魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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邂逅!! ベールを脱ぐ悪の元凶!!

 

真の校長室、淡雪風花がちょこんと出した顔で校長に睨みをきかせる。

その肉体は緑の雪に覆われ、ガタイの良い男二人分の筋肉量に匹敵していた。

 

真剣な眼差しの風花とは対照的に男が笑う。

心の底から愉快そうに。

 

「はっはっは!! 変身を応用してのパワードスーツ……!! 私が魔法少女に期待しているのはそうした発想だよ淡雪クン!! 義に駆られて一人で来るとは……それもまた魔法少女!!」

 

「いいのかい、そんなに余裕ぶって? ボクは今からあんたを倒す。晴菜だって自分の力で助ける」

 

「ほお? 君の行動原理は桃ヶ崎クンが全てではなかったのかね? 桃ヶ崎クンの安全の話をするなら下手に抵抗するより、私のいうことを聞く方が得策ではないだろうか? 自身の信念に反するのは魔法少女としておススメをしないぞ!! はっはっは!!」

 

「晴菜は……大切な人だよ。でも、それだけじゃなかったんだ。この世界にはいろんな考えを持ったいろんな人がいる。……やっとそれを認めることができたんだ。もちろん、許せないヤツだっている」

 

「ふむ……それは誰かね?」

 

視線が交錯する。

緑の瞳と黒い瞳が互いを映す。

 

風花も知らない。

GAKUEN最強の魔法少女である晴菜を、校長がどうやって倒したのか。

 

その戦闘スペックは謎に包まれたままだ。

 

だとするならば――。

 

 

てめえに決まってんだろ(ロケットパンチ)!!」

 

 

超速攻!!

初手で必殺!!

 

緑の巨腕が唸りを上げて白髪混じりの男に突っ込む!!

 

結果は――。

 

校長の眼前数センチで、せき止められるように緑の巨腕は止まっていた。

腕の先では白い波紋が絶え間なく広がっている。

 

「はっはっは!! 大変元気でよろしい!! この腕は記念に取っておこうではないか!!」

 

「……!! そんな!! ボクが全力で飛ばしたロボットパンチが!!」

 

校長が飛んできた腕を横から掴み、机の引き出しへと入れた。

どこかご満悦といった風情だ。

 

 

「飛び道具がダメなら……直接攻撃だ!!」

 

「はっはっは!! 極めて妥当で合理的な判断だ!! だが……!!」

 

風花が真の校長室を疾駆する。

 

片足を軸に一回転。

反動を付けてそのままラリアット。

 

普通なら衝撃で吹き飛ぶそれを校長は止めていた。

人差し指一本で。

 

「え……?」

 

「そう、極めて理性に基づく合理的な判断……そんなものは『魔法少女らしく』ない!! 魔法少女とは!! もっと概念を!! 感情を!! 情念を!! 体現したものでなければいけない!! さしずめ人類が夢見た希望……!! (うつつ)を揺るがす時空の女神……!!」

 

「な……何を言ってるんだこいつ!!」

 

校長の両腕が不格好に大型雪像(ロボアーマー)の片腕を抱え込む。

風花から言わせてもまるで戦い慣れていない老人の動き。

 

だが、その緩慢な動きでラリアットを放った緑の巨腕は、引きちぎられる。

 

「そんな……!! 全然大した動きじゃないのに……!!」

 

「はっはっは!! 伊達や酔狂でGAKUENの校長をしているわけではない!! さあ、淡雪風花クン!! キミには私に全然敵わなかったことを独白してもらいながら気を失ってもらうとしよう!! その無念が、受け継ぐべき想いが!! 『究極の魔法少女』に必要な『究極の日常』へと還元されていく!!」

 

「……確かに全力の密度の一撃が通じなかったからボクに勝ち目はなさそうだ。……最後に教えてよ。究極の魔法少女って、一体誰なの?」

 

「はっはっは!! キミも気になるかね? 究極の魔法少女とは純真にして無垢……『虚構』を『現実』のものとして顕現できる者……!!」

 

「ごめん、興味ない」

 

「……なに?」

 

 

突き放す一言に校長の顔色が変わる。

静かだった。

 

棚に飾られた写真。

そこに映っている人の群れだけは、この場に似つかわしくない笑顔。

 

 

「だって時間を稼がせてもらっただけだもの!! 今だよ、鳴神さん雨宮さん!!」

 

飛び出す。

両腕をもがれたはずの雪像の、残った両足から。

 

「校長先生を止めるんだぜーーーー!!」「淡雪さん、私達が乗ってるのに思いっきり回転したわね……!! 後で覚えときなさいよ!!」

 

「ロボットの両足には人が乗っているものなんだよ!! さあ、校長!! 観念するんだね!!」

 

 

「はっはっは!! いいぞ!! その発想は称賛に値する!! 雨宮クンと鳴神クン……二人のことを意識させずその存在を秘匿する!! 私が望んでいるのは、そういうことだ!!」

 

千雨は青い棒を持ち、美雷は拳を黄に輝かせ校長へと飛びかかる。

 

「これで終わりよ!!」

 

「校長先生……話を聞いてほしいんだぜーーーー!!」

 

「ふむ、確かに少女には元気が一番だ……!! だが、」

 

 

「そんなものが私に通用すると思ったかね?」

 

 

飛びかかった二人分の圧力は、あっさりと弾き飛ばされた。

その様子を見ていた風花が二人の名前を叫び、駆け寄る。

 

魔法少女の渾身の奇襲が、ただの老人に一蹴されたのだ。

 

千雨は急いで起き上がりつつ、思わずつぶやいた。

 

「そんな……!! どう見てもただのジジイなのに!! どうしてよ!!」

 

「ふふふ、それを考えるのも一興であろう? 魔法少女の想像力に期待をする……!!」

 

「ふざけないでよ!! こっちはずっと必死にやってきた!! 魔法少女達がどれだけ不安な想いにされたと思ってるの!! 実際に消えた人だって……!!」

 

そう、目の前の男はトロッコのナツをTAIGAKUさせた(消した)

どうやったのかは、わかならい。

 

でもとにかく、許せないことだけは事実。

千雨の胸の中にあるふつふつと湧き上がる感情は、確かに在る。

 

 

「全ては究極の魔法少女のためだ……そう、この世界には救世主が必要なのだよ。例え友人が消えようとも前に進む、な」

 

「晴菜!!」

 

一同は慄く。

校長は磔十字架の横に陣取っていた。

先ほどの台詞と合わせれば、何をしようとしているか明白だ。

 

「魔法少女たるもの、人質を取られた時の対処も必要……と、言ってもキミたちは前に経験したことがあるな。その時は桃ヶ崎クンが身を呈して人質を助けた……」

 

「校長先生!! 晴菜ちゃんに手を出さないでほしいんだぜ!! もうこれ以上、魔法少女に消えてほしくないんだぜ!!」

 

「そう、それだよ!! 鳴神クン!! 他の二人も聞いていたかね!? こうした慈愛の精神が魔法少女には必要なのだ!! もっとも、キミ達が私の言うことを素直に聞くのなら桃ヶ崎クンは解放しようではないか!! ずばり……GAKUENにいる他の魔法少女達と戦うのだ!! 全員をTAIGAKUさせ、キミ達の中でも争う!! そうして生き残った者には校長ポイント百万点を」

 

「この()に及んで……!! あんたは本物のクソジジイよ!!」

 

千雨の悪態が校長室に虚しく響く。

口だけでは状況が打開できないのはわかっていた。

 

千雨も、美雷も、風花も。

晴菜の身を案じて動くことができなかったのだから。

 

 

「全く……あなた達は本当に甘いわね」

 

 

一同の視線が釘付けになる。

声の主は他でもない。

 

磔になっていた桃ヶ崎晴菜のものだったのだ。

 

「晴菜!? 目を覚ましたの!?」

 

「まあね、こんな情けない状況で、みっともないったらありゃしないけど……」

 

「桃ヶ崎クン!! ちょうど良かった、キミ達から三人に声を聞かせたまえ!! 助けてと泣き叫んでの懇願も良し!! 自らの亡骸を乗り越えて進めと自己犠牲の精神を発揮するも良し!! どちらもが究極の魔法少女に必要なドラマを生みだすだろう!!」

 

「何を勘違いしてるのよ?」

 

 

「何?」と校長が晴菜に目をやる。

当の桃色の魔法少女は、依然身動きの取れないまま不敵な笑みを浮かべているのだ。

 

 

「確かに私はここを調べようとして、あの放送があってからここを訪れて返り討ちにあった……。でも、そんなことで私の心は折れたりしない!! 見ていなさい!! 私は最強の魔法少女で最強の人質!!」

 

桃色の光が晴菜へと集まっていく。

校長がこれはいかん、と晴菜から飛びのいた。

 

「三人とも、伏せなさい!! アルティメット・ディバイン・エクスプロージョン!!」

 

真の校長室に桃色の爆発が巻き起こる。

光が収まった時には、校長の姿はなくなっていた。

 

「ふん、逃げ出したようね。ま、私が本気を出せばこれくらい……」

 

「うおおおーーーー!! 磔になってもかっこいい晴菜ーーーー!! ボクが!! ボクが解除してあげるね!!」

 

桃ヶ崎淡雪ペアがワチャワチャしながら解錠している。

その間にほっと一息を入れながら、千雨は美雷と話すのだった。

 

「晴菜ちゃんが無事で本当によかったんだぜ……!!」

 

「……そうね。桃ヶ崎さんのことも大事だけど……」

 

千雨が周囲を見やる。

真っ白だったはずの空間は、腹が立つくらい立派な『校長室』へと変貌を遂げていた。

 

特に目を引くのは、棚の上にある集合写真だった。

背景は海で、髭の男が中央に陣取った忌々しい――。

 

「あれ……?この写真に写ってるの良く見たら校長じゃあない……?」

 

確認の『ない』ではない。

否定の『ない』だ。

 

てっきり自分の過去の栄華にすがって、GAKUENの創設メンバーか何かと一緒に写真を撮ったのかと思った。

 

中央の軍服を着た男の顔つきは荘厳で、どことなく優しい瞳をしていた。

つまり、校長ではない。

 

「その写真が気になるんだぜ……? でも、何だかこの写真……寂しい気がするんだぜ……」

 

「寂しい? そうね、そうかもしれないわ……」

 

映っている一人ひとりは笑顔だった。

表層を見るならこれから何か大きなことをする、そんな期待感に溢れた写真。

 

でも、本心から笑っている者は一人もいない。

そんな風に見えた。

 

 

美雷は、写真の中央をじっと見ていた。

沈黙を破るように千雨が声を出す。

 

「弱みの一つでも見つかればって思ったけど、あいつ自体映ってないんじゃ話にならないわね」

 

「千雨、やる気満々なんだぜ……!!」

 

「ええ、殺る気満々。これまであいつは好き勝手やってきたのだもの」

 

「ぶ、物騒なのはナシだぜ……!!」

 

 

二人の会話が野太い声に遮られる。

このGAKUENのどこにいても聞こえてくる耳障りなそれに。

 

 

『はっはっは!! 生存祭は早くもクライマックス!! 私も現場へ急行している!! そう!! これまでキミ達を導いてきた私がなんと……立ちふさがる敵となるのだ!! 諸君らもショックであろう!! しかし、恩師を越えることこそが魔法少女の最後のイベントとして……』「誰が恩師よクソッタレ!!」「どうどう!! 落ち着くんだぜ千雨」

 

 

『そう、これはGAKUENにおける最後のイベント……』

 

 

『魔法少女の卒業式(ラストバトル)だ!!』

 

 

晴菜の拘束はもう解けた(風花はよだれを垂らしすぎてビチャビチャになっていた)

 

四人が顔を見合わせる。

来た時の通路は、例によって風花の雪の能力で塞いでいる。

だがあの男は現場に急行すると言っていた。

 

だとするなら――。

 

「みんな!! 長机の椅子の下に隠し通路があるわ!!」

 

千雨の一声を受けて四人がその前に並ぶ。

 

鳴神美雷、桃ヶ崎晴菜、淡雪風花、そして雨宮千雨。

 

違う輝きを持つ四つの光が、一様に頷いた。

 

 

 

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