ぼっち・ざ・ぼっち   作:振り米

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タイトル通り文化祭前の一幕です
時系列バグるけど十三話の前くらいの話


二十一話 文化祭前、テストについてのお話

 

 

「……で、後藤はなんでまた死んでるんですか」

 

 場所は相も変わらずSTARRY。

 文化祭のライブへの練習だ……と意気込んで来たは良いもののなぜだかその日の空気は澱んでいた。テーブルを囲むようにして4人は座っており、虹夏先輩は困り顔で他の3人を眺めていた。

 

「あ、大倉くん、おはよー……」

 

「お……おはよーございます。みなさん勉強道具なんか出しちゃって、今日練習はしないんですか?」

 

 俺がそう告げると、喜多さんが笑いながら机に手をついて勢いよく立ち上がる。

 

「良かった! 大倉くんも仲間なのね!」

 

「え、あ、いや、なんの?」

 

「中間テスト! 存在を忘れてしまうくらいお馬鹿さんだったって事よね……安心して大倉くん、この中で勉強できるの伊地知先輩だけだから!」

 

 喜多さんはいつも以上に目をキラキラ輝かせながら矢継ぎ早に言う。

 ……え、待って、俺ってお馬鹿キャラだと思われてたの? まあ確かに高校は虹夏先輩とリョウ先輩に比べたらレベルは低いけどなんで入っていきなり低レベルの仲間入りさせられなきゃいけないんだ。

 

「いや、俺は要領良くて頭の回転の良い超天才型でなおかつ勤勉なので成績いいですよ?」

 

「発言が馬鹿っぽい」

 

 リョウ先輩にツッコミを入れられてしまう。

 あなたにだけは言われたくない。

 

「し、信じられないわ……! 大倉くん、後藤さんが3点だった今日の小テストの結果見せてみなさい……」

 

「え、わかった。今出す……ん、待って、今後藤3点って言ってたの気のせいだよね」

 

「アアア」

 

 俺はテストの結果を見せろと言うパワハラを受けカバンに手をかけたところで、後藤が3点という驚異的な数字を取ったと言う喜多さんの発言に耳を疑う。

 

「事実なんか……」

 

 ──が、後藤のうめき声からこれは事実なのだと痛感した。

 

「待って、今なんで大倉くんはぼっちちゃんのうめき声だけで判断できたの!?」

 

 虹夏先輩は俺の察知能力に対して切れ味のいいナイフのような華麗なツッコミを入れる。

 

「あ、いや、こいつ隣の席なんでいつも様子見てると分かるようになるんですよね」

 

「……いつも見てるのは流石にキモい」

 

 すると、今度はリョウ先輩から切れ味のいいナイフのような華麗な妄言が飛んで来た。

 

「アアア」

 

「今度は大倉くんがぼっちちゃんみたいになっちゃった!?」

 

 くそ、リョウ先輩め……バカなくせに……アホなくせに……。

 

 俺はきゅうしょにあたった言葉の暴力で戦闘不能になると、カバンから取りかけていたテストの答案用紙を喜多さんががばりと抜き取った。

 

「どれどれ、自称天才(笑)の大倉くんの点数は──」

 

 喜多さんは答案用紙を見せつけるように机のど真ん中に叩きつけた。

 

「ほら見て、0が二つも並んでる! 後藤さん以下よ!」

 

 現実を認められない喜多さんは脳みそが溶けているかのようなおバカ発言を繰り出した。

 

「違うよ、喜多さん。よ〜く見てごらん、100だよ、ひゃく、100点。君が取ったことないような100点満点だよ」

 

「大倉くんが天狗になってる……」

 

 俺はドヤ顔で喜多さんの目の前に答案用紙を持っていき、見せびらかして煽るようにヒラヒラと振る。その様子に虹夏先輩は呆れた表情をしていた。

 

「お……大倉くん、たしか夏休み前のテスト学年一位でした」

 

 すると、先ほどまで死んでいた後藤がなぜか誇らしげに代弁する。いや、ほんと後藤は最悪のテストの点数だったろうになぜ人の成績でドヤるんだ。

 

「え、すご……なんで秀華高校に行ったの……?」

 

 虹夏先輩は驚きを隠せないままデリカシーのないことを珍しく口にする。

 

「ちょっと、伊地知先輩ひどいです! 学歴マウントですよ!」

 

「あ、あははーごめんごめん……つい驚いちゃって」

 

 確かに虹夏先輩の疑問ももっともだろう。俺はめっちゃ頭がいい↑↑↑。なのに偏差値で言うとそれほど高くない高校にいるかと言うと。

 

「俺地頭めっちゃいいんですけど、中学ピアノで入ったので3年間1秒も勉強してなかったんですよ」

 

「それはそれで秀華高校に入れたの凄いわね……」

 

「で、高校に入ったもののピアノはやめており友達もできず遊びに行く相手もいなければ授業中も授業以外の時間も絡む相手がおらず予習復習をくりかえして真面目にコツコツ授業を受けていた結果、一位になりました」

 

「そ、それはそれでなんか悲しいね……」

 

 引き笑いする虹夏先輩に俺は何も言い返すことができなかった。い、いいだろ別に。学生の仕事は勉強なんだ。勉学に励んだ立派な生徒だろ俺は。

 

「……でも、そうすると同じようにぼっちなぼっちも頭がいいはず」

 

 ──気づいてしまったね、リョウ先輩。そこは開けてはいけないパンドラの箱なんだよ。

 

「アウウ」

 

「き、きっとぼっちちゃんは授業ちゃんと受けてないんだよね! ロックンロールな感じで!」

 

「あっ、テスト前は一応ちゃんと勉強してるんですけど……」

 

 虹夏先輩が後藤のフォロー(フォローできていないが)になんとか回ろうとするも、後藤自らに阻止される。さらに喜多さんは徐に一冊のノートを手に取って。

 

「後藤さんのノート、綺麗に取ってあるなぁ」

 

 そう。

 答えはそうなのだ。

 クラスには1人いるような、必死に勉強しているのに要領が悪いタイプなのだ。

 

「どんまい後藤、これが俺とお前の地頭の差ってやつだ!」

 

 俺は後藤の方に手をやると、爽やかスマイルを見せてサムズアップ。

 

「あ、あ、あああ」

 

 とどめの一撃を食らった後藤は真っ白の灰になりさらさらと崩れていく。YOU LOSE!! 

 

 というか、秀華高校にはどうやって入学したのだ……? 

 

「ぼっちちゃん。もしもの時は私が養うからね……」

 

 あまりにも可哀想すぎる後藤の様子に虹夏先輩は腰に手を回して全てを包み込むような優しい抱擁をする。尊い。

 でもやっぱり虹夏先輩はダメ男の腐れバンドマンみたいな奴にひっかかりそうだなとも思った。

 

 ……俺もダメ男腐れバンドマンにでもなんでもなるから虹夏ママに養ってほしい。

 

「また大倉が気持ちの悪い顔をしてる」

 

「ふ、フン、もう言われ慣れたんで致命傷で済みましたよリョウ先輩」

 

「それ大ダメージ」

 

 時々俺の妄想に耽るキモい顔を察して的確に攻撃してくるリョウ先輩のナイフのような言葉も今や致命傷で受け切れるようになった。

 

「ほ、ほら後藤さん! 諦めないで頑張りましょう、後藤さんはどこが苦手?」

 

「えっ……それがわからないです……」

 

「典型的なお馬鹿タイプだな」

 

 喜多さんはそれでも諦めまいと後藤に声をかけるが、帰ってきたのはどうしようもない返事である。勉強だけの話ではないが、能力を向上させる近道は原因追究と効果的な解決策の模索にあるのだ。自分自身の何が問題なのかを理解できていない状態が1番まずい。

 

「後藤さん、学年変わっても先輩なんて呼ばなくていいからね……」

 

「秒で諦めた!」

 

 それを察した喜多さんは諦めることを決意したようだった。

 ……高校で純粋に勉強が原因で留年は相当やばいぞ? 

 大抵は勉強に原因がありつつも素行や家庭環境などが留年につながることが大半であるのだから。だからこそ純粋な学力で諦められてしまう後藤は相当なレベルだと認めざるを得ない。

 

「そ、そもそもバンドマンに学歴って必要なのかしら……? 必要ないわよね……よし! 私も先輩と後藤さんと一緒に学校やめます!」

 

 壊れてしまった喜多さんは後藤とリョウ先輩に肩を回しながらロックンロールなことを口走る。

 

「そうだよぉ、ぜーんぜん必要ない。勉強できなくてもちゃんと生活できてるし」

 

 すると酒臭いお姉さんが最低な発言をする。

 

「ほら、後藤に喜多さんにリョウ先輩、勉強しないとあんな大人になるんだぞ?」

 

「た……確かにそれはまずいわ!?」

 

 俺の言葉に喜多さんは正気を取り戻した。

 

「なんか当たりが強い気がするんだけど気のせいかなぁ」

 

 気のせいではない。

 

「確かにこんなのになるのはアレだけど、私みたいな立派な大人もいるので学校なんてやめましょ? 毎日が夏休みですよ」

 

 追撃するようにダメな大人代表のPAさんも地獄からの手招きをみせる。

 

「ダメな大人たちは黙ってて!!」

 

 ついに我慢できずに虹夏先輩の華麗なるツッコミが宙を舞った。

 

「ほら、これ」

 

 ……とは言え、後藤も喜多さんもいない残りの学校生活を考えると気分が上がらないのも事実だ。特に後藤みたいな自分より下の存在にほくそ笑むことによって最近の俺は自我が保てているのだから。

 

「あ……これなんですか?」

 

 俺はノートを一冊取り出して、後藤と喜多さんの前に置く。

 

「俺が100点毎回取れる要因」

 

「え……テストの答え職員室から盗んでる、ってコト……?」

 

「喜多さんはどうしても俺をそっち側に引き摺り込みたいんだな……残念ながら俺は虹夏先輩側の人間だ」

 

 俺はドヤ顔を見せながら虹夏先輩の方に近づく。これ以上バカに寄るとバカが移る。

 

「あっ」

 

「あ?」

 

 すると後藤は突然体をびくんと跳ねさせる。コイキングかお前は。

 

「……ち、ちカイ」

 

「地下?」

 

「な……な、ななんでもないです」

 

 ほんと何なんだ全く。やはり馬鹿共から離れて正解のようだ。俺みたいな孤高の天才型は虹夏先輩に養ってもらう運命なのだから。

 

「ふーん、へー、ほー」

 

 するとそんなこちらの様子をニヤニヤと嫌な顔で酒ねえは眺めていた。

 

「……な、なんですかその腹立つ目は」

 

「いーや、なーんにもないよぉ」

 

 変わらずにイラっとするニヤニヤ顔で俺たちの様子を眺める酒ねえ。なんかよく分からないが腹が立つ。

 

「まあ酒臭いおねーさんは置いといて……リョウ先輩は虹夏先輩がいるから大丈夫だと思うんですけど、後藤と喜多さんはそのノートやるからテストなんとかしてくれ。まあ喜多さんは別に問題ないとは思うけど……」

 

「は、はい」

 

「大倉くんのテストの点数がいいのは分かったけど、これ一つで何とかなるものなのかしら……」

 

 そう言いながら喜多さんは俺の渡したノートをペラペラと捲り目を通す。

 

「これは……問題?」

 

「そう、次のテストの予想問題。全部暗記でおそらくバカでも80点、全部理解でケアレスミス無くせば100点取れる」

 

「な、な、なにそれ」

 

 俺はドヤ顔で渡したノートについての解説をする。

 

「前回までの定期テストと授業中の発言と先生たちの性格から出した内容だから、まあ信じてくれればそんくらいは取れるよ」

 

 加えてこれの1番のメリットは俺自身にあるのだ。問題を作る際には内容を完璧に理解してないと作成できない。つまりこのテスト予想問題集を作成し終わった時点でテストの高得点が確約されているようなものだ。

 

「す、凄いけどドヤ顔がイラっとするわね……でもありがとう!」

 

 喜多さんはそれを受け取るとちくちく言葉を口にしてから満面の笑みを浮かべた。ちょっとだけ自慢の意味も含めて渡したのだが素直に感謝されるのも悪い気はしない。

 

「ま、まあトモダチだしな」

 

「あ、大倉くんのツンデレ出た」

 

「う、うるせー」

 

 そうして俺はテスト勉強をする彼女らを横目に鈍った身体を慣らすべく1人黙々とライブの練習を始めた。……と言うか、俺だけ練習するなら家でやればよかったのではないか? 

 

 まあ、彼女らの役に少しでも立てたのなら、別にいいか。

 

 ・

 

 数日後。

 待ちに待ったテストの返却日だ。

 

「いやー、やっぱリョウはやれば出来る子なんだよ!」

 

 リョウ先輩の前に並んだ答案用紙には100点をはじめ90点後半の満点近い数字ばかり。

 ……なんだか腹が立つ。

 俺たちの高校より学力が上なのもあり問題は簡単ではないはずなのだが。

 

「これで文化祭ライブ全力で臨めるね!」

 

 その様子に虹夏先輩は嬉しそうな声音でリョウ先輩に話しかける。

 が、なぜだかリョウ先輩はいつも通りにいつもと異なる様子で──

 

「バンド辞める」

 

「え"っ?」

 

「東大受験するからベースなんかやってる場合じゃない!」

 

 そう言うと一発合格と書かれた鉢巻をどこからともなく取り出し頭に巻いた。

 この人やっぱり変な人だ……。

 馬力は高いのにピーキーな脳みそをしている。

 

 そして。

 

「わ、わたし高校入って初めて100点取った……」

 

 喜多さんはと言うと、こちらも90点前後を中心に100点満点の答案用紙を持ちながらわなわなと震えていた。

 

「ありがとう大倉くん! あのノート本当にすごいよ!」

 

「鼻が高いな、わはは」

 

 どうやら俺のノートを後藤と一緒にやり込んだおかげか、非常に高い点数を取れたようだ。

 

「ほんとになんて感謝すればいいのか……本当にありがとう!」

 

 キターンと擬音が聞こえてきそうなほどの喜多さんスマイルを浮かべる。

 ふっ……俺にとっては喜多さんみたいな美少女の感謝と笑顔を一身に受けられること自体が何者にも替え難い宝物なのだ。

 

「ありがとうはこっちのセリフだぜ……」

 

 ばたん、と。

 俺は喜多さんの輝かしい笑顔に当てられてノックダウンした。

 

「大倉くんが死んだ!」

 

 虹夏先輩のみが倒れ込む俺の様子を見てリアクションを取ってくれた。他のメンバーはいつもの事だと言わんばかりの完璧なスルーを見せてくれる。

 

「ちなみに後藤はどうだった?」

 

 俺は地べたに寝転がりながら顔だけを後藤の方に向けてテストの結果を確認する。

 

「こ、高校に入って初めて50点取れた……」

 

「あ"?」

 

 こいつ、俺の秘伝ノートを使ったのに平均点にすら辿り着いていないだと……? 

 

「俺は高校に入って初めてプライドを打ちのめされたよ……」

 

「お、大倉くん、あ……ありがとうございます」

 

 後藤はいつにないくらいの明るい表情で笑顔を見せた。前髪の裏はいつものように影がさしているのだが。

 とはいえ、50点で感謝されるってどーゆーことだ本当に一体。

 というかなぜ同じ教材を使って喜多さんと後藤にこれほどの差が……? 

 くそ、最悪俺が後藤を養うしかないのか。

 

「何はともあれこれで文化祭ライブに本腰入れられるね! がんばろ!」

 

 その言葉を聞いた後藤は、先ほどまでの笑顔から一転し暗黒面へと落ちる。

 

「あっ、私期末テストの勉強あるので……」

 

 そう言い放つと脱兎の如くライブハウスを後にする。

 

「テスト終わったばかりでしょ!?」

 

 虹夏先輩が叫ぶと同時に俺は後藤を追いかけて走り出した。

 

「期末テストこそは何があっても平均90点台取らせてやるぜぇ後藤!! 覚悟しやがれ!!」

 

「え、あ、え?」

 

 俺は後藤の50点という点数に打ちひしがれたと同時に、砕かれたプライドを取り戻すべく次こそは彼女のテストを完璧なものに仕上げようと決意する。

 

「勉強だぁ! 後藤がテストで90点台取れるようになるまでギターを触れると思うなよ!」

 

「え、あっ、私文化祭ライブがあるのでー!」

 

「さっきと言ってることが逆になってる!?」

 

「逃すか後藤! 勉強だ!」

 

「ご、ごめんなさいぃぃ」

 

 そうして俺は逃げ回る後藤を虹夏先輩に止められるまで追いかけ回した。

 どうやら、流石に俺の勉強させたいと言う執着心が強すぎたせいか後藤は勉強に逃げるのをやめて文化祭ライブをやる決心が渋々ながら一部ついたようである。

 

 だが、俺は諦めていない。

 今度こそ後藤に高得点を取らせてみせる……!




間隔空いてすまんな!
のらりくらりと続けていくよ!
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