魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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最強暴走!? GAKUEN最大の危機!!

 

「はあああぁぁ!!」

 

なおも空中に静止した状態で桃ヶ崎晴菜が吠える。

 

空が、地面が、彼女の呼びかけに応じるように大きく震えた。

 

晴菜の周囲で、桃色の光が湧き上がる。

 

「これが、限られた魔法少女のみができるスーパーフォーム!! そして更に……!!」

 

周囲に纏っていた光を突き破るように力強く。

晴菜の背中から、巨大な桃色の羽が生えていく。

 

「これが私だけができるエンジェルフォーム!! そして……」

 

羽が、繭のように晴菜の姿を包んだ。

 

隙間から、光が漏れる。

 

中で起こっているのは、桃色の核融合。

 

「はああああぁぁああああぁぁ……!!」

 

超新星、誕生の瞬間――。

 

「たあ!!」

 

刹那、桃色の光が全てを包んだ。

地上から見上げていた、美雷はまっすぐにその様子を見ていた。

 

桃色に光輝く、少女の姿を。

 

「待たせたわね……これが最強を越えた超最強……!! 私のクェーサー(恒星)フォームよ!!」

 

「晴菜ちゃん……すごいんだぜ!!」

 

桃ヶ崎晴菜を中心にした桃色の光が、地面を照り付ける。

それはまるで、桃色の太陽だった。

 

 

 

 

 

「あれがスーパーフォームを越えたエンジェルフォームを越えた……ええっと……とにかくすごいフォーム!! なんて迫力なの……!!」

 

隣の淡雪風花は挑戦的な視線で千雨をにらんだ。

 

「……怖くなったんなら、逃げていいと思うよ」

 

「……あなたは? ここにいたら私達も危ないんじゃあ……!?」

 

「ボクは晴菜を見届ける。……勝つのは晴菜だって信じてるから」

 

「信じてるって……!! それとこれとは……!!」

 

「そう、勝つ……ボクのカツ丼パワーで」

 

「は??」

 

こんな時に何を言ってるんだ?

千雨の非難の混じった視線を無視して淡雪風花は続けた。

 

「……今日は久しぶりに早起きをして、材料を調達して、キッチンを借りて作ったんだ、カツ丼。晴菜の大好物だから」

 

「……!!」

 

普段寝てばっかりの印象だったこの子が。

友人の勝利を願って。

 

「キミは? キミは鳴神美雷に何かをしてあげたの? 好きなもののひとつでも作ってあげた?」

 

「そんなこと言われても……!! 私と鳴神さんは出会ったばかりで好きなものなんて……あ!!」

 

言っていたではないか、自己紹介で。

美雷は自分の好物を肉まんだと。

 

朝、栄養がありそうだからと、無難に和食をチョイスした。

肉まんが売ってあったかは確認していない。

 

でも、探せばあったかもしれないのだ。

 

さっきだってそうだ。

美雷は屋台で肉まんを食べたがっていたではないか!!

 

そのために硬貨を残しておけば、美雷は食べることができたのだ。

大好きな、肉まんを。

 

 

「その様子じゃあ、用意するという発想もなかったみたいだね」

 

「……っ」

 

「……晴菜は負けない。誰よりも努力して、頑張って、挑戦し続けている晴菜。そんな晴菜だからこんなボクだって全力を尽くす。疲れて寝ちゃうこともあるけど、起きてる時間くらいは晴菜のために行動したい」

 

そこまでの覚悟でいたからこそ、少女は眠そうにしていたのだ。

全力だったから。

 

千雨は何も言い返せなかった。

 

晴菜について情報収集していなかっただけではない。

美雷のフォローだってできてはいなかった。

 

――私には、何もできていなかった。

 

 

 

そして全てを託していた美雷は、どこか嬉しそうに桃色の太陽を見上げるだけだ。

 

「すごい魔法力なんだぜ!! 晴菜ちゃん、将来はきっとみんなと協力してすごい魔法少女になれるんだぜ!!」

 

「みんなと協力? バカいわないでよ」

 

桃色の太陽から、光が乱れ飛ぶ。

 

「魔法少女は……私ひとりいればいい!!」

 

 

太陽は星を照らす。

時には無慈悲に。

 

 

「アルティメット・ディバイン・フラッシュ!!」

 

 

桃色の太陽から、地面に。

光が降り注ぐ。

 

辺り一面、無差別に。

 

集まっていた魔法少女たちが叫び声とともに逃げ出していく。

 

「な、何をしているんだぜ晴菜ちゃん!!」

 

「ふ、ふふふ……!! 言ったでしょ!! 魔法少女は私ひとり……最強の私だけがいればいい!! 私はひとりでも戦い続けて、モンスターを全滅させる覚悟よ!! あなたは!? みんなで、みんなでって……怖いだけなんじゃないの!? ひとりでいるのが!!」

 

「……!! 私は――」

 

「ふん!! 図星のようね!! いいわ!! 次の技で終わらせてあげる!!」

 

桃色の太陽が、膨張した。

今度は無差別ではない。

 

あまりあるその魔法力を、一点(美雷)へとぶつけるために。

 

 

桃の少女が吠える。

 

黄の少女は驚き見入っている。

 

緑の少女が勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

青の少女は呆けるだけだ。

 

 

 

「口先だけの信念なんかに意味はない!! 戦いに勝つのは強い方よ!! つまり勝つのは……」

 

「ボクはいつだって信じている。勝利するのは……」

 

 

 

(晴菜)だああああぁぁああああぁぁ!!』

 

 

桃色の太陽から発射された桃色の極太ビーム。

それは飛び道具にあらず。

 

さながら太陽が形を変えて伸びきった状態。

桃ヶ崎晴菜の自己の延長。

 

黄の少女は拳で応戦するも、それは一瞬の抵抗にすぎない。

 

黄の少女の体が、漏れ出た声とともに弾かれる。

 

 

「美雷ーーーー!!」

 

青の少女――雨宮千雨にできることと言えば、ただ美雷の身を案じて叫ぶだけだった。

 

 

地面へと横たわっている美雷に、千雨が駆け寄る

 

――自分のせいだ。

 

――自分が何もしなかったから。

 

――大事なことを何一つ決めず、選ばず。

 

――全部を美雷に任せてしまったから。

 

 

「ごめん……鳴神さん……!! 本当にごめんなさい……!! 私のせいで……!!」

 

美雷が手の平を掲げた。

千雨は少しして、自分を制止してるのだとわかった。

 

『それ以上、言っちゃダメ』

 

そう言っている気がした。

 

 

「鳴神……さん?」

 

「……まだ決闘の勝負は付いてないんだぜ!! 千雨が私に触れたら、反則負けになっちゃうんだぜ……!!」

 

「……でも!! こんな状況で逆転なんて……!! 私のせいでここまで追い込まれたのに……!! 私、あなたのために何もできなくて……!!」

 

千雨の葛藤について、美雷は知り得ない。

でも、必要以上に自分を責めていることだけはわかった。

 

だから、笑顔で応える。

 

 

「何もしてなくなんか……ないんだぜ……。千雨は朝ご飯を準備してくれたんだぜ……!!」

 

「でも!! あなたの好きなのは肉まんで!! 私は全然……!!」

 

「肉まんは大好きだけど……お魚も好きなんだぜ……!!」

 

ふらふらと、美雷が立ち上がる。

驚く千雨を心配させまいと、笑顔で。

 

「言ったはずなんだぜ……!! シャケパワーで頑張るって!! 友達が用意してくれたご飯なら……パワー100倍なんだぜ!!」

 

千雨は、また自分が何も知らなかったことに気づいた。

友達のためなら、いくらでも頑張れる。

こんな純真な台詞を、恥ずかしげもなく言ってしまう子。

 

鳴神美雷とは、そういう少女なのだ。

 

 

 

上空から声が聞こえた。

 

「はあ……はあ……茶番はそこまでよ……。鳴神美雷、あんたに逆転の手は……ぐっ……」

 

「晴菜……?」

 

桃の光が揺らいだ。

淡雪風花が心配そうにつぶやく。

 

圧倒的優勢。

にもかかわらず、様子がおかしい。

 

いったい何が――。

 

 

「アアアアァァァァああああぁぁアアアアーーーー!!」

 

「晴菜!? 晴菜ーーーー!!」

 

桃の太陽から、シャワーのように光が降り注ぐ。

校庭、いやGAKUEN中に。

 

逃げ惑う魔法少女たちの悲鳴が聞こえる。

超最強フォームの一撃、拡散しているとはいえ当たれば並みの魔法少女の魔法力など消し飛ぶ。

 

「暴走……しているの? 晴菜!! ボクの声を聞いて、晴菜!!」

 

「アアアアぁぁああああぁぁアアアアーーーー!!」

 

もはや決闘の結果など気にしている者など、いなかった。

このまま桃ヶ崎晴菜が暴走を続ければ、全ての魔法少女の魔法力はかき消されてしまう。

 

GAKUEN全ての魔法少女が、終わりを迎える。

 

 

 

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