「なんで、なんでだよみんな」
ああ、これは
まな板を用意するためにEPを消耗したから、少しでも回復するために睡眠を取った? 記憶が曖昧だな。
けどEP減少中に寝ると悪夢を見やすいんだよなあ。こんな風にさ。
だけど新たに始まったGBNの隆盛の陰で、プレイヤーを奪われたGPDは廃れていく。
戦いの場を失ったチームメイトが
△ △
「なんでさ」
「すごい熱でうなされていたんですよぉ」
「熱? そこまで弱っていたのか……って! なんで君たちが!?」
目覚めた俺の枕元で心配そうに顔を覗きこんでいたのはリク君、ユキオ君、モモカ君の『ガンダムビルドダイバーズ』の主要キャラ3人。君づけしたけど3人ともスカートを履いた制服女子だ。
ストーカーじみた攻勢で俺をGBNに誘っていたんだけど、ついに家の中にまで侵入するようになったのか?
リク君、ユキオ君は記憶にある元の顔ほぼそのままで女の子化しているけど美少女といってもいい。モモカ君ももちろんだ。そんな美少女が3人も俺の部屋にいるなんて緊張する。
「ピンポンしてもコーイチさん出てこなくて、でも家の中から苦しそうな声が聞こえたんです。もしかしてなんかあったんじゃないかって!」
「それで、ナナミさんに電話して鍵をもらって中に入ったら、コーイチさんが倒れてて」
「熱がすごいあったんで、とりあえずなんとかベッドに運んで汗を拭いて着替てもらったんです。それで、救急車呼ぼうかって相談してたんですけど」
妹が鍵を渡したのかぁ。あいつめ、なんて不用心な。いや、この子たちが悪いことするって意味じゃなくて、俺がこの子たちに悪いことするのを警戒しろって意味でね。
んん?
「ちょっと待て」
「やっぱり救急車呼びますか?」
「そうじゃなくて。汗拭いて着替え?」
「はい。コーイチさん、けっこう締ってるんですね! お腹もたるんだりしてないし、実は結構鍛えてたり!?」
リク君とユキオ君は赤い顔で目をそらし、モモカ君は逆にぐいっと身を乗り出してきた。
鍛えていたのは
実は見た目だけで身体はかなり弱っているんだけどね。腹筋も10回がやっとさ!
そのまま布団の中に手を入れて俺の腹をまさぐるモモカ君。ひんやりとした女の子の手が
「ちょ、ちょっと!?」
「やっぱり! これはなかなかの腹筋ですよぅ。すりすり」
「も、モモカちゃん?」
「なんて羨ましいことを!?」
って残りの2人も手をつっこんでくるんかーい!
怖い物知らずのJCのノリには勝てず、しばし腹筋を玩ばれる俺。
「うわ、ホントだ。これならウルベ大佐みたいに腹筋で攻撃を霧散させられるかな?」
「あれまでムキムキじゃないから! あとあれグランドマスターガンダムだからだろ、って言うかいつまで触っているんだよ」
「す、すいません!」
やっと3人が離れてくれた。よかったよ、手がもうちょい下の方に行ってたらマジでヤバかった。いや、美少女JCとの密着に興奮したんじゃなくて! いわゆる疲れ○○ってやつで!
……誰に弁解してるんだか。
「いやー、いいものをお持ちで。堪能しましたー」
「モモカちゃん、おっさんみたい」
ガンダムビルドダイバーズならお腹ナデナデされるのは、別に担当がいるでしょーに。ケモノアバターの人が!
「アバターでもないリアルの成人男性のお腹を馴れ馴れしく触らない! セクハラだよ。君たちみたいな美少女がそんなことしたら、勘違いして襲われたっておかしくないんだからね。もうこんなことしちゃ駄目だよ」
「美少女?」
「お、襲われる?」
なぜか3人とも正座して話を聞いてくれている。自分たちのしでかしたことがやっとわかったのか顔も赤い。お説教はしないでもいいか。
ちょっと変わっちゃったけどガンダムビルドダイバーズのイベントを進めておこう。
◇ ◇
「送っていくよ」
「駄目です! コーイチさん病み上がりなんだから」
「そういうワケにもいかないよ。熱も下がってるんだ。こんな時間に美少女たちだけで帰すなんてできないって。もしなんかあったらナナミに怒られるからね」
俺が寝込んでいたせいか、気づけば外は暗くなっていた。このまま彼女たちだけで帰すのは心配だ。分身したせいで弱くなってはいるけど、それでも融合前よりは身体も動く。スキルもあるし彼女たちを守るぐらいはできるさ。チンピラがからんでくるなんてベタな展開はないだろうけどね。
「ま、また!?」
「ちょっと待っててね。着替えるから」
「は、はい! また倒れないないように見守ります!」
「いや、着替えは見られたくないかな、と」
3人とも頬を染めながらもガン見してるのは勘弁してくれ。そういうことに興味津々なお年頃なんだろうか。こんな美少女たちなのにボーイフレンドもいないのかね?
◇
少女たちを家まで送って、ドラッグストアとコンビニに寄り道して帰宅。
栄養ドリンクを摂取し、冷却ジェルシートを額に貼って準備完了。ガンプラの読み込みはまだいっか。家庭用のGBN機でログインして、と。
GBNロビーにてすぐに女の子と遭遇。この子がサラちゃんか。ガンダムビルドダイバーズと同じ外見、声でほっとする。GBNの方だとおかしいのは俺のダイバーだけだったのかな。ああ、あの銀さんダイバーは分身が使うことにしたので、このダイバーは本来の魔術師風眼鏡エルフである。
ってほっとしたのもつかの間、異変がやっぱりあって。
アニメと同じ流れで主人公チーム以外の主要キャラにも遭遇したんだけどさ、主人公たちの師匠ともいえるタイガーウルフが変わっていたのだ。獣人アバターなのは変わらないが……獣神?
「タイガー?」
「タイガーって言うなぁ!」
狼男風のダイバーだったはずが着ぐるみ着たお姉さんになってる。つうかジャガーマンだよねこれ!? FateのGOの。
ダイバー名もジャガーウルフだそうだ。元々は虎要素が薄かったのにタイガーになっちゃうのか。中の人はアーチャーだったのにさ。
これって世界攪拌の影響だろうか。GBN世界のダイバーだけが融合しちゃったのか、それともリアルのプレイヤーまでも藤村大河と融合してるのかどっちなんだろう?
そしてシャフリヤールも女性ダイバー。キャス狐ではなかったのが良かったのか残念なのか。ネカマアバターという線もないワケではないが、きっと女性ビルダーなんだろう。
漢女ダイバーことマギーさんは変わってなかった。作中一番のプリケツもそのまま。愛機もオカマだからビーム鎌使うんだよね、たしか。
有名ダイバーの質問に「好きなガンダムはEx-S、好きなガンダム作品はガンダムセンチネル」と答えながらも「でもマクロスも大好き」と付け足したくなるのをぐっと堪えた。この世界にはマクロスがないので言ってもわかってもらえないのが悔しすぎる。
本来なら逃げ出すはずなのだが話を続けていたら、サラちゃんがベンチに座っている少女ダイバーを発見、話しかけていた。
「どうしたの?」
「え? あ……」
ダイバーにそんなモーションがあるのか少女ダイバーは涙ぐんでいるように見える。だからサラちゃんが気にして話しかけたんだろう。初心者のアドバイザープレイをしているマギーさんもそれに気づいた。
「どうしたのかしら? 嫌なダイバーにイジメられちゃった?」
「ううん、違うの。お兄ちゃんが」
ってこのダイバー、イリヤスフィールじゃん!? やっぱり融合しちゃってるの?
事情を聞くためにMSデッキに案内された。有名ダイバーたちも一緒だ。
「これ、上手く操縦できなくて。勉強のために登場している作品、一緒に見ようってお兄ちゃん誘ったら、お前にはまだ早いって断られた」
案内されて見せられたのは整備台に固定されたV2ガンダム。胸の黄色いラインが黄金の見事なガンプラだ。
テレパシー通信で確認しなくても一目で分身の作品ってわかる。ってことはこの子、もしかして分身の製作代行初めての依頼者? なんでイリヤだって気づかなかったんだよ?
融合のせいでまだ記憶が混乱してるのか、それとも分身がうまくいってなくて記憶が不十分? ……ダイバーがイリヤだけどリアルの方は違うってのもあるか?
「こんな時間に子供がプレイしてるのかい?」
「明日は学校が休みだから問題ないわ!」
そうなの? いかん、曜日の感覚がおかしくなってる。
でも風営法に引っかかるから、ガンダムベースでは子供がプレイできる時間じゃないよね。俺みたいに家庭用機でプレイしてるんだろう。
「わたし、お兄ちゃんに嫌われてる……」
「そうじゃなくてね」
「じゃあきっと、お兄ちゃんみたいなかわいー男の子があなたちみたいな綺麗なお姉さんにチヤホヤされるアニメだからわたしに見せないんだわ!」
微妙に間違ってないからみんなのダイバーそんな表情になるよね、アバターよくできているなあ。って、マギーさんだけが反応違う?
「まあ! 綺麗なお姉さんだなんて! イイ子ねえん」
いや、あんたに言ったんじゃねえから! オネエに抱きしめられたイリダイバー苦しがってるから!
Vガンダムは鬱展開が多いからこの年頃の子供に見せるには微妙な気がする。トラウマになったらかわいそうだからこの子の兄も避けたんだろう。……この子の兄って士郎なんだろうかね? かわいい男の子って言ってたけど。
「うーん、たしかに君にはまだちょっと早いかもね。このV2が出てくる機動戦士Vガンダムってアニメ作品は主人公の仲間や両親が次々に死んじゃったりしてショッキングな展開が多い。君が落ち込むといけないからお兄さんも止めたんだと思うよ。別のガンダムだったら一緒に見てくれるんじゃないかな?」
「でも……」
「操縦が上手くできないなら、それこそお兄ちゃんに操縦してもらって見本にすればいい。お兄ちゃんはこの機体を知ってるんだろ? GBNは2人乗りだってできるから一緒に乗って教えてもらいなよ」
「そ、そうね!」
「コーちゃん、ナイスアドバイスぅ!」
だからマギーさんくねくねしてプリケツ揺らさんといて。
マギーさんに解放されたイリヤちゃんはウィンドウを操作中。兄に連絡を取ってるみたい。兄もGBNにログインしてるのかな? まあ、あの三角のダイバーギアを使えば、GBNからリアルの方へ連絡もできるけど。
「慣れてるんだね」
「妹いるもんで」
「私と同じだね」
シャフリヤールの妹って続編のキャラかな? やっぱり女性化しちゃってるのか。あ、シャフリヤールは兄弟姉妹が多いんだっけ。中東のセレブさんみたいだし母親も多いのかも。彼女のガンプラ、まだ見てないけど早くみたいなあ。同じことを思ったみたいで。
「君のガンプラは?」
「まだ迷ってる。こうやってGBNでデータ化したガンプラを見てると色々浮かんでくるなぁ」
整備台のV2、いい出来だけどこうしてGBN内で実際に見てみるともっとイジりたい箇所が出てきてしまうのはビルダーの
「このV2、愛がこもっているね」
愛か。使ってからカスタム化を進めるつもりだったみたいだけどたしかにEPはこもってるね。意味ありげな視線をこっちに向けてくる狐娘ダイバー。
ああ、このV2が俺作のだって気づいてるな、これは。ケイワンの作品も知ってたらしいし。
「そうね。腰のハードポイントにわざわざアタッチメントまで作って装備してんの、アレさー、木刀よねー。なーんかシンパシー感じちゃう! けど、なんで洞爺湖なのかしら?」
ジャガーさんの指摘どおり、ほぼノーマル設定のV2なのに分身が銀さんダイバーで使うために木刀だけは作っていたんだよね。それを見て目を光らせるシャフリヤール。
「この見事な木工技術……まさか模型秘伝帳・木ノ巻! 実在したというのか!?」
「いやあのね、つーかよく知ってるね、それ」
「まさか君の流派は……」
「創一族じゃないからね。あとこれ、俺の作品じゃない。たぶん、同門のやつのだ。製作代行やるって言ってたし」
模型秘伝帳はプラモ狂四郎に登場した巻物だ。全8巻。だけど木と土と金しか出てきてないので残りは不明。そんな設定までよく知ってるなあ。
ああそうだ、どうせだったら模型秘伝帳を
GBNはプラスチック以外でもOKみたいだからね。ビルドファイターズのプラフスキー粒子だとプラスチック限定みたいだったけどさ。
シャフリヤールはなんか模型秘伝帳が実在するって思い込んじゃったのか、こっちをずっとガン見してくる。ダイバーだとわかっていても女性にそんなに見つめられると落ち着かない。
なんとか誤魔化さないと!
「あ、そうだ、ガンプラ愛ならこの子たちもすごいよね」
ウィンドウでリク君たちの戦いの動画を流してみる。うん、記憶の『ガンダムビルドダイバーズ』とほぼ同じ。ガンプラも同じで違うのはダイバーが女の子なことぐらいか。ダブルオーダイバーもいいガンプラだ。たしかにまだ作り込みの甘さはあるけど、魂は感じる。EPもたっぷりこもってそう。
「うん。彼女たちも素晴らしいね」
「あ、さっきの子。お兄ちゃんつかまったみたいだね」
イリヤちゃんが戻ってきた。隣の少年ダイバーがお兄ちゃんか。士郎って言うよりウッソっぽいダイバーだ。その上、新八みたいな眼鏡かけてる。ウッソ八……嘘っぱちってとこね。
「ありがとう! お兄ちゃん教えてくれるって!」
「そ、その顔、もしかしてケイワンさんですか!?」
「え?」
「やっぱり! V2を見た時にあなたの作品だって一目でわかりました!」
なにこの子!? もしかして名うてのビルダー?
え? ガンダムビルドダイバーズにこんな子いなかったと思うんだけど。
ダイバー見て俺だってわかるって、俺の顔も知ってるの?
「お、お兄ちゃん? これを作った人、ケイゼロって名乗ってたよ」
「あ、あのね、俺はたしかにケイワンだけど、ダイバー名はコーイチでね、というかよくわかったね? あとV2は俺じゃなくてケイゼロのガンプラだから」
「僕、あなたの大ファンなんです。あなたに憧れてガンプラ始めたんです! ガンダムベースのケイワン作のレンタル品は全部使いました! 僕があなたのガンプラを間違えるはずがありません!」
キラキラした目でぐいぐいきてるのがちょっと怖い。美形の男性に好かれてしまうオリジナルの呪い、俺は受け継いでないはずなんだけどぉ! オリジナルが美少年に告白されたのを思い出してちょっと逃げ腰になるのは仕方ないよね。
「落ち着いて、ね。本当に俺のじゃないんだ。ケイゼロは同門だから作品が似てるのかもね」
「そうなんですか?」
「そうなの。よく見ると違いがわかると思う。それよりちゃんと妹さんにV2のこと教えてあげなよ」
「は、はい!」
ふう。行ったか。イリヤちゃんとウソ八君はV2に乗って出撃、マギーさんとジャガーウルフもついていった。シャフリヤールとサラちゃんはこっちでモニターするみたい。
初対面イベントをこなすだけのはずなのに妙に疲れたっつの。俺は挨拶だけしてログアウトした。
◇ ◇
翌日、妹のナナミに引っ張り出されてガンダムベースへ。リク君たちが
当然のようにGBNの参加とフォース入りを承諾。
「あ、でも俺はGBNを全然やっていないからランクが低くてフォースにはすぐに入れないよ。使用するガンプラも新しく作りたいし」
「そんなぁ」
ふう。これでサラちゃんに「駄目人間」って言われないですむかな。というか、始めたてのダイバーがチーム入りできないこのルールはなんなんだかね。パワーレベリングの禁止目的? よくわからん。
「あ、あの! コーイチさんのガンプラ製作を見学してもいいですか?」
「え?」
「リクずるい! ま、また倒れちゃうかもしれないし心配だから私も行く!」
「ええ!?」
「もちろんボクもいくよ!」
ニヤニヤした妹が肘で俺の脇腹をぐりぐりとつっつく。
「モテモテだね、お兄ちゃん」
「違うっての」
「手ぇ出すなよ」
「出さないから!」
心配なら鍵なんて渡すな! こいつもイリヤちゃんみたいに可愛い妹だったらよかったのに。……いや、オリジナルの性癖まで受け継いでたら手を出しそうでマズイか。ナナミでよかった。
イリヤちゃんあの後、うまくいったのかな。V2の動きに不満なら分身にアフターサービスさせないといけない。
ケイワンのフォロワーだっていうウソ八君のガンプラも見たい。アバターに合わせてV系だろうか。もしかして兄妹でダブルV2?
◇
俺のガンプラはガンダム作品じゃないガンダムにした。
バルディオス? ゴーショーグン? うん。こっちだとGBN内ならばガンダム認定されそうだけど違うよ。
俺が選んだのはこれさ。
「ティターンズカラーっぽいけどちょっと違う?」
「あ、コアファイターあるんですね」
「ガンダム・ザ・ブラックナイト?」
俺が作ったのはMSではなくPT。ホラーゲームじゃなくてパーソナルトルーパー。そう、ヒュッケバインさ。そのMk-IIIね。
スパロボのアニメではガンダムっぽいってことで出てこれなかったあれ。ガンダムよりガンダムしてるから、それも仕方あるまい。
ならさ、だからさ、もうガンダム名乗っちゃってもいいよね!
ってことで愛機の名前はガンダム・ザ・ブラックナイト。ファイブスター物語の黒騎士のイメージだよ。だから丸い盾も装備している。
この盾は実はシュルター・プラッテ。アウセンザイターの肩に装備されてるやつだけど、同じスケールでもヒュッケバインに持たせるにはちょうどいい大きささ。ペイントされてる紋章はトロンベのじゃなくて、バッシュの巴紋ね。もちろんファング・スラッシャーみたいに投擲もできる。
円形の盾があるおかげでバッシュといえば、のパイドルスピアを構えたポーズも再現可能。グラビトン・ライフルでね。
オリジナルも好きなロボだし、この世界にはない作品のこれを使っていればオリジナル嫁も気づくはずだ。
それに、この世界の地球はガンダム世界にしては平和に見えるけど、続編でピンチになってしまう。だからいつでもプラモが本物にできるようにEPを、つまり想いをこめてなきゃいけない。
その想いであるEPは自分の想い以外でもいい。GBNで有名になればきっとEPも貯まるはず!
他にも色々作るつもり。GBN以外でもオリジナルの嫁さんも探さなきゃいけないし、時間が足りなすぎる。
だから俺さ、『ガンダムビルドダイバーズ』みたいにガンダムベースの店員にならなくてもいいよね。
働きたくないでござる。