大罪人の黙示録   作:ファイエル

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寒いです。まだ十月なのに・・・


第十一話

 

 町中を走る三つの影。

 木場祐斗、ゼノヴィア、紫藤イリナの三人だ。

 三人は逃げたフリード・セルゼンと≪皆殺しの大司教≫バルパー・ガリレイを追っていた。

 

「恐らくこの先の教会に逃げ込んだのだろうな。それに強い気配も感じる。恐らくコカビエルも…」

 そう言って立ち止まり、身を引き締めるゼノヴィア。

 相手は聖書にすら記されている大物。

 過去の大戦を戦い抜いた猛者。その力量は計り知れない。

 決して嘗めて掛かっていた訳ではないが、改めてどれほどの力の持ち主か実感したのか表情が険しくなる。

「例えどんな相手だろうと、僕は復讐を果たす。それが生き残った者の義務だ」

 相打ちになろうとも復讐を果たそうとする木場の眼は燃え盛っていた。

「威勢はいいけど、それだけじゃ倒せる相手じゃないわよ」

 木場を忠告するイリナ。

「お兄さんを呼んだほうがいいかもしれないわね」

 

「呼ぶのはかまわんが、役に立つのか? 足手纏いになりそうなんだが」

 

「それでも、人数は多い方がいいでしょう?」

 

「誰なんだい? そのお兄さんって言うのは」

 木場が疑問を口にして二人に問いかける。

「私達の協力者だ。それと木場祐斗、携帯を貸してもらっていいか?」

 

「それはかまわないけど、そんな悠長にしていたら……」

 木場はそう言いながら携帯を渡す。

 こんな所で立ち止まっているよりも早く突入して復讐を果たしたい様子だ。

「私が連絡するわ、貸して」

 ゼノヴィアから携帯を奪い取り、番号を入力していく。

 回線が通じて無機質な音が流れ出す。

 一コール目、二コール目、三コール目、と三コール目が鳴り終わったと同時に相手に繋がる。

 

『もしもし』

 

「あ、お兄さんですか? 私です。イリナです」

 

 

 ◆◆

 

 

 この数日間、紫藤達から連絡はない。私が必要になる様な事は起きていないのか、それとも私が必要になるほどの事でもないのか。

 だが何もないと退屈だ。この世界に来てからは色々と目新しい物があるおかげで退屈することがなくなった。

 前の世界では本当に何も無かった所為で毎日が退屈だった。

 思わず溜め息を吐くと、携帯が鳴る。

 私の番号を知っているのはルルエルと紫藤達くらい。

 そしてルルエルは今家に居る。

 と言う事は間違い電話か、紫藤達からの連絡。

 携帯を開くと案の定知らない番号。

 とりあえず出てみる。

 

「もしもし」

 

『あ、お兄さんですか? 私です。イリナです」

 やっとか、と言う気持ちが出てくる。

 まだお兄さんと呼ぶのか。

「紫藤さんか。私が必要な事態でも起きたか?」

 

『はい、コカビエル達の根城を突き止めて…町外れの教会なんですけど』

 教会……レイナーレが根城にしていた所か。

 堕天使は揃って教会が好きなようだな。

「ふむ、ではそこに向かえばいいんだな?」

 

『ええ、おねがいし――って、ちょっと!」

 突然声を上げる紫藤。

「どうした?」

 

『すみません!グレモリー眷属の≪騎士(ナイト)≫も一緒にいるんですけど、勝手に突っ走っていっちゃって』

 木場か。やはりあの眼は今回の事と関係があるのか。

 だからお兄さんと呼んだのか?一応配慮はしているんだな。

『私達は先に教会に突入します!お兄さんも至急来てください!それじゃあ』

 そう言って電話を切る紫藤。

 急いだほうがいいか。

 

「コカビエルか?」

 

 と、ルルエルが話し掛けてくる。

 どうやら会話を聞いていた様だ。

「ああ、教会だそうだ。あの《騎士》もいるらしい。だが三人では恐らく」

 

「勝てないだろうな」

 そうだろうな。

 ルルエルですら勝てないと言うくらいだ。あの三人の力量では不可能。

 万が一にもありえないだろう。

「急いで向かうとするよ」

 

「私も行こうか?」

 

「いや、必要ないだろう。どちらにしろまだ奴らは計画を実行していない。ここで倒しても意味が無い」

 計画の内容も分からんしな。

 さっさと計画を実行してもらいたいものだ。

「そうか、じゃあ今回は私は待機でいいのか?」

 

「ああ、必要になれば魔法で伝える」

 そうルルエルに伝え、一応だが顔を隠す為の仮面を付ける。

 仮面はガイ・フォークスの仮面。匿名のシンボルだが、どう考えても自己主張が激しい仮面にしか思えん。

 これで面が割れることは無い。念のための保険だ。

 廃教会にいるのは木場のみ。接点はほとんどないため声で正体が割れることもない。

 それに仮面を付けているおかげで声がくぐもる為、より分かりにくいだろう。

 この世界に来た時着ていた黒い外套を着る。

 やはりこの服はしっくりくるな。

 

『じゃあ行って来る』

 そういって家から出る。

 急いだほうがいい、さすがに顔見知りでも見殺しにするのは悪いだろう。

 

 

 ◆◆

 

 

 教会の近くまで来ると、多少強い力の波動を感じる。

 恐らくこれがコカビエル。

 劣勢だろうな、紫藤達は。

 

 レイナーレを助けたときに壊した穴から教会へと入る。

 

『すまない、少し遅くなった』

 教会の中に入ると五対の漆黒の翼を持つ堕天使と神父服の初老の男。それに白髪の青年。

 コカビエルの仲間か…そしてあの堕天使がコカビエル。

 後ろには満身創痍で倒れている紫藤に剣を構えたゼノヴィアと木場。

 丁度間に入る形で登場してしまったようだ。

「遅いぞ! というかその仮面はなんだ!?」

 ゼノヴィアがそう叫ぶ。

 うむ……やはりこの仮面は駄目だったか。

「あれが君達の言っていた協力者…」

 木場は肩で息をしている。やはり苦戦している様だ。

『随分と劣勢だなゼノヴィア。それに紫藤さんも、辛うじて生きている程度か』

 

「うるさい! とにかく今は撤退する!」

 そう言って援護しろとゼノヴィアは命令する。

 

「逃がすと思っているのか?」

 そこでコカビエルが光の槍を出現させる。

 レイナーレとは大きな違いだな。

 仕方が無い、コカビエル達を食い止める役は私が買って出よう。

 

『ゼノヴィア、君達だけで逃げろ。私が食い止める。紫藤さんも助ける』

 

「何を言ってるんだ!? お前一人で敵う相手じゃない!」

 人の心配をしている場合なのかこの子は。

『いいからさっさと行け、私の心配をしてる場合ではないだろう』

 そう言うと、悔しそうに顔を歪めるゼノヴィア。

「――――ッ! 分かった、必ず生きて逃げろ」

 

『ああ』

 ゼノヴィアはそのまま反転して教会を出て行こうとする。

 だが木場は神父服の男を睨みつけたままだ。

 何をしているのか……

 恐らくは誰かの仇なのだろう。

 こいつが原因か。だが今は逃げてもらう。

『君もだグレモリーの≪騎士≫。さっさと退け』

 

「僕はここでバルパー・ガリレイを討つ! 皆の為にも…!」

 はぁ……復讐に目が眩んで自分の立場すら分からない様だ。

『いいか木場祐斗、ここで君が死んだら誰が復讐を果たす? 元も子も無くなるぞ。今は態勢を整える為に逃げるんだ。何も復讐するなとは言ってない』

 そう言うと俯く木場。それほどまでに憎い相手なら絶対に殺せる機会を窺うべきだと私は思うがな。

「……分かった。ここは一旦逃げさせてもらう」

 そう言って木場も教会の出口へと向かう。

 さて…

 

『律儀に待ってくれるんだな』

 コカビエルを見ながらそう言う。

「フッ……なに、貴様があいつ等よりは楽しませてくれそうだからな」

 ほう、戦闘狂か。

『ほう……まあいい。適当に戦って私も逃げさせてもらうよ』

 

「やってみろッ!」

 そう叫ぶコカビエル。

 と、白髪の青年が突然斬りかかってきた。

 寸でのところで避ける。

「僕チンを無視しちゃノンノンだぜぇ? さっき手に入れたこの≪擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)≫ちゃんの性能も試してみたいしぃ? ちょいと試し切りさせてちょ!」

 どうも頭がおかしい輩らしい。こういう手合いは少し苦手だ。

 というか紫藤は聖剣を奪われたのか。

『少し頭のネジが飛んでいる様だな。大丈夫か?』

 

「てめぇみてーなおかしな仮面付けた奴にいわれたかねぇ!」

 そんなに駄目か…この仮面。

『まあ、ちょっと眠ってくれ』

 そう言いつつ、剣を蹴りで弾き飛ばし、衝撃魔法で吹き飛ばす。

 衝撃魔法が直撃した白髪の青年はそのまま壁に激突し、ダウンする。

「フリードをこうも簡単に往なすか、面白い」

 フリード……ああ、そう言えばレイナーレがそんな名前を口にしていたな。

 と言う事はこいつが。まあどうでもいいことか。

『所詮は剣の性能に頼る奴だ。この程度だろう?』

 

「ハハハハハッ! いいぞ、もっと俺を楽しませろ!」

 いや、そろそろ私もお暇させていただきたい。

 最後に目的だけ聞いておこう。

『コカビエル。一つ聞いていいか?』

 

「ん?なんだ?」

 

『お前の目的はなんだ?』

 

「ハッ! 決まっている。戦争だよ」

 戦争?

『どういうことだ?』

 

「退屈だったんだよ。過去の大戦からずっとな。だからこの地で! 魔王の妹が治めるこの地で! 暴れるんだよッ! そうすればさすがの魔王も出払って来るだろう?」

 戦いが好きな戦闘狂ではなく、戦争が好きな戦争狂、と言ったところか。

 なるほど、これは――魔王に対して良い手土産になる。

『そうか、分かった。では私もお暇させてもらうとするよ』

 

「なに?」

 

 コカビエルがそう言った瞬間、閃光が辺りを包む。

 一瞬目が眩むコカビエルだが直ぐに回復し、教会内を見渡すが、居るのはバルパーといまだに気絶しているフリード。

 仮面の男の姿も、紫藤イリナの姿も見当たらない。

 あの一瞬で逃げたようだった。

 

「チッ…逃げたか。まあいい。エクスカリバーが一つ手に入った」

 今はそれだけで十分だと言うかのようにコカビエルは笑った。

 

 

 ◆◆

 

 

 教会から逃げ出したカインは町にある公園に居た。

 

「さて、まずは紫藤さんの傷を“壊す”か」

 

 そう言いながらカインは手に黒い球体を出現させ、イリナの体に当てる。

 本来ならこのままイリナの体を壊す筈の≪(破壊)≫であるが、カインが今やっている事はイリナに傷がついたと言う事象を壊す作業だ。

 事象を破壊すれば、結果として残っている事実を消す事ができる。

 ≪黒≫の力はそれだけではない。時間や空間、存在、魂すらも破壊できる。まさに万物を破壊できる神すら超える力。

 反対に≪(創造)≫は≪黒≫の真逆で、万物を創造できる。

 カインが持つ能力の中で最高峰の二対の力である。

 そして、そうしている内にイリナの傷がみるみる消えていく。

 

「このくらいか…後は≪白≫で血を創れば、死にはしないだろう」

 

 満身創痍のイリナは大量の血も流していたので、≪白≫の力で血も輸血していく。

 段々とイリナの肌色も良くなってきた。

 表情も穏やかになり呼吸も落ち着く。

 

「しかし、久しぶりに人を救う為に使ったな…この能力」

 

 そう言って手のひらを見つめるカイン。

 今迄カインがこの能力を使った場面は殆どが相手を殺す時だけに使っていた。

 確かに誰かを救った事もあったが、殺した数に比べればその差は大き過ぎる。

 だからこそ、どれだけ人を救おうと重ねてきた罪を、血で汚れた手を拭うことは出来ない。

 それはカイン自身分かっている事である。そして今更犯した罪を悔いることはしない。

 最早カインの犯した罪を問う者はいないのだから。

 あの“大罪”を犯してからカインは壊れてしまった。

 

peccatum mortale(死に至る罪)

 

 ラテン語でそういった意味がある大罪。

 地獄という永遠の死を招くと言う意味も持つ。

 確かにカインは地獄を招いた。大罪を犯した結果、永遠の生を手に入れた。人の身であるなら誰しも一度は望む事がある願望。“不老不死”。

 それを叶えた。しかし、ある種永遠の生は地獄ではないだろうか?

 どれだけ死を望もうと死ねず、永劫を生きる。

 そうして生きてくれば誰であろうと壊れるだろう。まして人間は悪魔や堕天使、天使の様な人外と違って永い生を全うする生物ではない。

 その年月は絶対に人間には耐えられない。人間の範疇を超えた時が刻まれる毎に精神を蝕んでいき、最後には壊れる。

 だがカインはもう苦しんではいない。それどころか楽しんでいる。

 それが既に壊れているという証拠だろう。

 地獄すら楽しむ狂人に打つ手は無い。

 唯一の救いは彼を殺す事。カインも壊れた心の片隅でそれを望んでいる。

 人の醜さを好み、惨めに生きる者を見て楽しむ彼ではあるが、本当の目的はそれなのだろう。

 その目的が果たされるかは誰にも分からないが――――

 

「今更誰かを救っても無意味……まずは紫藤さんを家に運ぶか」

 そう言ってカインは紫藤を抱きかかえ、歩き出す。

 

 

 ◆◆

 

 

 真夜中、生徒会によって駒王学園に張られた結界の中でコカビエルと死闘を繰り広げるリアス・グレモリーとその眷属、そして本来使っていたデュランダルを解放したゼノヴィア。

 しかし、ここでコカビエルは衝撃の真実を口にする。

 

「教えてやろう、先の大戦で死んだのは四大魔王だけではない。神も死んだのさ!」

 

 その場に居た全員はあまりの真実に呆然とする。

 神が死んだなど信じられるはずもない。が、コカビエルの口から飛び出してくる言葉が耳に入ってくる度にそれは真実味を帯びてゆく。

 元ではあるが、悪魔になっても神を信じていた信徒のアーシアはその場に崩れ落ち、ゼノヴィアは嘘だ嘘だと、言い聞かせるように叫ぶ。

 神の信徒ではないリアス、イッセー、小猫、朱乃ですら驚きを隠せないのだ、無理も無い。

 コカビエルと戦っている内に心では勝てないと思い始めていた全員に更に追い討ちのようにかかる真実。

 ≪禁手(バランス・ブレイカー)≫へと至った木場と聖剣デュランダルを解放したゼノヴィア、そしてイッセーの≪赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)≫から力を譲渡されて強化されたリアスですら勝てない相手。

 もはや全員の心の内には絶望と言う闇が広がっていた。

 と、そこへ声が響く。まるで魂を鷲掴みにされるような声音を持つ者が。

 

「ほう、神は死んでいるのか。ククッ……面白いな」

 

 ちっぽけな絶望では刃向かうことすらできない者。

 世界を崩壊させた大罪人。

 

 “絶望(カイン)”が結界を突き破り、舞い降りた。二人の従者を引き連れて――――

 

 

 

 




満を持して登場したカインさんでした。
しかも衝撃の事実ッ!
カインさんは不老不死でしかも神すら超える力の持ち主だったんだよ!

Ω ΩΩ<な、なんだってー!

クソテンプレ乙。チートの醍醐味ですね。
ちなみに大罪の意味とかはWiki先生から思いっきり引用してます。

《死に至る罪》( ー`дー´)キリッ
あいたたた・・・


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