この世界はビルドダイバーズの世界かと思っていたらそれだけじゃなくてナナセ・コウイチとして動いている
で、俺の方もビルドファイターズの人物から依頼を受けてしまった。
「世界大会用のガンプラ、ですか」
「ええ。是非ともお願いしたいの」
依頼者はコートで帽子装備のそばかすの女性。見覚えのあるこの女性は。
「キララ!?」
「な、なんでバレたの?」
だってアニメで見てたからね。
でもまさかミホシ姿で俺にGPD世界大会用の制作代行の依頼にくるとは思わなかった。キャロちゃんがガンプラ始めるタイミングと違うけど、そもそも完全なビルドファイターズの世界じゃないから世界大会の地区予選もまだ始まっていない。
ただ、キララはファンに制作代行を頼んでいたんじゃなかったっけ?
「な、なんとなく? そ、それで依頼はどうします?」
「……よろしく。さっき言ったようにあなたのガンプラなら地区予選も楽に勝ち進められるわ」
「自分で作った方が機体を把握できて動きもよくなると思うけど」
「それよりも依頼した方が勝てると判断したの。サンプル画像だけでも確信してる。あなたの作品は世界レベルよ」
この人、アイドル修業でガンプラ制作までおぼえた苦労人。だからこそガンプラのできがわかるようになって、勝てるとは思えなかったセイのガンプラに細工をするんだっけ。
そんな鑑定眼を持つ人に世界レベルなんて言われるとかなり嬉しい。
ミホシが本名なはずで、天地無用の美星との融合の可能性もあるがその兆候は見られないようだ。
「お世辞でもありがとう。でも、GPDで勝つガンプラを作るならやっぱり使い手も制作に関わるべきだ。じゃないとこの依頼は受けられない」
「そんなに私と一緒に作りたいなんてファンなのね」
いや、GPDに青春をかけた
たしかにキララ、というかミホシもオリジナルの好きなキャラだったってのもあるけどさ。
◇ ◇ ◇
ファンにバレることを警戒したのかミホシの家でガンプラ制作。一人暮らしの彼女の家で二人っきりなんて妙に緊張していたんだけど。
「もうやだ……」
「どうした? どこかミスったか? ってザックリやっちゃったなあ」
「アイドルなのにこんなことでまたキズモノになって……マイク持つ手が傷だらけなんて……」
作業中に指を切ってしまったミホシが止血もせずにポロポロと涙をこぼす。あれ? こんなに弱々しいとこを見せるキャラだったっけ? 仕事でなにかあったのかな?
「事務所も大会に集中しろって他の仕事を減らして……GPDが落ち目なのに」
ああ、ビルドファイターズと違って世界大会もそんなに注目されてないのか。だから自分の現状を考えて泣けてきちゃったと。
「ほら、よく見せて。……ちゅぱ……っと。お、思ったより傷は深くなかったな」
「ちょ、ちょっと、いきなりなにを?」
「応急手当という名の指ちゅぱ?」
俺はオリジナル譲りの魔法スキルも持っているので治療もできるんだけど、それを見られるワケにはいかないからね。指を口に咥えて隠れた瞬間にこっそりと魔法治療をほどこしたよ。
「もう、セクハラよ……ってえ!? 治ってる?」
「塞がっただけだから一応、絆創膏しとこう」
俺の唾液を拭いて傷跡のない指に絆創膏を巻く。うん、よく見ると彼女の手には他に過去にできた傷跡がいくつかあるな。モデラーの手だ。
これはオリジナルの無茶苦茶な魔法ならともかく、俺のじゃ消せないか。
「ちょっと待っててくれ……あった」
鞄の中を探すフリをしながらスタッシュからエリクサーを出す。異世界に派遣される
「栄養ドリンク?」
塗料用の皿と新品下ろしたての塗装筆にまたこっそりと殺菌魔法をかけてから、塗料皿をウエットティッシュで綺麗に拭いて、その上にエリクサーをほんの一滴垂らし。ミネラルウォーターを注いで、筆で軽くかきまぜる。
「これ、強すぎるから水でかなり薄くしないと。はい、手を出して」
「は、はい?」
傷だらけのモデラーの手に希釈エリクサーを筆塗り。ぬりぬりぬりぬり……こんなもんかな?
「くすぐったい……嘘? 傷跡が!?」
「今度は反対側の手貸して……ちょっと余るか。そうだな、もったいないから」
「え? ちょ、ちょっといきなり見つめられると」
「動かないで」
頬に軽く手をあててそう言ったら動かなくなってくれた。というか、硬直された? ゆっくりと目まで閉じられちゃったし、なんか勘違いさせてしまったような。
嫌な汗をかきつつ、残った希釈エリクサーでミホシの顔をぬりぬり。オリジナル作のこれならこの濃度でも効果はちゃんとある。
「はい、できたよ」
「え? あ、あの」
「顔洗って、鏡見てきて」
きょとんとしていたミホシは「なんなのよ」と言いながら洗面台に向かい、しばらくしてすごい勢いで戻ってきた。
「そばかすが無くなってる! しかも過労でうっすらできてたクマやシワまで綺麗に消えてる! いったいなにをしたの!?」
そう。希釈エリクサーでもそばかすが消えるのはオリジナルの嫁さんの沙和で実証済み。文の顔の傷跡も綺麗になくなっている。治る前にオリジナルにぺろぺろされてので微妙に残念そうだったけどね。
「秘伝のかなり強い秘薬を塗っただけだ。貴重な品だから無駄にしたくなくてね」
「あ、ありがとう」
また涙ぐまれてしまった。今度はさっきとは逆方向の涙だろうけど。
これでガンプラに集中できるかと思っていたら、ミホシは妙に浮かれちゃって自撮りしまくり。肌年齢も若返った彼女の笑顔が魅力的で。
「代金はキスでいいよ」
なんてつい慣れない冗談を言ってしまった。
「も、もう。しょうがないわね」
「え、いやあの、じょ」
冗談だって言う前に唇が奪われてしまった。
融合前から考えてもファーストキスだったりするんだよなあ。
「俺のはじめて……」
「ふふっ。ファンには秘密、だからね」
「う、うん」
やばい。このままじゃ勘違いしてミホシに襲いかかるかもしれない。そんなことは絶対にできない。
でも俺、オリジナルと違って結婚してるワケじゃないから別にいいのか? 使徒やファミリアってワケじゃないから子供ができるかもしれないけど責任取ればいいんだし!
……あっちの俺と違って、戸籍ないから責任取れないか。
「どうしたの?」
「なんでもない。予選も近いし、早く完成させてテストしよう」
「そうね。今のままでも小細工なしに地区予選突破できそう」
小細工、ね。アニメだとセイ君たちと当たるまで謎の不戦勝だったんだよな。みんな色仕掛けで説得したのかな? どんな手を使っても勝ちたかったんだろうけどなんかムカつくな。
オリジナルならここで「10倍返しだ。予選突破したら10倍返しだ。おぼえとけよ!」するんだろうけど、俺にはちょっとその勇気はない。
「怖い顔してるわよ」
「……ちょっと、気分転換しないか?」
◇ ◇
「気分転換でGBN?」
「ああ。って、ダイバーまでキララなのかよ」
ちょうどいいタイミングなのでミホシをGBNに誘った。GPD世界大会で名を上げようとしている彼女だけど、ちゃんとGBNのアカウントも持っていたよ。アバターまでキララそのまんまの姿だったのは、GBN実況動画の仕事も考えていたのかな?
「その子が新しいフォースメンバー? 僕はZ1だよ、よろしく!」
Z1と融合したZちゃんはZちゃんを名乗るとNPDっぽいのでZ1を名乗るようにしている。衣装はZちゃんのままなんだけどね。
「キララよ。忙しいからフォース参加はちょっと。ごめんなさい」
「ううん。しばらくコーと二人っきりもいいよね?」
「コー?」
「俺がケイゼロだからK-0、KOでコーってダイバー名」
シルバーさんにしようか迷ったけどね。銀さんアバターでシルバーならオリジナルの嫁さんも気づくかもだから。
GBNに連れてきたのはZ1ちゃんを紹介するためではない。目的のポイントに移動して、と。
「あら? あなたは?」
プリケツのオネェダイバーがむかえてくれる。そこには他の有名ダイバーと知ってる顔もいてすぐに俺に気づいた。
「ケイゼロさん!」
「キミたちもいたか。あの後、大丈夫だったかい?」
ウソ八君とイリ子ちゃんもいた。
あとビルドダイバーズの面々。当然もう1人の俺も。
「きてくれたんだ」
「ああ。お前たちの初陣を見せたくてな」
テレパシーである程度のことはわかってる
そう、ついにビルドダイバーズの初フォース戦が行われるので見に来たのだ。
「サラ? もしかして君は僕と同じなのかな?」
「そう、なの?」
Z1ちゃんをサラちゃんに会わせたくもあったしね。
うん、仲良くなってくれそう。
「ねえ、女の子ばっかりなの?」
「GBNは女性プレイヤーが多いみたいだな。GPDより野蛮じゃないって」
キララのジト目での質問にため息混じりの答えを返す。
「あ、そうだ。この戦い、キャプチャーした動画流していいか? アイドルの実況付きで」
「えっ?」
「新人戦とはいえ、有名フォースの1チームとの戦いなら面白くなりそうだからな」
相手チームである第七機甲師団のトップであるロンメルことダイバーナマモノは別アバターでの動画配信はやってるけどこの姿ではそのつもりもないのか納得してくれたので、後で配信するとしよう。リク君たちも喜んでくれたし。
「いいのかい? 友人の負ける姿を配信することになるかもしれないよ」
「さて。兄弟分を甘く見ない方がいいかもですよ」
ロンメルは軍服を着た大きなフェレットだ。みゅーみゅー言いながら引っ張りたくなるよな。淫獣とは融合していないようでちょっとほっとする。
観戦者たちと話してる間にフォース戦開始。遅れてチャンピオン登場。
あっちの俺の愛機はガルバルディリベイクではなく、ガンダム・ザ・ブラックナイト。と名前を変えたヒュッケバインMk-Ⅲ。アニメと同じ展開にするつもりか、武装はグラビトン・ライフルの代わりにハンマープライヤーを手持ちし、背部コンテナのマルチトレースミサイルが榴弾砲に換装されている。
「あの黒いガンダムがあなたの同門の兄弟分?」
「そう。で、もしかしたら世界大会予選に出てくるかもしれない」
「はあ? 嘘でしょ? かなりの完成度よ、あれ!」
「当然よ! 私のコーチなんだから!」
ダイバーイリヤがずいっと出てくる。なんかダイバー姿が
むう、キャロライン嬢のダイバーはルヴィアっぽくなったりするのかね?
フォース戦は全くと言っていいほど、アニメのとおりに進んで。
「あのカプルのコア、まさか、木製?」
「そうみたいだ、なかなか硬そうだな」
「やはり、模型秘伝帳……」
元々のプチカプルもかなりの強度を誇っていて、同じくメチャ硬なガルバルディリベイクからコウイチの協力がありそうな部分なんだけど、プチカプルの変形って実際のプラモだとパーツを割って外した手足を中に収納っていう「それってどうなの?」な仕様でさ、どうせ球形なんだからと箱根細工っぽい変形で手足が収納できるようになってたりする。もちろん強度も元のより上がってるよ。
「サラたち、完勝?」
「ああ。いい連携だった。ガンプラの出来もいい。これからが楽しみなフォースだな」
そのうちあいつらと戦うことがあるんだろうか?
まあうちはメンバー数が少なすぎるし、Z1も当然ガンプラ持ってないから実質ソロなのでフォース戦なんてできないだろうけど。
「あとで実況しようね」
「う、うん。たしかにこれを配信したら視聴数すごいかも?」
GPD大会の予選出場者であるミホシでもGBNの有名ダイバーやフォースは知ってるみたいだ。アカウントも持ってたし、ガンプラアイドルの基礎知識なのかもしれない。
「どうだい? 自分のガンプラ、イメージが湧いてこないか?」
「私の、ため?」
「そう。独自装備のないガーベラだとちょっとさみしくてね。あ、Z1にもこの戦いを見せたかったのもあるよ」
アニメに出てきたキララのガーベラ・テトラも完成度は高いけど、いってしまえばそれだけでちょい物足りない気がするんだよね。
あっちの俺も出るみたいだし、セイレイジ組には決勝に行ってほしいけど、ミホシも応援したい。
セイ君を誑かして彼のガンプラに細工をするようなことはさせないから、かわりにミホシのガンプラが強くなるぐらいはいいだろう。
◇ ◇
ミホシによるビルドダイバーズのフォースバトル実況動画は予想以上に閲覧数が伸びて、同時にミホシの仕事がちょっと増えた。そのおかげで、セイ君と接触する時間も取れなかった。
予定どおり。
なので代わりに俺が敵情視察だとイオリ模型店を訪ねてみた。オリジナルの嫁さんとの融合も心配だったし。リン子ママが稟か凛子とってのはどっちももうオリジナルと合流してるから大丈夫だけど、セイ君が星との可能性があるから。
「いらっしゃいませ」
セイ君は危惧していた星とは融合していなかったようだ。……女の子だったけど。
「ぼくの顔になにか?」
うーん。メナド・シ
これ、操縦がセイ君になっても強いかもしれない。
仮面のリック・ディアス使いとか出てこないよな?