魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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魔法少女の決闘!? 輝き放つその武器は――

 

校庭はなお、騒然としていた。

 

全員の視線は、台の上にいる三人に向けられている。

 

メンチを切っている乱入者、ひと昔前のスケバンを思わせる雰囲気のナツ。

これも予想の範囲だといわんばかりに薄笑いを浮かべている髭に白スーツの校長。

そして小さな子供のような屈託のない笑みを浮かべている鳴神美雷。

 

校長を挟んで、黄色の魔法少女二人が対峙する形だ。

しかし、その表情は対照的としか言いようがない。

 

「ナツさんって言うんだぜ? これからヨロシクなんだぜ~!!」キィンキィン!!

 

「アンタ……ナぁメてんのかい!?!?」

 

美雷はマイクを手にしたままだ。

出し抜けの挨拶はマイクで校庭中に拡散されていた。

かたや、ナツは地声のデカさで対抗している。

 

 

 

「アタシはアンタのコトをシメるって言ってんだよ!! 言ってることわかるよなあ!? 脳みそスポンジかあ!? ああぁ!?」

 

「??? 脳みそはスポンジじゃないんだぜ……。何でそんなに怒ってるんだぜ……? あ、もしかして……!!」

 

美雷がすっと手を伸ばした。

マイクを手にした方の手を。

 

「マイクがほしかったんだぜ!! 飽きたからあげるぜ!!」

 

(絶対そうじゃないでしょーーーー!!)

 

 

 

脳内で絶叫した青の少女――雨宮千雨は校庭の中ほどでそのやり取りを見ていた。

一部の魔法少女達は危険な気配を感じ取ったのか台から逃げるように離れていく。

 

そして、全く動かない者もいた。

 

「トロッコのナツに目を付けられるなんてツイてないわね、あの子。……ま、私なら余裕で返り討ちだけど」

 

隣の桃色の魔法少女がふふっと不敵な笑みを浮かべた。

なぜだか一回り小さな緑の魔法少女(すやすや寝ている)をおんぶして。

 

人の面倒を見ているくらいだから相対的にマシだろう、と判断して千雨は話しかける。

 

「あなたは……?」

 

「私? 私はこのGAKUENで最強の魔法少女よ。それもぶっちぎりでね」

 

……やっぱり面倒そうな人だったかもしれない。

なんて考えながらだったから、ぽろっと失礼な発言がこぼれてしまった。

 

「最強って……。じゃあ何でマイク取れてないんですか?」

 

「ふん、校長ポイント100点なんかに釣られる私ではないわ。マイクなんか最初から取る気はなかった。その代わりに見ていたの。全員の動きをね」

 

「全員の……?」

 

「そ、私が本気を出したら私が取るに決まってる、だったら最近このGAKUENに入った魔法少女の力を見極めた方がいいでしょう?」

 

一理ある、と千雨は思った。

桃の少女の自信過剰っぷりはさておき、確かにこの倍率でマイクを取りに行くのは最初から得策ではないという考え方だ。

魔法少女の持つ変身や武器生成の能力にも得手不得手があるのだ。

向いてないのに無理に取りに行く必要はない。

 

だったら、他の魔法少女の分析に全振りするべきだった。

 

(そういう選択肢も取れなかったのよね、私……)

 

「ふん、てっきりあなたもそういう戦略かと思ったけど違うようね。ま、私みたいに最強の魔法少女じゃないと瞬時に判断するのは難しいかもしれないけど」

 

「じゃあ、あなたはあの美雷って子が何をしたかもわかるんですか……? ものすごいスピードで移動したように見えましたけど……?」

 

「……」

 

「……? どうしたの?」

 

「……ま、あの子が何をしていようが私の敵ではないわ。私は最強の魔法少女だし……」

 

(あ、わかってないやつだコレ……)

 

最強を連呼する桃の魔法少女の背中で、緑の魔法少女は寝ぼけて桃色の髪をはむはむしていた。

台の上から聞こえるドスの効いた声もなんのその。

 

 

 

「なんでますます怒ってるんだぜ~!?」

 

「アンタがナメ腐った態度取ってるからだろうが!! だいたいなんだい!? 究極の魔法少女なんて……そんなのガキでも言ったりしないよ!! 魔法少女なんてモンスターと戦わされるだけの存在だろ!?」

 

「……!! 魔法少女のことを悪く言ったらダメなんだぜ!! それは……良くないんだぜ……!!」

 

「ふん!! そんなに文句があるなら決闘で勝負をつけようじゃないのさあ!! 魔法少女の決闘でよお!!」

 

突如出てきた物騒なワードにあたりがざわつく。

それは千雨も例外ではない。

 

「決闘……? 決闘!? いやいや!! 決闘罪ってご存じですかって感じなんですけど!?」

 

慌てふためく千雨の横で、最強の魔法少女(仮)が補足をしてくれた。

 

「このGAKUENに限っては魔法少女決闘規則がある。つまり、いくつかのルールと共に魔法少女同士の決闘は容認されているのよ。……ま、私なら誰と決闘しても勝てるけどね」

 

……治外法権にも程があるだろ!!

よく今まで成り立ってたなこのGAKUEN!!

 

 

 

千雨の脳内ツッコミを遮るように野太い笑い声が響き渡った。

声の主は、ヤバいGAKUENのヤバそうなトップである。

 

「はっはっは!! 良いではないか!! 究極の魔法少女には戦友(とも)との仲違いバトルも必要!! 勝者には100……うーん、マイクが100だっだな、120? うん、120点の校長ポイントを与えよう!! なお、決闘の最後には『お楽しみ』もあるので期待してくれたまえ!!」

 

(既にクッソ適当臭いわね校長ポイント査定……)

 

校長は置いといて。

台の上の少女のうち背の低い方――鳴神美雷の眉がぴんと張った。

どうやら答えは決まっているらしい。

 

「決闘、受けて立つんだぜ!!」

 

「おやぁ? センコーの用意したクッソみたいなポイントがそんなに欲しいのかい!? 優等生気取りがハナにつくんだよ!!」

 

「そうじゃあ、ないぜ」

 

「……なんだって? じゃあナンだってのさ!?」

 

「私はあなたに……先輩に魔法少女のことを謝ってほしいだけなんだぜ。わかってもらうために、私は戦うぜ!!」

 

チッと、ナツが舌打ちをする。

 

 

 

誰からともなく、校庭にいた魔法少女たちが脇へと寄っていく。

千雨と隣にいた桃の少女(とおんぶされていた緑の少女)も例外ではない。

 

半径25メートル程度の、カラフルな少女達に囲まれた円。

決闘の場所へと二人の少女が進む――。

 

二人が10メートル程度離れて向かい合う。

千雨たちはナツの真後ろ、つまりは鳴神美雷の正面へと立つ形になった。

 

「何が始まろうとしているの……?」

 

「言ってたでしょ、決闘よ。決められた距離だけ離れて合図とともに互いの魔法力を解放する。変身型なら変身、武器型なら武器を出すみたいにね。あんたも新入生みたいだけど、これくらいの説明はわかるでしょう?」

 

わかる。

変身型の魔法少女は全身に魔法力を身に纏って、周囲の魔法力密度を高めるスタイル。

武器型の魔法少女は魔法力を固有の形(例えば剣とか)に変形させて戦うスタイルだ。

 

要は魔法力の空間的密度と時間的密度がどうなっているかなので厳密に区分されるものではない、らしい。

自分にも武器はある、青色の冴えないやつが――。

 

千雨は気を取り直すように桃の少女へ疑問を投げる。

 

「でも魔法力は人体に影響がないんでしょう? どうやって決着を……」

 

人体(・・)にはね。魔法力と魔法力は干渉する……つまり強い魔法力は相手の魔法力を打ち消すことができるのよ。それで相手の魔法力を消耗させて参ったって言わせたら勝ち。……ま、私は最強だから誰と戦っても――」

 

得意げな桃の少女から目を外して、千雨は正面を向いた。

 

どうやら合図は校長が出すらしい。

運動会で使うようなピストルを手にしてニコニコとご満悦の様子だ。

 

このオッサン、どう見ても自分が一番楽しんでるだろ。

 

そう思ってるうちに、ピストルが天に向けられた。

 

 

 

千雨から見たナツは後姿だが、自信たっぷりっといった様子である。

明らかに戦い慣れしていそうだ。

 

対して、向こう側にいる鳴神美雷は――。

 

 

青の瞳と黄の瞳。

 

 

目が合った。

 

 

美雷は右手をあげた。

千雨は最初、いつ合図が出てもいいように武器を出す予備動作なのかと思った。

 

違うとわかった。

 

だって、小さな子供みたいな満面の笑みを浮かべているのだから。

 

 

 

そう、私は今朝に電車で出会った子。

ステキな偶然ね?

でも今はそれどころじゃない。

 

(あ、あの子……もしかしてーー!!)

 

 

 

号砲。

 

 

 

ナツが気勢良く手を打ち鳴らした。

校長は「結構デカい音が出たなあ」と、手にしたピストルを満足げに見つめていた。

 

そして鳴神美雷は――。

 

 

千雨に向かって手を振っていた。

 

 

「隙だらけなんだよお!!」

 

ナツが地面を両の手で叩く。

現れたのは黄のレール。

 

レールはノンキに手を振っている少女の足元まで伸びた。

黄の枕木が少女の足を挟み込む。

 

手を振っていた少女は、やっとこさ「ん?」と視線を下げた。

 

千雨の横で桃の少女が呆れたような声を出す。

 

「あの新入生、ちょっとは期待したんだけど見込み違いだったかしら? あんなにあっさり術中にハマるなんてね。トロッコのナツの必殺技、それは――」

 

解説がなくたってわかる。

トロッコのナツの必殺技は――。

 

「デッドリー・トロッコ!! こいつがアタシの武器さ!! 軌道こそ固定だが威力十分の必殺武器(・・)よぉ!! ションベンちびっちまいなシャバガキ魔法少女ーーーー!!」

 

「う、動けないんだぜ……!! 先輩はすごいんだぜ……!!」

 

「ははは!! どうだい!? アンタがどんな変身や武器を使うのか知らねえが……いくらすばしっこく動けようが身動きが取れなきゃ意味はねえ!! さあ、トロッコの餌食になっちまいな!!」

 

ナツの前に黄色いトロッコが生成されていく。

薄い影だったそれが、時間に経つにつれ強固な光の箱と化す――。

 

ナツが仕切っていた一団から歓声があがる。

他の魔法少女たちも、もう大勢は決まったと見たのか弛緩した空気が流れていた。

校長はもう一発撃ちたくなったのか、ピストルをカチャカチャいじっている。

桃の少女は腕組みをして鼻をならしている。

その背中ですやすや寝ている緑の少女は、桃の少女の長い髪をしゃぶっている。

 

私は――。

 

 

できることなんか何もない。

 

 

私は何も――。

 

 

「まだできることは……あるんだぜ!!」

 

身動きが取れないはずの黄の少女が、声をあげる。

まるで千雨の魂に語りかけるように。

 

鳴神美雷は、袖をまくった。

 

「今更どんな武器を出そうが無駄さ!! 準備に時間がかかる分このトロッコの破壊力はレベルがダンチ!! なんぴとたりとも止められるわけがねーーーー!!」

 

ナツが手を伸ばす。

トロッコに触れたその瞬間――。

 

黄の箱は一直線にレールを爆走した。

 

 

 

かたや、必殺の武器の完成。

かたや、武器すらまだ出していない。

 

誰もがナツの勝利を確信していた。

二人の例外を除いて。

 

一人目は雨宮千雨だ。

彼女だけは最後の最後まで、美雷から目を離さなかった。

 

そして、目撃した。

 

美雷の手が、淀みない動きで構えを取っていたことを。

 

その手が黄金の輝きを放っていたことを。

 

そして、気付く。

 

鳴神美雷は武器を出してなかったんじゃない。

 

 

出す必要がないのだ。

 

 

これは言うなれば――。

 

 

「魔法少女カラテ……!!」

 

 

例外の二人目は、言うまでもなく鳴神美雷である。

 

 

「ライトニング・正拳突き!!」

 

 

限界まで溜めた一瞬を。

極限まで研ぎ澄ました一点に。

 

猛然と美雷に迫ったトロッコは、それを越えるスピードで真逆の方向へ吹っ飛ばされ――。

 

 

 

トロッコのナツへと直撃した。

 

 

 

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