レ級に転生したんだけどどうすりゃいいですか? 作:ウィルキンソンタンサン
オロロンチョチョパァ〜(気さくな挨拶)
お^〜見たところ皆んな揃っとるな。俺だよ、悪魔博士だよ(親戚の飲みの席)
30MMオープンフェイス9月発売とかはどうでも良くて、そんな事よりもエルデンリングナイトレインが5月発売です。パイルバンカーの発見報告も上がっている様で……。
夜渡りの皆様とリムベルドで肩を並べる時を心待ちにしています。
私は貴方と上手に踊れるでしょうか? 心配だ……。けれど、それよりもずっと楽しみです。
以下本編です。どうぞ。
「Whatever happens, you may think it all a mere bad dream…….」
「整備急げ! 早く!」
「こっちは準備かんりょー、いつでもどーぞ!」
「いくら使っても金は取らないぜ、出し惜しみするなよ!」
「燃料こっち運んで!」
『……!』
「編成急げ! 水上打撃部隊だぞ!」
「京都の海を守るんだ!」
「あのバカ提督どこ行ったの!?」
慌ただしく艦娘や妖精が行き交う鎮守府、その下。
床は水が張られ、湿度が高く薄暗い、通路の奥。
そこにひっそりと佇む鉄扉の向こう側から、微妙に音程が外れている鼻歌が漏れ出る。
軽い運動くらいなら出来そうな広々とした室内。その中央で、その鼻歌の主はぽつんと置かれた椅子に座って左右に揺れ、青色に妖しく光る二股の蛇のような尻尾とトカゲのような尻尾を水面に垂れさせ、白い足でパシャパシャと足元の水を弄んでいた。
その上機嫌そうな鼻歌と横揺れは、鉄扉が開く音に伴い止まる。
瞑られていた左眼をゆっくりと開くと、目から漏れ出る青い光が顔をぼんやりと照らした。
「…………。」
目の前に立った来客に、彼女は無言で応対する。一瞬煌めいた目の光は、相手を確認した途端がっかりした様に鳴りを潜めた。
「───やぁ。」
彼女の前に立った男は、そう挨拶を告げる。彼女もそれに応え、発声が出来ない彼女なりの挨拶として右手を軽く上げて振る。
「本当はアイスブレイクから、といきたいところなんだけど……今は時間が無くてね。要件だけ伝えさせてもらうよ」
「…………?」
何の用だ、と言わんばかりのジト目で彼の目を見ながら、トカゲのような尻尾がBPM70で水音を刻む。
右目の隠れた白い髪を揺らし、大きな片角はぼんやりとした光を纏いサイリウムの様な光の線を作っている。
「ちょっとね、君に協力してもらいたい事があって───」
軍靴が濡れることも厭わず此処へ足を運んできた彼……舞鶴鎮守府を指揮せし提督たる男は、話を始めた。
この選択が、思い描く最良の展開へ繋がることを確信した真っ直ぐな眼で、目の前の存在を見据えながら。
◆
水中を這うようにして突っ切る魚雷の弾頭が爆ぜ、大きな水飛沫。
それと同時に、まるで瞬間移動したかと思う程のスピードで戦艦棲姫の前に現れそのまま脇腹に蹴りを入れる。
金属同士を撃ち合った様な重厚な音が響き、フードを被った白髪の少女はにんまりと笑みを浮かべた。それに相反し、戦艦棲姫は怪訝な顔を見せる。
『……軽い』
『そりゃごめんね、なにぶん力加減が分からなくってさぁ?』
砲塔を互いに突き付け、同時に砲撃。煙を突破るようにウラが飛び出す。
煙ったそうに顔の前の煙を手で扇ぎ払う戦艦棲姫は首を傾げ、問う。
『力加減? どういう意味だ』
『いやいや……、久しぶりの戦いだからね。長く楽しみたいじゃないか』
その問いに対し、ウラは白い髪を揺らしながら歯を剥き出しにして笑いながら答えた。
『ほら、君───
回答に交えた、その安い挑発。乗ったところでメリットなどは無い。
だが、彼女は絶対強者たる"姫"の級を持つ戦艦棲姫。
その実力を思い知っているとはいえ、同じ戦艦かつ格下であるはずのイロハ級からの挑発は、元来の性格も相まって盛大に効いた。
『……殺すッ!!!』
『やってみな!』
再び同時の砲撃。間髪入れずにウラは副砲で牽制しながら距離を取り、尾の口へ手を突っ込んで黒い塊を引っ張り出す。その塊を上空へ向かって蹴り上げると、軽い爆発と共に無数の艦載機が姿を現した。
『上ばかり見ていると首を痛めるよ!』
尾を海中へ沈め、魚雷を射出。その数7way、避けるのは不可能と言える量。
『チッ……舐めるな!』
うなじからコードで繋がった巨大な艤装が戦艦棲姫を覆い、上空からの攻撃を防御。魚雷は割り切って受け入れ、16inch三連装砲を向ける。
『私にはお前と違って艦載機も魚雷も無いが、生憎そんな事はどうにでもなる。』
瞬間、艤装の後ろから2種類の艦載機が飛び出した。
所謂たこ焼き艦載機と、ウラ──レ級と同規格の所謂、しいたけ艦載機。
ゆらり、と影から現れた2体の深海棲艦が、離れた先に立つウラを見つめる。
『行け』
『堕ちろ』
片方は杖を持った手をウラへ向け、もう片方は腰掛けた艤装の上で足を組みかえ、手の上に息を吹きかける。
それを指令とし、一斉にウラへ向かって飛来していった。
『……お前と違い、私には仲間がいるものでな!』
『へぇ、そうッ!』
上空からの射撃と爆撃、そして海中の雷撃を貰いつつ返答。余裕綽々といった様相で砲撃を返す。
『ならご生憎様、私にも君らが持たない武器があるんだよ!』
『ほう? なんだそれは!』
『ハハ……聞きたい?』
戦艦棲姫の16inchの砲撃を避け水飛沫を被りながら、眼を大きく開き、弾ける笑顔で……もったいぶるように言葉を途切れさせて、やがて小さな悪魔はこう答えた。
「──コヨミちャんの愛だヨッ!!!!」
『ッ…!?……ッ…?』
唐突に、攻撃の波が止む。三体の深海棲艦が困惑した様に身を寄せ合い、しきりに首を傾げる。
『なぁ、今なんて言ったんだ?』
『わ、わかんない……』
『たまに2人が喋ってる言語と同じじゃない?』
『"コヨミチャンノアイダ"って何だ?』
『発音は分かっても意味が分からない』
ウラの不可解な発言。それをまともに取り合ってしまったのは、もはや悪手中の悪手というものであったらしく。
『……ふふ、意味が分からないという顔をしているね。ならば答えてあげようとも! コヨミちゃんはね、私の主であり守るべき対象なんだ。とにかく健気でひたむきで可愛くてねぇ……あ、君らにはこの尊さが分からないか! これにはあの子のバックストーリーが大きく関わっていてね、ネグレクトって言うのかな? よく分かんないけど、あの子の親は自分の子に対して全く関心を持ってなくて、むしろお荷物としか捉えてなくてねぇ? 最低限生存に必要なお金を投げ渡し学校へ金を払うだけして後は完全無視で居ないものとして扱ってて、家にいるいない関係無しに愛人連れ込んだりしてさ、カスだよねぇ私がその場にいたら眼球くり抜いて歯全部折って臍から小腸引っ張り出して穴という穴に愛人達の███突っ込んで愛人コレクション作ってやるのにさぁホントに! でもそんな環境で育ったのに凄いんだよ、ひねくれずに真っ直ぐ育ってさ! こーんなに可愛くて素直で自分より相手の幸せ願っちゃうようないい子なんだよ尊いよね……だからこそ君らは許せないんだよ自分の罪分かってる? 殺そうとしてさぁ本当に危ない所だったからねぶち殺すよってかもうぶち殺すね確定事項だからこれよろしく』
やぶ蛇の如く、もしくは立て板に水の如くぺらぺらと喋り始めるウラ。
口頭ならば耳を閉じて完全シャットアウトできるが、脳内に直接語りかける深海棲艦の性質上全ての言葉を受信してしまう三体。
『おい、こら……』
『ちょ……ねえ……』
あまりのクソデカ感情を濁流の様にぶつけられて脳のキャパを超え、目を回しながらヲ級と空母棲姫が声をかけるが、まるで届かないように話を続けるウラ。
『コヨミちゃんは昔から甘い物が大好きでね、もうこの時点で萌えなんだけど必見なのは食べてる姿ね。にっこにこでこの世で1番幸せですって顔で食べるのよもー好き過ぎ可愛いやばい! ちっちゃい子供の頃でもなけなしの小銭はたいてコンビニで買ったアイス食べてにこにこ笑顔になってる姿見ちゃってなんか尊いやら悲しいやら怒りやらで感情ぐっちゃぐちゃにされてさぁ、ここで私生まれ変わったよね! それまで戦いへの欲求がやばくて暴れそうだったのが今度はウチの主人への加護欲で暴れそうになっちゃってさぁ! 普段の言動は荒いのにね!? 推せるよねぇ他人の為なら命捨てるのももうほっとけ無くて私が護らなきゃダメなんだよ私だけのコヨミちゃんだから私だけが本当の意味で分かってあげられるからね』
『…な……』
だがそこで戦艦棲姫。わなわなと身体を震わせ、もう辛抱ならんといった様子で震えたため息を吐き、全ての砲塔を向け変わらずマシンガントークを繰り広げているウラに向けて叫ぶ。
「ワタシのノウナイにゴミのヨウなジョウホウをナガすな!!!!」
轟音と共に全門斉射。心做しか彼女の
『──なんか普通に喋れるようになってる……』
『そこまで嫌だったんだ……』
『でも気持ちは同じ。グッジョブ』
『ん、グッジョブ』
◆
「待ちなっさい響……! 今行ってもどうにもならないで、しょ……!」
コヨミを取り戻さんと冷静さを欠いてじたばたと暴れるヴェールヌイを必死に取り押さえる雷。見据える先はレ級flagshipことウラと戦艦棲姫、空母棲姫、ヲ級。
コヨミがコヨミとして戦っていたのであれば話は別であったが──というか元々その想定で向かったのだが──今は違う。
何故だか同士討ちを始めているものの、いつこちらに矛先が向くかわかったものでは無い。故に、ここは無理に突っ込まずに静観した方が良いと判断してのことだった。
「……何が起きてるの?」
戦艦と戦艦の頂上決戦と言ってもいい熾烈な戦いの行く末を、固唾を飲んで見守り援軍を待っていた遠征部隊。その中で、暁がそう呟いた。
「……わからない」
肩で息をしながらも落ち着きを取り戻したヴェールヌイもまた、状況を把握しきれず眉を顰める。
先程まで目に負えないほどの戦艦らしからぬ高速戦闘が行われていたのにも関わらず、なんの脈絡も無く両者ともに攻撃をやめて棒立ちを始めた事……不可解が多いのだ。
……もっと言えば、その後間もなく戦艦棲姫が絶叫をぶちかましてくれやがったのが最もな原因であるのだが。
「コヨミの言う、深海棲艦同士での念話。傍から見ると無言で睨み合っている様にしか見えなかったが……」
「あの、思い切り叫んでいたように見えたのですけれど」
「なのです」
辛うじて聞き取れた、二言。「コヨミちゃんの愛だ」、「私の脳内にゴミの様な情報を流すな」。
「戦艦棲姫ってあんな口調でしたっけ……」
そもそも深海棲艦が喋る事に驚いて目をぱちくりとする、姫級との戦闘経験の少ない雷と電を傍らにヴェールヌイは神妙な表情を浮かべる。
「 一体一体の深海棲艦が各々人格を持っているのはコヨミが証明してるから、口調の違いはあるかも……いや、なら今まで見てきたのは……?」
「なんだろ、鳴き声みたいな……」
雷がそう言い、ヴェールヌイはそれにあぁと頷く。
「
「"コヨミちゃんの愛だ"って、言ってたのです。」
「それが分からない。コヨミはウラの事を知覚していない。」
再び苛烈な戦闘を再開した深海棲艦達を尻目に、考察を続けるヴェールヌイ。
「ウラさんも、私たちと仲良く出来ないのでしょうか……」
「電はお人好しよね、武蔵さんに大怪我させた奴よ? あの顔見なさいよ、コヨミの表情筋ってあそこまで動くのね。」
指さした先の、縦横無尽に海上を動き回るウラは薬をやっているとしか思えない形相。物量で少し押され気味ではあるが、flagshipとして強化された装甲が全てを解決している。
「とにかく、あれどうするのよ……って危な!?」
慌ててしゃがみ込むと、流れ弾が頭の上を通過し海面を叩いた。
戦闘中である彼女達にとってはそんな弾程度は些事であったとしても、こちら側にとっては命取り。ヘイトが向いていないとはいえ、一瞬たりとも気を抜けない。
「ウラはコヨミの防衛反応の域を出ない、というのが私たちの結論だ。──ある程度の人格と判断能力を携えているとは思うけれど……」
しかし、たとえそれを携えていたとしても深海棲艦の闘争本能の前にはあまりにも無力。微風に舞う塵に等しい。
現時点での彼女たちの最優先事項はやはり戦闘であり、その他一切はどうでもいいのだ。
故に。
後は待っているだけで勝手に消耗していくため、その隙に増援と共に叩けば万事解決ハッピーエンド。
とはいえ、万が一注意がこちら側に向けばゲームセット。結託でもされたら目も当てられない。
「……頭では分かってるけど、こうしてじっと待つのは耐えられるものじゃない」
戦闘を食い入るように見つめながら、ヴェールヌイ。言うまでもなく、その気持ちは遠征部隊全員同じ事。
すぐにでも飛び込みたいが、それはまったく得策ではないことは分かりきっている。
「どちらにせよ、もう少し離れる方が……ッ! 良いと思いますっ! 輪形陣を形成して下さい!」
飛んでくる砲を避けながら、赤城が言う。そもそも戦艦の専門距離は中距離から遠距離。今はどういう訳か戦艦棲姫とウラは肉薄しているが、それでも流れ弾が致命的なのだ。
「……
絞り出すように言い、姉妹達に目配せ。
「うぅ……大丈夫なのかしら……」
「ひとまず信じるしかないわ! 私達いてもやれる事ないしってか危な過ぎ!」
飛来する流れ弾を避けながら、輪形陣をとり後方へ動き出す。
「……やはり、そう簡単にはいきませんね! 敵艦載機接近しています、迎撃用意!」
奥では何とも言えない表情と共に、こちら側を流し目で見つめる空母棲姫とヲ級が指示を下し、艦載機群の一部をけしかけてきた。
「舐めてもらっちゃ困るわ、今のところホントに役立たずみたいだけど……私達だって!」
一斉に砲を向け、連射。撃ち漏らした艦載機からの攻撃を受けて尚、その意思は潰えない。
「第二波、来ます!」
追加でこちらへ向かってくる攻撃隊。目視でマニュアル操作するしかない
現状に歯噛みしながら、赤城は弓に矢をつがえて放ち、ドッグファイトを始める。
だが、流石に分が悪い。2体の航空母艦が繰る艦載機群を相手にするにはあまりにも手数が足りていない。
第六の4人も対空戦闘を行っているが、無限に出てくるのではないかという程にキリが無い。
奥に佇む深海棲艦2体が、少しだけ笑った様に思えた。
「……もう、ジリ貧…!」
被弾が無視できない規模へと拡大し始め、徐々に現れてきた焦りが背中を撫でる。
ヴェールヌイと暁が目配せで同時に魚雷を放つ。
真っ直ぐに水を掻き分けて突き進むそれが、やはり薄ら笑いを浮かべている空母棲姫とヲ級の足元へたどり着くその時───
それはヴェールヌイと暁の魚雷と同時に着弾し、想定を超えた大爆発を引き起こす。
次の瞬間、敵艦載機が攻撃を止め撤退を始めているのが分かった。
奥を見ると、小さな影が空母棲姫を蹴飛ばしヲ級を尻尾で吹き飛ばしている。言うまでもなくそれはレ級──ウラの仕業であったが、彼女は大きく開いた目でこちら側を見つめ……しかしすぐに興味なさげに目を逸らし、進行方向を海面に触れた右手を軸に変えて再び加速して戦艦棲姫へ突っ込んで行った。
「ッ今の内です、下がりますよ!」
一瞬動きが止まったものの、瞬時に我に返った赤城が指示を出し後ろへ素早く下がる。
「……ここで十分でしょうか。追手はありませんね。」
ある程度で止まり、辺りを見回す。遠くで激しい戦闘が見えており、ここからでも視認できる程大きな水飛沫と硝煙が上がっていた。
ひとまず危険区域を抜けられた事を知覚したのか、一気に気が抜けてへたり込む第六。
「ウラが、私達を援護した……?」
「隙だらけだったからとかじゃない?」
「私達の事一瞬見てたわ…」
「ほ、本当は優しい子なのです……?」
「……真意がなんであれ、今は……観察に、徹しましょう。なにか、わかる、かも……」
そう言いながら、がくりとその場に崩れる赤城。
「赤城さん!?」
雷が慌てて駆け寄ると、辛うじて意識は保っているものの頭部が異様に熱くなっていることに気が付いた。同時に、その熱の原因も察する。
「そんな……」
「どうしたんだ?」
「赤城さんはもう……頭が……」
「あの、言い方……どうにかなりませんでした、か……?」
本来は全て妖精に一任するタスクを一時的にとはいえ全て自分で処理していたが故に、遂にパンクしてしまったらしい。
……お腹に住む虫の鳴き声が聞こえた気がした。
パンクはしていないのかもしれない。むしろ空っぽなのかもしれない。
ともかくだが、例のそれ抜きにしろ妖精のサポート無しでここまで耐え抜いたのは流石一航戦と言ったところだろうか。
「どっどうするのよ! 赤城さんがいなかったら本格的に──」
「落ち着いて暁。ここで慌てるのはレディーじゃない、そうだろう?」
「うぅ……でも、でも……!」
「赤城さんの言う通り、今は戦いを視るのが1番だと思うのです!」
「そうよ、まだ出来ることはあるんだから狼狽えないの! まったく、何年やってんのよ」
「………」
「なによその目」
自身の発言に物言いたげなヴェールヌイの目線に疑問を呈すると、彼女はそれをふいっと目を逸らすことによって軽く流した。
「何でもない。兎に角、現状何の戦力にもならない私達に出来るのは観察。いいね?」
今出来ることを最大限に。まずは観察によって敵情報を1つでも多くリストし援軍を情報の優位性を取らせることが先決であるのは自明の事。
とは言えども、先程と特に変わったところは無く。相も変わらず腹に響く轟音と共に砲撃戦や雷撃戦、それと航空戦が繰り広げられている。
ヒットアンドアウェイを繰り返し、攻撃の手を一瞬たりとも緩めないウラは流石の一言。技のレ級と力のレ級、合わせて超弩級重雷装航空巡洋戦艦レ級である。
近付いて肉弾戦を仕掛けたと思えば、反撃を小さな体躯で交わして距離を取り、その間魚雷や副砲でお茶濁し。ある程度距離が取れれば主砲と艦載機で嫌がらせの様に高火力を連発。
全ての攻撃で酷使され物理的に振り回され、どこか哀愁や悲壮感が漂っている尻尾には涙を禁じ得ないが──それはそれとして、満場一致で会いたくない深海棲艦No.1の貫禄を存分に見せ付けてくれている。
しかし戦艦棲姫も負けてはおらず、持ち前の持久力で攻撃を受け止めて当たれば腕が弾け飛びそうな砲撃を放つ。その隙を埋めるように両翼の航空母艦──普通立場逆じゃねと思ったが──から艦載機が飛んでおり、空・海上・海中全てにおいて隙は無くウラに対抗している。
のでは、あるのだが。
「──雑?」
「……です、ね。」
他3人よりもあれらと戦闘する機会が比較的多いヴェールヌイと赤城にはどうしても拭えない違和感があった。
それは、何度も戦ってきた
一見すると見事な連携で付け入る隙の無いような三体であったが、どこか繊細さに欠けていた。
ぎこちないと言えばいいか、イマイチ集中出来ていないと言うべきか。何とも纏まりが無いが、そんな感覚を覚える。
「なんかあの感じ、なんか覚えが……」
「……うっすら分かります。なんでしたか……」
うんうんと唸り出す2人。
戦闘に集中しきれず、操作がおざなりになる状況。昔同じような事を経験したことがある様な気がして、しかしそれを思い出せない。
だがそこで、首を傾げながら雷と電が一言。
「戦闘に身が入らないなんて、なんだか昔を思い出すわね。」
「それって、もしかしてあれなのです? 那珂さんが元気だった時の───」
瞬間、甦るかつての記憶。那珂がトラウマ持ちになる以前に前線を張っていた頃だった。
移動中も戦闘中も歌い続け、アイドルを自称するだけあって妙に上手いそれが気になり戦闘に身が入らない事が多かった過去の事。
「
「ウラからの、妨害が?」
ここで浮かんだ1つの仮説。先程からの行動を鑑みるに──
「私達を庇って……?」
そもそもが、三体もいるのにも関わらず誰も艦娘側に攻撃のリソースを向けないのがおかしな話。レ級という存在はそれだけ強大ではあるが、それでも姫が二体にflagshipが一体だ。
いくらなんでも完全放置だなんてする筈が無い。撤退時にリソースを割いてはいたものの、それもこちら側が動いた事で思い出したかの様だった。
「恐らくは念話による妨害……これに気を取られて、私達に攻撃は割けなかった…?」
「気の所為って事は無いの?」
「その可能性もあるけど、異様なまでに三体ともウラを気にしてるからなにかやってるってのは確実だと思うよ」
問題は、何故妨害をしているのか。
「ただの防衛本能なら、そこまでする必要は無い。念話でやってるってことは、彼女も発信することに少なからず意識を割いている筈だ。むしろ、プラマイマイナスになりかねない。」
もしかすれば、本当にもしかすれば。
レ級flagship、ウラは────味方、なのかもしれない。
それはそれとして、実際の所。
『──という訳で、マイマスターコヨミは非常に可愛いの。お分かり?』
『いっこも分からんから黙れ』
ただ単に、コヨミここ好きbotになっているだけなのであるが。