傭兵TS娘が敵の惑星から脱出しようとする話 作:皆方 ho_
連日投稿三日目。文字数稼げない…ストックも無い…書かなきゃ…
連載の大変さを理解しました。
「小隊長、大丈夫か!?」
銃声、そして自分を呼ぶ声。
周囲の音が戻ってくる。
よほど集中していたのか、周りの声が聞こえていなかったようだ。
珍しくウィルフが焦ったような声を出している。
目の前には首にナイフが突き立てられた死体。
その顔は血飛沫で赤く染まっている。
自分の顔もだ。
なんでヘルメットを被って、フェイスガードも下げているのに、顔に血が付いているんだ?
「あっ」
顔に手を当てて、気づく。
避けれたと思っていた敵のナイフの振り上げは、ヘルメットのフェイスガードを掠っていたのだ。フェイスガードが半壊している。
自分の客観的な様子を確認しよう。
フェイスガードは壊され、顔は血にまみれている。
敵と刺し違えたとでも思われているのか?
小銃二挺持ちのスタイルで敵を牽制しながらウィルフが近づいてくる。
「リルっ大丈夫か!?」
「大丈夫だ。俺がやられるように見えるか?」
「よかった、おまえが撃破されたら、俺が指揮を引き継がなくきゃならなくなってめんどくさいところだったぜ。」
大丈夫ってわかった瞬間に、こいつは。
まあ戦闘ログに録音されてるだろうから、後から切り取ってからかおう。
ウィルフから預けていた小銃を受け取る。
まだ敵は残っている。
といっても、最強格の義体が撃破されて、逃げ腰の旧式義体が数体だけだが。
そもそもの装備からして、差があるのだ。
敵の小銃は低い技術で作れる実弾銃なのに対して、こちらはパルスレーザー銃だ。
フルアーマーも星系同盟製のあの義体しか着けていなかった。
最強格が撃破されたことで、立ちすくむ敵を見回し、睨む(無表情だが)。
「次にかかってくる奴は?」
敵を挑発するが、乗ってくるやつはいなさそうだ。
おびえた敵は一歩も動こうとしない。うまく気押されてくれているようだ。
緊張が張り詰める。
敵の注目を自分に集めているうちに、小隊の俺以外全員が合流し、射撃体勢に入る。
「う、うわああああああ!!!」
恐怖と緊張に、耐え切れなくなったやつが突っ込んできた。
シュン!!
横にいたウィルフの銃撃で倒れこみ、動かなくなる。
それをきっかけに、残った敵が一斉に逃げ出した。
「なんだ、いないのか……逃すな、撃て」
シュンッシュンッとレーザー銃の射撃音が一斉に鳴り響く。
小銃を構えようとした奴もいたが間に合うわけがない。
敵は、当初の予想よりあっけなく全滅した。
—————
何人か撃破されるかと覚悟していたが、終わってみると新型の義体以外は拍子抜けするほどに楽だった。義体を着ただけの素人だ。
重装甲車が撃破されていたのもレールガンが相手で相性が悪かっただけか。
「所詮、素人のゲリラか。終わったな。逃げた奴はいないか?全員の死亡を確認しろ。」
「「「「「「「了解!!」」」」」」」
小隊の仲間が散り散りになって死体を確認していく。
俺も拳銃とナイフを拾うついでに死体を確認していると、ウィルフがニヤニヤとした顔でよってきた。
「なんだ?借りたナイフなら、ほら。」
どうせ別のことだろうが、借りたナイフは一応返しておく。
「いや~小隊長って役者だな。その
その言葉で気付く。
ヘルメットが壊れたせいで、ヘルメットに取り付けられた無線機も変声機も当然壊れている。
「あーあー」
声が高い。間違いなく少女のものとわかる、だがかん高くはない、落ち着いた声。
変な気分だ。
さっきからずっと、この声で
いまさら理解して落ち込む。
「だれか、突っ込んでくれよ……」
「ハハハ、だれも突っ込めねえだろ、おまえ隊長だぞ。」
「そりゃそうだけどさ……」
「あとで、戦闘ログ録音して、送ってやるよ。」
「黒歴史、抉るのやめてくれ……」
最悪だ。
せっかくからかい返すネタを手に入れたと思ったら、一瞬で黒歴史を更新してしまった。
ウィルフはどれだけ俺をからかう気だよ。
ウィルフと雑談をしていると、やや元気が無いアルベリックが駆け寄ってきた。
「死体の確認、終わりました。」
「ああ分かった。少し休憩だ。」
アルベリックは気が抜けたように、瓦礫に座り込む。
水を飲み、そして俺の顔を見て、タオルを差し出してきた。
「顔の血、拭いてください」
「確かにそうだな。……アルベリック、他の奴らは?」
顔の血を渡されたタオルで拭うと、他の隊員の様子を見る。
あいつらは、笑いながら死体から財布を漁っていた。
「あいつらは…まったく」
「止めますか?小隊長」
止めるだけ無駄だろう、と首を振る。
元来、傭兵は強さしかないロクデナシが多い。
軍も多少のことには眼をつぶるだろう。住民の虐殺も隠蔽するくらいだからな。
それに。
「住民IDがあったら持って来てくれ。情報料が出るぞ。」
住民IDは軍に提出すれば情報料が手に入る。任務の一つと言えないことも無い。
誰が敵か、味方かはっきりさせたがる奴らだからな。
大方、芋蔓式に家族も開拓星に送りこみたいだけだろうが。
通りには乗ってきた装甲兵員輸送車が炎上している。
車も必要だな。
路肩に止まった弾薬の積まれたトラックを見つける。
「ウィルフ、あそこの弾薬運搬車、使えるか見てきてくれ。」
「人使いが荒いな、まったく。」
ウィルフを追い払い、アルベリックに話しかける。
「おい、アルベリック。死体から金を取っている、あいつらをどう思う?」
「小隊長、こんなこと言っていいのかはわかんないですけど、気持ち悪いです。」
その返答は、少しの意外だった。
アルドの傭兵にそんな倫理観があったのか、アルベリックだけなのか。
おそらく後者だろうが。
「……これが戦場だ。慣れていくんだろうな。そうなりたくないのなら、自分の判断基準を持ち、自分を見失うな。まあ、受け売りだがな。」
「はい。わかりました。」
少しマシな様子になったアルベリック。
初陣の仲間とは部隊が変わらない限り、結構長く付き合うことになる。
信頼をおけるようになれとまでは言わないが、ある程度は連携が取れなければ困る。
「小隊長、ちょっと気になることがあるんだが…」
死体をあさっていたブローマンが、呼んできた。
「何だ?ブローマン」
「倒した義体のヘルメット全部剥いでみたんだけどさ、これって全部…」
地面に散らばる義体の顔はどれも一様に、見覚えがある。
というよりも、これ全部、旧式だが星系同盟製の義体だ。
「ここまでやったら汎人連に睨まれるどころの話じゃないぞ。」
「なにかあるんですかね?」
「さあな。だが俺達が今考えることじゃないさ。あとで軍に報告しよう。」
さっくりと思考を切り替える。
残念ながら自分は集中することは得意だがマルチタスクができる性質ではないのだ。
作戦に集中して、帰ってから考えよう。
「おーい、小隊長。燃料式だがちゃんと動くぞ。」
ウィルフが弾薬運搬のトラックに乗って戻ってくる。
「全員乗れそうか?」
「余裕で乗れるぞ。」
「よし、全員休憩は終わりだ。次の目標は59地区中央部のプラントAの制圧だ。車に乗れ。」
がやがやしながらも全員がトラックの荷台に乗りこむ。
俺もトラックの助手席、ウィルフの横に乗りこんだ。
――――――――
おまけ 移動中 ウィルフ視点
「ウィルフさん、さっきのエリダヌスのバーって何があったんですか?」
運転中、荷台に乗ったアルが、わざわざ小声で、無線を使って聞いてくる。
リルはヘルメットが壊れてるから無線は聞こえない。
横に乗っているリルに聞こえないように、小さく返答する。
「そんなに気になるのか?」
「ちょっと、面白そうなので…」
「それはな、エリダヌスのよく行くバーに小隊長を誘って連れて行ったらな、バーテンダーの奴が、リルのことを俺の新しい彼女だと思ったんだよ。」
「ブフッ」
荷台から露骨に噴き出したような声が聞こえてくる。
他の奴も無線を聞いていたようで、
「知らなかったのアルベリックだけだろ?」
「あーあ、言っちまったな。知らないぞ、ウィルフ。小隊長に
なんて茶化している。
いきなりうるさくなった荷台と、話している内容が聞こえたのだろう。
助手席のほうを見ると、リルがこちらをジト眼で睨んでくる。
「おまえ、話したな?」
「なんのことやら」
「チッ!!」
盛大に舌打ちして黙り込んでしまった。
運転中に殴りかからないだけ冷静だが、降りた瞬間にとびかかってきそうで怖いな。
あとで酒でも奢って機嫌取ろうか?
作中設定
・住民ID
汎人連の全住民に付与されるID。汎人連の管理社会の象徴。
カード形式が一般的で、トラピストは汎人連の殖民惑星だったので、捨てた奴もいるかもしれないが、ほとんどの住民には交付されている。
・ヘルメット
有機義体が使うヘルメットには、投影による情報表示、通信機、変声機が取り付けてある。
変声機が付いている理由は有機義体は基本的に大量生産なので声が同じだと混乱するから。
・トラピスト
汎人連による開拓惑星の一つ。低緯度は砂漠が広がり、高緯度は淡水の海が広がる。土壌は農業に適しておらず、産出されるレアアースによって経済が成り立っている。解放戦線が蜂起した惑星の一つ。
敵を睨み、威圧する…可愛いTS娘の女の子が。最高だね。
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