貞操観念逆転世界の赤龍帝   作:グレンデル先生

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昔投稿して削除したのを色直ししたやつです。ついでに執筆リハビリ。


貞操観念逆転世界の赤龍帝

 夢を見ていた。

 女の子にモテモテになって、男の願望たるハーレムを築くという、まあ口に出すのは憚れるような夢を。

 けれども所詮は夢。目が覚めれば現実がハローと挨拶して、代わり映えしない日常がやってくる。

 ……そう思っていたんだけどな。

 

「あれ? エロ本がない……?」

 

 覚醒したばかりの脳みそを働かせ、キョロキョロと部屋を見渡せば、本来あるべき己が至宝(エロ)がない。

 まさか、母さんが勝手に整理整頓してしまったのか?

 もしそうであれば戦争しかあるまい。年頃の息子の嗜好品に手を出すなど万死に値する!

 と、一人で憤慨してみたものの、よくよく考えてみれば母さんは俺の性欲に諦観していたので、今更部屋のエロ本を片付けるとは思えない。

 つまりは────?

 

「……まあ、後で探せばいいか」

 

 朝っぱらから頭を悩ませるのも疲れるので、後回しにした。学校の後でゆっくり探せばいいんだし。

 そうして制服に着替えたのち、リビングに向かうと母さんが丁度朝食を作り終えた頃だった。

 

「あら一誠、おはよう」

「おはよう母さん」

 

 母さんはいつも通りだ。……という事はエロ本の件は、やはり母さんじゃないかもしれない。

 おそらくだが、母さんであれば「ああいうの、大っぴらに部屋に置いとくのもどうかと思うわ」の苦言の一つでも溢すだろうし。

 とりあえず、エロ本の事は置いておこう。

 

「父さんは食わないの?」

 

 出された朝食を頬張りながら、珍しく張り付くようにテレビを見ている父さんに声をかける。

 

「……ああ、すまん。最近こういうのが多くてな」

「こういうの?」

 

 何を見ていたのか、俺も意識をテレビに向けるとそこには『三十代の女性が少年に痴女行為を働いて逮捕された』というニュースが大々的に流れていた。

 ……へぇ、そんな事もあるんだな、と無関心を装うも無理だ。普通に羨ましいじゃねえか!

 容疑者の顔が出てたけどめちゃくちゃ美人だったし、おっぱいもデカかったし!

 はーん、痴女とかAVだけの世界だと思ってたわはーん。

 

「度し難いな。一誠もこういうのには気をつけるんだぞ」

「え? お、おう」

 

 不意打ち気味の心配。

 普段なら「お前ならご褒美だったろうな」と揶揄するところなのに、ガチの心配をされてしまって生返事が出てしまった。

 

「まったく。本当に気をつけてよ? 一誠はそこのところ、結構ぬけてる事が多いから」

 

 まさかの母さんからの懸念。本格的にこんがらがってきた。

 何故だ。エロ方面の話題であれば揶揄うか嘆息するかの二択なのに、そのどちらでもない本気の心配。

 二人の目を見れば分かる。本気で、本意で、そこに一変の冗談も含まれていない眼差し。

 そんな目をされれば、こちらも心から大丈夫と返答しなければならない。

 

「二人が心配するような事にはならないから、大丈夫だよ」

 

 痴女行為なんて、痴漢と比べれば稀に起きる事件だし、そう心配する事はないだろうという考えを含めての返答。

 一応、俺の答えに納得してくれたのか、一先ず痴女の話題はこれで終わりとなった。

 しかし、何故にあそこまで懸念したのだろうか、結局俺は朝食を食べ終わっても分からず、そのまま支度を済ませて登校した。

 

◇◇◇◇

 

 ────ついにモテ期が到来したのかもしれない。

 

 何故か? 通学中にOL女性に同じ駒王学園の高等部、果ては中等部の女の子から熱い視線を送られたからだ。これをモテ期と言わずなんとする。

 はー、これがモテ男の辛さかー。確かに色んな女の子から好意を寄せられちゃあ困っちゃうわな!

 この熱々の眼差しは学園に到着した後も続き、昇降口を潜った後も、自身の教室につくまでの間も続いた。そのせいで、ニヤけそうな表情を必死に固定するのが大変だったまである。

 

「よお、松田、元浜」

「ん? おお、イッセーか」

「なんだお前、一人か?」

 

 教室に入れば、友人の松田と元浜が既に来ていた。

 コイツら中学からの付き合いで、共に駒王学園への入学を果たした悪友(エロとも)である。

 

「一人で悪いかよ」

「悪いっていうか、お前は見ててハラハラするんだよ」

「まったくだ。お前は鈍いし、緩いし、どっかで泣かされないか心配なんだわ」

 

 早々に散々な言われようである。

 ていうか、今日は皆んなどうしたんだろうか? 両親といい、この二人といい、まるで俺を無防備で無警戒な庇護対象のような扱いだ。

 

「意味が分からん。いつから俺はか弱い生き物になったんだ」

「会った時からだよ」

「……てかお前、いつもに増して緩すぎだろ。全体的に、なんか襲ってくださいって言ってるみたいだぞ」

「? いや、マジで意味が分からん。緩いって言ったって、いつもこんなもんだろ。寧ろお前らが何なんだ、そんなキッチリとしやがって」

 

 やり取りの最中で気づいたが、今日のコイツら少しキッチリというか、お堅い感じでカッチリしてる気がする。

 普段、制服を着崩しているという訳でもないが、何故か露出は許さんというオーラを醸し出している……ただの勘で、感想だが。

 

「はあ、コイツはダメだ。いつも以上に目を離しちゃいけないやつになってる」

「ああ、進行形で酷くなるとは恐れ入ったぜ」

「……なあ。さっきから、何をそんなに心配してんだ?」

 

 明らかに変態三人組として学園中の女子から敵視されていた二人とは到底思えない態度だ。

 

「何ってお前……ここまで鈍いとか、ある意味才能だな」

「イッセー、お前女子からジロジロ見られてるって気づいてるか?」

 

 元浜の問いに、俺はフリーズした。いやだってそんなもん────。

 

「おう! 気づいてるとも! モテ期到来ってな! 羨ましいだろ!」

 

 と、自慢げに嘯いてみれば溜め息をつかれた。解せない。

 程なくして予鈴が鳴ったので、各々は席つき、授業が開始された。

 

 

 何事もなく授業は進み、日常という名の時間が過ぎていく。

 少し意外というか不思議に思ったのが、担任の教論が男から女の人に変わっていたところか。特に説明もないまま授業が行われたので、奇妙に思いつつも女教師になってラッキーなどと密かに思ったり。

 

「イッセー、何ふやけた顔してんだ。次、体育だぞ」

「おぉ、悪い」

 

 授業中に弾む女教師のおっぱいに想いを馳せていたが、時間を忘れてしまうのは良くない。

 体育の授業という事で体操服を取り出して、ブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを開ける。

 まだ春だってのに今日はちょっとだけ暑いから下にTシャツを着てこなかったけど、それでもまだ暑く感じてたから少し清々するな。

 

 すると──── 『兵藤くんが……』『裸……』『胸板、結構たくましい……』────ザワザワ、と周囲が騒がしくなった気がした。

 

「ばっ!? おまっ! 何やってんだ!」

 

 元浜が焦ったような声を荒げる。どうしたんだよ急に。

 

「女子がいる前で着替えるとか何考えてんだよ! 早く隠せよっ!」

「はあ? 何焦って────っておい! いきなりボタン閉めんなよ!」

「コイツは本当にもう……! おい女子共! ジロジロ見んな!」

 

 うお、松田と元浜がガチの怒鳴り声を女子にあげるなんて、珍しいものを見た。

 てか、反応おかしくない? なんか、俺が男子に裸を見られた女子みたいな扱いを受けている気がするんだが。

 

「緩いとは思ってたけど、今日は通り越して猛獣の前に置かれた餌同然だぞ!」

「意味が分からんて。教室で着替えるくらい普通だろ」

「何を基準にした普通だよ。昨日は更衣室で着替えてただろうが」

「……更衣室?」

 

 この時、俺は知ったのだが、この学園には男子更衣室なるものが存在し、俺たちはそこで着替えるのだそうだ。

 おそらく俺は、宇宙猫さながらの顔をしているだろう。

 そんなのおかしい、あり得ない、何かが間違っている。だって、そんなもの昨日までは存在しなかった筈だ。

 はは、まさかドッキリ? クラスを巻き込んでの壮大な仕掛けがあったりは……松田と元浜のマジな反応と、女子たちのいつもとは異なる視線に、これは現実だと認めざるを得なかった。

 とりあえず、俺は頭の混乱を防ぐ為にあえて思考を真っ白にし、無心で男子更衣室に向かった。

 

 ×

 

 体育は男女別々に行われた。

 さっきまでの混乱は忘却の彼方へと追いやり、今はただ女子たちの眩いブルマ姿を拝んでいた。あー、ブルマ文化は素晴らしい。

 汗で肌に張り付く体操服。お尻にフィットとしてプルンと柔肌を演出するブルマ。これぞ男のパラダイスである!

 ……ふう、少しばかり興奮してしまった。運動のせいで汗だくになったので、体操服の裾をパタパタとさせて風を服の隙間に送り込む。

 

 すると────『今日の兵藤くん、扇情的』『もしかして……誘ってる?』『ヤバい、トイレ行ってくる』────またもや教室で感じた熱烈な視線を感じた。

 

 今日はやけに視線を感じるな。モテ期と嘯いたが、自分でも四割くらいは冗談で言っていたつもりだった。

 だがしかし、本当に……?

 

「さすがにあっちぃ」

 

 季節は春だが、今日はほんの少しだけ暑気が降りてきたのか、汗だくになってしまう程度には暑い。

 額から伝って零れていく汗を襟元で拭き、さっぱりした感触を味わいたかったのだが、うーん意味なかった。

 

 ────『きゃっ、おへそ見えた!』『……やっぱり兵藤くん誘ってるよね? それとも無自覚?』『わからせなきゃ……!』────さっきから女子グループから何か聞こえるな。

 

 体育の授業は滞りなく進んでいき、俺も与えられた課題をこなしていく中、一つ気づいた事があった。

 女子グループの反応というか、強烈な視線は、俺が襟元で汗を拭いたり、裾で風を煽ったりしている時に感じられるのだ。

 あれー? これ、もしかして俺スケベな目で見られてる? 男子の俺が? 変態とこちらを蔑んでいる女子から?

 再び宇宙猫になる俺。そして、脳に衝撃がはしる。

 

 ────今朝ニュースでやっていた世にも珍しい痴女事件。

 ────通学中の女性たちから視線。

 ────松田と元浜の変わりよう。

 ────現在進行系で俺の肌をガン見している女子たち。

 

 まさか、俺、似てるようで違う、とんでもない世界に来ちゃってたりする?

 ジャンル的に言えば、所謂『貞操観念逆転』みたいな。

 その答えを知るべく、俺は黙々と授業をこなし、下校の予鈴が鳴るも早々に帰路……ではなく、コンビニに赴いた。

 そして、そこには……男の裸しか無かった。クソったれが────────────────!!!




続くかどうか分かりません。
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