「ボクが……最後の四天王……?」
「はっはっは!! その通りだ淡雪風花クン!! まずは詳しい話をしようか!!」
「そんなもんいるか!! 今すぐぶっ倒してやる!!」スチャ!!
校長が机の上の赤いスイッチを押す。
すると磔となっている桃ヶ崎晴菜が、下へと下がっていく!!
「う……うう……」ウィーン
「このまま下へ下へと下がっていくと桃ヶ崎クンは虚無空間へと落ちていく!! いいのかな淡雪クン……?」
「晴菜!! わ、わかった!! 話を聞くから!!」
校長が机の上の青いスイッチを押す。
すると磔となっていた桃ヶ崎晴菜は、ゆっくりとせり上がってきた。
「う、うーん……」ポポポポ……
「上がるの、下がるのに比べてゆっくりすぎない?」
「はっはっは!! GAKUENの最高権力者である私に意見とは……そうだ、それこそが私の求めていたものなのだよ!! 魔法少女たちが飛び立ち、想像を超える瞬間……!!」
「ウザッ」
「……」
校長が机の上の赤いスイッチを押す。
すると磔となっている桃ヶ崎晴菜が、下へと下がっていく!!
「う……うう……」ウィーン
「ああ!! 話を聞くって言ったろ!?」
「はっはっは!! 淡雪クン、目上のものに礼は尽くすべき……そう、魔法少女ならな!!」
校長が青いスイッチと赤いスイッチを交互に連打する。
磔になっていた桃ヶ崎晴菜は、リズミカルに上下運動を繰り返した。
「うーん……」ウィンウィン♪ ぽぽぽ♪ ウィンっぽ♪ ウィンっぽ♪
「晴菜ーーーー!! 校長、晴菜で遊ぶなよ!! 話を聞くから!!」
「はっはっは……それでいい。では始めようか。最後の四天王との打ち合わせを!!」
●
「……ということだ。わかったかね、淡雪クン?」
「……なるほど。校長は最初から一人の究極の魔法少女を育てるためだけにこのGAKUENを作った。それが誰かは教えてくれないけどまあ目星はつくね。……その究極の魔法少女の最後の試練として、晴菜を人質に取り、友人であるボクを差し向ける計画だったワケだ」
「はっはっは!! 理解が早いな風花クン!! もしもキミがその魔法少女を倒すことができたら……その時は君が究極の魔法少女だ!! 桃ヶ崎クンとの
ちっ、と風花が舌打ちをする。
「……今更そんな甘い言葉を誰が信じるんだよ。それにボクがその魔法少女に勝てると本気で思っているのかい?」
「逆に聞こう。なぜ君は勝てないと思っているのかね?」
「何でって……」
風花が口を開こうとする。
そんなの決まっている。
だって――。
……?
答えは出なかった。
風花の頭にあったのは桃ヶ崎晴菜に、最強であってほしいという思いだけ。
本当に、不自然で、理屈の付かないことなのだが――。
これまで自分の強さについて、考えたことがなかったのだ。
「はっはっは!! 沈黙か!! ならば代わりに答えよう!! 淡雪風花クン!! 君は――」
「GAKUENの真の最強の魔法少女なのだ」
「え……?」
「ウソだ……!!」
「本当だ」
「口から出まかせ言うんじゃないよ!! そんなのウソに決まってる!! だって……だって……!!」
己が感情を吐き出すがごとく、淡雪風花が激しく燃え上がる。
自分が四天王だと告げられた時や、GAKUENが一人の魔法少女のためだけに存在すると知った時よりも。
淡雪風花にとっての最強は桃ヶ崎晴菜だけなのだから。
「はっはっは!! 淡雪クンだって本当はわかっているだろう? 君が無意識に全力を出していなかったのは、桃ヶ崎君に最強であってほしいと願っていたからだ。君が本気を出せば他の魔法少女など敵ではない……そうだろ? 例えば桃ヶ崎晴菜クンが鳴神美雷クンとの決闘で見せた
「……」
「さあ、四天王にはふさわしい恰好が必要だな……これを受け取るがいい」
風花の眼前の床が開き、台がせり上がる。
そこにあったものは、緑色の仮面だった。
仮面といってもフルフェイスのやつではない。
夜の女王とかが付けてるタイプのやつだ。
淡雪風花はその仮面に手を取った。
「ひとつ聞かせて。ボクはアンタの目的である究極の魔法少女を倒しちゃうよ。それでいいの?」
「構わんよ。その時は失敗だ。この計画は終わりを迎える」
「ふん……後悔するなよ」
少女が振り返り元来た階段を上っていく。
手には仮面を携えて。
その姿を見送り、真の校長室には男と磔になっている魔法少女だけが残されるのだった。
「ふふふ……魔法少女の最強の敵は魔法少女。いったいどちらの信念が勝つか……まあ考えるべくもない話だ……。あなたも、そう思いますよね?」
男が写真の方に目をやる。
その瞳にはもはや、
夢を見るように、世界を見る。
それがこの男の在り方だった。
●
雨宮千雨と鳴神美雷は既に図書室へと入っていた。
もともと真の校長室が図書室地下だと当たりをつけていたところに、桃ヶ崎晴菜が校長に敗北したとの放送があったのだ。
当然、急いで駆け込んできたため二人の体には汗がにじんでいた。
「魔法少女円が残っていて助かったわね……もうほとんど残ってないけど」
「……そうだぜ、ちょっと残念だぜ」
「あら? 美雷もやっぱり遊びたかったの? 映画をもっと見たかったとか?」
「その……時間があればもっとみんなで遊べたんじゃないかって……。あ!! 気にしなくていいんだぜ!! 晴菜ちゃんを早く助けに行かないといけないぜ!!」
「……美雷」
美雷と晴菜が決闘した時に、千雨の衝動的行動から手に入れたおカネ。
言ってみればあぶく銭。
それでも、使い道に夢を見るのはきっと前向きなことだった。
「そんなの私も同じよ……。みんなで焼き肉とか行ってみたかったし……。あの校長を倒して、TAIGAKUになった生徒がどうなったか聞きだして全部、元に戻してもらいましょう? そうしたらまた平和な日常が送れるわよ」
「……うん。千雨はやっぱり優しいんだぜ」
「な、何よ急に……さ、早く行くわよ!!」
そうだ、今がどんなに酷い状況でも。
夢を見るのは決して悪いことではないはずだ。
みんなで幸せな毎日を送る日常を――。
――本当にあると思ってるのかい? そんなものが?
「……今の声!!」「まさか……だぜ!!」
千雨と美雷が図書室の広い天井を見上げる。
一面に緑の雪が舞っていた。
本棚の山に、キラキラと光る緑の雪が積もっていく。
それはとても幻想的で――。
「おかしい……おかしいわ!! この雪……
そう、絶望的な風景だった。
巨大な図書室を、更に飲み込まんかという緑の雪。
絶え間なく、途切れることなく。
隙間なく、一面に。
「なんだか……歩きにくくなってきたんだぜ……!!」
「……!!」
千雨が足元を見やれば、既に緑の雪は
魔法力と魔法力は干渉する。
この勢いのまま、『緑の雪』が積もっていけば――。
「緑の雪……? いいえ違う!! これは雪なんかじゃない!!」
千雨が『雪』を凝視する。
あまりにも小さくて気づかなかったのだ。
ひとつひとつが薄い切れ端。
細かく破れた緑色の『紙』の一部――。
――気づいたようだね、雨宮さん、鳴神さん。
棚の山を越えた先。
広い図書室の遥か上方に、椅子に腰かけた緑の髪色の少女が見えた。
間違いない、あれは――。
「風花ちゃんなんだぜ!! おーーーーい!! 風花ちゃん、無事だったんだぜーーーー!?」
「ちょっと美雷……!! 良く見て!! 淡雪さん、変な仮面をかぶっている!! あれは……もしかして……!!」
「……!! そんな、ウソなんだぜ!!」
「風花ちゃん……? 誰のことを言ってるんだい」
少女が椅子から立ち上がる。
「ボクはフウカ……最後の四天王……緑魔法少女のフウカ!! ボクと晴菜以外の魔法少女、全員を始末する!!」
少女の仮面が、緑に瞬いた。