魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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錯綜する情報!! 探せ!! 真の校長室!!

 

いまだに放送が続く中、緑の少女は教室でたたずんでいた。

周囲を取り囲むのは橙、赤、紫の三人の少女。

 

それぞれが手にした武器を、教室の中央にいる緑の少女に向け合っている。

 

 

GAKUEN全体が混乱、喧噪、呆然……様々な感情に飲み込まれる中、緑の少女は最愛の人を探した。

そして、便宜上の所属クラスであるここにも、念のため足を踏み入れたのだ。

 

結果は見ての通り、待ち伏せをしていた魔法少女に取り囲まれたワケだが。

 

「キミたちさあ? 晴菜のコト知らない?」

 

「はあ?」と素っ頓狂な声が三つ上がる。

 

「その様子じゃ知らなさそうだね。……じゃあいいや、さよなら」

 

三人が喚く。

 

曰く、自分達を舐めてるのかということ。

曰く、自分達も生き残るのに必死だということ。

曰く、これから魔法力を奪ってTAIGAKUさせるが、恨まないでほしいこと。

 

 

どれもが緑の少女――淡雪風花にとってはどうでもいいことだった。

 

橙の少女が半泣きになりながら風花にステッキを向ける。

自分だってこんなことはしたくないと――。

 

ステッキは既に、緑の()で固定されていた。

少女の顔が半泣き(余裕)から焦燥に変わる。

 

 

「……で、来るの、来ないの? ボクはムシャクシャしてるんだ。……魔法力を奪おうとした魔法少女なら魔法力を奪われても文句ない。そうでしょ?」

 

スピーカーの放送は、既に午後一時のTAIGAKUになる者が誰か宣言していた。

それでも、少女たちは戦いを続けた。

 

光が乱れ飛び、教室を狭しと少女たちが飛び回り、必殺技の名前を叫ぶ。

 

魔法少女は、戦う者であると言わんばかりに。

 

 

 

 

「そんな……ナツさんが」

 

美雷は、いまだ校庭で固唾を飲んで放送を聞いている。

無理もない、と千雨は思った。

 

ついさっき、ほんの30分前まで話していたその人が――。

 

 

今、消えようとしている。

 

 

『はっはっは!! 今、廊下にいる黄の魔法少女軍団では感動のドラマが起こっているぞ!! 泣きつく舎弟!! 悲痛な面持ちの魔法少女軍団!! ナツが舎弟に自分の代わりに軍団を率いろと、そう言っている!!』

 

「もうやめるんだぜーーーー!! 人が消えるのを……そんな風に言うんじゃないんだぜーーーー!!」

 

「クソッタレ……!! GAKUENに来た日からおかしな男だと思ってたけど……今すぐぶん殴ってやりたい気分よ!!」

 

 

『トロッコのナツの体がキラキラと光に変わる……これこそがTAIGAKU!! 今、ナツはこのGAKUENから消えたのだ!!』

 

美雷が、校庭に膝をつく。

千雨が、美雷を優しくさすった。

 

この男だけは、やはり許せない。

そんな思いを新たにしながら。

 

 

『んんー? ナツが言った去り際の一言があるが……これを伝えないのはフェアではないだろう!! 特に該当の者はよく聞くがよい!!』

 

「該当の……?」

 

千雨が思いを巡らす。

人が、もしも消える時に最後にどんな言葉を残すのか?

 

何も思いつかないまま、答えは述べられた。

 

 

『鳴神と雨宮、後は頼んだぞ……と』

 

 

「……私達に?」「ナツさん……!!」

 

何を頼むのか。

 

決まっている。

 

先ほどの決闘でも言っていたことが思い出される。

校長を倒す。

少女は最後に、想いを託していったのだ。

 

 

「千雨……!! 行くんだぜ!! 校長先生を探して、もうこんなことは止めてもらうんだぜ!!」

 

「何だか背負うものが増えてしまったけど……そうね、やるしかないわ。でも、あいつは一体どこに……」

 

校長だけではない。

いまだに晴菜と風花とも合流はできていないのだ。

 

とにかく今の二人には情報が足りない――。

 

 

「ガハハ!! ちょっといいかな?」

 

 

「きゃっ!?」と千雨が飛びのく。

声の方に目をやれば、ガタイの良い赤毛の男。

 

四天王、赤恐竜のグレンその人だ。

 

「な、なになに!? 私がかっこいい必殺技で倒したでしょ!? 直接の殴り合いとか止めてよね!! こっちはか弱い12歳なのよ!!」

 

「ガハハ!! そうだな……君たちはか弱い。俺に比べるとな!! 力づくで何かをするつもりはないから安心してくれ!! ガハハ!! 」

 

「肯定されると、それはそれでうっとうしいわね……」

 

まあまあ、と美雷になだめられ、気を取り直して千雨は話の続きをうながした。

 

 

「ガハハ!! 単刀直入に言おう!! 俺はもうじき……消える!!」

 

「だぜ!?」「ええ!?」

 

二人分の驚きの声が重なる。

四天王はてっきり安全圏にいるものだと思った。

 

どんな言葉をかけたらいいかわからぬまま、ズンズンと赤毛の男は話すのだった。

恐竜が驀進(ばくしん)するがごとく。

 

「ガハハ……!! 簡単な話だ!! 俺は校長と約束をしていた。一時間ごとに魔法少女をひとりもTAIGAKUにできなかったら、俺自身が消えるとな!!」

 

「え……じゃあ……!!」

 

「ガハハ!! 実は俺、ひとりもTAIGAKUにできなかったんだよなー!! ガハハ!!」

 

何がそんなにおかしいのかはわからないが、とにかく男は笑っていた。

だが、納得する部分もある。

 

男は言っていた、「魔法少女が攻撃したから追い払った」と。

その場にいた魔法少女達も全員(・・)が逃げ惑っていた。

アンモナイトも規模こそ大きかったが、魔法力を完全に奪うにはいたらなかったのだろう。

 

ただ、そこにいるだけの能力。

まるで『日常』のような。

 

 

ガタイの良い男の体が透けていく。

頭にアンモナイトを乗っけながら。

 

「ガハハ!! だが、最後にお前たちのような魔法少女に会えてよかった!! こいつらも喜んでるぜ!! じゃあな!!」

 

「四天王の恐竜さん……!! あなたの想いも私達が継ぐんだぜ!!」

 

「ちょ、ちょっと待ったーーーー!!」

 

四天王と美雷が不思議そうに横を向く。

「待った!!」を入れたのは千雨だ。

 

 

「あなたあの校長の配下でしょ!? 最後にもっと有益な情報を言ってよ!! あいつの弱点とかあいつの場所とか!!」

 

「ち、千雨の青い目が血走っているんだぜ……」

 

「ガハハ!! 校長の情報を残して去るってことか!! その発想はなかった!! 雨宮さんは頭が切れるな!! ガハハ!!」

 

「別にこんくらい普通だしさっさと言え~~~~!!」

 

 

そんなやり取りの間も四天王の体のスケスケ度は上がっていく。

値にして透過率50%といったところか。

 

 

「ガハハ!! うーん、そうだな……校長は俺のことを技術……おっと、とにかく実働要員と割り切ってからあんまり何も教えてくれなかったんだよな。打ち合わせは校長室でやってたが、今は別の場所だろうしな!! ガハハ!!」

 

「いいから……いいから……!! 何でもいい……!! あいつをぶん殴るための情報ならどんなささいなことでもいい……!!」

 

「ち、千雨、どうどうだぜ……」

 

 

透過率80%。

大分向こうの景色が見やすくなってきた。

 

焦りのあまり叫びだしそうな千雨に対して、当の四天王はのほほんとしている。

そんな様子を和やかにすべく、美雷は思ったことを口にしてみるのだ。

 

 

「恐竜さんに何も教えなかったとして、他の四天王さんはどうなんだぜ……?」

 

「あ……!! 確かに!! 四天王同士で話とかしてたんじゃなの!?」

 

「ガハハ!! 良い着目点だな!! 校長の懐刀(ふところがたな)として活躍していたのは橙忍者のオレン!! 校長の居場所を握っているとしたら彼だが……」

 

橙忍者は千雨達と戦ったきり、姿を見せていない。

じゃあここで途絶えてしまうのか。

 

いや――。

 

「あいつからもらった鍵……!! あれってもしかして!!」

 

GAKUENの図書室の地下階段、その奥に広がっていた真っ白な空間。

千雨がその異質さに嘔吐してしまった空間。

 

このGAKUENでもっとも特異で、もっともその存在を知る者が少ない場所――。

 

 

「さすがは千雨なんだぜ!! じゃあ校長先生はあの奥に……!!」

 

「……いえ、あの男は私達が鍵を持っているのを知っているはず。いつまでもいるとは思えない……でも!!」

 

千雨が拳を握った。

 

「あの男なら余裕をかまして、待ち構えている……!! なぜだかその姿が想像できてしまうのよ!! ……ごめん、取り乱したわね。とにかく今はいなくてもあいつがいた痕跡くらいはあるかも……」

 

「千雨……」

 

そして、鍵は晴菜に渡した。

つまりどの道、合流することが必要。

行先として考えられるのは、当然図書室だ。

 

少女たちの話し合いの様子を見て、四天王のひとり、赤恐竜のグレンは満足そうに笑い声をあげるのだった。

 

その透過率は、95%。

 

「ガハハ!! 俺の言えた口じゃあないが……生き残ることを諦めるなよ、魔法少女!! あ、大事なことを忘れていた!! 君たちにも心の準備が必要だろうからな!! 最後の四天王は……!!」

 

グレンの体は、頭のアンモナイトとともに見えなくなっていた。

最後の四天王について何かを言おうとしたようだが……。

 

その様子を見て、二人が口を開いた。

 

 

「晴菜ちゃんと風花ちゃん、無事だといいんだぜ……」

「最後の四天王……いったいどんなやつなのかしら……」

 

 

 

 

淡雪風花は教室から出て行った。

その表情に、感情は宿していない。

 

そんな折に声をかけられる。

 

「アンタ……淡雪風花……っすよね? どうしたっすか!? 何かただならない雰囲気っすけど」

 

ぞろぞろと有象無象を引き連れる少女に、心の底から気だるげに答えを返す。

 

「魔法少女を三人ほど、襲ってきたから半殺しにした」

 

「え……!?」

 

気が高ぶっているのか、そのまま驚く少女にまくしたてた。

 

「そんなに驚くこと? やらなきゃボクがやられてた。まさか非難する気? 不良ぶっていたキミが、ボクを」

 

「そんなことは……アンタ、鳴神や雨宮のダチだと思ってたから……何か意外なだけっす」

 

「ふふ……あはは……!! ダチ……友達かあ……ボクが信じてるのはいつだって晴菜だけだよ」

 

「……!!」

 

「ナツの舎弟。ボクはね、このGAKUENがどうなったって構わないんだ。さっき青い光がバァーって降り注いだのとか、他の魔法少女に襲われたのもどうでもいい。ただ、晴菜の居場所を知って、二人だけの時間を過ごしたいんだよ……」

 

「淡雪風花……お前なんだか、怖いっす」

 

ナツの舎弟の後ろで魔法少女たちが臨戦態勢を取る。

風花一人に対して魔法少女軍団は数十人。

 

にも関わらず、魔法少女軍団はピリピリとした空気を発していた。

 

やらなきゃやられる。

このたった一人の魔法少女に――。

 

 

そんな時に、放送が流れた。

 

 

『諸君!! 大ニュースだ!! たった今、私の居場所を突き止めたものがいた!! わずか一時間とは想定よりも大分早い!! 正義感あふれるその少女は私に挑み……そして負けた!!』

 

 

「え……?」

 

風花が素っ頓狂な声を出す。

校長の居場所について、候補自体はあった。

 

図書室の地下。

 

無限に広がる白の空間。

一目見た時から、異質だと思った。

 

そしてGAKUENで何か特別な場所があるとしたら、ここだと思ったのだ。

晴菜を探すのを優先していたから、行っていなかっただけだ。

 

だが、ここに落とし穴があった。

 

もしも、同じ思考を辿って桃ヶ崎晴菜が校長を探したとしたら、そこへ行くはずなのだ。

風花が唇を嚙む。

……まだ晴菜と決まったワケじゃない。

いや、晴菜のワケがない。

 

あの場所を知っているのは鳴神美雷と雨宮千雨もそうだ。

正義感が強いと言っているなら……鳴神美雷だろう。

 

 

『私と戦ったその少女の名は――』

 

 

 

『桃ヶ崎晴菜』

 

 

 

風花はもう駆けだしていた。

後ろで聞こえる声など、気にも止めなかった。

 

クソ、クソクソ!!

 

何で自分は晴菜がその場所へ行くことを考慮しなかった!?

 

当たり前だろう!?

 

晴菜はいつだって清くてまっすぐで正義感にあふれていた!!

 

あの校長の凶行を許すワケがないだろう!?

 

 

許せるものだと思っていたのか、自分は。

 

 

『さあ、更に事態は動いてきた!! 四人目……最後の四天王が私の場所へと向かっている!! このままいけば桃ヶ崎晴菜クンはどうなるかなあ……はっはっは!!』

 

四天王だと?

 

あんな変態連中、粉微塵にしてやる。

 

大容量の魔法力で押しつぶす。

 

だから間に合え!!

 

自分の足が千切れたっていい!!

 

 

桃ヶ崎晴菜。

 

自分がここにいる意味を与えてくれた彼女に。

喜んで差し出そう。

 

 

 

 

入り口で手持ちの硬貨を強引にねじ込むと、淡雪風花はそのまま図書室へ突貫した。

途中、何人かの魔法少女が彼女を心配してか、あるいは好機と見たか接触をしようとしたが、全て一蹴のもと払いのける。

 

今は少しでも時間が惜しい。

 

『さあ!! 最後の四天王が我が元へ集おうとしている!! いよいよ大詰めといったところじゃあないか……!!』

 

「……晴菜!!」

 

目的の地下階段の扉は、開いていた。

恐らくは晴菜が開けていた。

 

転がり落ちるように、手にした本のページを力任せに破りながら、風花が階段を下りる。

 

そして眼前にはちゃんと光景(・・)が広がった。

 

真っ白なはずの空間は、真っ白ではなくなっていた。

 

ソファと長机。

棚に飾られているいくつかの勲章。

中央に髭の男がいる、大人ばかりが集まった集合写真。

 

そして椅子に座っているのは、子供のような笑みを浮かべる白スーツの髭の男。

 

 

ここが真の校長室。

そして向かいあうは、自分の敵。

 

「コノヤロー!! よくも晴菜をーーーー!!」

 

「はっはは!! 二番乗りだな淡雪風花クン!! おっと私に飛びかからない方がいい。なぜなら……」

 

校長が指をパチンと鳴らす。

すぐ横の床が開き、何かがせり上がってきた。

 

出てきたのは十字架に磔となっていた桃ヶ崎晴菜だった。

 

「は、晴菜ーーーー!!」

 

「はっはっは!! そんなに大きな声で呼ばなくとも気を失っているから大丈夫だ!! 彼女は最後まで勇敢に戦ったことは述べておこう!! 今から四天王の話もあるしこのまま人質とさせてもらおう」

 

「そうだ……四天王!! 最後の一人もここへ向かってるって……!! 全員ぶっ倒してやるよ、ボクが!! どこにいんだよ!?」

 

「はっはっは……最後の四天王は……」

 

張り付いた笑みのまま、続ける。

 

 

 

「既にこの部屋に、いる」

 

 

風花が緑の本を取り出す。

そのまま部屋を見渡す。

 

棚、椅子、勲章、写真、晴菜、そしてクソジジイ。

 

どこにもその姿はない。

いっそ無差別に攻撃するか?

いや、今それをすれば晴菜を巻き込む可能性がある。

 

待て、既に四天王がいるという情報がブラフの可能性がある。

あるいは、見えてないだけなのか。

 

「どこだ……いったいどこにいる!?」

 

「はっはっはっはっは……!?」

 

まるで傑作喜劇を見たと言わんばかりに男が笑い声をあげる。

そして、風花の方を指さしたのだ。

 

風花は最初、自分の真後ろに四天王がいるのかと思った。

だが、それはない。

 

ここに突入する時に、背後をとられないように幾つかページを破いてきた。

 

誰かが強引に破れば、魔法力の揺らぎからわかるはずだった。

 

考えられる可能性は、他にない。

ないはずなのだ。

 

四天王はここへ向かっていた。

四天王は既にこの部屋にいる。

 

それに該当する人物なんか――。

 

 

「四人目の四天王は君だよ、淡雪風花クン」

 

 

「え……」

 

 

音が止まる。

 

 

「橙忍者、紫戦車、赤恐竜……そして緑魔法少女」

 

耳障りなしゃがれた声が、高らかに宣言する。

 

「四人目の四天王は……なんと魔法少女!! キミなのだよ淡雪風花クン!!」

 

 

 

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