魔法少女GAKUEN   作:MOPX

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空前絶後の大バトル!! 恒星フォーム VS 魔法少女カラテ!!

 

「やめるんだぜ晴菜ちゃん!! これは二人の決闘のはずだぜ!!」

 

「ふ、ふふ、フフフフ!! 何をヌルいことを言ってるの!! 私は最強なの……!! このGAKUENの誰よりも強くなきゃいけないの!!」

 

 

 

淡雪風花は自分がこのGAKUENに来たばかりのころを思い出していた。

ねぼすけで、ぼんやりしてて、気が弱かったころを。

 

そんな自分を晴菜が守ってくれた。

そして、言ったのだ。

「私は誰よりも強くなる」って。

 

風花はそんな晴菜を好ましく思った。

だからこそ、誰よりも応援をした。

 

だが――。

 

 

「ボクのせいで気負いすぎちゃったの……? そんな……」

 

 

 

「鳴神美雷ーーーー!! あんたさえ倒せば私は最強だと証明される!! 消し飛ばしてやるわ!!」

 

桃色の光が収束し、高まっていく。

今度こそ、黄の光を消し飛ばすために。

 

「すごい光なんだぜ……!!」

 

「な、鳴神さん!! いくらあなたでもあんなの無理でしょ!?」

 

「キミたちちょっといいかな……?」

 

千雨と美雷の前に、緑の少女が立っていた。

 

「淡雪さん……? まだ何か言いたいことがあるの……!? こっちは取り込んでるの!!」

 

風花が、頭を下げた。

千雨と美雷は、目を丸くして驚く。

 

「お願いです……!! 晴菜を止めてください!! このまま魔法力を消耗したら晴菜は……!! 都合の良いことを言ってるってわかってます!! でも……あなたにしか頼めないんです!!」

 

「……!! もちろんなんだぜ!! 任せるんだぜ!! 千雨も下がってるんだぜ!!」

 

「鳴神さん……!!」

 

千雨は考える。

やはり自分には何もできないのかと。

 

自分にできることと言えば――。

 

 

「何もないわよ……!! あんたらにできることなんて!!」

 

桃の太陽が、輝いた。

 

アルティメット・ディバイン・フルバースト(消しとべええええええええぇぇぇぇぇぇ)!!」

 

 

 

全てを飲み込む桃の濁流。

 

鳴神美雷は金色の手で、それを受け止める。

 

「無駄よおおおお!! 一瞬弾いたところで、持続性は私の方が上!! あなたに勝てる道理は……!!」

 

「シャケなんだぜ!!」

 

「……なんですって!?」

 

「だからシャケなんだぜ!! シャケは卵を産むために流れに逆らって川を上っていくんだぜ!! 約束したんだぜ……!! 今日はシャケパワーで頑張るって!!」

 

美雷が、体を弾いた。

弾き飛ばされたのではない。

意図的に上へと飛んだのだ。

 

そして、()く。

 

鮭が逆流を上るように。

 

桃色の濁流を逆らって。

 

「シャケの川上りだぜーーーー!!」

 

「な、なにいいいいぃぃ!?」

 

 

光線の上側を犬かきの要領で。

 

魔法力を瞬時に移動させ、桃の光と反発させる動作。

 

右手が接する瞬間、右手に。

右脚が接する瞬間、右脚に。

 

左側も同様だ。

 

これを連続して鳴神美雷は桃の濁流(アルティメット・ディバイン・フルバースト)を上っていた。

 

 

「バカな……こんなバカな……!! だったら出力を上げる!! 飲み込んでやるわ!!」

 

桃ヶ崎晴菜の理性は、必殺技を中断して仕切り直すべきだとささやいている。

だが、本能が否定するのだ。

 

今ここで逃げたら自分は一生、最強を名乗れないと。

 

こうした思考だからこそ、晴菜は強くなることができた。

 

今更、このスタイルを捨てることなどできない――。

 

 

美雷が半分まで上ったところで光線が激しくなる。

 

「わ……!!」

 

「み……鳴神さん!!」

 

大勢を崩しかけた美雷に、千雨の視線が釘付けになる。

弾むように元の犬かき状態に戻りほっと安堵する。

 

 

 

「晴菜ちゃん!! どうしてこんなことをするんだぜ!? 」

 

「知れたことよ!! 私が最強だから!! 魔法少女なんて私ひとり(・・・・)いればいい!!」

 

「そんなことないぜ!! みんなでいた方が……!!」

 

「何がみんなよ……!!」

 

桃色の太陽が咆哮する。

 

「モンスターと戦うのなんて、私ひとり(・・・・)でいい!! だから……他のやつなんて全員……!!」

 

「……!!」

 

そうだった。

 

根幹にあったものは、優しさだった。

だから誰よりも強くなりたいと思った。

 

いつからだったのだろう。

 

強さに目的()がなくなったのは。

 

 

 

自分一人が戦えばいい。

確かにそれは、覚悟であり強さだ。

 

でも――。

 

 

「それじゃあ晴菜ちゃんがひとりぼっちなんだぜ!!」

 

「私が……ひとり……?」

 

桃色の太陽が、膨張を始める。

このままだと魔法力による超新星爆発を起こす――。

 

「そうなんだぜ!! 最強はひとりだけど……究極ならみんなで目指せるんだぜ!!」

 

「……なによ……なによなによ!! あなたの言う究極の魔法少女って何よ!!」

 

「……わからないんだぜ!!」

 

「……!! ふざけるな鳴神美雷ーーーー!! あんたなんかに私の積み上げてきた『最強』が崩せるわけない!!」

 

「まだわからない……だから私は考えていくんだぜ!! これから二人で……!!」

 

「ふた……り……?」

 

晴菜の耳に声が聞こえた。

晴菜でも、美雷のものでもない声が――。

 

 

 

「フレーフレー!! 美雷!! ガンバレガンバレ美雷!!」

 

地上では千雨が青い旗を振っていた。

自身の能力である青い棒に、布上の薄い魔法力をつけただけのもの。

 

黄の少女がふっと笑みをこぼす。

 

 

千雨が、喉がはちきれんくらい叫んだ。

 

「私は自分なんか何もできないんじゃないかって思ってた!! だから美雷に自分を変えてほしいって思った。でも、それじゃダメなんだって気づけた!!」

 

天まで届くくらい、旗を思いっきり突き上げて。

 

「私は、変わりたい!! そのために美雷といっしょにいたい!! あなたといっしょにいたら、少しでも違う自分になれる気がするから!! だから……」

 

これが千雨の選んだ答え。

 

「勝って!! 美雷!!」

 

 

 

「任されたぜ!!」

 

美雷が思い切り、飛ぶ。

 

晴菜が、その姿を見失う。

 

反応が遅れたのは、いたってシンプルな理由だった。

 

 

上を取られたのは、初めて。

 

 

 

地上と空で、声が重なる。

 

『勝つのは……』

 

黄の少女が空中で体を捻り――。

 

 

一直線に落ちた。

 

 

(美雷)()千雨()だああああぁぁぁぁああああぁぁーー!!(だああああぁぁぁぁああああぁぁーー!!)

 

 

――雷が太陽を穿つ。

 

 

「ぐおおおおおわああああぁぁーー!!」

 

 

 

 

 

校庭に巨大なクレーターが出来上がる。

 

千雨と風花が斜面を滑り落ちるように駆け寄る。

 

勝者は――。

 

「魔法少女カラテ、サンダー・瓦割り……なんだぜ!!」

 

立ち上がって親指をグッとあげる鳴神美雷。

どこか満足そうに仰向けで倒れる桃ヶ崎晴菜。

 

 

決闘の勝者は鳴神美雷だった。

 

 

 

 

勝者がいれば、敗者がいる。

 

「大丈夫? 晴菜……!!」

 

「風花……ええ、大丈夫よ……」

 

晴菜が風花の肩を借り立ち上がる。

その髪の桃色は、若干薄くなったものの消えてはいない。

目立ったケガもないようだ。

 

すぐに部屋に、そう言って晴菜を連れて行こうとする風花を制止して晴菜が振り返る。

 

勝者たちに、はなむけの言葉をかけるために。

 

 

「ふん……鳴神美雷に雨宮千雨!! あまり良い気にならないことね!! あと100回戦えば100回とも私が勝つ!! このGAKUEN最強の魔法少女は私……それを譲るつもりはない!!」

 

あまりの自信に若干呆れる千雨。

晴菜がとりあえず元気そうで喜ぶ美雷。

 

そんな二人に背を向けて、少し照れくさそうにつぶやくのだ。

 

「ま……今回はあなた達の勝ちよ。……悪かったわ。雨宮千雨は495号室に再入寮よ、おめでとう」

 

晴菜と風花が、クレーターから寮の方へと向かう。

 

美雷は手をぶんぶん振りながら言うのだ。

 

 

 

「後でゆっくり話したいんだぜ!! 決闘の結果とか、関係なく……私は二人と友達になりたいぜーーーー!!」

 

 

 

ふっと苦笑いを浮かべた千雨は、美雷に声をかける。

 

「美雷、お疲れ様。……その、何というか……今回の件、あらためてごめん。……それにありがとう」

 

クレーターの外へ向かいながら、千雨はふっと息を吐いた。

そんな千雨に美雷は屈託のない笑顔を向けるのだった。

 

「こっちこそありがとうなんだぜ!! 千雨の応援のおかげで晴菜ちゃんを止めることができたんだぜ!! ……。それに」

 

「それに?」

 

「美雷って下の名前で呼んでくれて……なんだか嬉しすぎてムズムズしたんだぜ……」

 

「え? 心の中ではずっと美雷って呼んでたけど口にはあんまり出してなかったわね……そ、そんなに嬉しいものかしら……?」

 

「……え、その……とっても、うれしい……」

 

「そ、そう……」

 

「……」

 

「……」

 

 

(何この空気!!)

 

 

気を取り直して、心なしか顔を赤くしていた美雷に声をかける。

 

「これからよろしくね、美雷」

 

「……うん!! よろしくなんだぜ千雨!!」

 

 

 

二人がクレーターから脱出したところで、異変に気付く。

晴菜が暴れていた件とは、別のようだった。

 

ちなみに魔法少女たちは、決闘が終わったと見るや戻って来ておのおの自由にしている。

たくましいことだ。

 

「万魔券がでたぞーーーー!!」「ひとり的中させたらしいな!!」「マジかよどこのどいつだ!?」

 

どうやら、この決闘に魔法少女円をかけていた不届き者がいるらしい。

こっちは死闘を繰り広げていたのに悠長なことだ、と千雨は毒づいた。

 

勝ったのは美雷だから、その倍率が100倍を超えていたということだろう。

 

まったく、頑張ったのは美雷なのに別の誰かが得するなんて――。

 

 

……。

 

 

「お祭りみたいでにぎわってるぜー」と言っている美雷をよそに、千雨がポケットに手を突っ込む。

そこには決闘の直前に、トロッコのナツから買った券が入っていた。

 

(買ったの、私か!!)

 

こちらに気づいたトロッコのナツがにこやかに「10000」の数字と校長の満面の笑みが印刷された札を渡した。

彼女は彼女で、オッズの付け方がアレだったので儲けは出なかったらしい。(普段は舎弟任せだそうだ)

まあ、騒げたからOKだそうだ。(いいのか?)

 

 

 

残された千雨と美雷がお札をマジマジと見つめる。

 

「何かよくわからないけど、どうするんだぜ? このおカネ?」

 

「うーん、そうねえ。まずは……」

 

 

おカネの使い道なんていくらでもある

寮の部屋だって質素だし、生活水準を引き上げないといけない。

それを考えるのが次にやることになるのだろう。

 

でも、まあ、まずは――。

 

 

「屋台で肉まんでも買うってのは……どうかしら?」

 

美雷は黄の瞳をキラキラ輝かせて、元気よく頷くのだった。

 

 

 

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