アサルトリリィ~Episode of Bug Human~ 作:風斬颯丸
今回が初投稿であり、色々と至らぬ点はございますが、皆様のお眼鏡に叶うよう努力していきますので、何とぞよろしくお願いいたします。
アサルトリリィとヒューマンバグ大学のクロスオーバーというのは完全に私の好みであり、人を選ぶ作品となっております。
その為、中にはこの作品を不快と感じられる方も居られるでしょうが、少しでも読者の皆様の日常の憩いとなれるのであれば望外の幸せです。
それでは、アサルトリリィ~Episode of Bug Human~の世界をお楽しみ下さい。
???サイド
?「うぅん、ここはどこだ?」
気付いたら俺は謎の空間に横たわっていた。
辺り一面何もなく、真っ白な光景が無限に広がっており、地平線が見える。
おかしい、ついさっき俺は横断歩道でダンプカーに牽かれそうになっていた子供を庇って代わりに牽かれ意識を手放した記憶がある。しかし、目を覚ますと病院のベットではなく、非現実的な場所に一人放置されているときた。しかも、ダンプカーに牽かれたにも関わらず身体に目立った外傷がなく至って平然であった。一瞬これが夢だと思い自分の頬を思いっきりつねってみたが痛覚は普通にあり、これが夢でも幻でもなく現実であることを思い知らされる。
?「一体全体どうなっちまってんだ‥‥‥‥‥」
?「やぁ、やっと起きたんだね。」
自分の現状に意味がわからず困惑していると、後ろから突然透き通った声が聞こえ、咄嗟に振り向く。
その声の主の正体を見て俺は思わず放心してしまった。
声の主は、男か女かもわからない中性的な顔立ちをしており、白雪のような肌と絹のような金髪、サファイアのような青眼がそいつの美しさをより際立たせている。
服装はまるで古代ローマの貴族が着ていそうな上質な衣を着込んでいる。
そいつの容姿は人間のように見えてまるで浮世離れしており、見つめるだけで謎の安心感と高揚感が湧き出る。
?「だ、誰だあんた?」
?「ん?私かい?
まあ、君たち人間でいうところの神といっところかな。」
?「.......ッ!?」
驚いた。
神秘的な雰囲気から只者ではないと思っていたが、まさか神様とは...........
普通なら何を馬鹿なと鼻で笑うところだ、この男の言葉には謎の説得力がある。
?「驚いたかい?」
?「あぁ、まあぁな。んで、その神様がわざわざ俺の目の前にいるってことは、ここはあの世かなんかで俺は死んでここにいるってことかい?」
非日常的な事態の連続に逆に冷静になってしまった俺は眼前の神様にそう問いを投げ掛ける。
正直な所、猛スピードで突っ込んでくるダンプカーを前にして自分の生存が絶望的なのはそれなりに覚悟していた。
大方目の前の神様は、死んだ俺をこれから天国に行くか地獄に行くか裁定するのだと思っていた。しかし、神様の次の一言は俺の予想とはかけ離れたものであった。
神「なに、一目みて君を気に入ったから別世界に転生してほしいと思ってね。わざわざ君をここへ呼び寄せたのさ。」
?「は?」
返ってきた答えがまさかの異世界転生。まるでラノベのテンプレのような展開に俺は思わずすっとんきょうな声を出してしまう。
?「どういうことだよ?」
神「死んだ君は普通だったら輪廻の循環に従って新たな命として生まれ変わる。しかし、それに待ったを掛けて君を異世界への転生者として選んだのさ。」
?「何でそんなことをわざわざ俺に対してやったんだ?人間なんか五万といるんだから、他にも候補いるだろ?」
神「確かに君がそのような疑問を抱くのも無理はない。だけど私は何も適当に君を選んだ訳じゃない。
私が君を転生者として選んだのは、君の死因にある。」
?「死因?」
?「そう。一部始終を見させて貰ったが、利己的な人間が多い現代で自分の命を犠牲に幼子を助けようとする人間なんてそうそういない。そんな君の人間性にある種の可能性を抱いたんだよ、狂巌寺 真人君。」
なるほど、そういうことか。身を挺して子供を助けて散った俺の姿を見て思うところがあったのか。
しかし、神様の言う「可能性」というのが少し気になる。
真「で、その可能性ってのは何だ?」
神「誰かのためにその命を犠牲にできる君ならきっとこれから転生する世界で人々の希望となり得る。僕はそう確信しているんだよ。」
真「俺がこれから転生する異世界ってのはそんなに困窮しているのかよ?」
神「あぁ、突如として現れた怪物によって人間たちは土地や家族、そして尊厳を奪われ続けている。一応、その怪物に対抗する手段もあるが、成果は芳しくない。はっきり言って人類の存続は絶望的と言ってもいい。だからこそその世界には必要なのだよ、陣頭に立って人々を鼓舞する救世主が。」
真「そんなにカオスな世界ならそれこそ知恵も力もない俺は役不足じゃないか。いっそのこと神様であるあんたが救済しちまえばいい話しじゃないか?」
神「いや、それは出来ない。創造主たる神が、易々と現世に干渉してしまったら、生きとし生ける者たちは私を頼り自立の芽を奪ってしまうことになる。それだけは避けたい。
それに、何も私は君をそのまま転生させる訳じゃない。
転生するにあたってそっちの世界でも上手く適応出来るように特典を授ける。」
特典..........いよいよラノベ臭くなってきたな。
真「特典っていったって、色々あるだろ。何をくれるんだ?」
神「君をここへ呼ぶ際に前世の君の記憶を覗かせて貰った。そこから君と縁の深いものを特典として選んだ。
その特典というのが..........」
真「いうのが...........」
俺は生唾を飲んで緊張しながら神様の次の言葉を待つ。
与えられる特典は来世での自分の人生に大きく作用するだろう。ここでふざけた特典であったら俺は来世で生きる気力を早々に失う。今は死んでる身だが。
しかし、次に神様の口から出た言葉は予想の斜め上をいったものであった。
神「ズバリ、ヒューマンバグ大学のキャラクターの全能力を自由に行使できる能力だ♪」
真「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
まさかのヒューマンバグ大学であった。
ヒューマンバグ大学..........
今やYouTubeに数多く存在する漫画系チャンネルの中でも絶大な人気を誇る一大チャンネルである。
実際にあった事件や事故、裏社会の真実など所謂「人間がバグった瞬間」というのを主題としており、個性豊かな主人公や登場人物たちによって繰り出される涙あり、笑いあり、躍動感ありのストーリーがその人気に拍車を掛けている。その人気は止まることを知らず、様々なキャラクターグッズの販売やアニメ化に、さらにはコラボカフェまで展開されるほどとなっている。
前世の俺自身ヒューマンバグ大学の大ファンであり、特に好きなキャラは「アーミーナイフの小林」こと小林幸真だ。あのタガが外れまくった狂いっぷりが最高なのだ。
神「どうだい?特典としては悪くないだろ?」
真「まあ、確かにあのチャンネルのキャラクターは大半がバリバリの武闘派だからな..........」
ヒューマンバグ大学のキャラクターの能力は特典としては悪くない。一部を覗いて、あのチャンネルのキャラクターたちは戦闘に非常に特化している。
作中最強と名高い通称「二強」と唄われる伊集院茂夫と瓜生龍臣。今や三つも存在する「ヤクザシリーズ」の武闘派極道たち。規格外のパワーと耐久力を誇る紅林二郎など挙げればキリがない。
そんな彼らの能力を自由に行使出来るのだ。下手したらゴジラとも喧嘩できるかもしれない。
更にそこに佐竹博文の不死性と城ケ崎賢志の頭脳も合わさればもはや無敵と言っていいだろう。
だが、それでもヒューバグファンとして譲れないものがある。
真「なぁ、神様。ちょっといいか?」
神「ん?なんだい?」
真「確かにこの能力があれば異世界でもそう簡単に死ぬことはないだろう。だけど今まで戦いとは無縁だった無力な人間がいきなり力を持って何もかも順風満帆でいくわけがないだろ?漫画やアニメじゃあるまいし、必ずいつかはボロを出すに決まっている。」
そう、俺が懸念しているのは正にそれだ。
ラノベなどでは今まで平凡だった主人公が神様から特典を貰って異世界へいきなり転生しても、大抵は強大な力で苦もなく敵を倒し、チーレムをこれでもかと堪能するのが定番となっている。
だが、それは結局創作物の中での話であって、現実はそんなに簡単な話ではない。
自身の力を過信して道を踏み外して破滅を迎える者、自分を危険視した勢力との不毛な争いに巻き込まれる者、人によって様々だが、「力の意味」をロクに理解していない人間には悲惨な末路しか待っていない。それは実際に人類の歴史が証明している。
“大いなる力には大いなる責任が伴う”
これはマーベルコミックの代表的ヒーローのスパイダーマンであるピーター・パーカーに対して叔父のベン・パーカーが放った言葉であるが、正にこれに限ると言える。
結局の所、自分が持つ力にはそれ相応の責任が付いて回り、それを理解出来ない者に力を持つ権利はないのだ。
何より「ヒューマンバグ大学のキャラクターの全能力を行使出来る特典」など、ヒューバグファンとしてそれこそ相応の覚悟と責任を持たなければならないと俺は思っている。
何故なら俺はヒューマンバグ大学というチャンネルを心から愛しているから。
そのチャンネルによって産み出されたキャラクター一人一人に敬意を払っているからだ。(流石に外道は別だが)
どれだけの不運に見舞われようとも決して生きることを諦めなかった佐竹博文の精神力
寄食と秘境に並々ならぬ情熱を注いだ鬼頭丈二の探求心
被害者の無念、遺族の悲しみを汲み取り、自ら修羅の道を歩むことを決めた伊集院茂夫の狂気
弱き人々を守るため、邪悪を挫くべくその拳を振るい続ける紅林二郎の正義
才能に恵まれなくとも、どれだけ苦境に立たされても決して折れることがなかった小峠華太の信念
日本一の極道となるため、日々邁進し続ける久我虎徹の向上心
自分を救ってくれた街の人々を守るため、悪を抹殺する瓜生龍臣の贖罪
たとえその心が完全に悪へ堕ちようとも決して母に対して失うことはなかった城ケ崎賢志の愛情
己の実力はまだまだ未熟なれども、恩義ある兄貴たちに報いるべく闇社会でひたすら跑き続ける阿蒜寛太の根性
他にも多くのキャラクターたちがそれぞれ決して軽くない「何か」を背負っており、日々を平凡に生きる俺にとってとても眩しく見えた。
だからこそ、そんな彼らの能力を俺のような凡人が軽々しく行使するというのは、彼らへの侮辱と捉えてもいい。
つまり、俺が言いたいのは.............
真「だから、そうならない為に俺を鍛えてくれ。
何十年掛かってもいい。俺は彼らに恥じない男になりたいんだ。頼む、いやお願いします!」
そう言って俺は頭を下げる。
彼らの能力を完璧に使いこなせるようになるには己をひたすら鍛えるしかない。要領の悪い俺が思い付いた唯一の打開策だ。正直、全ての能力をマスターするには膨大な時間を要するだろう。その過程で何度も挫け投げ出したくなるような時がくる。だけど俺に諦めるという選択肢はない。なぜならヒューマンバグ大学のキャラクターたちは一部を除いてどんな苦境に陥っても決して諦めなかったからだ。そんな彼らの能力を授かる身として、妥協する訳にはいかない。
神「..............................」
神様からの返答の声が聞こえない。今の俺は頭を下げているため、神様の表情は伺えないが、どこか値踏みするような視線を肌で感じる。
神「.........................ぷっ」
そうして一分ほどの時間が経った後、神様の口から出たのは返答ではなく、吹き出したような声であった。
次の瞬間...............
神「くくく、ふふふ、あははははははははははは!!」
真「へ?」
突然神様はとても愉快そうに笑い始めた。
思わず俺はすっとんきょうな声を漏らして下げてた頭を上げてしまった。
そうして思いっきり笑った後、神様は笑いのあまり流してしまった涙を拭いながら言葉を続ける。
神「ふふふっ、いやすまない。まさか特典を使いこなすために自分から修行を申し込んできたのが、予想外でね。流石は、私が見込んだ人間だ。」
真「そ、それで答えは?」
神「勿論OKだ。何より君はこれから世界を救う身だ。
救世主殿の頼みを無碍にする訳にはいかないだろ?」
よかった。何とか稽古をつけて貰えそうだ。
返答を述べた後、神様はいきなり後ろを向き何やら呪文のようなものを唱え始めた。すると俺達の目の前に虚空から10mは下らないだろう鉄製の重厚な印象の扉が現れた。
神「この扉の先に君を鍛えてくれる者たちがいる。着いてきたまえ。」
そう言うと神様は持っていた杖を掲げる。
それに連動するかのように目の前の扉が重い音を立てながら開いていく。扉が完全に開かれると神様はその扉の先に向かって足を進める。それを見て俺も慌てて後に続く。
そして、扉の先にあったのは..............
真「こ、これは..........」
神「どうだい?驚いただろう。ここは武闘派の神々が日々自分たちを鍛えるために利用している所なんだ。」
そこはまるで古代ローマにありそうな石造りの巨大な円形闘技場であった。純白の石材をふんだんに使っており観客席にはギャラリーが一人もいないが、それが逆にこの闘技場のピリついた雰囲気を際立たせている。
?「なんじゃ!?こんな所にお主がくるなんぞ、随分珍しいこともあったものじゃな!!」
俺が目の前の光景に目を奪われていると、ふと後ろから野太い声が響いてきた。
声のした方に振り向くとそこには二人の男が立っていた。
一人は白いやや薄汚れた胡服を着込み、首に赤い勾玉をいくつも紐で纏めたネックレスを下げ、腰には1m以上はありそうな大剣を下げている。2mは優に越える程の高身長に男はがっしりとした体格をし、無精髭と逞しい剣眉に猛禽類の様に鋭い眼光が男の厳つさを増幅させていた。
もう一人の方はまるで古代ローマからタイムスリップしてきたようなきらびやかな装飾が施された鎧にシマウマの鬣に似た飾りが付けられた兜を着込み、赤いマントを羽織り、右手に槍を左手に長方形の盾をそれぞれ携えている。身体は一人目の男に負けず劣らずの屈強さであり、輝くような金髪と翡翠色の瞳に男は精悍な顔立ちをしている。
二人とも容姿は異なれど、他を圧倒するような強烈な存在感を放っており、素人である俺から見ても彼らがただ者ではないことが理解できる。
真「か、神様。この人たちは?」
神「彼らはここの主な管理を任されている武神殿と軍神殿だよ。神界でもトップクラスの武闘派で教え方も上手いから君の良い師匠になってくれると思うよ。」
え、じゃあこの如何にも人を素手で簡単に殺めちまいそうな方々がこれから俺を鍛えてくれるってこと?
確かにこれ程の実力者たちに鍛えられるなら間違いなく強くなれるだろうが、正直修行に着いていけるかどうか不安になってくる。
俺が心中でそんな風に思っていると、俺を見た軍神様が訝しげな表情で神様に聞いてくる。
軍「そこの人間はなんだ?お主の従者でもなかろう?」
神「あぁ、彼は僕が異世界に転生させる予定の未来の救世主殿だよ。転生する前に特典を使いこなせるようになりたいから修行させて欲しいと言ってね、君たちに鍛えて貰おうと連れて来たんだ。」
すると神様は武神様と軍神様に俺が転生者に選ばれた経緯などこれまでのあらましを話した。
軍「ほぅ、幼子を庇って命を投げ打つとは、大層な男だな。」
武「がっははははは!!確かに良い目をしておる。これは鍛え甲斐がありそうじゃわい!」
そう言って御二方は距離を詰め感心した目で俺を見てくる。正直に言ってガチムチの男たちに至近距離から見つめられるのはなかなかに圧迫感がある。
そんな俺の心境を知ってか知らずか神様は耳元で囁く。
神『ちなみに、彼らは確かに教え方は的確だけど修行法はどれもきつくてね。これまで誰一人として最後までやり遂げた者はいない。まぁ、君ほどの男ならきっとやり遂げてくれると信じているよ?未来の救世主殿?』
その言葉は俺の不安を更に煽るには十分過ぎた。
こうして俺の地獄すらも生温い修行が幕を開けたのである。
時は流れ、世界は廻る。
これは物語の序章に過ぎない。
しかし、確実に運命の歯車は動き始めている。
その運命が吉と出るか凶と出るか、それは神すらも解らない。
アサルトリリィ~Episode of Bug Human~
第1話「ハジマリの時」 完
いかがでしたでしょうか?
テンプレな神様転生でありますが、狂巌寺真人が如何にして最強の存在へと至ったのか、その過程から物語を展開していきます。
誤字脱字や不自然な表現などがございましたら、感想欄などで遠慮なくご指摘下さい。