魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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甦る悪夢!! 妄執を穿て!!

 

「そんな……淡雪さん……あなたはさっき爆発に巻きこまれたはず……どうして無事でいるの!? 理屈が通らないわ!!」

 

「それをキミが言う? あの爆発の瞬間、ボクは能力をすべて解除して自分の周囲にまとった(・・・・)。そのまま風に乗り、キミ達の近くに着地したのさ。感謝するよ。キミ達がボクをギリギリまで追い詰めたからこそ、ボクは能力の新しい応用(バリエーション)に目覚めたんだ」

 

「風花ちゃん、かっこいい感じなんだぜ……!!」

 

「言ってる場合!?」とツッコミを入れながら、雨宮千雨の体は汗でにじんでいた。

わかってきたのだ。

校長が四人目の四天王として、魔法少女を差し向けた理由が。

 

魔法少女の強さは想いの強さ。

想いが折れない限り、何度でも立ち上がる。

何と勇ましく、頼りになることだろう。

 

だが、それがもし敵に回ったら?

おまけに絶対に人の言うことを聞かず、半ば妄執(もうしゅう)と言える感情で己を駆動させていたら?

 

いくら倒れても立ち上がる英雄が、いくら倒しても倒れてくれない無敵の亡霊と化す。

 

 

「何てタフさなの……!! 身近にこんな恐ろしい奴がいたなんて……!!」

 

「ボクは晴菜と二人だけの世界を生きるんだ!! 残った魔法力でもキミたち二人を倒すくらいワケない!! オラオラ!! どっちからだ、おい!! 人を勝手に美談のダシにしやがって!! 覚悟できてんのか、おい!!」

 

「ひぃぃぃ!!」

 

 

緑の本を振り回しながら、風花が喚き散らす。

最早、何の技術もないただのぶん回し攻撃。

 

だが、千雨と美雷にもまた対抗手段はない。

 

「きゃっ!!」「千雨!!」

 

「はあ……はあ……追い詰めたぞ……!!」

 

やみくもに逃げようとした千雨が、足をばたつかせて転げる。

さながらジャンルはパニックかホラー。

 

そこに思考はない。

あるのはただ、恐怖。

 

 

「くらいやがれええええぇぇぇぇ!!」

 

「きゃああああぁぁぁぁ!?」

 

耳をつんざく悲鳴。

怪しく光る緑の仮面。

振り上げられた分厚い本。

 

だが、次の瞬間も悲鳴の主、雨宮千雨は無事だった。

 

代わりに風花の体は、彼方からのタックルにより小さく吹き飛んだ。

 

タックルを仕掛けたのは言わずもがな、鳴神美雷だ。

 

そう、魔法力が尽きかけていても少女は少女。

肉弾戦はできる――。

 

 

「風花ちゃん……これ以上はやめるんだぜ……」

 

「人にタックルしておいて……!! 自分は正しいとでも言うのかよ!! 何でボクが間違っていると言える!? 多数決か!? 多数決なんて大っ嫌いだ!! だいたいの人間は間違うだろう!? だったら多数決は絶対に間違いじゃないか!!」

 

「お、落ち着くんだぜ……」

 

「そんな……!! 美雷が勢いで押されている……!?」

 

魔法少女の基本技能である自己の主張の明文化。

それにおいて淡雪風花の勢いは鳴神美雷を越えていた。

 

妄執という名の、雪斜面を滑り落ちて。

 

 

そして、魔法少女に信念を折らんため、最後の一撃(暴言)を放つ――。

 

 

「だいたい何だよ、魔法少女カラテって!! 意味不明なんだよ!! 魔法少女はカラテなんか使わない!! 3秒で考えたみたいなネーミング!! あほ!! ばか!! まぬけ!!」

 

「……!!」

 

「淡雪風花ーーーー!! あなた言って良いことと悪いことがあるわよーーーー!!」

 

 

必殺技の名付けは、魔法少女のいわば魂。

真正面から傷つけられ、鳴神美雷の心中はいかほどか。

 

俯く美雷に、風花が勝利を確信する。

 

 

「あはは!! 今のは効いたみたいだね!! しょせん全部は妄想!! 思いつきの空想に意味なんか……意味なんかないんだよ!! トドメだ鳴神さん!!」

 

「美雷、逃げてーーーー!!」

 

緑の本が今一度振り上げられる。

鳴神美雷は数秒後にはGAKUENから消えているだろう。

 

しかし悲しむことはない。

それを受け継ぐものが――。

 

 

――だぜ。

 

 

「なに……!?」

 

淡雪風花が本を振り下ろす。

淡雪風花が、本を振り下ろす。

淡雪風花が!! 本を振り下ろす!!

 

 

淡雪風花が本を「意味は……あるんだぜ!!」振り「ボクの腕を止めた……!? まだそんな力が……!!」下ろ「自分の考えた言葉には、自分の意志が宿るんだぜ!! そこに意味は!!」す「あるんだぜ!!」淡雪「意味なんてない!! 考えたことに……物語に意味なんてない!!」風花が「そこにあるのはただの文字列だ!!」本を「この図書室を見てみろ!! これだけ本が残ってても、誰にも読まれることなんてない!!」振り「誰にも理解されず!! 孤独に!!」下ろす「そこに意味なんてない!!」

 

 

淡雪風花が「じゃあ何で」本を「風花ちゃんは泣いてるんだぜ!!」振り下ろす!!

 

 

淡雪風花が「ボクが……」本を「泣いてる……?」振り下ろす。

 

 

千雨には、二人が何を話しているのかわからない。

しかし、何が起こっているのかはわかった。

 

これは対話だ。

倒すためではない、わかり合うための――。

 

「さっき、雪で覆われた時に風花ちゃんと晴菜ちゃんが初めて会った日のイメージが頭に流れてきたんだぜ!!」

 

「それでボクのことをわかったつもりかよ!! わかるのかよボクの絶望が!? わかんないだろ鳴神はテキトーなことを言ってるだけだもんな!!」

 

「完全にはわかってないかもしれない!! ……でも!!」

 

人間だから、ひとりひとりの考えは違うから。

 

「風花ちゃんは……こんなことをしたくないはずだぜ!! 全部を終わりになんて、本当はしたくない!! だから泣いてるんだぜ!!」

 

「どうしてだよ!! ボクが大切なのは晴菜のことだけだ!! 理屈がつかないだろ!? ボクは人間が嫌いだ!! だから物語を読んでいた!!」

 

「逆だぜ!! 風花ちゃんが物語を読んでいたのは……」

 

叫ぶ。

 

「人間が好きだからなんだぜ!!」

 

 

「ボクが……人間を……? ふざけるな!! ボクはお前も!! お前もお前もお前もお前も!! みんな大っ嫌いだ!!」

 

「だったら何で風花ちゃんは晴菜ちゃんのことが好きなんだぜ!?」

 

 

静寂。

 

緑の本は、床に落ちていた。

 

 

「ふざ……けるな……!! それこそが妄執だ!! そうであると信じたいだけだ!! 考えたことは風のように流れ、消えていく!!」

 

白紙のページを拾い上げ、今一度、

 

「人間に……物語に……」

 

淡雪風花が、本を

 

「意味なんてないんだよおおおおぉぉぉぉーーーー!!」

 

 

「私達が考えて、悩めば!! そこに意味はある!! つまり……!!」

 

振り下ろ

 

人間(少女)物語(魔法)が宿るんだぜーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法少女カラテ……」

 

 

 

「友情さく裂パンチだぜええええぇぇぇぇええええぇぇぇぇーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

「が……」

 

 

「がはああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁーーーー!!」

 

淡雪風花が吹っ飛ぶ。

後方数メートル。

 

 

そのまま床を二転三転。

緑の仮面を付けた四天王は諦めたように大の字仰向けのまま言った。

 

「キミたちの勝ちだ……トドメをさせよ……その代わりに約束を……」

 

それを無視して千雨が美雷に駆け寄る。

 

「やった……美雷が勝ったのよ!! 正直、二人が話しているのか意味が分からなかったけど!!」

 

「……風花ちゃんは人間を信じたかったんだぜ。だからこそ私達に見えるような位置で攻撃したんだぜ」

 

「何だかますますわからないけど……。人間が嫌い嫌いって連呼して実は好きだった……? スケールのデカいツンデレだったってことかしら?」

 

 

「……。そんなことより約束を」

 

 

「『つんでれ』かはわからないんだぜ!! でもとにかく!! 風花ちゃんは魔法少女だったってことなんだぜ……」

 

「??? いや、余計にわからないわ。私達みんな魔法少女でしょ、もともと」

 

 

「……約束」

 

 

「そうだけどそうじゃないんだぜ!! 魔法少女ってのはこう……魔法少女のことなんだぜ!!」

 

「あっはは!! 何それ美雷!! 魔法少女とは魔法少女における魔法少女の魔法少女である……」

 

 

キレて起き上がった風花により、二人はチョップをくらった。

 

 

 

 

「簡潔に言おう。ボクのしたことは許されないし、ヘイトMAXでGAKUENの他の魔法少女から狙われると思う。だからボクの代わりに晴菜を助け出してほしい」

 

「イテテ……あなた結構元気じゃない……。どうする美雷? こう言ってるけど」

 

「……ダメなんだぜ」

 

 

しょうがない、と言いたげに風花が息を吐いた。

千雨としては意外な答えだ。

 

てっきり魔法少女たるもの喜んで友達のお願いを聞くと――。

 

「晴菜ちゃんを助け出すのは、風花ちゃんじゃなきゃダメなんだぜ!! だから……いっしょに晴菜ちゃんを助けに行くんだぜ!!」

 

「……!! 鳴神さん!!」「美雷……!!」

 

 

「風花ちゃんは、どうだぜ……?」

 

「……ボクが信じてるのは晴菜だけだ。キミ達のことなんか信じてない」

 

「淡雪さん!! まだそんなことを!!」

 

 

「でも、自分のことはもうちょっと信じてみようと思う……。ボクが晴菜を助けたいと思っているから、だからそれをやるんだ」

 

風花が夜の女王みたいな仮面を取る。

そのまま握りつぶすと粉々になり緑色の破片は床に落ちていった。

 

四天王との戦いは、今、本当の意味で終わったのだ。

 

 

「何よそれ……。回りくどい言い方ねえ……。でもどうやってあの校長を倒せばいいのかしら? 桃ヶ崎さんもやられたんでしょ?」

 

「キミたちもわかってると思うけど真の校長室は図書室の地下ってわかってる。……でも、あの男はこのGAKUENで起こってることをなぜか(・・・)把握してる。ボクらがこうして話していることもバレてるだろうね。魔法少女をかき集めてたら、その間に逃げられる恐れもある」

 

「じゃあどうやって……」

 

「ボクに考えがある。……今すぐ、あいつが知らない方法で、息もつかせぬまま、策を実行する。……乗ってくれる?」

 

千雨と美雷は顔を見合わせると、「もちろん!!」と二人して頷くのだった。

 

 

 

 

GAKUEN、真の校長室。

校長は磔になった晴菜の横で笑みを浮かべていた。

戦いの顛末はわかっている。

 

後は究極の魔法少女の誕生(卒業)を――。

 

コンコンコンコンコンコンコン!!

 

「はっはっは!! 淡雪クン……いや、四天王のフウカクンかね!! ノックをして入るとは実に礼儀正しい!! 入りたまえ!!」

 

真の校長室に緑色の中型ロボが入る。

3メートルを超える、ムキムキマッチョマンを思わせるその中心部には、取って付けたように淡雪風花が顔をのぞかせていた。

 

「何……?」

 

身構える。

あまりの唐突さに。

 

「ふん!!」

 

分離した緑の鉄拳が宙を飛び、磔十字架を操作する赤と青のスイッチを吹き飛ばし破壊する。

 

「おのれ……!! ちょこざいな……!!」

 

校長は飛び上がり晴菜の前を陣取る。

少女は勝ち誇ったように言う。

 

「予想できなかったでしょ? さっきの戦いでボクは自分の周囲に()を固定化できるようになった。これを応用すれば雪を身に纏ったまま行動できる……」

 

機動性と破壊力を両立した姿。

これぞまさしく――。

 

 

「ボクの変身……魔法少女大型雪像(ロボアーマー)だ!!」

 

 

 

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