魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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雨宮千雨の真の力!? 限界ギリギリ生存競争!!

 

「美雷!!」

 

「はあ……はあ……」

 

 

校庭中央のクレーターにたたずむ恐竜。

その少し離れたところに魔法少女が二人。

校庭を埋め尽くすほどの貝と同じものが、黄の魔法少女の体中にへばりついている。

 

「こいつら……美雷から離れろ!! このっ!! このーーーー!!」

 

千雨が力任せに貝のひとつに手をかけるも、貝はびくともしない。

苛立ちが胸を浸していく。

 

ただの貝に美雷が負けるなんて、そんなことは――。

 

 

 

「ガハハ!! アンモナイトたちは活躍してくれた!!後で労ってやらなくちゃな!!」

 

破裂音のような笑い声が頭上から降ってくる。

恐竜の頭部から生えた男、四天王のグレンからのものだ。

 

千雨の苛立ちが水位を増した。

 

 

「……四天王!! あんたはあの校長の言いなりなの!? あの男はGAKUENの魔法少女をTAIGAKUさせるって言ってるのよ!?」

 

「ガハハ!! 俺は俺の好きなティラノサウルスとアンモナイトに自由でいてほしいだけ……!! だがそのためには、やりたくないことも、やらなきゃいけないってことなんだよな。ガハハ!!」

 

「……なにそれ!!」

 

千雨は吐き捨てる。

思った以上に感情がこもったのは男の言葉に神経を(さか)()でされたからだ。

 

やりたくないことをやる。

 

それは諦めて受け入れるということだ。

唾棄すべきことだ。

 

「アンモナイトも恐竜も既に滅んだんでしょ!! 大人しく消えてろっつーの!!」

 

「千雨……!!」

 

体をアンモナイトに蝕まれながら、美雷が千雨を制止する。

しかしその声が届いたかは定かではない。

 

千雨の苛立ちは、既に満タン状態なのだ。

 

 

「ガハハ!! 既に滅んだ……!! 既に滅んだかあ……!! まあ確かにそうだ。……だがそれを認めるということは、俺たちはどうすればいいのか? という話になるな。ガハハ!!」

 

「ならないわよ!! ワケのわからないことをペチャクチャペチャクチャ!! 四天王の言ってることなんてテキトーなコトばっかでしょ!!」

 

「……千雨っ!!」

 

再度の制止を振り切って千雨は一息に言う。

自分自身、こんな雨宮千雨(・・・・)は初めてだ。

 

強制TAIGAKU者が1時に出ることだって影響している。

焦りや不安が、凝縮されて体に蓄積されているのだ。

 

赤き恐竜の王は、それでも言葉を続ける。

 

「ガハハ!! 全ての生物はいつかは滅びるんだよなあ。急な環境の変化、隕石という不慮の事態、時には他の種(・・・)による乱獲によって……じゃあそこで一つの疑問が湧きあがる……人類はいつ滅ぶのか?ってな。ガハハ!!」

 

うるさい。

 

うるさいうるさいうるさい。

 

 

そんな言葉、聞きたくない。

自分には、鳴神美雷の言葉だけがあればいい。

 

千雨自身、思ってもみなかった本音。

極限状態で露わになったことが、また千雨に負荷を与えた。

 

千雨の苛立ちは、既に容量を超えて、なおも注がれ続けている。

 

 

「他の生物のことなんか知ったこっちゃない!! 私は、私と私の大事な人が生きてればそれでいい!! どうせ全部いつか終わるんでしょ!? だったら自由にやらせてよ!!」

 

「……千雨ーー!!」

 

なおも赤い貝にまとわりつかれる黄の少女の声は、やはり届かない。

赤恐竜はこころなしか寂しそうに(こうべ)を垂れると、言った。

 

「ガハハ!! そうか……そういう考えもあるかもな……。だがそれが物理的にできない事態になったらどうする? 否応もない選択を迫られた時に、ワガママを言ってもどうにもならな……」

 

「ワガママ……ですって!?!?!?!?」

 

「ガハ……え? 今のそんな重要だったかな?」

 

たじろぐ恐竜をよそに、千雨の体が青い光に包まれる。

 

 

「この私が……ワガママですって!? 言うにことかいて、そんな……そんな……!!」

 

「千雨!! 落ち着くんだぜ!! 私の話を聞いて……」

 

「そんなワケあってたまるかぁぁぁぁーーーー!!」

 

千雨の苛立ちは、決壊した。

 

内に溜めれなくなったものは、外へ漏れ出るだけだ。

苛立ちは、外気に晒され、光を放ち、蒸発して天へと昇っていく。

 

そして雲ができる。

 

青い光の雲が。

 

 

辺りが、青の光で包まれる。

青い雲が本物(・・)の太陽を隠し、代わりにGAKUENを照らしているからだ。

 

 

「魔法少女がなんのために戦っているか!? そんなもの『敵』を倒すために決まっているでしょ!? 自分にとって不都合な存在……あんた達みたいのを『消す』ためよ!!」

 

 

天から雨が降り注ぐ。

否、それは雨ではなかった。

 

無数の青い棒が、GAKUENへと落ちていく。

 

これが、雨宮千雨の真の能力――。

 

 

レイニー・ストーム(みんな消えちゃえー)!!」

 

 

青い光が、空からあらゆる物体を貫通して地面へ。

自己の周囲だけが台風の目のようにぽっかり空いた安全圏。

無差別の超範囲攻撃。

 

いまだ青く輝いてる千雨は笑みを浮かべた。

至る所で赤い貝どもが、粉微塵に砕けていくのがわかった。

 

――こんなことができたんだ、私って。

 

これでいい。

最初からこうしてればよかったのだ。

 

不都合のない人生を送りたいなら、邪魔者を全て排除すればよかったのだ。

そして自分は大好きなあの人と――。

 

「……千雨」

 

目の前の黄の魔法少女は泣いていた。

どうしてかは千雨にはわからない。

 

「美雷!! あなたの体に付いているジャマモノも洗い流してあげる!! 私が戦うのはそのためだもの!!」

 

「……」

 

美雷がしゃべる。

ぽつりぽつりと、雫が垂れるように。

 

「千雨……さっきの決闘の時、大好きって言ってくれてうれしかったんだぜ……。私も千雨のことが大好きなんだぜ……」

 

聞こえていた。

千雨の一世一代の告白は。

 

「じゃあ、いいじゃない!! GAKUENのことなんかもうどうでもいいわ!! あのクソ恐竜を倒して、クソ校長も倒して私達二人の世界をツクりましょう!!」

 

「それじゃあ、ダメなんだぜ……!! だって魔法少女の戦いは――」

 

まだ、聞けてなかった美雷の答え。

それは――。

 

 

「日常を守るためなんだぜ!!」

 

 

「にち……じょう……? 何を……!! 日常って何よ!!」

 

「日常は日常なんだぜ!! 晴菜ちゃんがいて、風花ちゃんがいて、ナツさん達がいて、魔法少女がたくさんいて……そして千雨がいる、そんな日常だぜ!!」

 

みんながいる日常。

そうだ、そうだった。

 

みんなで究極の魔法少女を目指す。

 

それこそが鳴神美雷の夢。

 

「こんなにいっぱい雨を降らしたらみんなが困るんだぜ!! だから!! 私は千雨を止めきゃいけない!! それが悲しいんだぜ!! でも、やらなくちゃいけないから!!」

 

「何を言ってるの美雷!? これはあなたのためなのよーーーー!!」

 

鳴神美雷が千雨へと一歩を踏み出す。

体中に貝は付いたままだ。

上手く魔法力は扱えないだろう。

 

しかし問題はない。

魔法は使えなくても、彼女は少女だから。

 

「ただの少女カラテ……」

 

え? と千雨が声を上げた。

 

 

グーパンチ(目を覚ますんだぜ千雨ーーーーー)!!」

 

 

千雨の顔面に、美雷の拳がめり込む。

そのまま勢いをつけて後方へと吹っ飛んでいく。

 

最中、千雨はやっと気付く。

 

自分がやっていることが、どういうことなのか。

 

魔法少女が戦う理由。

敵を倒すことなんかじゃ、ない。

本当にほしかったのは美雷との日常。

 

そして、今、行っている無差別攻撃は多くの無関係の魔法少女を巻き込むもの。

他の魔法少女たちの日常を奪うということ。

 

あの校長がやっていることと、同じなのだ。

 

「こんな簡単なことに気づけなかったなんてね……」

 

「千雨!? 殴ってごめんなんだぜ!! でも、戻ったみたいで……私……私……」

 

再びウルウルお目目になる美雷を千雨は優しく抱きとめる。

こうやって、自分に本気で向き合ってくれる人がいるのは、喜ぶべきことなのだろう。

 

体の青い発光はもう止まった。

雨は止み、雲のような青い光だけが空に残っている。

 

何か忘れてるような気もするが、一件落着の感がある。

 

 

「ガハハ……!! 魔法少女は日常を守るために戦う……!! 良い答えを聞かせてもらったぜ!!」

 

「あ……四天王!! そういえばまだ倒してなかった……!!」

 

四天王である赤い恐竜は、先ほどの青い暴雨(レイニー・ストーム)に晒されて若干体が欠けていた。

それでも勢いは失っておらず、むしろ貫禄がついた感すらある。

 

 

「ガハハ!! 13時まで残り数分……。生き残りをかけた最期の生存競争といこうか魔法少女!!」

 

「……!!」

 

恐竜の爪が巨大な車輪へと姿を変える。

千雨にはわかった。

貝の渦巻きをイメージし、それを恐竜の姿に反映させたのだと。

 

 

「俺は子供のころから恐竜が好きだった……そしてある時、お絵かきをしていた時に恐竜が寂しそうだと思ってアンモナイトを添えてみたんだ」

 

「急にいったい何を言ってるの!?」

 

「ガハハ!! 最後かもしれないんだから聞いてくれ!! 強そうな恐竜とかわいいアンモナイトの組み合わせ……これは俺の中で大ヒットした……そして、思いを馳せたんだ……」

 

 

「中生代の生き物には中生代の生き物の日常があって、それはいつしか崩れ去った……じゃあ俺たち人間の日常もいつか崩れ去るんじゃないかってな……」

 

「……!!」

 

恐竜がお尻あたりからエンジンをふかす。

最後の時が迫っているのだとわかった。

 

 

「……千雨!!」

 

「大丈夫よ、美雷。わかってる……!!」

 

いまだに美雷の全身についてる赤い貝を見て、千雨の胸に湧くのはもう苛立ちではなかった。

この能力には、この四天王の『好き』がつまっている。

 

だから否定するのではなく、想いを受け止め力に変える――。

 

「ナツの時にも思ったのに……本当に迷って進んで、また戻って……本当にイヤになっちゃう……」

 

千雨の体が再び青く輝く。

 

「でも、それが『日常』なのよね。ささいなことで悩んで、笑って、少しずつ前に進む。私は人間だから人間の『日常』しかわからないけど……でも、それを大切だって思えるようになった!!」

 

――隣にいる誰かさんのおかげで。

 

 

赤い恐竜と、青い魔法少女が対峙する。

己の生存をかけて――。

 

 

「ガハハ!! 吠えろ恐竜!! グレン・ザウルス・オブティラノーーーー!!」

 

突っ込んでくる恐竜を――。

 

レイニー・トルネェェェェドォォォォ(これが私の日常だああああぁぁぁぁ)!!」

 

青い渦巻きが、打ち返した。

 

 

「ぐわああああぁぁぁぁーーーーー!? これで恐竜も終わりか……でも、イイものを見せてもらった……」

 

 

「千雨!!」「わかってる!!」

 

橙忍者の時も、紫戦車の時もその変身を解けば1000点が加算されていた。

だったら恐竜の変身さえ解けば――。

 

恐竜がその身を散らし、消えていく。

クレーターの中心に大柄の男が大の字になった。

 

アンモナイトだけ顔に乗せて。

 

「ガハ……え? トドメをささないのか? 魔法少女?」

 

千雨は放送を待った。

そうでなくても、午後一時には放送がある。

 

あの出しゃばりの校長が、四天王が倒されたという事実を放送するはずなのだ。

 

 

『ハッハッハ……諸君ら、生存祭は捗っているだろうか? たった今、本当にたった今、とびきりのニュースが入った!! 校庭で暴れていた四天王を、雨宮千雨クンが撃破したのだ!! 拍手!! その苦労に報いるため雨宮千雨クンに1000点!!』

 

「……千雨!! よかったんだぜ!! これでとりあえずTAIGAKUにはならないんだぜ……!!」

 

「もう、そんなに喜ばなくていいわよ」

 

何なら千雨からすると校長の思惑に乗ったようで(しゃく)ですらあるが、今はいいっこなしだ。

この与えられた時間で、校長を必ず――。

 

 

『さあ、私の放送はこれで終わらない!! 午後一時のTAIGAKU者発表の時間だが……こちらにも嬉しいサプライズだ!!』

 

「……!! もしかして、むりやりTAIGAKUにするのは止めるとか、なんだぜ!!」

 

「……美雷、そんな甘い考えは捨てた方がいいわ。校長の嬉しいサプライズ、校長にとっての嬉しいサプライズよ」

 

しゅんとする美雷に千雨はぴしゃりと言いきる。

心苦しいが仕方がない。

人の悪意を考慮するのは自分の仕事だ。

 

『つい先ほど廊下で生徒が叫んでいたのだ……「校長ー!! 隠れてないで出てきなよー!! アタイの軍団のヤツに手を出したらヨウシャしないよー!! やるならまず、私からやりな!!」……と!!』

 

「……!! そのしゃべり方は……もしかして……」

 

「トロッコのナツ……!?」

 

校長の裏声での声真似はどうでもいい。

とにかく、黄の魔法少女軍団は校長を打倒すべく動いていたのだ。

 

 

『さあ、彼女にも報いなければなるまい!! だから私は決めた!! ルールに例外はつきもの!! もともとは校長ポイントゼロの魔法少女全員TAIGAKUだったが、ある一人の魔法少女だけをTAIGAKU処分とする!! その一人は……!!』

 

スピーカーから愉悦の音が漏れる。

 

 

『黄の魔法少女軍団のリーダー……トロッコのナツだ!!』

 

 

 

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