TS転生したら主人公の幼馴染ポジだった上に、おっさんの女だった件〜負けヒロインどころの話じゃないんだが〜 作:あへんちんき
あー。あー。
はい!こんにちはこんばんは!
TS転生型幼馴染系ヒロインの長田南志実ちゃんで〜す!!
はぁ………。
無理して取り繕うとしても、やっぱり落ち込んでいる時って元気でないんだな。
というのも、最近、俺と同じくTSヒロインな響くんちゃんから、『もしかして最近元気ない?』と、聞かれてしまったのだ。
うん、当たりです。かなり元気なくなっております。最近、薬を使う頻度が増えてきて、まあ、薬が足りなくなると不安感とか、そういう負の感情に支配されちゃうんだよね。元気がないのはそれが原因なわけだけど……。
でも、同時にそれを悟られないようにって、普段通りに振る舞ったはずなんだけどな〜。
でも、響には気付かれてしまった。というのも、響は中学生時代、つまり、まだ男だった頃に、俺のことが好きだった時期があるらしい。
ただ、いつも駿と一緒にいることが多かったせいで、告白まで踏み切れなかったんだとか。
今やその恋敵である駿のことが好きになってしまっているわけだが。
しかし、これは困った。
転生する前は、本島響は、俺にとって複数いるヒロインのうち、最推しであるヒロイン。ただそれだけだったし、ましてや物語の主人公である駿も、プレイ時は自分の分身のようなもの。好きだとか嫌いだとか、そんな感情すら抱いていなかった。
しかし、響や駿は、今の俺にとって大切な存在となってしまった。
だからできれば、俺の置かれている状況に、気付かないでいてほしいと、そう思ってしまう。
もちろん、巻き込みたくないって気持ちもある。
でも、やっぱり一番大きいのは、嫌われたくないって、そういう気持ちだ。
だって、そうだろう。
実際、薬物に溺れている人間を、世間はどう評価するか。
人によって様々だが、中には、『理解できない』だとか、『怖い』だとか、『関わりたくない』だとか、そんな印象を抱くだろう。
一般的な目線で言えば、薬物中毒者は『異常者』なのだ。
世間では、白い目で見られる存在。今の俺は、それなのだ。
俺は、怖い。
駿と響、2人から、嫌われてしまうのが。あの2人との関わりが、断たれてしまうのが、怖い。
俺は、自分に自信がない。
駿と響と仲良くなれたのも、原作知識のおかげだ。
俺はただ単に、前世にやっていたゲーム、『美少女学園列島縦断』のヒロインである
心の中では、『俺』って言ってるのに、口では『私』って言ってるのも、もちろん、周りの目を気にしてるっていうのもあるけど、1番は、本当の自分を曝け出して、駿と響に嫌われないか、それが不安だからだ。
あの2人は、原作での
だから、俺は……。
「何悩んでんの〜?」
「別に何も悩んでないけど」
「そうかなぁ? 私が呼びかけてるのに全っ然反応しなかったじゃん」
悩んでいた俺に、1人の少女が話しかけてくる。
といっても、さっきから彼女はずっと俺と一緒にいるのだが。
今俺に話しかけてきたのは、
とある勘違いによって、彼女との仲が急接近した。そのせいか、最近はちょこちょこ話すくらいの仲にはなっている。
まあ、その流れも原作であっただけどさ。だから本当に、俺自信が勝ち取ったものって、何一つないんだ。きっと。
ちなみに、何故彼女と一緒にいるのかだが、今日は響が駿にアプローチするために生徒会に乗り込んでいるため、昼食を美紅魅と取ることにしたのだ。
「バレてないと思ってるのかもしれないけどさ、なじみん最近元気なさそうなのバレバレだよ? まあ、私が人の表情とかそういうの読み取るのが上手いのもあるかもしれないけど」
「最近寝不足だったから、疲れてるってだけ。元気がないと言えばそうかもしれないけど、別に悩みがあるとかそういうわけじゃないってば」
「ふーん………」
美紅魅が疑わしそうに俺の方を見てくる。
そんなにわかりやすかったんだろうか。
いや、それもそうか。薬が足りてないと、やっぱりどうしても自分を偽るのがままならなくなる。
今までは何日かに1度、薬を打ってもらうだけで足りてたのに。
最近は、2日に1回は薬を打ってもらいに行ってる。薬がないと、正常でいられない。
何もかもが嫌になって、でも、薬を打っているときは、とても幸福で、気持ちいい。
あぁ、思い出したら、薬を打ってもらいに行きたくなってきた。
でも、我慢だ。今の状態なら、まだ我慢できる。
大丈夫。まだ耐える。昨日もらったばかりなんだから。
「ちょっと、本当に大丈夫? なんか、辛そうな顔してるけど」
「ぜんぜん、だいじょうぶ…………ちょっと、つかれたから、きょうはそうたいする」
「え? ちょちょちょ、えぇ!?」
やっぱり我慢できない。
今すぐ薬が欲しい。
薬がないと生きていけない。
薬が欲しい
薬が欲しい……
薬が、欲しい
くすりが欲しい………
くすりが…………ほしい
〜☆〜
「よっ! 早退するんだって? なじみんも不良か〜」
「うるさい…………いそいでるから」
「本当に体調悪そうじゃん。大丈夫か? 俺の家のが近いし、寄ってく?」
「黙れ」
こいつは
父親との仲が悪く、彼が原因で両親が離婚するまで至ったとか、そんな話もある。
「そんなこと言わないでさ。そんなしんどそうな状態で、女の子が1人で帰ったら、危ないよ?」
「お前と帰るほうが危ないっての。帰るから、どっか行って」
「人が心配してやってるんだから、それに甘えるのが常識ってもんじゃないの?」
「心配じゃなくて下心でしょ」
「そりゃ……下心がないって行ったら、嘘になるけどさ……」
こいつ、最初に出会った時、白々しく俺に対して『久しぶり』なんてほざきやがった。当然俺はこいつのことなんて知らなかったし、昔知り合いだったとか、そういう記憶もない。
多分、俺の容姿が良かったから、お近づきになりたかったんだろう。
原作には出てこなかったし、ある意味こいつとの関係は俺だけが手に入れたものではある。いや、どっちにしろ、
まあ、普通にこいつのことは嫌いだし、気にはしてない。
チャラチャラしてるし、女遊びが激しいって噂が個人的に無理だ。俺に話しかけてくるのも、俺の容姿がいいからだろう。原作ヒロインなだけあって、容姿は整ってるからな、俺。
もしくは、こいつにとって俺は僻みの対象なのかもしれない。
俺は家庭的に恵まれてる。優しい両親に、ちょっとシスコン気味な兄だ。
ちなみに兄も原作に登場してくる。主に南志実攻略の障害として。南志実の好感度は最初からカンストしてるようなものなので、原作だと南志実√は兄をいかに納得させるかという、そういう話になっている。
これもまた、原作ヒロインの
いや、もう考えるのはやめよう。こんな気持ちも、薬があれば消える。
全部、薬で解決できる。
だからいいんだ。
「なじみんやっぱ俺のこと嫌い?」
「嫌い」
「うわぁーショック。俺はなじみんのこと好きなんだけどなぁ〜」
「うざ……急いでるから。じゃあね」
こんなやつに構ってる暇なんてない。
早く薬をもらいに行かなきゃ………。
「本当に好きなんだけどな………」
そんな彼の呟きは、薬のことで頭がいっぱいな俺には聞こえることはなかった。