ぼっち・ざ・ぼっち   作:振り米

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WBC面白すぎたわプロ野球選手目指します


二十二話 リッケン620頂戴、19万も持っていない御茶ノ水

 

「こんちはーっす」

 

 いつもと変わらぬようにSTARRYへと俺は足を踏み入れる。

 文化祭が終わり、俺の腕も吊って固定するほどではなくなりギプスはあるものの肘関節は自由に動かせるようになった。

 舞台から飛び降りて頭を打った時は、幸いというべきか仰向けになって転んだため腕へのダメージはなく順調に回復に向かっていた。

 

 とはいえ、流石にギプスをした右腕では100%に近い演奏をすることはできない程度ではあるのだが。

 

「はっ……ふふっ」

 

 真っ先に目に入ったのは、いつもより機嫌が良さそうな後藤ひとりの姿であった。

 なぜだか彼女はいつもの挙動不審な様子はなく、にこりと微笑みをみせる。

 

「熱でもあるのか」

 

「いやぁ、今日のぼっちちゃんなんかずっとキラキラしてるんだよね」

 

 STARRYに足を踏み入れた俺の横に、ひょっこりと虹夏先輩が現れる。

 

「なんか不気味ですねー……裏がありそう」

 

「だよね、譲もそう思う?」

 

「え、あ、は、はい」

 

 文化祭が開けて少し日が経つのだが、どうにも俺は虹夏先輩の名前呼びになれていなかった。

 ひとりや喜多ちゃんに呼ばれる分には全く気にならないのだが、ある程度仲良くなったつもりの虹夏先輩にだけはなぜか陰反応全開になってしまう。

 今やもう気にしていないが、一歳だけとは言え綺麗な年上の人だからだろうか。

 

「なーに? まだ照れてるの?」

 

「くっ……コミュ障なだけです」

 

「へー、そうなのかー、ふーん!」

 

 そして、動揺する俺の様子を見てどことなく嬉しそうで意地悪な顔でいつもイジってくる。恥ずかしいので本当にやめてください。

 

 ひとりは独りでにほうきを動かすと、今度は黄金色の気を発しながら髪の毛を逆立てる。

 

「なにあれ、超スーパーぼっち?」

 

「さあ?」

 

 いやあの気はどこから出してんだよ。

 

 ひとりはその後、何を思ったのか伊地知さんに声をかけに行ったかと思うと、超スーパーぼっち状態から、いつもの陰キャモードへと戻っていた。

 

 横に倒れたゴミ箱に顔だけ出しながらひとりは死んだ顔をしている。

 俺はそのゴミ箱の上に腰掛け、口を開いた。

 

「どうせあれだろ、何かのきっかけで金に余裕ができてバイトやめようとか考えてたんだろ」

 

「ギクッ」

 

「擬音を口から出すな」

 

 図星だったみたいだ。

 そりゃあ俺たちコミュ障にとっては、コミュニケーションを取る必要がある仕事は向いていない(社会に出れないね!)。だから金銭的に余裕があるのなら絶対に働こうなどとは思わない。でもお金は湧いて出てくるものでもないので、このようにしてアルバイトをしているのだが、わざわざ超スーパーぼっち状態になってまで伊地知さんに話しかけたのはそんな話題を持ちかけようとしたからなのだろう。

 

 ──だが伊地知さんに辞めるなんて伝えられるわけがない。

 

 理由は簡単だ。

 あの人、ぱっと見とか話し方とか怖いんだもん。

 だから俺もよーく気持ちは分かる。

 

 大丈夫、弔いはしてやる。

 

「譲はなんで頷きながらひとりちゃんの入ってるゴミ箱に蓋をしたのかなー?」

 

 虹夏先輩は俺が後藤の入ったゴミ箱に蓋をして廃棄しようとする様子を見てそう声をかける。

 

「あー、そろそろこの奇行飽きたんで燃えるゴミに出そうかなーって」

 

「ひどいわね……」

 

 喜多ちゃんは相変わらず我らの良心であった。いやでも口だけそう言ってるだけで俺の奇行を止めようとはしないんだね。

 

「ぼっちって何曜日に出せばいいの?」

 

「知らないけど可燃ゴミの日とかじゃないですか」

 

「火葬だ」

 

 リョウ先輩は無表情で俺のボケに乗る。本当にボケに乗ってるだけなのかな? 本気じゃないよね? 

 表情だけ見てもわからないなぁ、本気なのかもしれないなぁ、怖くなってきたなぁ。

 

「みなさん……ありがとうございました……」

 

 くぐもった声がゴミ箱から聞こえてくる。

 リビングデッドの呼び声ってやつか。

 

「この場のおかしさに気がついてるの私だけなのかな」

 

「わ、私も気が付いてますよ伊地知先輩……」

 

 冷静なツッコミ要員2人のおかげでこの場のおかしさが成り立っているんです、と心の中で感謝を告げる。

 2人の負担がでかいって? 

 仕方ない。ボケ要員が3/5なのだから。

 

 ・

 

 そうこうするうちに俺たちは楽器屋に遠征していた。

 楽器屋といば御茶ノ水ということで、新宿駅から中央線に乗り替えて向かった。

 どうして楽器屋にお出かけをしているかって? それは文化祭でギターが壊れてしまったひとりが2本目のギターを入手するためだ。一体どこの闇営業でそんな金を稼いだかは知らないが、新しい楽器を買うのはいいことだろう。

 

 というか俺は直前まで今日は出かけるということを伝えられていなかった。み、みんな友達だよね……? 

 

 俺は特に買うものもないので、完全に付き添いである。

 だが、こうして美少女JK4人と街を歩いているだけで鼻が高い。俺まで美少女JKになった気分だ。狂ってる? それ褒め言葉ね。

 

 楽器屋に足を踏み入れると同時に、ひとりはイヤホンを徐に取り出し耳につける。

 これはボッチ御用達の声かけ防止作戦だ。

 

 ──すると。

 

「いやなんでヘドバンしてんの?」

 

 ひとりは突然頭を激しく振り始めた。

 

「お客さま! メタル志向のギターをお探しなら二階の──」

 

「えっ、あっ、えっ、あっ」

 

 自分から話しかけられに行ってるではないか。

 まったく、これだからロースペックぼっちはダメだな。

 俺レベルのハイスペックぼっちになってくると──

 

「えー? まじ? 今週のジャンプでクリリン死ぬの? いや2回死んでるんだよ? だとするとドラゴンボールで生き返らないんだからねーって笑」

 

 俺は真っ暗な画面のスマートフォンを耳元へ持ってくる。

 

「そうそうーまさかそのあと悟空が穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士になるんだよねー……じゃなくていつのジャンプ読んでるの!? というか譲は1人で何してんの……」

 

 そんな俺の奇行を弊社のツッコミ担当である虹夏先輩は見逃すことなく流麗なるノリツッコミをかます。

 

「あー今ですね幻想の仮面を被りし好敵手(アミーチ・ディ・ファンタジア)の翔太と俺の2人がかりで繰り出す最終奥義異次元に集いし無窮の絆(テレフォーノ・イマジナリオ)してます」

 

「譲が壊れた」

 

 何を失礼なことを言うんだリョウ先輩は。

 

「まあ簡単に言えば、架空の友達と架空の電話してるってことです」

 

 そう、この技は店内で架空の電話をしている人間を演じることによって確実に声をかけられなくなるのだ。

 ちなみにこの技はイヤホンよりもシャットアウト率が高く、しかも「友達」と「電話」をしている気分を味わえて周りの人からも「へー、あの人友達いるんだー」とぼっち認定すらも回避できる最強の奥義なのだ。

 

「今時の中学生でも考えない技名のセンスの無さだよ……」

 

 はあ、とため息をつき呆れるように言う虹夏先輩を尻目に、目をキラキラさせたひとりが命からがら店員の包囲網を抜け出しこちらに詰め寄る。

 

「か、かっこいい……っ!」

 

「あ、ひとりちゃんもそっち側なんだね」

 

 やはり後藤ひとり、俺と同じぼっちだけあっていいセンスをしている。君のイヤホン・ヘドバン作戦も相手が悪かっただけでいい技だったぞ! 

 

「何の意図があってそのてれふぉんなんとかかんとかをしてるの?」

 

「リョウ先輩、まったく失礼ですね。異次元に集いし無窮の絆(テレフォーノ・イマジナリオ)ですよ」

 

 俺の必殺奥義をなんとかかんとかでまとめるな。かっこいい名前があるんだから。

 

「いや呼び方とかほんとどうでもいいから」

 

「この奥義はですね、何があっても絶対に誰にも話しかけられない方法なんですよ。電話をしてるふりをする事でマジで話しかけられない。イヤホンすらも貫通しうる口撃力を持つ店員を必ず倒す必殺の最終奥義なんです。しかも友達がいるっぽく見える」

 

「えーっと、つまりただ電話のふりしてる変な人ってことだよね?」

 

 喜多さんが酷いまとめ方をする。

 その自覚はあるため、悔しいことに否定はできない。

 

「端的に言えば」

 

「最初からそう言え!」

 

「ちょっとボケが足りないなーって」

 

「ツッコミの方が人手不足!」

 

 相変わらず虹夏先輩のツッコミは心地がいい。こちらもボケ甲斐がある。

 ……ただ、今回に関しては本気8割のボケ2割だったつもりなのは内緒だ⭐︎

 

 その後もヘドバンを続ける後藤、小物に興味を示す虹夏先輩喜多ちゃんペア、異次元に集いし無窮の絆“テレフォーノ・イマジナリオ”を続ける俺により、店内はカオスな状況になっていた。

 

「楽器見ろよ」

 

 リョウ先輩の珍しくまともで芯をついた一言は、特に誰にも届かずに風と共に去っていった。

 

 ・

 

「みんな楽しそうでいいなぁ」

 

「ですね」

 

 カオスな場はとりあえずの落ち着きを見せ、各々が楽器を眺めていると虹夏先輩はぽつりとそう漏らした。

 俺も付き添いかつピアノしか弾かない人間のため、特にすることなく楽しげなみんなを羨ましく見つめるだけであった。

 

「リョウ先輩も試奏でカッコつけられるし、ひとりも喜多ちゃんも新しいギター探すの楽しそうだなぁ」

 

「……ドラムとキーボードは孤独になる運命だよね」

 

「ドラムはまだバンドに必須ですけど、キーボードは特に影薄いですからね……」

 

「今度はドラム専門店行こうね! アキバにあるから……キーボードの専門店もあったと思うよ!」

 

「行きましょう、寂しいです今」

 

 とは言え、俺も最近買ったばかりなのでドヤ顔で試奏するしかやる事は無いのだが。

 

「あ、今買うものあんまないなーって顔してたね」

 

「必要機材も新品揃えちゃったんですよねー」

 

「でもいいでしょ? こうやってみんなでお出かけするの楽しいし」

 

「練習してる方が有意義ですよ……まあ、息抜きは大事ですし、その、楽しいですけど」

 

「出た、譲のツンデレ」

 

「ツンデレじゃないです」

 

 なぜ彼女達は俺をツンデレ認定したがるのか。

 たしかに、この結束バンドメンバーに足りていないものといえば、こってこてのツンデレ枠なのだがそれを男の俺で押さえていいのだろうか。

 

 などと会話をしているうちに、ひとりはギターの前で立ち止まる。

 

 そして、べちょべちょとまるでいつもの彼女とは程遠いような試奏をする。初心者のような演奏というよりかはなんか気持ち悪い音を鳴らしてる。

 

 そして喜多ちゃんがひとりの代わりに通訳というべきか腹話術的な感じで店員さんとコミュニケーションを取る。でけえ腹話術人形だな。

 

 最近は少しコミュ力的な何かが成長したのかなと思うところもあったのだが、やはり後藤ひとりは変わらないままで少し安心した。それと同時に心配した。将来ほんと大丈夫ですかあなた。

 

 そして、腹話術士兼通訳の喜多ちゃんは(多芸だね! すごい!)そのまま購入の段取りを済ませる。

後藤も珍しく目をキラキラさせてギターを見ていたし、めでたい事だ。

……めでたい事だが、こんな感じで購入しておっけー? 安い買い物じゃないぞ。

 

 ……あれ? というかやっぱり今日俺ここに来る理由無かったんじゃね? 




文化祭まではなんとなーく話の流れ考えてたけど今後全然考えてねえ
まあ原作に添いつつ主人公混ぜてあといい感じにね!ギスギスはしない程度の三角関係とかラブコメ書きたいね!ラブコメ見たい書きたい!
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