気づいたら書きたい話のヒロインが全員TS幼馴染になっていたので初投稿です。
俺もイケメンの幼馴染とイチャイチャしてえよ……。
突然だが、私の今世の幼馴染である神田カズキについて紹介したいと思う。
まず顔がいい。
あと優しい。
成績がいい。
運動ができる。
社交的で誰とでも仲良くできる。
天が二物を与えまくった結果のような、超絶最強男子高校生なのである。
当然、女の子にもモテる。
それはもうめちゃくちゃモテて同学年の男子たちが干からびる程度にはモテる。
最も本人は、好きな子がいるとか適当な理由をつけて誰かと付き合うのを頑なに避けているが。
と言うわけで、バレンタインデーには、彼はありえない量のチョコレートをもらってくる。
そして毎年、一人では食い切れないからといって隣の私の家にそれを持ってきてチョコパーティーになるのだ。
今日はバレンタインデー。毎年のようにそうなるだろうと予測して、チョコを食い続けられるように色々と準備をしておいた。
毎年夕飯が要らなくなるほどチョコを食べることになるが、他でもない幼馴染のためだ。いつものように一肌脱ごうではないか。
……私?なんでか男としての前世の記憶がある女だよ。名前は天野アイカ。カズキと同じ高校の同じ学年だけど、モブなので覚えなくていい。
ピンポーン、とチャイムの音が鳴る。
どうやら彼がそれを持ってやってきたようだ。
「はいよーっと」
ドアを開けると、両手にチョコをこれでもかと抱えたカズキが。
「ごめん、今年も協力してくれるかな」
「そうなるだろうと思って準備してるぜ、上がった上がった」
なんか今年はいつもに増して多いな。これは骨が折れそうだ……。
チョコやらなんやらをテーブルの上にずらりと並べる。
「いち、に、さん……50箱はあるんじゃないか?」
「多分62箱だね。やばそうなのは既に抜いてあるけど、それ含めたら70超えてたよ」
「ひぇ〜、こっわ」
相変わらず毎年やばそうなものが入ったものも女子からもらうらしい。
受取拒否もできないので、家に帰ってから秘密裏に処分しているようだ。
にしても。
「今年マジで多くない?」
「うん、多い。何か目立ったことしたっけ」
「……体育祭のリレーじゃね、アンカーでお前逆転勝ちしたじゃん」
「そんな小学生みたいな理由で……」
「いやいや、あの時のお前かっこよかったし、惚れるやつが増えててもおかしくないって。特に一年生とかさ」
「……アイカはそういうとこあるよね」
「どういうとこだよ」
「……いや、いいや。いつものアイカだなーと思っただけだよ」
「お、おう?」
妙に歯切れが悪いな。言いたいことがあるならいえばいいのに。
まあいいや、さっさとチョコどもを片付けてしまおう。
「コーヒー淹れてくるわ。ブラックでいい?」
「うん、よろしく」
「そこの棚の中に柿ピー入ってるから食べていいよ」
「了解」
二人でチョコレートを食べ続ける。
「そういやさ」
「ん?」
「今年はなんかドーナツ多くね?パサパサするから食べづらいんだけど」
口の中の水分がすごく持っていかれる。食べづらい……。
「あー、それは……なんか願掛けらしいよ。よくわかんないけど」
「ふーん、そういやクラスの女子がなんか言ってたな……よく覚えてないや」
ドーナツがどうとか、キャンディがどうとかが、今年はうちの学校で流行っていた。
「……アイカは」
「なに?」
「アイカは、誰かにチョコあげた?」
「うん、あげたよ」
「んグッ、う、けほっ、けほっ」
唐突にカズキが咳き込み始める。ドーナツが喉に詰まったか?!
「ちょカズキ?!大丈夫かよ!ほらコーヒー!」
「だ、誰に?」
「え?」
「誰に、あげたの?」
「あー、クラスの友達だけど……なぁ、まじで大丈夫か?」
「……はぁ〜〜〜〜」
「え、急に態度悪くなるじゃん、何こわ」
思いっきりため息をつかれた。えぇ……。
「……よし、さっさと片付けよう」
「お、おう。急に切り替えられるとびっくりするな……」
しばらく、二人で黙々とチョコを食べ続けた。
「うぉ……終わった……」
「もう夕ご飯食べられないね、毎年だけど」
山のように積まれたチョコどもを、私とカズキは片付けることができた。
もう無理、動けない。
「今年は特に多かったわ、もうリレーのアンカーなるなよ」
「そう言われても……」
……この感じだと、私からのバレンタインは渡せないだろうか。
……いや、少しは日持ちするし、明日にでも食べてもらえれば……。
「……よし、カズキ、ちょっと待ってろ」
「ん?……あぁ、うん」
キッチンに向かい、保管しておいた紙袋を手にとる。
そしてカズキにそれを手渡す。
「ほら、これ。私からのバレンタイン。毎年のように手作りだぞ。喜べ」
「ありがとうアイカ!……今食べていい?」
「はぁ?食べれんのかよ!?……まあ、いいけどさ」
カズキが袋をあけて、梱包されたそれを取り出す。
……大丈夫、どうせこいつは気づかない。ドーナツの意味も知らなかったみたいだし、これの意味なんて知らないだろ。
「マカロン……?」
「おう、意外と自信作だぜ」
カズキが一つ口に入れる。
……やり口が、他の女と一緒なのが気に食わないが。
「うん、美味しい。やっぱアイカはお菓子作るの上手いな。今日の中で一番美味いよ」
「え、えへへ、ありがと。お前、毎年それ言うけどな」
こいつから、直接目の前で味の感想言ってもらえるのは、世界で多分私だけだ。
「じゃあ今日はありがとう。家に帰るよ」
「まあ隣だけどな。じゃ、またな」
カズキがドアの外に出てこちらに手を振る。
手を振りかえしてドアが閉まるのを待って……。
バタン。
その音と共に私は座り込んでしまう。
「や、やば、心臓超ドキドキする……」
でも、渡せた。本命を。
「顔赤いの気づかれてないよな……?」
気づかれてない方がいい。これは、私のけじめの問題だからだ。
あいつは、友達だから……そういう目でみた私の、最初で最後のアプローチ。
これで、女の私とは決別する。
あいつの友達として、特別なあいつの隣に立っていれる。
そのための儀式みたいなものだ。
しばらく考え込んでいると、スマホが震える。
見るとカズキから連絡のようだ。忘れ物でもしたのだろうか?
『俺もアイカのこと、特別だと思ってるよ』
「……んなっ?!」
どうやら、想いを振り切るのは無理そうだ。
ありがとうございました。
TS幼馴染しか勝たん
ドーナツはあなたのことが大好き
マカロンはあなたは特別な人です という意味らしいですよ?