それなりに長く続いたこの話も、今回で終わりとなります
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ロキ・ファミリアのホームに住まうことになったアリアさんは、アイズ・ヴァレンシュタインと同室で過ごしているみたいだ。
母親であるアリアさんにべったりなアイズに、ロキ・ファミリアの副団長のリヴェリアさんは複雑そうな眼差しを向けているようである。
ロキ・ファミリアでアイズの母親代わりをしていたというリヴェリアさんが、複雑な感情を抱いてもおかしくはない。
産みの母も育ての母もどちらもアイズにとっては大切な存在だろうが、今は再会したアリアさんだけしかアイズの目に入っていないのかもしれないな。
そんなロキ・ファミリアの最近の内情を語りながら、青の薬舗で胃薬と入浴剤を購入し「少しきみと話せないかな?」と言ってきたフィンさん。
しばらく休憩すると神ミアハとナァーザに伝えて、フィンさんと一緒に自室へと移動した俺は、椅子を2つ用意すると座りながら話すことにした。
「黒竜を倒してLv11になっても、きみは店舗で普通に接客しているんだね」
「神ミアハとナァーザに俺しか居ないファミリアですから、人手が足りていないんですよ。そりゃLv11だろうが接客します」
「ミアハ・ファミリアは団員募集は、していないのかい?」
「してないですね。冒険者は基本的に粗暴なのが多いんで、今のミアハ・ファミリアに合うような眷族とは出会えていません」
「それは大変そうだね。ロイマンは、きみを黒竜を倒した英雄として担ぎ上げようとしているみたいだったけど、どうするのかな」
「ギルドにとって都合のいい英雄になるつもりはないんで、余計なことをするようなら、オラリオを出ると脅しておきましたよ」
「それは効果的だろうね。Lv11がオラリオ以外に所属するようなことがあれば、オラリオのギルドも大きな顔はできない」
「竜の谷の竜も狩り尽くしたんで、竜による被害も少なくなるでしょうし、世界が滅ぶような危険も無くなったなら、英雄は必要ないと思います」
「それでもまだダンジョンがある。いずれ僕はダンジョン攻略に、きみの力を借りたい」
「俺が一緒だと、亜種や漆黒の強力なモンスターと遭遇する可能性が確実に高まりますんで、もう少しランクアップした眷族がロキ・ファミリアに増えてからにした方がいいですよ」
「確かにそれもそうだね。もう少し戦力を増強してから、きみを誘うことにするよ」
会話を終わらせて立ち去っていったフィンさんは、いずれロキ・ファミリアの遠征に、俺を同行させるつもりらしい。
休憩を終わりにして接客に戻った俺に、青の薬舗までやってきた神ヘルメスが話しかけてくる。
「やあ、ゲドくん。黒竜を倒したんだってね。流石は竜殺しの魔帝だ」
「今の俺は、青の薬舗の店員なんで、冒険者として接されても困るんですが」
「それならアスフィに必要な胃薬を見繕いながら、ちょっとオレと話してくれるだけでいいさ」
「仕方ありませんね」
それからアスフィさんの胃を癒す為の胃薬を作成しながら、神ヘルメスと話したが、黒竜というモンスターを倒した方法について聞いてきたりした神ヘルメス。
他派閥の信頼も信用もできない神に「龍の手」のバランスブレイクを教えることはなく、黒竜は残光で倒したとだけ言っておくと「きみもレオンと同じく残光の使い手だったのか」と神ヘルメスは驚いていた。
「なるほど、きみも英雄の一撃を持っていたんだな」
驚いた後に納得したかのように頷いた神ヘルメスは、アスフィさんの為に用意された胃薬を抱えて満足気に去っていく。
それから青の薬舗に訪れる客の数も落ち着き、用意していた商品も無くなったところで、早めに青の薬舗を閉めることにした。
神ミアハとナァーザは休憩することにしたようで、自室へと戻っていったが、俺はオラリオの街中を散歩することにして、ゆっくりと歩いてみる。
賑やかな街並みを見ながら歩いていると、落ち込んでいる白髪赤目の少年を発見。
気になったので話しかけてみると、どうやら少年はオラリオに来たばかりで、ファミリアに所属したかったみたいだが、明らかに弱そうな外見のせいで、何処のファミリアにも入団できず追い返されてしまっているらしい。
そういえば、眷族になってくれる相手を探している女神が、じゃが丸くんの屋台で働いていたような気がするな。
そんな女神と少年を引き合わせてみると、女神は少年を眷族にすることに決めたようだ。
女神はヘスティア、少年の名はベル・クラネル。
本屋の2階を借りて、女神ヘスティアの神の恩恵を背に刻まれた主人公の少年。
ダンジョンに出会いを求める少年が神の眷族となる瞬間を見届けた俺は、駆け出し冒険者なベルくんに、様々なことを教えていく。
ダンジョンの上層でゴブリンを倒して「初めてモンスターを倒しました」と目を輝かせながら言ってきたベルくん。
そんなことがあった日も過ぎ去り、まだまだ駆け出しなベルくんが上層でミノタウロスと遭遇したらしい。
剣姫、アイズ・ヴァレンシュタインに助けられたベルくんは、剣姫に一目惚れしたようだった。
ヒロインと主人公の役割が逆じゃないか、とは思ったりもしたが、本人がそれでいいならいいのかもしれないな。
これから物語は始まり、ベル・クラネルという少年の冒険もまた始まっていくのだろう。
リリルカと出会うことが無くなったベルくんが、死ぬ可能性があることに気付いて何度か手助けしたりもしたが、それに俺が気付かなかったらベルくんは死んでいたかもしれない。
そんなことがあったりもしながら、様々な冒険の日々を駆け抜けていったベルくんを賭けて、派閥連合とフレイヤ・ファミリアで戦争遊戯を行うことになった。
黒竜の牙を素材に作られた「魔帝剣」を構えた俺の前に立つのは、Lv9へと到達したオッタルさん。
阿修羅のような漆黒のバロールの腕刃を素材に作られた黒大剣「修羅」を持ち「ゲド、お前に挑ませてもらう」と言ったオッタルさんは戦意に満ちている。
そんなオッタルさんを見て、深く深く息を吐いた俺は言った。
「しょうがねぇなぁ」
剣と黒大剣が打ち合わされて、戦場に高らかに鳴り響いた激しい音。
交わされる斬撃の応酬。
スキルによる獣化も用いて、両手で振るわれるオッタルさんの黒大剣。
スキルを用いることなく、自然体で片手で振るう俺の剣。
勝っているのは俺の剣であり、一撃ごとに後退していくオッタルさんの身体。
Lv9でありながら、獣化によりLv10に等しいステイタスとなっているオッタルさんでもLv11に到達している俺には届かない。
だが、それでも前に出るオッタルさんは、戦うことを止めなかった。
単純に威力を超強化する魔法「ヒルディス・ヴィーニ」を用いたオッタルさんの黒大剣が黄金の輝きに包まれる。
黄金の光を纏う黒大剣が振り下ろされて放たれた一撃は、まさしく残光だった。
オッタルさんが繰り出した巨大な飛ぶ斬撃を、剣の一振りで迎撃。
オッタルさんから繰り出された連続の残光を全て迎撃した俺は、地を蹴る。
間合いを詰めて剣を閃かせて放つ斬撃は、オッタルさんの黒大剣の防御ごと斬り裂き、Lv9の猛者を一撃で地に伏せさせた。
戦争遊戯は、派閥連合の勝利に終わり、フレイヤ・ファミリアは解体されたようだ。
その日から、女神フレイヤではなくシルとして豊穣の女主人で働く女性の近くで、豊穣の女主人の店員として働いているオッタルさんが目撃されることになったらしい。
様々な出来事があったりもしたが、オラリオで今日も俺は生きていく。
転生したらゲド・ライッシュになっていたが、それなりに楽しく生きていけていた。
まあ、こんな人生も、きっと悪くはないだろう。