転生特典を得て努力しなくて済むようになった幸せ者のお話   作:水属性大好きマン

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一生嫌いになってもいい

「「はぁぁ!っっはぁ!!!」」

 

 

 闘いが始まってから早数分ーーーーヴァジラとステルクはそれぞれの木刀でグラに同時に攻撃を振るい続ける。

 『二人同時に攻撃を仕掛けるなんて卑怯』ーーなどと二人は既に言っている場合じゃなかった。

 

 

「…………」

 

 

 二人の攻撃は密度だけなら既に成人した戦闘要員の騎空士以上のモノだが、それをグラは息を切らすこともなく軽々と捌き続ける。

 

 それどころか適度に防御が間に合わないタイミングで攻撃する事で二人に息を付く間を与える程余裕を見せていた。

 

 

「2人掛りで1本も取れない様ならさっさと島に帰って修行でもして来たらどう?」

 

「勿論島に帰ったらめいいっぱい修行するさ!  ーーグラと一緒にな!」

 

「こんなに強い修行相手がいるならこれからもっと楽しい日常になりそうだな!!」

 

 グラの冷たい突き放す様な言葉にもヴァジラ達は戸惑う事なく喰らい付く。2人の真っ直ぐな言葉にグラは一瞬視線を外すがすぐさま目付きを鋭くして2人を睨む。

 

 

「こんなにも差を見せつけられてまだ対等のつもりなんて本当に……そんなに一緒に島に行って欲しいなら1本取るか、せめてこの木刀くらい折ってもらいたいね」

 

「……木刀が折れれば今まで通りわし達と一緒に居てくれるんだな?」

 

「折れればね。切って貰っても良いけど。

……ただ逆に2人の武器を僕が壊したらーーーー当分はこの島に来るなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラが条件を提示してから数時間後、2人はグラから1本を取ることは勿論、武器を折ることも叶わないまま既に体力の限界間際だった。

 

 

「もう分かったでしょ? 絶対に敵わないってことが」

 

「……まだだ、まだ俺は…………!」

 

 

 フラフラとふらつきながら木刀を振り下ろしてきたステルクにグラは溜息を吐きながらそれを木刀で受け止めると、そのまま木刀を振り抜く事もなく糸も容易くステルクの木刀を折った。

 

 

「……あっ!!!」

 

「……自分達で飽きらめるまで待とうと思ったけど、もう見てられない。

終わりにしてあげるよ」

 

 

 グラは木刀が折られたことに涙を流すステルクから目を背けながら、ステルク以上に限界に近いヴァジラに視線を向ける。

 

 

「……修行を重ねて僕に勝てる自信が付いたらまた来たらいい。その時はお望みなら相手位にはなってあげーーーー

 

「ーーーー嫌だ!!!!!」

 

 

 グラの言葉を心から否定する様にヴァジラは吠える。

 

 

「わしは……わし達はこれからもグラと一緒に修行するんだ!!! 島にいるガルや長老やお母と一緒にこれからもずっと一緒に居るんだ!!!」

 

「ーー夢を語る前に自分の姿を見て欲しい。もうそれは絶対に叶わない夢だ」

 

 

 グラの言葉を確認する様にヴァジラはゆっくりと俯いて自分の姿を確認する。

……体は既にフラフラなのは勿論、手に持っている木刀も何度も全力で振るったせいか既にヒビが見る程ギリギリの状態。

 

 それに対してグラの木刀には何度も自分やステルクの攻撃を受け止めたとは思えない程消耗が見えなかった。

 この状態で攻撃を仕掛けても結果は火を見るよりも明らかだろう。

 

 

「……グラ。わしは既に体力の限界で、攻撃出来るとしてもあと1回が限界だ。それにこの手に持っている木刀ももう折れそうだ」

 

「そうだな」

 

「…………だから最後の攻撃は避けずに受け止めて欲しい。悔いを残したく無いんだ」

 

「……わかった。受け止めた上で終わらせてあげるよ」

 

 

 グラの返答にヴァジラは短く感謝を返すと、その場で目を瞑る。そして僅かに恐怖で体を震わせた。

 

 恐れたのはーーこの先自分がやろうとしている行動(イカサマに)対してか?はたまたその結果訪れるであろう未来に対してか?

 だがヴァジラはそれらを受け止めた上で覚悟決め、目を見開いた。

ーーそして手に持っている木刀を投げ捨てた。

 

 その行動にグラは勿論ステルクすらも驚愕した。だがその後にヴァジラが腰元から取り出したものを見てステルクは声を上げた。

 

 

「ヴァジラ!?お前…!」

 

「…………わしは十二神将の娘だからな。誰かに狙われる可能性もあるからって、お爺に護身用にと持たせてたんだ」

 

 

 腰元から鞘に入った小刀を取り出しながらヴァジラは醜く微笑み、その上でこの戦いで初めての構えを取った。

その構えはまだ幼いヴァジラがとあるチカラを使用する際にとるーーーーカミオロシを行う際の構えだった。

 

 "カミオロシ"

それは実態なき存在を自分に降しその力を振るうヴァジラの一族に宿るチカラ

 

 このチカラ自体をヴァジラが嫌う事は無かったが、2人と居る時は自分から使うことは一度もなかった存外の力。

 

 

「カミオロシ状態のわしなら一度くらいなら限界でも動ける上に、わしにはまだ使えない"奥義"だって使える。

……それは無しなんて言わないよな?」

 

「…………勿論だ」

 

 

 失望した言わんばかりに目を背けるグラにヴァジラは両目から大量の涙を溢れさせながらカミオロシを始めた。

 

 

「わしの事は一生嫌いになってもいい。もう二度と口を聞いてくれなくてもいい。だけどそれでもわしと……わし達と一緒に居てくれ!!!」

ーーーーカミオロシ!!

 

 先程までの酷い表情が消え去り、感情の無くなった表情でヴァジラに入ったカミは無言で構えを取り、全身の力を闘気として高め、そして目にも止まらぬ速さでグラに迫る。

 

 そんな行動に対してグラが取った行動はーー目を閉じる事だった。

 

 

「!?……ゆくぞ」

 

 

 想定外の行動にヴァジラに宿ったカミすら驚愕を覚えたが、それを飲み込み、自身を宿した少女の願いを叶えるべく、小刀でその身に宿る未完の技を繰り出した。

 

 

「悉く天神地祇の理に伏すーー金牙神然」

 

 

 未完成の身体でありながら、カミの力によって無理やり繰り出された奥義がグラの木刀に振り下ろされる。その一撃は仮に木刀によって起こされたモノだとしても木刀10数本はいともたやすく両断出来る一撃。避けるという選択肢が無い以上、グラの木刀がそれを受け止められる筈が無い。

 

 

「…………」

 

 

 だというのにグラはその一撃をーー目を閉じたまま木刀で易々と受け止めた。

 

 

「バカな!?」

 

 

 驚愕の言葉を漏らすカミに対しグラはゆっくりと目を開けると、特に力を込める様子もなく受け止めた小刀を木刀で折った。

 

 そしてカミオロシが解除されかけているヴァジラに視線を向けると、何も言わないまま背を向けて歩き出した。

 

 その姿をヴァジラは両目から涙を流しながら見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 そしてそれからきっかり1年後、ヴァジラとステルクはリベンジの為という体で再びグラの家に訪れたが、そこでグラがあの戦いの後島を出たきり帰っていないという事実を知り絶望した。

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