傭兵TS娘が敵の惑星から脱出しようとする話   作:皆方 ho_

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戦闘描写に自信が無いのに戦争物書こうとしてる作者がいるってマ?


知らない義体だ……

 

 

 

 

「戦闘員ID506328。データを入力中……完了しました。適合義体を確認……適合率は100%です。」

 

 

 あれ?何かおかしい。

 意識が移行する。深く、深く。

 浮かんだ小さな違和感もそのまま消えていってしまった。

 

 

「有機義体オールグリーン。記憶データのコピー完了……違和感はありませんか?」

 

 

 ……[Yes]

 

 そして、また浮き上がる。

 

 この先は戦場だ。

 

 視界が切り替わった。

 人間よりクリアな、有機義体の視界だ。

 

 揺れる装甲車の車内。天井の電灯が薄暗く光っている。車内には、他にも有機義体が7人、並んでいる。

 

 手を握り、開く。

 腕を回す。

 

 女性型特有の可動域の広さだ。

 割り当てられたのは女性型義体らしい。

 着せられた戦闘服がややオーバーサイズだが十分動ける。

 問題はなさそうだ。

 

 

「作戦8627号。本日の作戦を説明します。惑星トラピスト第59地区に存在する武装勢力の拠点を破壊あるいは制圧することが目標です。作戦には第50隊が参加します。506小隊は市街地の防衛線を破壊し、工場プラントAを制圧してください。第59地区には惑星燃料プラントおよび、工場プラントがあり、これらを破壊すると惑星汚染の可能性があるため、可能な限り歩兵戦闘による決着が求められます。また、敵勢力は…………」

 

 

 目の前に展開されるホログラムの地図。

 すっかり聞き慣れた合成音声の説明を聞いていると、横から声をかけられた。

 

 

「よぉ、今日も平常運転か?リル?」

 

「あぁ、大丈夫だ。俺らが全滅したことなんて一回しかないぞ? 今回も大丈夫さ。」

 

「まあそうだろうな、終わったらまた打ち上げ行くか? それとも女と予定でもあるか?」

 

 

 まあ、リル(小隊長)に限ってそんなことはねえな、などと惚けるのは、傭兵仲間のウィルフ・バーニー。

 お調子者だが、荒くれ者の多い傭兵の中では信頼できるやつだ。

 

 ウィルフの冗談に笑いのさざなみが起こった車内。

 

 笑いのダシにされたことにイラッとしたが、こんなところでイラついてもしょうがない。

 

 

「打ち上げか、いいな。今回死んだやつの奢りにしよう。……ウィルフ、今回の仕事、背中には気をつけろよ」

 

 

 仕返しとばかりにはやや悪趣味な冗談を吐く。

 

 

「うゎ、それはヤバいぜ、小隊長。冗談になってませんって」

 

 

 再び笑い声の起こる車内。

 それをきっかけに静かだった車内は各々の雑談で喧騒にまみれていく。

 みんなの緊張はほぐれただろう。

 それに、今回が初陣のやつもいる。

 

 

「アルベリック、お前は今日は俺らと組む。スリーマンセルだな。お前さん、どこまでならった?」

 

 

 一瞬慌てた後、アルベリックが答える。

 

 

「あっアルドで一通りの訓練は受けました! 小隊長殿!」

 

「チッ、アルド出身なのかお前。…じゃあ一通り使えそうだな。あと、殿はつけなくていい」

 

「はっはい。」

 

 

 アルドと聞いてつい舌打ちが出てしまった。

 あそこは嫌いだ。

 アルドはいくつかある傭兵集団の中でも最も大きい。孤児に教育をして、傭兵を育てているので、アルベリックもそう言うクチだろう。

 

 

「え? なになに? アルド出身なの? アルって呼んでいい?」

 

 

 やけに馴れ馴れしくウィルフが話しかけてる。

 止めようか? 

 まあいいか、放っておいた方が部隊に馴染むだろう。

 

 

「ウィルフさん、なんで小隊長いきなり不機嫌になったんですか?」

 

「まあリルは、昔に色々あったんだな。傭兵じゃよくあることだ。」

 

「昔って…何があったですか?」

 

「残念ながら、俺にも教えてもらってないんだ。それよりひとつ大事なことを教えてやる。アル、傭兵の間で過去を詮索するのはダメだ。あくまでマナーだがな。だからそんなこと聞くなよ。他の傭兵から信頼されなくなるぞ。」

 

「そうなんですか、すいません…ご忠告ありがとうございます。」

 

「作戦区域到達まで、あと五分です。準備をしてください」

 

 

 唐突に車内に響く、合成音声。

 車内は一気に張り詰めた空気になる。

 俺は声を張り上げる。

 

 

「作戦は頭に入れたな?点検をしながら聞け。今回の編成は少し変わる。新人のアルベリックは俺とウィルフで見る。オルヴァーのペアはいつも通り、ブローマンのペアにバートを入れろ」

 

「「「「「「了解!」」」」」」

 

「さて、準備はいいな?」

 

 

 車両が目的地についたのか。ガタンと地面に接地する。

 警告音と共に、後ろのハッチが開く。

 

 

「急いで出ろ!」

 

 

 止まっている装甲車などただの的だ。

 

 全員が駆け出す。

 

 あたりには耳障りなレーザーの砲声や爆発音があふれかえっている。

 

 ここは、戦場だ。

 

 

 

 ────────────―

 

 

 

 装甲車から飛び出し、即座に物陰に隠れる。

 

 第59地区は惑星解放戦線の支配地域で、工業都市だ。周辺には市街地が広がっている。。

 

 

「正面! 通りの向こうに敵部隊だ!」

 

 

 大通りは障害物で封鎖され、ところどころに汎人連(味方)の重戦闘車が撃破されて転がっている。

 通りの先の方には解放戦線の防衛線であろう陣地がこちらに銃口を向けている。

 

 貧乏くじを引かされたな、これは。

 重戦闘車まで投入して突破できないところを支援ユニットも無い歩兵の小隊で突破させるのか。

 

 

「さすがに大変だなこれは…………ブローマン、オルヴァー、お前らは装甲車とともに敵をけん制しろ。その間に俺たちは建物伝いに側面にまわる。ウィルフ、いくぞ!」

 

 

 五人と自動運転の戦闘車を残し、三人で建物の中に入る。

 入ったところは商店だったようで、床には商品が散乱している。

 二階にあがる階段を駆け上がる。

 大通りに垂直な壁の前に立ち、拳を固める。

 

 

「フッ!」

 

 

 ドンッと音を立てて壁に穴があく。

 有機義体の身体能力あってこその荒業だ。

 そのまま大通りにそって敵陣地側の壁をぶち壊して進んでいく。

 

 

「小隊長、溶断ナイフ使ったほうが良くないですか?」

 

 

 走ってついてきながら、アルべリックが聞いてくる。

 

 

「時間は短いほうが都合が良い。囮に置いてきたやつらの負担を減らせる。」

 

 ドンッ!!!!

 

「きゃっ!!!」

 

 

 そう答えながらさらに民家の壁を破壊すると、悲鳴が聞こえた。

 

 崩れた壁の向こうには、逃げ遅れたのだろうか? 部屋の隅でヘルメットをかぶり棒をもった父親と、その後ろには妻か娘かわからないが女が不安そうな眼でこちらをうかがっていた。

 

 

「ッチ!めんどくせぇ、民間人(敵のゲリラ)かよ!!殺すか?小隊長。」

 

「おちつけ、ウィルフ。たぶん本当にただの民間人だ、殺すな。アルべリック、武装解除させろ。」

 

「はっはい!」

 

 

 即座に殺す選択肢を出してくるウィルフはこの戦場に慣れてしまっているのか。他の部隊ならやっているだろうが、俺は嫌だ。

 そんなことを考えつつ、両手をあげて武装解除(といっても棒一本しかもっていなかったが)させた住民をおちつかせるためにフェイスガードをうえに跳ね上げる。

 人を落ち着かせるためには表情が見えたほうが良いからだ。

 

 

「おい、お前たちは殺さないから安心しろ。住民IDは?」

 

「も、持っていません…すいません、解放戦線のやつが来たときに持っていかれてしまったんです。お願いです、妻は殺さないでください!!」

 

「なるほど」

 

 

 やけに驚いたような顔をして、男が答える。

 

 持っていないらしい。

 身分の照合ができないとなると、殺してしまった方が……いやダメだ。そんなこと考えるな。それじゃフロンティアのシンジケートと同じじゃないか。

 にしても、なんでこの男は驚いているんだろう?後ろの女もやけにじろじろと俺の顔を見てくる。

 

 

「どうした?俺の顔に何かついてるか?」

 

「いえっ軍人には美人な人もいるんだなと驚いてただけです。」

 

 

 だから命だけは…なんてまたもや命乞いを始めた男は放置でいいだろう。

 

 ……美人とはどういうことだ?

 

 ウィルフならわかるかもと、チラッとウィルフの方を向くと、ウィルフは俺を見て、全力で笑いをこらえていた。アルベリックもヘルメットごしにやや困惑した表情で俺の顔を見ている。

 よくわからないが、自分が笑われていることはわかり改めてイラっとする。

 

 

「おい、なんで笑いをこらえているんだ?さっさと説明しろ。」

 

「ちょっwwおまっリルww1回自分の姿確認しろwww」

 

 

 戦場にいるときには小隊長と呼んでくるはずのウィルフの口調が崩れている。そこまで面白いことなのか。

 

 急いでウィルフに視覚を同調させる。

 

 

「え?」

 

 

 そこに映っていたのは、ヘルメットのバイザーをはずしたその顔は、

 

 

 ―――到底戦場にいるとは思えないような、白い髪の毛に赤い眼の小柄な少女だった。

 

 




作中設定

・有機義体
 それまで軍事利用されてきた汎用AIのアーキテクチャに致命的な欠陥が見つかったため、人型戦闘機械の代わりに使われるようになった。人間のDNAをベースにした生体兵器であり、その力は人間をはるかに上回る。傭兵の脳をコピーする特殊歩兵と一つの脳から大量のコピーを作る量産歩兵がある。女性の義体は近接格闘型以外では少ない。

戦う女の子は白髪(銀髪)赤眼がいいよね。
白い髪の毛は血で赤く染まってほしいし、赤い眼は暗闇で光ってほしいよね。ほしくない?

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