貞操観念逆転世界の赤龍帝   作:グレンデル先生

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昔のとは大幅に変わると思いますが、続きます。


リアス・グレモリーの場合

 リアス・グレモリーは悩ましげに溜め息をついた。

 仕事が手に付かず、頭の中も別の事でいっぱいいっぱい。

 こんな体たらくな彼女をメイド長が見たのなら、おそらく小言は免れないだろう。

 それ程までにリアスは集中力を欠いていた。

 だって、仕方ないじゃないかと彼女は思う。

 あんな事があって、尚且つ相手が恥ずかしがって、でもどこか嬉しそうな反応をされたのだから、脳を焼き切るかのように記憶に刻まれてもおかしくない。

 

 そんな彼女の脳内を支配するものとは、とある少年の事であった。

 

 あれは、某日の学園内での出来事だった────。

 

 ◇◇◇◇

 

 放課後、オカルト研究部の部室への道をリアスは歩いている。

 変わらぬ日常。普遍的な学生生活。ただ、これから先おこなわれる部活内容は一般の学生のものとは異なる。

 彼女たちは悪魔────言ってしまえば人間ではない。

 悪魔なのでそれらしい行為、人間と契約を結び、願いを叶える仕事を秘密裏に行っている。

 リアス・グレモリーは純潔の悪魔であり、(キング)として既に眷属を有している。そして、その眷属たちが契約を取ってきているというものだ。

 眷属たちは皆優秀だ。赤字経営みたいな事には一度も陥ったことはないし、対象への対応もしっかりしている。

 しかしかな、眷属は全員()()なので、異性関係を求める女の召喚者の期待には余り応えられないし、逆に男の召喚者のウケはまあまあよろしくない。

 つまりだ。ステータス的に優秀ではあるものの、成績は平均点を取る、いまいちパッとしない眷属と化しているのだ。

 

 リアスは溜め息をつく。

 

 代わり映えしない日常であるのなら、今のパッとしない契約絡みも変わらないという事。

 ついでに言えば、自分が夢見ている異性とのイチャイチャ関係の成就も難しいという事に他ならない。

 彼氏いない歴=年齢であるリアスは、学生のうちにどうにか恋人ができないものかと考えていたが、結果はこの通り。このザマ。

 この現状をどうにかしたい……そう思考しながら歩いていると、ドンっと正面から衝撃を感じ「ひゃっ」という小さな悲鳴と共に尻もちをつく。

 

 ああもう、一体なんなのよと内心悪態をつきつつ、衝突事故の相手は誰なのかと視線を前にやり─────。

 

「ご、ごめん! 大丈夫か?」

 

 鼓膜に響く、女のとは違う低い声。

 スッと、目の前に差し出される手。

 心配と驚きが混じり合った男の顔。

 

 これは、もしかしなくても……ラブコメの波動を感じさせるシーンやんけ! とリアスは心の中で叫び昂った。

 なんという予想外で素敵なシチュエーション。実家でやり込んだ乙女ゲーを連想させる状況に、胸のドキドキが止まらない。

 もっと言うのなら妄想も止まらない。だって乙女ゲーであれば、このまま縁を持って男女の関係まで持っていくのがストーリーだし。

 リアスは恐る恐る手を取り、彼の顔を改めて見る。

 記憶が確かなら、彼は────兵藤一誠という男子生徒だった筈だ。

 生徒間の噂によれば、色々と緩く、色々と無防備で、非常に狙い目でありながらも決してビッチという訳でもない。

 そんな彼が目の前に、自分に手を差し伸べてくれている。

 これはもはや運命なのでは? と妄想は加速し、リアスの残念な脳内は夫婦生活にまで突入した。

 

「って、ぐ、グレモリー先輩!?」

 

 驚いた様子を見せる一誠。

 その反応にリアスは一瞬だけビクリとさせるが、即座に脳天に電撃が走るような衝撃を受けた。

 彼が、一誠が、照れているのである。

 これだけで「ふぁー!!!」と悶えてしまう衝動に彼女は駆られる。

 こんな反応なぞ画面の向こう側でしか見たことがない。同世代の、年頃の、生の男子による照れ。

 やはり運命だ。世界が運命の存在を自身と引き合わせたのだ。

 照れているという事は異性として認識し、尚且つ好ましく想っているのと同義。加えて自身を知っていたとなれば……もう両思いでは?

 これはもう愛を司る悪魔として本領を発揮するしかない。

 周囲から「愛を司るくせに恋愛経験ゼロ」と揶揄された汚名を返上する時だ。

 

「ありがとう。それと、ごめんなさいね。少し考え事をしていて前方不注意だったわ」

「い、いえ! 俺もよそ見してたんで、こっちこそすみませんでした!」

 

 確定だ。彼は私に気がある、とリアスは勝利を確信した。

 性差からくる、時折男子が放つような横暴さや傲慢さは感じられない上に、逆に畏まった様子。それに、一誠の視線はちょいちょい胸に来たりしているのが動かぬ証拠。

 嗚呼、ようやく報われた気がした。この無駄に肥大化し、異性に対して特にセックスアピールにならないどころか、大きさ故にドン引きされる胸が、一誠を意識させているという事実にリアスは歓喜した。

 一誠の手を掴む。男性特有のゴツゴツした手。そこから伝わる熱。

 

(今夜のお楽しみを終えるまで、手を洗わないでおこう)

 

 変態的な決意を固め、一誠の手の感触と肌の熱を堪能しようと少しだけ力を込めつつ、尻もち状態から立ちあがろうと────。

 

「どわぁ!?」

 

 ────謎の力が働いたのか、一誠は足を滑らせてリアスの方へと倒れ込んだ。

 押し付けられる胸板。鼻腔を擽ぐるフェロモン。双丘に挟まれた顔面から放たれる彼の吐息。

 この時、リアスの理性はある意味ショートしたと言えるだろう。脳内ではあるが奇人のように「Fooooooooooooooo!!!」と奇声をあげたのだから。

 

「や、やわら……!?」

 

 一、二、三回程、胸を揉まれた気がした。

 そこで理性と正気は更に沸騰し、もうこのまま致してもいいよね? などという思考で錯乱状態になりつつあった。

 しかしこれで終わらない。リアスにとっては劇薬とも、核爆弾とも形容できる事象が投下される。

 

「────あ」

 

 スカートのある位置に、微かに膨らんでリアスに押しつけられる硬い物体。

 

「うぇ!? す、すみませんでした────────────────!!!」

 

 ただし感じたのはほんの一瞬。

 倒れ込んでいた一誠は即座に立ち上がり、前屈みになりながらも瞬く間に去ってしまったからだ。

 一人ポツンと取り残されたリアスは呆然しつつ、胸に手を当てる。ドキドキと早くなった鼓動が感じられる。

 そして最後のアレ。そう、アレだ。

 走り去ってしまう前に感じた感触を、リアスは持ち得る(性)知識を総動員させて思考を張り巡らせた……結果、思い至った。

 アレは紛れもなく、ぼ────となったところで、彼女は己の下着に違和感を覚えた。

 

「あ、大洪水」

 

 これがリアス・グレモリーの、運命との邂逅であった。

 

◇◇◇◇

 

「あの日は部活動を(キング)と部長権限で中止したのよね。下着が大惨事だったし、何より我慢できなかったし」

 

 あの後、リアスは自宅へと直行し、盛大な自家発電に励んだ。

 消音の結界を展開し、オットセイの鳴き声さながらの嬌声をあげまくった。

 一誠を想像しながら、妄想しながらの手遊びは今までで一番の快感であり、照れる仕草、香るフェロモン、僅かに感じた胸を揉まれる感触とスカート越しに当てられたアレを想いながらするだけで……飛んだ。

 もう以前の独楽には戻れない。二次元よりやっぱり三次元のが強いと分からせられてしまった。

 あれから数回何かと理由をつけては会い、連絡先を入手し、夢にまで見た異性とのキャッキャウフフな学生ライフを手にしたのはいいが、最初のようなラッキースケベな展開は未だ起こっていない。

 やはり攻勢に出るべきだろうか? 多分、押せばいける気がする、と思春期特有の悩みを巡らせる。

 

「なんにせよ、着実に仲は進んでいる筈。二人きりの時は名前で呼び合うようにしたし」

 

 ついでに別に知らなくてもいい情報なのだが、一誠から憧れの存在と言われたリアスは、密かに下着を濡らしたそうだ。

 

「私は今年中に、紅髪の処女姫(バージンプリンセス)という不名誉な異名から脱却するのよ!」

 

 だがリアスは知らない。

 彼女が運命の相手だと信じて疑わない彼を、水面下で狙う刺客が割と近くにいるという事に。

 

 処女(どうてい)のリアスは、未だ気づかない。




リアス・グレモリー
紅髪の処女姫(バージンプリンセス)の異名を持つ可哀想な悪魔。
愛を司るグレモリーなのに恋愛経験ゼロと揶揄されたり、当人の恋愛力が元の世界で言うところの『童貞臭さ』があって中々異性と縁がない。しかし、そこはメインヒロインだけあって運命の相手を見つける。ただし他にも狙っている泥棒猫がいる模様。
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