「レイニー・バトン!!」
秒で組む。
即席のボウガンを。
「魔法少女カラテ……プラズマ・中段の構え……」
拳に込める。
全身全霊の力を。
「ははは、あはははは!! さあ、最後の卒業試験だ!! この私の突進は……並みの魔法少女1000万人分!! さあ、恐怖に打ち震えたかね!? それを克服してこその魔法少女なのだーーーー!!」
聞いてない。
身勝手なだけの人間の言葉なんて。
「千雨……!!」「美雷……!!」
打ち出す。
青い矢を、黄の拳が。
『真・雷雨のグングニール!!』
放たれた矢は妖狐像を貫通し――。
そのまま、外界とGAKUENを隔てる壁に衝突。
青の大爆発を巻き起こす。
「狐さんの像がふらふらと落ちていくんだぜ!!」
校庭に不時着したそれが白い爆発とともに霧散する。
「やった……!! 私達、やったのよ!! ついにあの校長を倒したんだわ!!」
仲間との絆を紡ぎ、
自らの想いを力に変え、
日常に帰るために戦い、
倒すべき敵を、倒す。
そう、これこそが魔法少女――。
「千雨……本当に、私達これで良かったんだぜ……?」
「美雷……? 何を言ってるの……? あの校長を倒したのよ!? みんなの分まで頑張って!! 私達は勝ったのよ!! そうでしょ!?」
「でも……!!」
どんなに人間が
人々に希望の光を灯し、自らを焚きにくべる薪とし物語を燃焼させるもの。
言うなれば救世主、暗黒を
「もうGAKUENには何も残ってないんだぜ……」
「……!!」
思えば長い戦いだった。
こうして自分が変わることできたのも、鳴神美雷のおかげだと。
その他の魔法少女達の想いも継いで、彼女は
「じゃあ……じゃあ一体どうしたら良かったのよ!! これから元に戻す方法でも探せって言うの!?」
「千雨……ひとつだけ気になっていたことが、あるんだぜ」
「……なによ?」
「千雨には聞こえないんだぜ? この声が――」
これにて魔法少女のGAKUENにまつわる物語は終了。
そして始まるのだ。
世界を窮地に陥れたモンスターを打ち倒す。
雨宮千雨の英雄譚が――。
「え……? 私の英雄譚……? 何を……何なのよ……これ……」
「よくわからない……よくわからないんだぜ……でも、こんなことができそうなのは……」
「……!!」
少女達が、妖狐像が不時着した辺りを見やる。
何も残っていなかったはずの空間で、
……おっと、これは身を隠すのも限界か。
それでは
最後の最後まで魔法少女を導かなければいけないからな!!
はっはっはっはっはっはっは!!
「校長先生なんだぜ!!」「あの爆発で何で生きてるのよ!?」
「はっはっは!! 私には義務があるのだ……究極の魔法少女にふさわしい究極の日常を
千雨と美雷が構えながら妖狐像の落下点へと接近する。
数メートル先まで来てもなお、校長は悠然とそこに立っていた。
まるで動物園の檻の外。
物珍し気なものでも観察しているように。
「校長先生!! お願いだからみんなを元に戻して……」
「うおおおーーーー校長覚悟ーーーー!!」
「ち、千雨!?」
少女が青い棒を握りしめながら飛びかかる。
人間に魔法力をぶつけたところで生じるのは微かな熱。
そんな事実を忘れるほどに千雨は
そして、驚愕することになる。
「え……?」
棒で押し当てた校長の体が、ぐにゃりと曲がったのだ。
「そ、そんな……!! 私、力いっぱいぶん回したけど、骨が折れる程なんてそんな……」
「千雨!!」
美雷が千雨の前へと出る。
校長はいまだグネグネしながら、左右に首を振りながら言うのだった。
「はは……はっは……はは!! それでいい!! キミ達にとって私は倒すべき敵なのだからな!! この体も限界か……ひひ!! 戻らなければ……」
体をよじりながら、男が走り出す。
千雨は混乱しつつも、それを追いかけた。
美雷は千雨の名前を呼びながら、それを追う。
男が向かったのはいつぞやの決闘で出来上がった校庭のクレータ。
その中心部。
逃げつつも指をパチンと鳴らせば、即席の地下階段が『出来上がった』。
男が転がり落ちるようになだれ込む。
少女達もまた、長い階段を下りていく。
「ここは……? GAKUENの地下にこんな場所が?」
つぶやく千雨に、手の感触が宿る。
美雷の温もりだった。
「……? どうしたの美雷?」
「……その」
「あー。あなた暗いところ苦手だったわね。手を繋いでほしいんだ?」
「……うん、私、きっと怖い……んだぜ。でも何があったとしても千雨がいてくれたら……怖さも乗り越えられる気がするから……」
「はは。何よいまさら。……思えばいろんなことがあった。でも、きっと今度こそ終わりよ。校長のヤツにもこのGAKUENにも何か秘密があった……それを聞き出して、全部元に戻してもらって、それで終わりよ」
「……」
少女達が階段を降り切った。
先にある扉の取っ手に、二人で一緒に手をかける。
白い光とともに、扉の向こうの世界が広がる。
そこにあったものは――。
真っ白な部屋に、真っ白なベッド。
周囲にはディスプレイや大型の器械が並ぶ。
機器から伸びた管は、ベッドの上の
白髪のその男性は痩せこけて、骨と皮だけのように見えた。
男は眠っていた。
しかし正面のディスプレイに同じ顔が大映しとなるのだ。
『はっはっは!! よもやここまで来るとは……この魔法少女達に労う手段があるとすれば一つだけだろう……すなわち、私の真意を伝えることだ!!』
鳴り響く男の高笑いに、少女たちの握る手が強くなった。
『始めようか……魔法少女の真の卒業式を』