魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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レールの行方

 

「私の名前は桃ヶ崎晴菜!! この世界で最強の魔法少女よ!! GAKUENに捕らわれていた私達に告げられた事実は……私達にショックを与えるものだった!! 見ていたもの全部がウソでした……なんてすぐに信じられると思う!? 影でちょっと泣きながらも迎えた最終決戦!! 最強の私が率いる最強の魔法少女チームはこの世界の脅威であるモンスターの親玉を撃破した!! 世界はもうお祭り騒ぎ!! もちろん、私も、美雷も千雨も無事に帰って……きて……」

 

むなしくなって、止める。

 

ここは砂浜。

 

受けなきゃいけない検査みたいなやつも終わった。

まあ、さすがに完全に自由とはいかないけど、でも魔法少女とは自由であるべきなので、こんな感じで外には出れた。

 

私の目から、液体が流れる。

 

違う……これは涙じゃない。

潮風が目に入って痛いだけ。

 

そう、これは自然現象的なアレ。

 

泣いてなんか……いない!!

 

「うえええぇぇぇぇん……あいつら、どこへ行っちゃったのよ……!! 本当はどこか近くにいて、私達をビックリさせるためにヒョッコリ出てくるんでしょ……!? 後はあんたらが帰ってくるだけなのよ……!! それなのに……!!」

 

あれから二日が経った。

最終決戦で無尽蔵に湧いてくる触手と戦いながら、私が目にしたもの。

 

敵のコアを破壊して立ち尽くす美雷と、その美雷に向かって突っ走る千雨。

黒い大地が割れて、私達は海へと放り出された。

 

私はその後ヘリに救出された。

でも二人はまだ見つかっていない。

 

海を見つめる。

どこまでも青が広がる。

 

千雨のやつなんか泳げないのに、どうしてるんだろう。

まだ、この広い海のどこかを二人はさまよっているんだろうか。

そんなの……つらすぎる!!

 

「早く帰ってきなさいよ……!! いっしょに焼き肉するって言ったでしょ!! インド映画でも何でもつき合う!! 何なら最後に踊ったっていい!! よく考えたら魔法少女も最後は踊る気がするしつき合ってあげるわよ……!! 私達の日常は、まだこれからでしょ……!!」

 

そう、最強の魔法少女たるこの私が、最強のお願いをしている。

だから、二人とも早く帰ってきてよ……。

 

GAKUENでの決闘で美雷と千雨に負けて、それで私も本当の意味で自分と向き合えたのに。

 

 

「最強なんて……張り合う相手がいなかったら意味ないじゃないの……」

 

 

「晴菜、ここにいたんだ」ズッサァー

 

「ひょあぁ!! 風花!? もしかして見た!? この最強の魔法少女たる私が、清らかな涙を流すところを……いや、泣いてないんだけどね!!」

 

「何いってるんだい、晴菜は泣き虫だろう? ……まあ、そこも良いところなんだけどね」

 

「風花……あなた、辛辣になってきたわね。……いや、出会った頃もそんなだったわ」

 

「……!! 覚えてたんだ!!」

 

「……? 当たり前でしょ? 私達、ずっと一緒にいたじゃない」

 

GAKUENは、なんか造られた空間的なものだった。

でも、私と風花の思い出はそんなことでは色あせない。

 

だって、私達はそこに『いた』のだから。

 

 

「晴菜、そんなことより。忍川さん達には既に伝えたんだけど……」

 

「あの変態忍者……おっと、今は指揮官さんだったわね。一体何を……?」

 

 

後ろから「おーい」と大声を上げながら、駆け寄ってくる人影に気づいた。

あの姿は……。

 

「トロッコのナツ……!!」

 

「ウチもいるっすよ!!」

 

「それにナツの舎弟……!!」

 

雲原(くもはら)那津(なつ)

それに空木(そらき)みぞれ。

 

GAKUENで黄の魔法少女軍団を率いてブイブイ言わせていた二人だ。

私もこの戦いが終わった後に本名を知った。

 

この戦いに勝てたのも那津とみぞれの働きがあったからなので、そのことはちゃんと感謝を口にした。

本人たちは名前で呼ばれるの、むず痒いらしいので結局いつもの呼び方をしている。

 

 

「はあ……はあ……淡雪ぃ!! アタシ達のことを置いていくんじゃないよ!! 桃ヶ崎の姿を見つけるなり10倍速で移動しやがって……!!」

 

てへへ、と風花が頭をかく。

……この子の想いにも私は向き合わなきゃいけない。

 

本当の意味で日常が帰ってきたら、だけど。

 

 

「そんなことより何の用よ? 私は美雷と千雨のことでそれどころじゃないのよ」

 

「……その二人のことだよ」

 

「……!!」

 

私は耳を傾ける。

 

 

「あの戦いでアタシらは魔法少女を運ぶためにトロッコを走らせた。広い海の上を横断するように」

 

 

「トロッコはアタシの意志とは関係なく走り続ける……一度に大量には操作できないからね。各地で魔法少女を降ろした後も、トロッコは走り続けていたのさ」

 

「その中のひとつに、どうも別の人間の魔法力(・・・)が引っ掛かっているみたいなのさ」

 

 

「ウチの能力の索敵範囲を広げたっす!!」とナツの舎弟が胸を張る。

 

 

ちょっと待って。

ということは……。

 

「魔法力が引っ掛かったってことは……魔法少女が乗っている!? それって……!!」

 

飛び上がる。

そのまま思わず空中でガッツポーズ。

 

「あの二人が生きてたってことでしょ!! いや、信じてたけどね!! 全く!! この私を心配させるなんて1世紀早いのよ!! はははー!!」

 

私のテンションとは裏腹に、三人が下を向いた。

 

え?

 

ちょっと……どういうこと?

 

「ウチの能力じゃあ、魔法力を乗せたトロッコが走り続けていることまでしかわからなかったっす。それが何人なのかは……」

 

「何人かはって……それじゃあ」

 

 

二人じゃないかもしれない。

 

 

「……そんなわけない!! だってあの時、千雨は美雷に向かって手を伸ばしていた!! 二人で一緒にいるはずよ!!」

 

「晴菜……」

 

「私は……ここで二人を待ってる!! 太陽みたいに、ずっと桃色に光ってやるわ!! そうすれば二人だって道に迷わないでしょ!? 二人で一緒に……きっと帰って来れる!!」

 

言葉が(せき)をきって溢れてくる。

 

「私、負けてばっかだったから、倒れて立ち上がるのには慣れてるの!! だからずっと立ってる!! 魔法少女は日常に帰るものなんでしょ!? あの二人が魔法少女なら帰って来れるはずよ!!」

 

つらいけど、泣きはしない。

ここで泣いたら、本当に二人が帰ってこれなくなる気がしたから。

 

待つ。

じっと待つ。

 

風花が肉まんを持ってきてくれた。

二人でそれを食べた。

 

その後もじっと待った。

ただただ、信じて待った。

 

いつの間にか周囲に人が増えていた。

GAKUENにいた魔法少女達と、組織の人たちだとわかった。

(周囲がプリンだなんだとにわかに騒がしくなった)

忍川さん、包子さん、あと技術部長の恐山さんもいた。

私の体を気遣ってくれた。

 

それでも私は立ち続けた。

 

たった二人の、人間を待つために。

 

 

やがて、光が地平線から見えた。

 

 

トロッコに乗っていたのは――。

 

 

 

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