ぼっち・ざ・ぼっち   作:振り米

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作者の性癖全開な本編とは一切関係ない性癖回です。読んでて苦手だなと少しでも感じたら飛ばしてください。
端的に説明するとクズに引っかかる虹夏先輩が見たい話です。NTRとかそーゆーのじゃないから安心してね?
あと直接的にはございませんが少しだけ性的な表現や想起させる描写がありますので苦手な方は飛ばしてください。


二十三話 こんなオチってサイテー

 

 私、伊地知虹夏には大好きな彼氏がいる。

 それは、今をときめく有名バンドのキーボードでもあり、作曲家としても有名な大倉譲という人物だ。

 

 都内にある駅近マンションの8階。

 ピアノも置ける防音室まである2LDKのマンション。

 

 合鍵でオートロックを抜けて、エレベーターで上り彼の自宅へ入る。

 防音ルームはたばこと酒の匂いで充満しており、パソコンの前には不機嫌そうな彼がいた。

 あたりは酒の空き瓶とゴミが散乱しており、私がいないときっと彼はまともに生きていけないのでは無いだろうか。

 

 ひとつ年下で、年齢は24歳。

 私は結束バンドの四人組でメジャーデビューの夢を諦めずに目指しながら、フリーターとして生計を立てていた。

 

 彼と出会ったのは、とあるライブでの出来事だった。

 私たちの楽曲の中にも打ち込み音源を入れて演奏するモノがあるのだが、生でのライブの際に縁があって彼が参加してくれた時がある。

 

 ──私は、その圧倒的な実力に惹かれたのだ。

 

 彼はその後、結束バンドとは異なるバンドメンバーの一員として名を上げていき、今では超有名バンドのサポートメンバーとしても引っ張りだこになり、業界の中では知らぬ人はいないほどの有名人になっていた。さらに、楽曲の提供も行なっており、クラシック音楽に裏付けされた音楽的知識とロックの経験で生み出していく作曲も人気で、若くして天才の名を欲しいがままにしていた。

 

 私たちも、メジャーデビューまで後一歩のところまで来ている。そのため、縁があって彼に再会した時に周りから数多の賞賛を受けているはずの彼が浮かべた寂しそうな顔を放っておけずに、気がついたら男女の関係になり──こうして付き合い始めたのだ。

 

「またお酒いっぱい飲んで……体に悪いでしょ?」

 

「かんけーないだろ」

 

「もう、心配して言ってるのに」

 

「………………はぁ」

 

 彼は深くため息をつく。

 私は血の気がひく感覚を覚える。

 また、ぶたれるのかなぁ。

 

「ご、ごめんね、ほ、ほんとにあなたのことが心配で、嫌な思いさせたいわけじゃ無くて──」

 

 慌てる私に、彼は冷たい目をしながらゆっくりと歩み寄る。

 私は嫌われてしまったのでは無いかと動揺しながら近づく彼をただ眺めることしか出来なかった。

 

 彼は私の目のまで来る。

 私は深く目を瞑って──

 

「ごめんな、心配かけて」

 

 彼は私を強く抱擁した。

 

「え、あ、あはは、ううん、私もあなたが辛いの知ってるのに、意地悪な事言っちゃったね」

 

「虹夏は悪く無いよ」

 

「ぁ──ぅん」

 

 彼に包まれている時は、何よりも幸せに感じた。彼が誰より辛いかを私は知っているし、彼に私がいないとどれだけ大変なのかを私は知っているし──そして、私には彼がいないといけないのは当然のことだった。

 

「ちょっとさ、気分転換に散歩してくるから、部屋綺麗にしといて」

 

「え──、あ、後でちゃんと綺麗にするからさ、一緒に散歩いっちゃだめ、かな?」

 

 そう言うと彼は抱擁をやめ、面倒臭そうな顔で苛立ちをあらわにした。

 

「ご、ごめんね、わがまま言っちゃって。ちゃんと綺麗にしておくから、任せて!」

 

 そう言うと再び彼は抱きしめてくれた。

 

「ありがと、優しいね虹夏は」

 

「あはは、あなたのためだよ」

 

 そして彼は私の事を抱きしめたまま動きを止めた。

 

「あれ? 散歩行かないの?」

 

 私としては、こうして彼に包まれている時間は何にも変え難い大切な時であるので当然嬉しいのだが、動かない様子の彼に少しだけ不安を感じた。

 

 彼は私の顔を覗き込むと、口づけをする。

 

「気が変わった、一発やらせろ」

 

「ぇ、あ、でも私なにも準備してなく──」

 

「虹夏──かわいいよ」

 

 そのまま無理やり口を塞がれると、彼に腕を引かれて私は寝室へと向かった。

 

 ・

 

 行為を終えた後、彼はタバコを吸いながら服を着る。

 私は満たされる満足感を感じながらも、肌寒さと喉の渇きを感じていた。乱雑に扱われた身体が少しだけ痛むが、これも彼なりの愛情表現なのだろう。

 

「じゃ、コンビニ行ってくるから適当に部屋片しといて」

 

「……うん」

 

 もう少し、二人でゆっくりしていたかったな。

 でもそんな事を言うときっと嫌われてしまうから。

 

 私はシャワーを浴びて彼の防音室に向かうと、部屋を片付ける。

 30分ほど入念に掃除をしているのだが、コンビニに向かっただけのはずの彼の帰りは遅かった。私は不安を感じて、彼に電話をかけることにした。

 

 すると、画面に映し出されたのは「通話中」の文字。

 きっとお仕事とかの長電話なのだろうと私は考えて、戻ってきた時のためにと玄関も少しだけ掃除する事にした。

 部屋から出て、玄関に向かう短い廊下に立つと、扉の外から話し声が聞こえた。隣の家の人かな、とも思ったが聞こえてきたのは彼の声だった。

 先ほど通話中だったし邪魔をするのもよくないかと思い戻ろうとするも、彼の電話で話している内容が少しだけ気になったので、罪悪感を感じつつもその場で少し盗み聞くことにした。

 

「あー、今週の日曜日? 仕事あるから夜中なら空いてるけど」

 

(……プライベートの電話かな)

 

 彼は日曜日の仕事後に誰かと会う約束でもしているのだろうか。

 

「結束バンドのドラムの子? ああ──大丈夫、いつも掃除させてるだけだから。別に好きでもなんでも無いから心配しないで」

 

「──え?」

 

「俺が好きなのはお前だけだよ。じゃあ、日曜日にな」

 

 その言葉を最後に彼は電話を切った。

 私は、生きた心地がしなかった。

 

 がちゃり、とドアを開く音が聞こえると彼は目の前にいる私に驚いた様子であった。

 

「うわっ、何してんの──というか聞いてた?」

 

 私はぐちゃぐちゃになった感情が溢れそうに出る。溢れそうに出るのだがなんとかぐっとそれを堪えて、気丈に振る舞った。

 

「あはは、ううん、部屋の掃除も終わったから玄関も綺麗にしようかなーって」

 

「そっか、ありがとな。そーゆーところ、好きだよ──虹夏が一番かわいいよ」

 

 そうだ。

 そうなのだ。

 きっと先ほどの電話の相手は、彼に付きまとうだけの悪い虫なのだろう。

 

 彼の孤独を理解できるのは、同じく母親のいない私だけだ。

 彼の音楽を理解できるのは、同じ業界に身を置く私だけだ。

 

 だから、先程のは聞き間違えだろう。

 悪いのは、あの女なのだ。

 私は上機嫌に部屋に戻ろうとする彼の袖を掴む。

 

「ん、どうした?」

 

「あのさ、もう一回、しよ?」

 

 彼は嬉しそうに笑うと、口を開いた。

 

「そーゆーところ、好きだよ」

 

 ・

 

「と、ダメなバンドマンと付き合うとこうなるわけです」

 

「わかりやすかった」

 

 喜多ちゃんが紙芝居を全て捲り終えると、リョウ先輩は立ち上がり手を叩いた。

 

「なんで例に私が使われてるの!?」

 

「というか相手役の俺もキャラ変わりすぎじゃね?」

 

「き、喜多ちゃん、大人ですね……」

 

 上から虹夏先輩、俺、ひとりと三者三様のリアクションを見せる。

 

「喜多ちゃんの世界観の解像度が無駄に高くて怖かったんだけど……」

 

 虹夏先輩は引き気味にそう言う。

 

「俺、がんばってクズになってみようかな……」

 

「だ、だめだよ譲くん」

 

 俺はモテモテクズ男に憧れを抱くも、ひとりに静止された。うん、君が言うならやめてあげよう。仕方がない。

 

「これ、没収だからね!」

 

 虹夏先輩は喜多ちゃんの紙芝居を乱雑に奪い取る。

 

「あー、伊地知先輩! 何するんですかぁ!」

 

「これは立派な名誉毀損と肖像権の侵害です!」

 

「だからといって取らなくても良いじゃないですか!」

 

 喜多ちゃんの脳内ピンク色は十分に伝わったし、妙に生々しいストーリーに自分と先輩が使われているので、俺としては虹夏先輩に強奪してもらいとっとと処分して欲しい気持ちでいっぱいだった。

 

「これは危険なので──うちで預かります!」 

 

 そうそう、ありがとうございます先輩。燃えるゴミの日にでも出して存在をこの世から消してください。

 

 ──ん? 

 

「え、いや預かるじゃなくて捨ててくださいよそれ」

 

「流石に私も、喜多ちゃんの力作を捨てるのは心が痛むからね」

 

「いやその恥ずかしい内容のものがよりにもよって虹夏先輩の家にある状況に置かれてしまう俺の立場にも心を痛めてください」

 

「だめ! 没収!」

 

 そうして、この酷い内容の「ダメ男と付き合ってはいけない」紙芝居は、なぜだか、捨てられずに虹夏先輩の家に連れていかれることになった。




反省はしていない、後悔もしていない
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