 

 

「前に喫茶店で出会い少し話を聞いただけだ、美術館で働いてると言っていたが…そうか、この美術館だったか」

 

 

「そうか…まぁそれにしても許せんのお!借りにも身内に化けて悪さされて黙っとれるかい!いてこましたる!」

 

「偽物の鬼龍がいる場所は解っている、行くで熹一!」

 

 

 

「俺をそこに連れて行け」

 

 

 

鬼龍からその言葉が発せられたとき、熹一も静虎もそれが鬼龍の声だという認識が遅れ、間を置いて振り向く。

 

その声は感情の一切を排したと言えるほど凪いで冷淡。

 

しかし鬼龍の両目を見れば二人は全てを理解する。

 

 

その目に宿るは血も凍る様な絶対零度の殺意。

 

怒りと憎しみを超えた決意にも似た殺意のみがあった。

 

 

己の名を語り、価値ある場所を破壊し、卑しい悪党と共謀を企て、何より一時でも鬼龍と時間を共有した女性を傷付けた。

 

その全てが龍の逆鱗に触れた、傲岸不遜の嗤う龍の顔から笑みが消え、天地を揺るがす破滅の怒りが吹き荒れる。

 

 

「俺がこの手で殺す」

 

 

聞くだけで全身の表皮を凍てつかせる宣言と共に、怪物を超えた怪物が進軍を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都、某所

 

 

誰にも使われなくなった廃墟のビルにその男はいた。

 

部屋の一室に何処から調達したのか家具を持ち込み、部屋中央のソファにまるで王座に座る領主の如く鎮座する。

 

黒いコートに黒いシャツとズボン、オールバックの黒髪に横一文字の顔の傷、鋭い両目と薄い眉。

 

そしてはち切れんばかりの屈強極まる筋骨の肉体。

 

何処からどう見ても鬼龍そのものが練り座っていた!

 

 

その気、威風堂々 その技、凄絶無比

 

しかしながらその性は…

 

 

 

「お前か、俺の名を語る者は」

 

 

廃墟の階段を使わず、窓枠を足場に駆け上った鬼龍が割れた窓から堂々と不法侵入。

 

後から続いて熹一と静虎が追い付いて現れる。

 

 

「鬼龍、いきなり飛び出してどうしたんじゃ…えっ」

 

「何か見えたんか熹一……ぬうっ」

 

「貴様は…」

 

 

 

「カモがネギしょってやってきたぜェ グヘヘヘへ」

 

 

 

目の当たりにした光景の余りの予想を超える混沌ぐあいに熹一は一瞬同様から目眩すら覚える、静虎もまた押し黙り、鬼龍の目にも殺意の中に動揺が混じる。

 

 

「き、鬼龍や……鬼龍が二人おる!!」

 

「やはり…その姿と気迫は鬼龍の者、お前は一体…」

 

 

「そう驚くな、“キー坊”に“弟者”よ」

 

「そして…ククク、もう一人の俺もな!」

 

 

ニィーとその顔を歪めて嘲笑うもう一人の鬼龍、その顔はやはり鬼龍のそれと違いなく、見たところ変装の形跡はない。

 

 

「でぇーっ!お前は何なんじゃい!鬼龍に化けて悪さするのに一体何の理由があるっちゅうんじゃ!」

 

 

「クェックェクェ、化けてなどいないぞ」

 

「俺そのものなのさ」

 

 

また得意げに顔を歪ませる、そして等々、熹一達の知る鬼龍が動き出した。

 

 

「どうでもいい、それが変装か、お前が何なのか」

 

「今はどうでもいい、お前を殺した後で考える」

 

 

「グヘヘヘへ、非道いぜェ 俺が俺を殺すってのか?」

 

 

「ほざいてろ、お前は俺の逆鱗に触れたのだ」

 

 

「ほ~う?何の事だァ…美術館の事か?」

 

「俺様が自分の名を語ることの何がおかしい!」

 

 

戦闘開始の気配が頂点に届きつつあることを察知したもう一人の鬼龍が座っていたソファから跳躍して鬼龍の眼前に降り立った。

 

 

「まさか略奪行為を咎めるつもりかァ…そんなわけないよな、お前も宮沢鬼龍なんだ」

 

「力こそが絶対にして至高!強き者は弱き者からどれだけ奪っても許される」

          オレサマ 

「何故なら弱き者に強き者を裁くことは不可能」

 

「絵画だ彫刻だと下らない紙切れや石なんかを有難がってるあのバカ共から奪ってもっと素晴らしい物に変えてやるのよ」

 

「ヤクザは俺様のお友達よ、ゴミを金に変えるルートを知ってるんだからなあ、ブへへへ」

 

 

「……言いたいことはそれだけか」

 

 

「あん?」

 

 

「知性も品性も無い下衆を見ると殺したくなるが…ここまで下劣な存在を目にするのは初めてだ」

 

「これ以上その腐臭の漂う口を開く前に殺してやるよ」

 

 

 

「この考えが理解できないのか、俺様のくせに」

 

「ならお前も殺してやるよ、あの伊織とか言うメスブタの様になァ」

 

 

 

その一言で鬼龍の殺気が爆発して周囲に叩きつけられる、まだ無事な窓ガラスにヒビが入り、積もったホコリが震えて吹き飛ばされる。

 

 

「お前の女なんだろ?俺様を見るなり自分から寄ってきたんだァ、そこを右ストレートで軽く一撃よ」

 

「所詮メスブタなんぞ男より劣った下等な存在…まぁ面だけは良かったんで楽しんでやっても良かったがなあ」

 

「俺様のこの…」

 

 

 

その先を言える事なく鬼龍の超音速の拳が顔面に突き刺さる、大型トラックに轢かれた様に空中で何回転もして壁に激突、破壊音を立てて煙が上がる。

 

 

 

「さっさっと立て、お前に本当の恐怖と後悔を極限まで擦り込んでから捻り殺す」

 

 

煙の中から激昂したもう一人の鬼龍が姿を表す、その顔面は崩壊しかかっており、甚大なダメージを追っている。

 

しかし一気に高まった激怒の念がダメージを塗り潰した。

 

 

 

「うがあああ!本気で俺様と戦う気か、いいだろう!」

 

 

 

両者同時にコンクリートの床を踏み砕かんばかりの強烈な踏み込み!目も開けられぬ風圧を巻き上げながら遂に二頭の龍が激突し喰らい合う!

 

 

 

「下劣なだけの龍など不要!俺が貴様を裁いてやろう!」

 

            オカ

「グヘヘへ!逆らう奴は殺害してやるぜェ!」

 

 

 

後に語り継がれる廃ビルの双龍死合の一戦が遂に火蓋を切った!生き残る龍はただ一人、その名は鬼龍!

 

 

 

 




思いつきだから続きなんてないんだ、悔しくもないししょうがないんだ

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