TS転生したら主人公の幼馴染ポジだった上に、おっさんの女だった件〜負けヒロインどころの話じゃないんだが〜 作:あへんちんき
「くすり……しゅご…………」
「ククク。気に入ってくれたかね? 今回は量を多めに入れて見たんだ。中々クるだろう?」
「もっと…………もっひょ!」
「呂律が回っていないようだよ。まあいい。そうだね、私のことをご主人様、と呼びなさい。そしたら、もう少しだけ薬をおまけしてあげよう」
「お、おねがいひまひゅ! ごひゅひんはま、おくすり、くらひゃい!」
「仕方ないね。ほら、薬だ。受け取れ」
「あ、これ、こりぇ、すき………すきぃ…………」
「無様な姿を晒しおって……。最初はあんなに生意気だったのに。薬を使ってやればすぐこのザマだ」
「あ“ー”ー“ー”ー“ー”! おくしゅり、いい、しゅごい………ひあわへ……」
「ふん。この調子なら、完全に私の女になるのも、そう遠くはなさそうだな……そうだな。今のうちに、ビデオも撮っておこう」
「おいひい………おくしゅりぃ………」
「お前の醜態もビデオに残しておいてやる。私から逃げられると思うなよ………南志実ぃ………」
〜⭐︎〜
「ただいまー」
「南志実、話がある」
薬を貰った次の日。
俺はいつも通り、特に寄り道することなく家に帰ってきた。
ただ、少し厄介なのが、玄関で仁王立ちしている俺の兄
兄はかなりのシスコンで、妹のことになると急に勘が鋭くなるからな。警戒しておかないと。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「いや、響ちゃんから連絡があって。何だか最近、南志実の元気がなさそうだって」
「それは………うん。ごめんお兄ちゃん。私、ちょっとゲームがしたくて………。夜更かししてたんだよね。元気がないように見えたのは、多分寝不足で疲れてたからだと思う」
「…………そう、か。女の子なんだから、あんまり夜更かしはするな」
「それじゃ、私はこれで……」
「待て、まだ話すことがある」
ほう。俺の元気がない原因については話したつもりだったが……。
どうやら兄は他に話したい内容があるらしい。
まあ、多分バレンタインのことだろう。俺はバレンタインデーは兄に欠かさず手作りチョコを作っていたからな。
ゲーム本編でも、南志実はお兄ちゃんっ子で、バレンタインデーの日には手作りチョコを作っていたってエピソードもしっかりあるし、ゲーム本編のヒロインがやっていたのだから、当然俺もやるべきだって思ったのだ。
まあ、俺自身兄のことは家族として好きだし、ゲームとか関係なく、兄にはバレンタインデーにチョコを渡してあげたいって気持ちはあったんだけどな。
「お兄ちゃん、ごめん。バレンタインのチョコ、作り忘れてて」
「いや、そのことはいいんだ。いつも作ってくれてたのに急に作ってくれなくなったのは少し……………いやかなりショックだったけど、そのことではないんだ。ただ、気になることがあって」
「?」
「南志実、最近お前、帰りが遅いことが多くないか? 何やってるんだ?」
兄は心配そうな顔で
この兄、シスコンだからな。帰る時間が遅いつっても、普段は怪しまれないために一旦家に帰って、兄達が寝るまでは家にいるんだが。
夜中に出かけたこと、バレたんだろうか。だったら、さっき夜更かしでゲームしてたって嘘も、見抜かれていたことになる。
「いつも通り帰ってるけど」
「夜中、出かけてるだろ?」
ああ。やっぱり、バレてたんだな。
………しかし、どう誤魔化そうか。男を作っただとか、そんな嘘をついたらついたで面倒臭いし……。うーん。
「お兄ちゃんには関係ないことだよ。気にしないで」
「関係ないことはないだろ」
「お兄ちゃん、しつこい男は嫌われるよ。本当に気にしないでいいから」
「うっ、妹に反抗期が………」
突き放すかのような俺の言葉に、心を痛めてしまう兄。
これはいかん。この兄、
実際にゲーム内で駿との恋愛を否定する兄に対して南志実が反抗的な態度をとった場合、兄が精神崩壊してバッドエンドに直行するとかいうクソゲー仕様があるくらいだ。
「えーと………別にお兄ちゃんのこと嫌いになったわけじゃないっていうか……。むしろ好きだから。ただ、その………」
「そうかそうか。お前はお兄ちゃんのこと大好きだもんな。いやー! ブラコンな妹を持つと困るなー」
そこまでは言ってないし、いくらなんでも立ち直りが早すぎる気がするが……。
しかし、俺から嫌われたわけじゃないとわかった兄は、どこか上機嫌で…。
うん。今ならさっきまでの話、なぁなぁにできるかな?
「じゃあ、私、部屋行くから」
「待て、まだ話は終わってない」
「お兄ちゃん大好き」
「そっかー。俺も大好きだぞ南志実〜〜〜〜。………って、誤魔化そうたってそうは行かないぞ」
はぁ。まあ、そうは行かないよね。どうしたものか。
「お兄ちゃん。ごめん。言いたくない」
「どうしてもか? 俺は、お前が心配なんだ。父さん達には言わないから、正直に話してほしい」
「…………ごめん。本当に言いたくない。どうしても、無理。それに、言ったところでお兄ちゃんにどうこうできる話じゃないから」
ああ、そうだ。どうしようもない。
本当に、俺はなんてことをしてしまったんだろうか。
何であんなおっさんの言いなりになることになってしまったのか。
本編の長田南志実は、何不自由なく暮らしていた。
ああ、結局、中途半端な原作知識を持って俺が転生してしまったから。
だからこうなってしまったんだ。
何も知識がなければ、今頃家族と平穏に暮らす長田南志実がいたのかもしれない。
ああ、本当に、取り返しがつかない。
最初は、取り返しがつかないし、とりあえず完全な怪異になった後、
父親からも、母親からも。そして、兄からも。
愛情あふれる家庭で育ってきた。
虐待だとか、そんなものは一切なかったし、借金があるわけでも、片親というわけでも、とりわけ貧乏というわけでもない。
長田家は、
だから、
兄なんて暴走してどうなることか分からない。
「どうしようもないって……。話す前から決めるなよ。俺はお前のお兄ちゃんなんだ。辛いことがあれば、話せばいい。吐き出すだけでも、楽になるから」
話した方が、いいのだろうか。でも、話したところで、兄に辛い思いをさせてしまうだけになるだろう。どうすれば、いいのか。
「お兄ちゃん……実は…………」
ゲームじゃ選択肢がある。
けど、ここは現実だ。そんなものはない。
セーブもできなければ、ロードだってできない。
今、ここで。
自分で考えて、それで答えを出さなきゃいけない。
話して、いいのかな。
「私は………」
でも。
「お兄ちゃん。ごめん………」
「あ、おい、南志実!」
そう言って俺は兄の横を走って通り抜け、自室に引き篭もる。
無理だ。兄に話すなんて。
『おっさんに薬漬けにされてやめられません』なんて。
そんなこと、言いたくない。
それに、言ったところで何になる?
多分、俺に薬を使わせないように努力するんだろう。
でも、一度薬漬けにされた人間は、薬なしじゃ生きていけない。
意味がないんだ。兄に言ったところで。
むしろ、薬がもらえなくなるし、兄にも嫌われてしまうかもしれないのだから、言わない方がいい。
だから、俺の選択肢は間違ってない。
きっと、今俺は、正しいルートを進んでいる。
きっと、そのはずなんだ。
最初会話文しかないのは、主人公ちゃんの脳内が薬でとろサーモンになってまともな思考ができないからだったり。
ちなみに主人公ちゃん、ゲーム本編の南志実よりブラコン度合いは上だったりもする。