アサルトリリィ~Episode of Bug Human~ 作:風斬颯丸
予定が色々と重なっていたとはいえ、更新が遅れてしまったこと、深く御詫び申し上げます。
それでは第3話「邂逅」をお楽しみ下さい。
俺の名は狂巌寺真人。
真「嬢ちゃん、怪我はないかい?」
?「え......あ、はい!ありがとうございます。」
推しの女の子を危機から救いだした未来の救世主候補だ。
前世においてダンプカーに牽かれそうになっていた子供を救うためにその命を散らした俺は、自らを創造主と自称する神様に見初められ、滅亡の危機にある異世界の人類を救うことを依頼される。その際に渡された特典である「ヒューマンバグ大学の全キャラクターの能力を行使する能力」を使いこなすべく、壮絶かつ過酷な修行に身を投じた。そしてそんな修行をどれ程の年月が経ったのかもわからなくなるほど続け、俺は特典を完璧に使いこなせるまでに成長した。そして迎える異世界への転生を賭けた最終試験。俺は課せられる試験を次々とクリアしていき、遂に最後である戦闘力測定試験にまで漕ぎ着けた。だが、この試験は正に命を削る壮絶なものであった。神界屈指の実力者である武神様と軍神様の御二方を同時に相手取り、一撃与えなければ合格できないという余りに無謀な試験であった。案の定、この試験で俺は御二方にズタボロにされ死の淵に立たされるも、根性と執念にものを言わせて、見事勝利を掴みとって見せた。そして晴れて異世界への転生の資格を手にした俺は世話になった神様たちに別れを告げ、異世界へと旅立っていったのだ。
真「ここが異世界か................」
異世界へ続くワープホールを潜り、一時的に意識を手放した俺は目を覚ますと、寂れた廃墟と化した市街地の一角である建物の屋上に立っていた。辺り一面に広がる市街地の街並みはまるで戦場跡地や被災地のように倒壊し、蘿や苔などの植物が生え何十年も放置されたままであるのが嫌でも理解できた。時折吹く風から潮の匂いがすることからここが海に近い地域なのだと実感する。
真「転生して早々に廃墟の街を見ることになるとはな....
あまり気分がいいもんじゃないな。」
俺はこのもはや人間社会のテリトリーとして機能していない市街地を眺めながらそう口にする。
それと同時にこれ程の規模の街が廃墟となっているのは神様から聞かされたこの世界の人類に仇なす怪物どもによる影響なのではないかと勘繰ってしまう。
この推測が正しければ、怪物どもは十分に人類を滅ぼしうる力を有しているのは明白であり、人類は正に崖っぷちに立たされているといっていいだろう。
真「......まずはどこかに人がいないか辺りを見回るか。」
あまり時間を浪費すべきではないと考えた俺はこの世界の人間たちと接触するべく周囲の探索を始める。
まるで進撃の巨人の調査兵団のような軽快さで建物から建物へと飛び移り、この廃れきった市街地の状況を確認していく。
真(この街も長いこと放置されてるみたいだし、近くに人がいる可能性は余り高くないかもな。)
俺は内心そう感じながら市街地を移動していく。
すると.......
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
突然、耳をつんざくような爆発音が鳴り響いた。
真「なんだ!?」
突然の出来事に俺は驚きの声を挙げるも、直ぐに爆発音がした方向に視点を当てる。俺から見て十時の方向数キロ先に巨大な黒煙が立ち上ぼっており、煙の中で稲光が走っている。どうやら爆発音の発生源はあそこのようだ。
真「転生して早々にアクシデントかよ。
俺もついてねぇな。」
悪態をつきながらも爆発の原因を探るべく黒煙が立ち上る方へ俺は跳躍する。
爆発音の発生源と思われる地点に数分も掛からずに到着した俺はそこで信じられない光景を目の当たりにする。
真「嘘だろ........
あれってまさかアサルトリリィに出てくるヒュージか!?それにあそこにいるのは.....まさか一柳隊!!」
そこには胴体に大きな古傷を持った巨大なヒュージとそれと対峙する百合ヶ丘女学院所属のレギオン「一柳隊」のメンバーであった。
異世界と聞いていたが、まさか「アサルトリリィ」の世界だったとは.........
アサルトリリィ
それはアゾンインターナショナルとacusによって産み出されたメディアミックス作品であり、50年前に突如として現れた謎の巨大生命体「ヒュージ」によって人類が滅亡の危機に瀕している近未来の地球で、唯一ヒュージに対抗できる科学と魔法の複合体「マギ」を結集した決戦兵器「charm」を片手に儚くも美しく戦う「リリィ」と呼ばれる少女たちの物語だ。アニメの放送やソシャゲの展開に舞台化など多岐に渡り、ヒュージとの文字通り死力を尽くした緊張感のある戦闘や、個性豊かなキャラクターによって展開される人間ドラマなど魅力が詰まっており、中でもリリィたちの間で育まれる愛情は一つの「百合もの」としてその手のオタクたちから支持を受けている。
かくいう俺もアサルトリリィはヒューマンバグ大学同様に熱中しており、推しは今こうして縦に真っ二つになったヒュージの体内から現れたダインスレイフを見て呆然としているシュッツエンゲルの白井夢結を守るためにヒュージのアームに翻弄されながらも奮闘している、一柳梨摛..........て、
ヤバい!!
真「クソ!」
俺は梨摛の方に向かってスピード自慢のヒューバグキャラたちの能力をフル稼働して駆ける。
アサルトリリィのファンだからこそ俺は今目にしている光景が何なのかを知っている。俺が転生したこの世界は間違いなくアサルトリリィのアニメ版「BOUQUET」の世界で、現在一柳隊が相手しているヒュージは第6話にて登場するギガント級ヒュージだ。しかもただのヒュージじゃない。奴は今から2年前の甲州撤退戦において当時アールヴヘイム所属だった夢結とそのシュッツエンゲルだった川添美鈴と戦闘を繰り広げ、結果として美鈴を殺した因縁深き相手なんだ。奴の身体に突き刺さりながら煌々とした光を放っているダインスレイフがその証拠だ。
だからこそ俺はこの後の展開が解ってしまったのだ。
この世界が原作通りの展開になるのだとしたら、梨摛はこの後ヒュージのアームに包囲されて命の危機に陥る。幸いアームに閉じ込められる直前に吉村・thi・梅が縮地で助けるため、心配は必要ないが目の前で推しがピンチなのを助けずにはいられなかった。
真(間に合え!)
俺は光の速さで梨摛の元へ駆ける。その途中で今正に縮地で梨摛ちゃんを助けようとしていた梅を横から抜かす。後ろから梅の驚いたような声が聞こえたが、今の俺にはそんなの関係ない。
そして俺はアームの網から間一髪で梨摛を救出することに成功した。
私の名前は吉村・Thi・梅。
百合ヶ丘女学院に通うリリィだ。
唐突だが、今私が所属しているレギオン一柳隊は一つの山場を迎えていた。結成されて間もない私たちは9人一組のリリィによるマギスフィアのパス回しで繰り出されるどんなヒュージも一撃で倒してしまう「ノインヴェルト戦術」を学ぶために、トップレギオンのアールヴヘイムの皆に頼んで防衛任務を兼ねてノインヴェルト戦術の実践を見せてもらうことになった。
しかし、これが思わぬ事態に発展してしまったんだ。
アールヴヘイムと対峙したギガント級ヒュージは放たれたマギスフィアをあろうことか防いでしまったんだ。それを見て天葉がギガント級の防御壁によって止められていたマギスフィアに自分のチャームを叩きつけ、強引に防御壁を打ち破った。マギスフィアはそのままギガント級に着弾し、大爆発を起こすもまるで意に介していないかのように平然としていた。しかし、アールヴヘイムの皆はノインヴェルト戦術によってチャームとマギを損耗したたため撤退することになってしまった。その為私達一柳隊が急遽対応することになり、予想だにしない一柳隊の初陣となったんだ。そして梨摛と夢結は見事な連携でギガント級の胴体を真っ二つにすることに成功するが、奴の体内から露出した一振のダインスレイフを見て夢結が戦闘中にも関わらず硬直してしまった。あのダインスレイフ.........まさか.......?
すっかり固まってしまった夢結にヒュージのアームが迫るがそれを梨摛が弾き、防ぐ。しかし、アームが梨摛の周囲を取り囲み初め、捕捉しようとする。私は直ぐ様梨摛を救出するべく縮地を使って梨摛の元へ駆ける。
その時だった........
梅「うわっ!なんだ!?」
突然私の横を黒い影のようなものが物凄いスピードで通り過ぎたんだ。私は驚きの余り縮地を止めてしまった。
すると私の接近に気付いたヒュージが身体の裂け目からこちらに光線を放ってきた。
梅「くっ!」
私はその光線をチャームで防ぐが、空中で受け止めた為に後方に吹っ飛ばされてしまった。幸い直ぐに体勢を直して無事に着地する。しかし、その頃にはヒュージのアームが梨摛を完全に閉じ込めた後だった。アームがまるで球体のように纏り、中にいると思われる梨摛をミンチにしようとアームの網を縮めていき、その都度アームの刃が擦れあって火花が散っている。梨摛の生存は絶望的だった。
梅「そ、そんな.................」
それを見た私は膝を着き絶望する。今の私の心中は助けられる状況で突然のアクシデントで仲間を救うことができなかったことに対する後悔と大切なシルトを犠牲にしてしまった夢結に対する懺悔の気持ちで一杯だった。
あの甲州撤退戦以降、美鈴様を亡くした悲しみで心を閉ざしてしまった夢結を私は親友としていつも気に掛けていた。自分を苛み続け他人と積極的に関わろうとせず、常に孤独でいた夢結に再び笑顔を取り戻させたのは梨摛の影響が強い。夢結に憧れて百合ヶ丘に入学してきた梨摛は当初は夢結に拒まれながらもその直向きな意思で距離を縮め、今では夢結にとってなくてはならない存在となっていた。
そんな梨摛を私は半ば死なせてしまったんだ。夢結には謝っても謝りきれない。
楓「梅様!」
私が失意にうちひしがれていると梨摛と夢結を除いた一柳隊の皆が集まってくる。
二「ま、梅様。梨摛さんが...........」
梅「あぁ、わかってる。私のせいだ...........。
私のせいで梨摛が................」
気づけば私は目から大粒の涙を流していた。こんな情けない姿、後輩達の前で見せるべきじゃないけど、今の私にはその考えに至ることが出来なかった。
一部始終を目撃していた一柳隊の皆は、その顔が青褪めている。一柳隊の初陣でまさかリーダーが犠牲になってしまうなんて思いもしなかったから。
楓「あ、あ、あり得ませんわ!!あの梨摛さんがたかだか手負いのヒュージごときに討たれるなんて!
そんなこと.......絶対に........」
日頃から梨摛に特別な感情を抱いていた楓は梨摛の死を受け入れられず、現実逃避しようとする。しかし、未だ梨摛を閉じ込め続けているアームの網を見て威勢が良かった楓の声も次第に弱々しくなっていく。
こうなったのも全部私のせいだ.........
梅「ごめん、梨摛.........
ごめん、夢結...................」
私は一目も憚らず涙を流しながら梨摛と夢結に対して謝罪の言葉を述べる。
戦場のど真ん中で本当はこんなことをしている場合ではないんだけど、今はただ自分の失敗で仲間を犠牲にしてしまったという事実が私の身に重くのし掛かる。
他の皆も顔に悲哀な表情を浮かべ項垂れている。
そこには先程までアールヴヘイムが打ち損じたヒュージを討ち倒そうとする気概はすっかり鳴りを潜めてしまっていた。
二「み、皆さん待ってください!
あそこから黒尽くめの男性が此方に向かってきています。それに、男性が腕に抱えているのは........
ま、まさか梨摛さん!?」
梅「え............?」
皆が悲壮に暮れていると、ふーみんがある一点の方向を指差しながら驚きの声を挙げる。
咄嗟に私と一柳隊の皆もふーみんが指差す方向に目を向ける。
そこには確かに全身黒尽くめの服装にサングラスを掛けた男が腕に無傷の梨摛を抱えながら、リリィと大差ない跳躍で此方に向かってきていた。
俺は梨摛がアームに捕まるすんでのところで救出することに成功した。俺の腕の中で抱かれている梨摛は一体何が起こったのか理解できず呆然とした表情で俺を見ている。
真「嬢ちゃん、怪我はないかい?」
梨「え......あ、はい!大丈夫です。」
俺は一応安否を確認するために梨摛ちゃんに声を掛ける。そのひと声で我に返った梨摛はまだ戸惑いの隠せない声で俺の質問に答える。
真「取り敢えず嬢ちゃんの仲間の所に連れていくから、しっかり掴まっていてくれ。」
梨「は、はい!」
そして俺はそのまま一柳隊の皆がいる場所へ移動する。無事に到着して、梨摛をゆっくり下ろすと早速梨摛に飛び付く人物がいた。
楓「梨摛さ~ん!やっぱり私の運命の方である貴方が死ぬはずないと信じておりましたわ!
お怪我はありませんか?どこか痛いところは?」
梨「か、楓さんくすぐったいよ。」
もちろん梨摛大好きっ子の楓・J・ヌーベルだ。
梨摛を抱きしめ、外傷はないか身体をまさぐり始める。特にお尻の方を念入りに触っており、下心満載だ。だが、その顔は仲間の生存を素直に喜ぶ表情となっている。
ミ「一時はどうなるかとヒヤヒヤしとったが、無事で何よりなのじゃ!」
雨「本当に....良かった.......」
他の一柳隊の面々も集まり皆梨摛の生還を喜んでいる。すると今度は梅が梨摛に抱き付いてきた。
これには思わず梨摛も驚きの声を挙げる。
梨「わっ!?梅様?」
梅「梨摛......良かった、無事で........」
普段の天真爛漫な彼女とは思えないほど梅は目尻に涙を浮かべ心から梨摛の無事を喜んでいる。
梅のそんな心情を察した梨摛は優しげな表情で梅を抱きしめ返す。
梨「はい。私は大丈夫です、梅様。
あちらの人が助けてくれました。」
神「貴方は一体..............」
鶴「................................」
梨摛のその一言で一柳隊の面々の視線が俺に集中する。
そこにはいきなり現れた俺に対する戸惑いや疑念が感じ取れた。特に鶴紗は懐疑的な目を俺に向けてくる。
真「.....悪いが挨拶は後だ。あそこの嬢ちゃんをほっといていいのか?」
そう言って俺は親指をある方向に指しながら言う。
指差した先にはヒュージに梨摛を殺されたと勘違いした夢結がルナティックトランサーを暴走させて暴れまわっていた。
夢「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
白雪のような髪を揺らし、血のように赤い瞳を輝かせ、身体の至るところに傷を負いながらも戦うその姿はまるで鬼女そのものだった。
梨「お姉様.............................」
二「夢結様、なんて戦い方...........」
ミ「あれじゃあ近寄れんぞ。」
梅「可愛いシルトを放っておいてなにやってるんだ。」
神「夢結様、ルナティックトランサーを..........」
その余りの暴れっぷりに一柳隊の面々は唖然としている。しかし、この暴走を止めなければ、このままでは彼女の命も危ない。
梨摛はグングニルを握っている手を強め、その顔に決意の表情を浮かべる。
梨「私、行かなくちゃ.............!」
楓「梨摛さん!今の夢結様は...........」
楓の静止も聞かずに梨摛は夢結の方に向かっていってしまった。梨摛の性格上、こういう時真っ先に行動に移してしまう猪突猛進な所がある。そういうところが梨摛の魅力でもあるんだが。
とはいえ、年端も行かない少女たちが戦場に臨もうとしてる中で大の大人が指を咥えて見ている訳にもいかない。
ここは一肌脱ぐか。
真「しゃーない。俺も出来るだけサポートするか。」
楓「はぁ!?貴方、一体何を言ってますの!?」
梅「そうだぞ!ここは私たちに任せて、あんたはどこか遠くに避難を................ッ!!」
俺に対して避難勧告を出そうとした梅は思わず言葉を失ってしまった。
なぜなら俺が発しているオーラと殺気に圧倒されたからだ。
武神様と軍神様との命を削る手合わせを経て、俺は戦士としての格が更に上がった。今の俺は身体から放たれるオーラだけで他者を萎縮させ、その殺気で対象者以外の存在にも言い様のない恐怖を与えてしまう。
そんな俺の地獄の獄卒も裸足で逃げ出すような様相に、一柳隊の皆は背筋に悪寒が走り、顔から冷や汗を垂らしている。特に二水と雨嘉といったメンタルが余り強くない面々は顔を青褪めさせ、涙目になっている。
真「南無阿弥陀仏....南無阿弥陀仏....」
俺は南無阿弥陀仏を唱えながら一振の日本刀を顕現させ、ゆっくりと鞘から刀を抜く。刀身が陽光の反射によって目映い煌めきを放つ。
真「悪因悪果。非道の限りを尽くす仁義外れは、この剣の錆とする。」
そう言って俺は刀を構えると、雷のような踏み込みで眼前のヒュージに向かって突貫する。
当然、自信に迫る敵をヒュージが見過ごすはずがなく、まるで蛇腹剣のようなアームを俺に向かって放つ。
雨「あぁ........!!」
二「危ない!!」
この時彼女たちは俺がヒュージのアームの餌食となり、細切れになる結末を想像し、顔を絶望の色に染める。彼女たちにとって俺はマギもチャームも持っていないただの人間だ。ヒュージと戦う術を持っていない人間が無謀にもヒュージに挑んで、今まさにその命を散らそうとしているように見えるんだろう。
だが、生憎俺はただの人間ではない。
俺は迫り来るヒュージのアームを.............
真「ふっ。」
目にも止まらぬ神速の斬撃で切り捨てる。切り捨てられた奴のアームが宙を舞い、青の鮮血を撒き散らす。
一柳隊「「「「「「「.......は?」」」」」」」
目の前で起きた非現実的な現象に一柳隊の面々は呆気ない声を漏らす。彼女たちは一瞬俺が何をしたのか理解出来なかったのだ。しかし、振り抜かれた刀と切断されたアームを見て、俺がヒュージの触手を刀で切り捨てたことを自覚した。
二「ど、ど、どいうことですか!?あの人、リリィでもないのにヒュージを傷つけましたよ!?」
鶴「あの刀、チャームじゃないよな..........?」
神「梅様、あの人の動き見えましたか?」
梅「い、いや見えなかった。気付いた時にはあいつ刀を振り抜いていたぞ。」
リリィでない人間がヒュージに傷を負わせたという事実に驚愕する者、俺の視認することすら許さない斬撃に戦慄する者など反応は様々だが、彼女たちは漸く俺が普通の人間ではないことを悟る。
楓「えぇい!こうなってはヤケクソですわ!
このまま何もせず突っ立っているのは、リリィの名折れ。私たちもあの殿方に続きますわ!」
しかし、このままじっとしていても拉致があかないと察したのか彼女たちは楓のその一声を皮切りにヒュージへ突貫する。
こうして、なし崩し的に俺と一柳隊の共同戦線が展開された。
梨「お姉様!!」
遂に夢結の元へ辿り着いた梨摛は夢結に向かって叫ぶ。
夢結「ッ!!」
しかし、悲しみと憎悪を滾らせある種の暴走状態にある夢結はそんな梨摛に対して容赦なくブリューナクを振るう。本来なら素人の梨摛と百合ヶ丘のエースである夢結では実力に歴然とした差があるが、夢結との特訓の成果なのか夢結の凶刃を防ぐことが出来ている。
梨「お姉様、聞いてください!
傷だらけじゃないですか!」
夢結のチャームを受け止めつつ、梨摛は語り掛ける。
だが、夢結の苛烈で容赦のない攻撃によるチャームのダメージは大きく、梨摛のグングニルの刃に罅が入る。
楓「梨摛さん!普通なら今ので2、3回斬られておりますわ!」
ミ「敵に集中せんか!」
正直な所、戦場のど真中で狂乱状態の仲間を実戦経験の浅い人間が抑えるのはリスクが大きい。夢結の場合は親交の深い梅や実戦経験が豊富な楓、神林などが対処に当たるのが妥当なんだが、アサリリファンの俺だからこそ確信できることがある。
今の夢結を止められるのは梨摛しかいない。
戦いの場において感情論に頼り過ぎるのは危険であるが、俺は梨摛が夢結に対してどのような思いを抱いているかを知っている。彼女はシュッツエンゲルを亡くし後悔と悲しみに苛まれている夢結の心の支えになりたいと本気で思っている。これはもはや単なる憧れから来るものではない。他者の心に寄り添える梨摛の「優しさ」がその原動力となっているんだ。
だから俺は信じている。
梨摛の優しさが必ず夢結を救い出してくれることを。
真(頼むから原作通りに事が運んでくれよ......)
俺はヒュージの攻撃を軽くあしらいつつ、二人の動向を注視する。
梨摛は自身のチャームを捨てると丸腰の状態で夢結にゆっくりと近づき、そのまま夢結を優しく抱きしめる。それはまるで悲しみのあまり暴れまわる子供を慰める母親のような暖かさがあった。
梨「私なら大丈夫です。ある男の人が助けてくれたんです。」
抱きしめられた夢結は明らかに動揺が見られたが、それでもチャームを上げて梨摛を背中から突き刺そうとしている。しかし、それを意に介さず梨摛は真剣な表情で夢結に告げる。
梨「ここを離れましょう。」
夢「........だめ。あのダインスレイフは、私とお姉様の.............だから..........」
梨摛ちゃんのその提案に対して夢結は拒絶する。その表情は今まで見たことがないくらいの悲壮さに溢れていた。
梨「お姉様!」
夢結のその姿に梨摛ちゃんは並々ならぬ事情があると察するが、次の瞬間には梨摛ちゃんは再び真剣な表情を浮かべると強い声で夢結を呼び、そのまま彼女を抱えて戦線離脱する。
雨「行って、梨摛!」
梨「すみません!直ぐ戻りますから、ちょっと待ってて貰います....アイタッ!」
何とか二人が離脱する展開にもってこれたが、今のシーンはいつ見ても梨摛ちゃんのどこか抜けているところが良く表現されている。
梅「大丈夫か梨摛?」
梨「大丈夫です~」
鶴「本当に大丈夫か?」
これには梅や鶴紗から心配の声が挙がる。
雨「待ってろって?」
神「持ちこたえろという意味でしょうね。」
梅「人使いが荒いぞ、うちのリーダーは。」
ミ「どうする?ワシらも他のレギオンと交替するか?」
ミリアムはメンバーが欠けている現状のリスクを鑑みて他のレギオンとの交替を提案するが、それを楓が拒否する。
楓「ご冗談でしょ!リーダーの死守命令は絶対ですわ!」
二「そこまでは言ってないと思いますけど、楓さんに賛成です!」
楓のその言葉に、彼女におんぶされている二水も賛同する。更に楓はある一点の方向に視線を向けながら言葉を続ける。
楓「それにあそこの殿方は、退く気は毛頭なさそうですわよ?」
その視線の先にはたった一人でヒュージを翻弄する俺の姿があった。ヒュージの攻撃を最低限の動きで躱し、反らし、防ぐ。動きの一つ一つが洗練されており、背後や死角からの攻撃も冷静に対処し、一切の隙を見せない。逆にヒュージは俺の動きに付いてきておらず、既に身体中に十数箇所の傷を受けており、どちらが優勢かは火を見るよりも明らかだった。
ミ「ギガント扱を完全に手玉に取っとる....」
鶴「あいつ、本当に何者なんだ?」
神「わかりません。しかし、あの方のお蔭で戦局はこちらに分があります。」
彼女たちにとってそれは異様な光景だったが、同時に戦局が自分たちの優勢に傾いていることを確信する。
だが、梅の方は俺の様子を見ながら内心別の考えに至っていた。
梅(あいつ、笑ってる。この戦いを楽しんでいるのか?)
梅はヒュージと戦いながらもまるで新しい玩具を見つけた子供のように嗤う俺の姿を見て、薄ら寒いものを感じた。
俺は目の前のヒュージとの戦いを通して、わかったことが2つある。まず1つ目は俺とヒュージとの間にある差だった。ヒュージは俺を屠ろうと必死に攻撃を仕掛けているのに対し、俺の方はそれを余裕で対処する。今の俺にとってヒュージの動きはスローモーションのように遅く見え、力も強く感じない。当初はリリィでしか倒すことが不可能なギガント扱に対して俺の戦闘力が通用するのか不安だったが、今はそのギガント扱をまるで脅威に感じていない。その証拠に奴は満身創痍で明らかに損耗しているのに対して、俺は汗1つ掻いておらずまだまだ余力があった。そして2つ目は俺がこの戦いを「楽しい」と感じてしまっていることだ。戦いというものを純粋に楽しく感じてしまうことははっきり言って異常だ。しかし、今の俺の心の内はそんな感情でいっぱいだった。
圧倒的な力で敵を圧倒するのが快感だ。
強者を奢る者を蹂躙するのが愉快でしょうがない。
俺の力を前に戸惑い恐れおののく敵の姿が滑稽だ。
どうやら俺は長大かつ凄惨極まる修行と特典の影響で既に精神が常人とは異なるものに変貌してしまってるのかもしれない。だが、それでも構わない。戦いを恐れ尻込みするよりもずっとマシだ。
少しでも戦いを有利に動かせるなら俺は幾らでも狂ってやる。
真「ひひっ♪︎」
俺は顔に狂気にまみれた笑顔を張り付けながらそんな覚悟を胸に得物を振るう。
それは正に生者の魂を刈り取る死神のようだった。
戦況は俺と一柳隊の優勢となっていた。一柳隊の皆は結成されたばかりとは思えない見事な連携で、着実にダメージを加えていき、奴のアームも残り1本となった。
梅「あのダインスレイフ、絶対に取り戻す。」
楓「無論です。ヒュージがチャームを扱うなんてあり得ませんわ。」
梅は奴のアームを足伝いに縮地を発動して駆ける。目指すは奴の体内に突き刺さるダインスレイフだ。あれがアールヴブヘイムのノインヴェルト戦術を防いだからくりである以上、回収しない手はない。
梅「てりゃぁぁぁ!」
縮地で一気に距離を詰めた梅は、ダインスレイフが突き刺さっている裂け目に向かってダイブする。無事に着地し、そのままダインスレイフを握り抜き取ろうとする。
しかし、思った以上に深く突き刺さっているのか梅一人の力では抜けない。
梅「あぁ、くそ!」
しかし、そこへ駆け付けた楓と鶴紗が同じくダインスレイフに手を掛ける。
梅「お前ら.....」
楓「急ぎましてよ。」
そのまま三人はダインスレイフを抜くべく力を込める。そんな三人に対してヒュージのアームが迫るが、それを俺が逃す筈がない。
真「させるかよ、ボケ。」
俺は迫りくるアームを刀で弾き飛ばす。
俺たちのそんな様子を見て二水は自身のチャームを構え戦闘に臨もうとするも、如何せん実戦経験が乏しい彼女は恐怖と緊張の余り足がすくんで動けないでいた。
二「わ、私も行かなくちゃ.....」
梨・夢「待って!」「待ちなさい!」
そんな二水に対して待ったを掛ける者たちがいた。何を隠そう梨摛と夢結だ。どうやら無事に説得に成功したようだ。夢結の表情は先程の憎しみと悲壮に埋もれておらず、今は眼前のヒュージを倒さんとする強い覚悟が見て取れた。
二「梨摛さん、夢結様!」
梨「二水ちゃんはそこにいて!」
二人は抜群のコンビネーションでヒュージに銃弾を加え牽制する。その隙に梅たちはヒュージからダインスレイフを抜き取ることに成功する。
梅・楓・鶴「「「抜けた!」」」
そのまま三人は間髪いれずにその場から離脱する。その直後ヒュージの裂けた身体の表面から左右共に無数の光線が放たれる。相変わらずこのシーンはいつ見てもヒヤヒヤする。
三人が無事にダインスレイフを回収したのを見計らって他の面々も一旦退いて態勢を立て直すようだ。
神「貴方も、ここは私たちと退いて態勢を立て直しましょう。」
真「いや、俺はこのまま奴を抑えておく。その間にあんたらは打開策を考えておいてくれ。」
俺に対して神林がそう声を掛けるが、俺はそれを断る。このまま全員が戦線離脱するよりも一人でも十分に戦える奴が残ったほうが、奴の気を引けるしその間に一柳隊は作戦を立てる余裕が出来る。
そんな俺の考えを理解してか神林は食い下がることはなく了承してくれた。
神「.......わかりました。どうか御武運を。」
真「あぁ、任せろ。」
そう言うと神林は皆が集まっている場所へ向かっていった。こうして再び俺とヒュージのタイマンとなる。
当のヒュージはここまで自身をコケにしてくれた俺に対してアームの切っ先を向けながら明確な殺気を放つ。しかし、俺からしてみたらその程度の殺気、武神様や軍神様に比べれば鼻くそ以下だ。
俺は刀から榊原周の双剣に持ちかえると、殺気を剥き出しにして構える。すると先程まで威勢の良かったヒュージが俺の殺気に当てられて一瞬たじろぐ。しかし、生物の生存本能なのか直ぐ様俺に向かってアームを放った。それを俺は跳躍する形で避けると、そのまま上から奴のアームを斬り付ける。
ヒ「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
いきなり自身のアームを斬られたヒュージは悲痛な叫びを挙げる。あぁ、痛いだろうな。だが、てめぇに姉を殺された夢結の痛みはこの程度じゃねぇんだぞ。
俺は奴との距離を詰めると胴体を袈裟斬りにする。
そこから始まったのはスピードにものを言わせた蹂躙劇だ。ヒュージの周囲を縦横無尽に駆け回り決して付け入る隙を与えず追い詰めていく。奴の身体は大小数十箇所の傷で埋め尽くされ、もはや手負いの獣同然だ。しかし、流石はギガント級だ。戦闘力もさることながら、耐久力もミドル級やラージ級の比ではない。満身創痍だというのに生存への欲求なのか闘志を失っていない。
最も俺がその気になればギガント級の一体や二体倒すことは容易い。では、なぜ目の前のヒュージに止めを刺さないのか。その答えは奴が他のヒュージと異なり、夢結や梨摛、そして一柳隊の成長に必要な存在だからだ。夢結にとっては自分のシュッツエンゲルを実質殺した仇敵を討ち過去との見切りを着けるため。梨摛にとっては夢結の因縁深き敵を共に倒すことで二人で前に進むため。一柳隊の皆にとってはこれから人類のために戦うレギオンとして立ちはだかる壁を越えるためだ。それ故にこのヒュージを外野の俺が倒す訳にはいかないんだ。アサルトリリィのファンだからこそリリィたちの成長を妨げる真似は極力避けたい。
だから今回俺は裏方に回ったんだ。
真(正直、彼女たちの成長のために目の前の敵を敢えて倒さないなんて、些か傲慢だが........)
真(まぁ、精々彼女たちの良い踏み台になってくれギガント級さんよぉ。)
俺は内心でそう思いながら黒い笑みを浮かべ双剣を振るうのだった。
一方の一柳隊はある建物の屋上で無事に合流していた。
特にダインスレイフの回収という一仕事を終えた梅たち三人はそれなりに体力を使ったのか床に膝を着けてくたくたといった感じだ。
梅「はぁ~、取り返したぞ。」
楓「死守命令、果たしましたわ。」
梨「だ、大丈夫ですか皆さん?」
そう皆の安否を問う梨摛の目にダインスレイフが映る。
梨「これが、あのヒュージに.........」
梅「これ、やっぱり夢結が使っていたダインスレイフだな。傷に見覚えがある。」
夢「えぇ。」
夢結の親友として長年連れ添ってきた梅のその言葉には十分な説得力があった。夢結の方もダインスレイフを一瞥し彼女の言葉を肯定しているため、当たりだろう。
すると夢結は今度は、いまだに一人でヒュージと戦闘を続けている俺を見ながら梨摛に質問する。
夢「梨摛、もしかしてあの人が?」
梨「はい。あの人が危ない所を助けてくれた方です。
名前はまだわかりませんが......」
夢「まさかリリィでもないのにギガント級を圧倒する人間なんて未だに信じられないわね。」
百合ヶ丘のエースとして幾多の修羅場を潜り抜けてきた夢結をしても目の前の光景は現実離れしており、その表情には僅ながら動揺が見て取れた。
ミ「しかし、なんという苛烈な戦い方じゃ。ヒュージの方はまるで対処出来とらん。」
鶴「あいつ、あのままヒュージ倒しちまうんじゃないのか?」
神「いえ、あの方は私たちが持ち直すまで時間稼ぎをして下さるそうです。」
梅「だとすると早く打開策を考える必要があるな。」
梨「あの.......」
神林のその言葉に皆が早急に打開策を考えようとした時梨摛がある提案を打ち出す。
皆の視線が一気に梨摛に集中する。
梨「私たちでやってみませんか?」
楓「何をです?」
楓のこの質問に対し、梨摛は右手に握っていた「あるもの」を見せながら言葉を続ける。
梨「ノインヴェルト戦術です。」
彼女の掌の上にはノインヴェルト戦術の専用弾があった。
俺とヒュージの戦闘は完全に俺が主導権を握っていた。奴のアームは全て切り捨てられ、もはや奴に残された攻撃手段は光線による牽制のみであった。しかし、ゼロ距離からの銃弾も容易く避ける俺の反射神経の前では光線などまるで意味を為さず、全て空を切る。逆にヒュージは図体が大きい分狙いやすく、俺の攻撃を防ぐことが出来ていない。
俺からしてみれば目の前のヒュージはもはやサンドバッグ同然だった。
真(これまで散々多くの人を殺してきたんだ、一柳隊が止めを刺すまで嬲ってやるよ!)
すると一柳隊の皆が退避した方向に一点の光が見えた。
その光は青、黄、緑、紫、赤、橙と色を変えていっている。間違いない、ノインヴェルト戦術の魔法球の光だ。
どうやらこの戦いもいよいよクライマックスのようだな。
梅「あんた、今から私たちがあいつにノインヴェルト戦術を仕掛けるから退いてくれ。巻き込まれると危険だ。」
すると魔法球のパスを終えた梅が俺にそう言葉を掛ける。他のメンバーは時間稼ぎのためにヒュージを抑えていた。
真「あぁわかった。頑張れよ。」
梅「おう!」
俺の激励に梅は親指を立て、屈託のない笑顔を向ける。
相変わらず太陽みたいに明るいな、梅は。
楓「あはは♪︎私の気持ち受け止めてくださいな梨摛さん!」
梨「み、皆のだよね?」
神林から魔法球を受け取った楓は白く輝く魔法球が付着した自身のチャームの切っ先を向けながら梨摛ちゃんに向かって半ば突撃する。それを梨摛ちゃんは戸惑いながらも受け止めるが、チャームの耐久値が限界を迎え刃部が折れてしまう。
楓「私の愛が強すぎましたわ!!」
夢「いいえ、もう限界よ。無理もないわ。」
そのまま魔法球は明後日の方向に飛んでいってしまうが、それを夢結が受け止める。そして無事に魔法球を受け止めた夢結は新たなパートナーと最後を飾るべく梨摛に手を伸ばす。
夢「梨摛、いらっしゃい!」
梨「お姉様!」
敬愛するシュッツエンゲルからの誘いに梨摛は笑顔を浮かべそれに応じる。梨摛は夢結の方に向かって跳躍し差し出された夢結の手を握る。
夢「行くわよこのまま。」
梨「はい!」
二人は互いの身体を密着させるとチャームを合わせる。すると魔法球はそれに呼応するかのように眩いばかりの光を放つ。
夢「大丈夫。出来るわ!」
梨「はい!」
そして二人はチャームの切っ先を真下のヒュージに向け、魔法球を叩き込む。
夢・梨「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それはさながら罪深き怪物に断罪の鉄槌を下す戦乙女の如く、美しくも勇ましい姿だった。
まともな防御も出来ずに魔法球を食らったヒュージの身体から死の前兆といわん限りに強烈な光が発せられる。
忌まわしき仇敵に止めを刺した夢結は光に照らされながら、隣の梨摛に言葉を掛ける。
夢「梨摛。私はあなたを信じるわ。」
梨「お姉様?」
その時の彼女の表情は迷いのない、とても晴れやかな笑みを浮かべていた。
楓「なにをやってますの!?」
ミ「さっさと離れるのじゃ!」
するとそこへ一柳隊の皆が駆け付け、二人を抱えると直ぐ様ヒュージから離れる。
その後、巨大な青白い光がヒュージを包み込み、稲光と轟音をたてながらヒュージをこの世から完全に葬りさった。
真「これにて一件落着てか?」
その光景を眺めながら、俺は達成感を胸に笑みを浮かべるのだった。
こうして俺と一柳隊の共同戦線は俺たちの勝利で幕を閉じた。
ギガント級との激戦を終え、マギも体力も使い果たした一柳隊は草原に寝そべりながら空を見つめていた。空には大小の雲が浮かび、沈み行く夕日が西の空を赤く染めていく。青白い粒子のようなものがいくつも空中を舞いとても幻想的だった。梨摛と夢結は暫く呆然と空を眺めていたが、やがて互いの顔を見合わせる。すると夢結は梨摛に対し朗らかな笑みを向けると、それに梨摛も答えるかのように同じく笑みを浮かべた。
そんな仲睦まじい雰囲気をぶち壊すようで悪いが、俺は彼女たちに話し掛ける。
真「よお、嬢ちゃんたち。やったな。」
梨「あ、貴方は.....」
俺の存在に気付いた一柳隊の皆は我に帰り直ぐ様立ち上がる。
真「最後のあれ凄かったぞ。お兄さん思わず見とれちまったぜ。」
梨「えへへ.....」
俺の称賛に梨摛は照れ臭そうに笑う。うん、可愛い。
すると今度は夢結が俺の方に歩み寄ると深々と頭を下げる。
夢「梨摛から全て聞きました。私の妹を危ないところから救っていただき、更には加勢までしてくださりありがとうございました。」
夢結に続き、他の面々も頭を下げて御礼の言葉を口にする。
真「いやいや、俺はやるべきことをやったまでだ。礼はいらねぇよ。」
夢「それでも、貴方のお蔭で梨摛や皆が助けられたのは事実です。どうか私たちの気持ちを受け取って下さい。」
そこまで言われたら素直に受け取るしかないな。
真「.......そうかい、それならその気持ち有り難く受け取っておくよ。......っと、そういや自己紹介がまだだったな。俺の名は狂巌寺真人。訳あって今は浮浪の身だ。」
梨「私の名前は一柳梨摛っていいます。よろしくお願いします真人さん!」
夢「白井夢結と申します。」
楓「楓・J・ヌーベルと申します。以後お見知りおきを。」
二「ふ、二川二水といいます。よ、よろしくお願いします。」
ミ「ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスじゃ。長いからミリアムでよいぞ。」
雨「王雨嘉です。よろしくお願いします...」
神「郭神林と申します。気軽に神林とお呼び下さい。」
鶴「.......安藤鶴沙。」
梅「私は吉村・thi・梅だ。よろしくな、マー兄!」
俺の自己紹介を皮切りに皆それぞれ自分の名前を明かしていく。梅に関しては早速俺をあだ名呼びしているが。
真「梨摛に夢結に楓に二水にミリアムに雨嘉に神林に鶴沙に梅だな......よし、覚えた。
一仕事終えて疲れているところ悪いが皆に頼みたいことがあるんだ。」
俺は皆の名前を復唱すると表情を真剣なものに変えて、そう言う。
この世界に転生して俺が最初に立てた目標である、「現地人との接触」は無事に成功したと言えるだろう。少なくとも目の前の一柳隊には好印象を与えることが出来た。
なら次は...................
真「俺を百合ヶ丘女学院理事長代行・高松咬月さんに会わせてくれないか?」
交渉の時間だ。
アサルトリリィ~Episode of Bag Human~
第3話「邂逅」 完
いかがでしたでしょうか?
真人のヒュージをものともしない圧倒的な戦闘力。これから彼は更に驚異的な活躍を見せていきます。
それでは次回でまたお会いしましょう。