ミホシは順調に世界大会予選を勝ち進み、ついにセイ君たちと戦うことに。ビルドファイターズのように不戦勝ではなく、ちゃんと戦って勝利して、だ。
セイ君かわいい。レイジは男だった。セイ君とくっつきそうで、かなみらしいチナちゃんは心配になったりしてるんだろうか?
残念ながら俺はミホシのセコンドにつけず、観客席から応援することになっている。だってアイドルだもんな。余計な男が側にいたらマズイでしょ、やっぱりさ。
失敗したのは席がキララファンの一団の側だったということ。
彼らの声がまる聞こえで試合に集中できん。
「おお、キララ殿がこちらに手を振ってくれた!」
いやたぶん、俺に手を振ってくれたんだよ。言わないけどね。
「最近キララさらに可愛くなってね?」
「まさか男が?」
ぎくっ。
って、別に俺が彼氏ってワケでもないか。
「も、もしかして枕営業で男を知って、色気が出た?」
「いやいや。彼女の事務所はガンプラアイドルなんてニッチを狙うぐらいだがその分、枕営業をしないので有名なのでござるよ」
そうだったのか! 知らなかった。
いや、事務所の人にも協力者だからってミホシに俺、紹介されたけどさ。そんなことは言ってなかった。……言うものでもないか。
だいたい枕営業をしないので有名って普通、そんなことしてるって知られたらまずいでしょ。このファンの思い込みじゃね?
「ほら、あのGBNの実況動画に引っ張られるようにキララ自身の動画も伸びているからな。それが影響しているのではないか?」
「うむ。知名度と同時にファンも増えている。今が大事な時であろうよ」
ううむ。大事な時、ねえ。そう聞くと勝たせてあげたい。
キララのガンプラもビルドストライクに負けないぐらいには仕上がってるはずだし、キララ自身の操縦テクニックも鍛えた。いい勝負はできるはず。
ビルドファイターズのようにセイ君と接触してビルドストライクに細工をするようなセコい真似をしてないのでむこうも全力だけど、その分キララにも油断もないよな? ビルドブースターの仕組みを推察したってネタばれかましてあるから、最後まで気を抜かないでくれ。
祈るような気持ちでセイレイジペアとの試合を見守る。
さすがに小細工なしの完全状態のビルドストライクに圧勝はできなくて、ほぼ相打ち状態に射撃が決まり、双方の動きが一種止まった。だが、ビルドストライクはビルドブースターを分離してそっちを脱出機、つまり本体として可動させ、キララのガーベラ・テトラ改にトドメをさそうとする。
『隠しギミックがあるのは私も同じなんだから!』
キララの声が観客席にも響く。同時にガーベラ・テトラ改も分離した。
『そうか! ガーベラ・テトラは元々、ガンダムGP04として設計されていた物! コア・ファイターがあってもおかしくはない! そして、ガーベラ・テトラのシュツルム・ブースターによってコア・ブースターとなっているなんて!』
ここまで聞こえる解説ありがとうセイ君。ビルドブースターのパクリって言われなくてほっとしたよ。ガーベラブースターはシュツルム・ブースターのおかげでまるでオタマジャクシみたいな外見だ。
「うむ。GP03にもコア・ファイター仕様があったな」
「あれならシーマ様を助けられるのう」
さすがはキララのファン。ガンダムにも詳しいようだ。ビルドファイターズではキララのガンプラを製作するぐらいの連中。あとでゆっくり話をするのもいいかもしれん。
ガーベラのコア・ファイターとビルドブースターの戦闘。すまないユウキ・タツヤ。ブースターどうしの空中戦、先にやっちゃったよ。
機動性はガーベラブースターが上のようで巴戦ならば有利っぽかったが、ビルドブースターはすぐに一撃離脱気味の戦いへと切り替える。戦闘センスはさすがレイジか。
「むう、火力面ではむこうが有利でござるな」
「本来、脱出機として用意した設定ならば高火力はおかしい。そうキララは考えたのであろう。わかってるわかってる」
考察するキララファンたち。いや、ガーベラブースターはビームマシンガンをセットして攻撃する予定だったんだが、分離時にそれに失敗したみたい。もうちょい内蔵火器を用意しておくべきだった痛恨のミスだ。
ビルドブースターの大型ビームキャノンを回避してはいるが1発でも貰ったら……。
「ああ!」
ファンたちの悲鳴が上がる。ガーベラブースターが破壊されてキララは敗れた。
くそっ、俺がセコンドにつくことできてればもう少しアドバイスができたのに!
◇ ◇
「負けちゃった……」
「すまない。俺がもっとブースターの設計を作り込んでいれば」
「ううん。私の操作ミス。そばに支えてくれる人が立っているあの子たちを見てたらちょっと苛ついていた」
え? やっぱり俺がセコンドにいればよかったってこと?
「手を振ったのにあなたは返してくれないし!」
「ええ? ……ごめん。キララのファンたちがそばにいたからニワカの勘違い野郎って思われそうで怖くてさ。でも、ちゃんと応援はしてたぞ」
「うん。声援は届いた。だから最後までがんばれた。……がんばったから、ご褒美もらえる?」
キララメイクのままでで潤んだ瞳のミホシの顔が近づいてきて。
◇
負けちゃったってことはミホシのサポートはここまでってことで。
正直もう少し続けていたかったけど、ビルドファイターズのように世界大会レポーターの仕事がくる可能性は高いだろう。セイ君たちとのバトルもなかなかのものだったし。
「アイドル、がんばれよ」
「え? なにもうお別れみたいな雰囲気になってんの?」
そんな驚いた顔をされるとは思わなかった。そして一瞬だけ、泣きそうにも見えてしまったので焦る俺。
「い、いや、残念ながら予選突破できなかったから俺の仕事はここまでだろ? あとはもう、キララのアイドル活動には邪魔になるだけだ」
「私の貞操を奪っておいて、ヤリ逃げする気?」
うっ。俺だって彼女と一緒にいたい。初めての
でも、俺にはオリジナルの嫁さんたちを探すって使命がある。それに地球のピンチにも備えなきゃいけない。
「そ、それはそうなんだけど……プライベートでのお付き合い、続けてくれるってこと?」
「当然。責任とってもらうわ」
そう微笑む彼女はみとれてしまうほどに綺麗で。
ああ、希釈エリクサーの美肌効果とさっきの行為による女性ホルモン増加の影響だろうか、なんて現実逃避する俺の脳。
「せ、責任って……」
「世界大会は残念だったけど、落ち目のGPDよりもGBNに注力するのも悪くないわ。この前の動画も伸びてるし」
確かに。さっき確認したら予選での戦いでキララが注目されたのか、今まで以上に閲覧数の伸びがよかった。もっと実況動画でファンを作ろうって言いたいのかな?
「これからもよろしくね」
即答できなかった。キララはフェリーニとくっつくって思ってるからだろうか。
女性化している人物が多いこの世界でGPD出場選手は男性のままが多いみたいだ。GPDが男性向けでGBNが女性向け、なんて棲み分けを提唱している奴もいるぐらいだし。
落ち目のGPD陣営がそう持ち込みたいんだろうかね?
その上、フェリーニのことがなくても俺には秘密がある。この姿も名前も偽のもの。本当の自分を知られたら、嫌われたりしないだろうか不安だ。
「……え、ええと、あんなことをしちゃってから言うのもあれなんだが、俺は俺じゃない。顔だって本当の顔は違うんだ」
不安だけどミホシに黙っていることができずに話しだしてしまっていた。惚れちゃってるのかな、やっぱり。
「本名ですら教えてくれてないものね。ナナセさん」
「えっ?」
どうしてその名前が?
俺の姿、あっちとは違うように魔法で変えて、口調だって意識して荒っぽくしてるのに。
「あなたに惹かれ始めてから私だって調べたわ、あなたのこと。興信所使うか迷ったぐらい。でもその前にヒントはあなたが与えてくれた。GBNに誘ってくれたでしょ」
「あの時もあいつとそんなに話はしていなかったはずだが」
「でも、ガンプラと戦い方は見れたわ。その後、GBNでビルドダイバーズの戦いもいくつか見た。ガンプラも戦闘の癖もあなたと全くといっていいほどにそっくりだった。同門だから、では済ませられないほどに。なぜかしら?」
え? そりゃガンプラの作成と同時に、GPDとGBNでたっぷり戦闘訓練したけどさ。それで俺の正体がわかったってこと? マジでスゴいんですけど。
「ケイワンは私もチェックしていたビルダーだったもの。ダイバー名はコーイチ。本名はナナセ・コウイチ。彼の作品によく似ていたからあなたに世界大会用のガンプラを発注した」
「そう、か」
POMっと変身魔法を解除する。この姿でミホシの前に出るのは初めてだ。緊張が半端ない。
「……本当にそうだったのね。GPDの技術の応用?」
ビルドファイターズの最後でサラちゃんの素体となったモビルドール・サラを考えると、外見を変えるぐらい確かにできそうな気がしてくる。顔とか表情が動いてたからね。
「魔法だって言ったら信じてくれる? ちょっと違うけど似たようなもんで俺とあっちの俺が分身してる」
「え? ……GBNのコーイチはコピーされたAIとか考えていたんだけど、魔法?」
「ああ、そっちの方がまだ信じられそうか。コピーってのも間違いじゃないし。俺もあっちの俺もコピーだから」
この際、全部話してしまうことにする。人間じゃないって嫌われたらそれまでだ。