怪奇! キヴォトスのチェンソー男!   作:アマテ_V3

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感想、評価ありがとうございます。
今更ですが、小説は初めて書きます。読みづらかったりしたらすみません。許してください。


1-2 誰も知らない

 

 自分の机にぼーっと座って、よく分からないことを解説しているBDを見ている。

 

 教室に辿り着けたのはいい。しかし、あの娘──火宮チナツという名前はしっかり覚えた──がチェンソーマンを知らないという事実がデンジにとって衝撃的過ぎて、あの後どう受け答えしたかあまり覚えていない。

 

 スマホの使い方も少し教わったし、連絡先も交換できたことは飛び上がるくらい嬉しいのだが、『カワイイ子にチェンソーマンを知られていない』という事実がデンジの心を沈ませる。

 

 チナツが知らなかっただけかもしれない。だがそれはそれで、チナツがチェンソーマンに興味がないということになって好かれることが難しくなる。そう考えると心が更に糞づまっていく。

 

 使い方を教わったスマホで、たどたどしく『チェンソーマン』と検索をかける。頭と両腕からチェンソーを生やした自分の姿は、まったく出てこなかった。

 

(マジかよ……俺、これからどーすりゃモテんだ?)

 

 カワイイ娘がいっぱいだと浮足立っていたが、既に意気消沈していた。

 

 デンジの席は窓側だ。おぼつかない操作でつけたBDもよく分からなかったので、窓から見える広場を眺めていた。そーいや先生がいねーから、こうしてても怒られねーな、と以前の学校生活を思い浮かべながら、広場を行き来する生徒達を見ていた。

 

 その生徒達の大半は『風紀』と書かれた腕章をつけている。チナツもつけてたなぁと思ったとき、デンジは閃いた。

 

(そーいや、チナツがこの辺で喧嘩とかあるって言ってたな。別に銃じゃ死なねーし、その喧嘩止めて悪ぃやつ捕まえたら皆褒めてくれんじゃね!?)

 

 天才だ。そう思った。この時ばかりは、自分のIQが500だと思った。

 今まで散々悪魔を真っ二つにしてきた男である。銃を持っているとはいえ人間。相手取るのは別に怖くなかった。それどころか、活躍の後を想像してウッキウキだった。

 

 そのままBDを無視し続け、昼休み。朝方に急いで鞄に突っ込んだ、弁当代わりの作り置き料理を取り出す。そして飲み物がなくなってしまったため買いに行こうと教室を出る。自販機はどこだとキョロキョロしながら廊下を歩いていると、

 

「えーっと、あなたがデンジ君でいいです?」

「え?」

 

 後ろから声をかけられる。振り返ると、声の主は濃い赤で長い髪の少女だった。小さな手にA4サイズの書類を持ち、デンジの顔と紙を交互に見ている。

 

「……はい、合ってそうですね。私は万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)(なつめ)イロハです」

「ぱ、ぱんで……何つった?」

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)、です。生徒会みたいなものですが、まあ、そこは本当にどうでもいいです。要件は提出されてないいくつかの書類の、一応の催促です。部活とかバイト申請とかその類の。もう決めました?」

「あ〜、その、なんの部活あんのか分かんねえんだよな」

 

 そういやそんなこと書いてるのあったなと、なんとか思い出す。

 

(東高はデビルハンター部あったけど、あんのか?)

 

「そうですか。まあ、別に出さなくても大丈夫ですよ。本当に形だけなので、どこにいつ入っても大丈夫です。バイトも別に自由にやってもらって構いません。犯罪じゃなければ、ですけど」

「え? ここバイトしていいの?」

「? はい、別に禁止じゃないですよ。なんなら授業来ないでバイトしてる子もいますし。デンジ君は勉強熱心なんですね」

「え〜!? ジュギョー来なくてもいいのォ〜?」

「うちは自由と混沌が校風なんですよ」

 

 自分の知る学校の常識との著しい違いが、デンジには信じられなかった。とりあえずバイトはすると即決し、同時にカワイイ制服姿の女のコを見たかったので学校には来ようと決めた。

 

「あとこれ、学生証です。郵送書類に入れ漏らしてたようなので。これがないと敷地内の自販機とか使えないので、失くさないでくださいね」

「あ……ありがとう、ゴザイマス……」

「それでは」

 

 まったく、なんで私に押し付けるのか……と愚痴を言いながら、イロハはデンジに背を向けて去って行った。

 

(部活、か〜……どーすっかなぁ)

 

 部活について少し悩んだが、自販機を見つける頃にはいかにカッコ良く抗争を止めるかということに内容が変わっていた。

 

 

 

 

 弾んでいた心は再び沈んでいた。デンジは気づいてしまった。

 そもそも、人にチェンソーを向けちゃいけないのだ。『銃で撃たれても死なない』という情報で感覚が麻痺していたが、チェンソーは流石にマズイというのはデンジでも分かる。さらに言えば、デンジのチェンソーは()()の力だ。普通のチェンソーよりかなり斬れる。それこそ巨大な悪魔の身体を真っ二つにするくらいには。

 

 昼食を食べながら考えていた最強計画は土台から破綻してしまった。振り出しに戻ってしまったデンジは、机に突っ伏して軽く絶望していた。

 

(ポチタ……俺、どーすりゃモテんだろな)

 

 知らない街、知らない人々、知らない学校。誰もチェンソーマンを知らず、最強の計画も崩れ去った。漠然とした不安を感じたデンジは、幼少期を共にした友達の姿を思い浮かべる。

 

 服の上から胸のスターターロープに触れる。それは友達が自分の胸にいる証。一人じゃないよ、とポチタが言っているような気がした。

 

「ま、暗くなっても仕方ねえか!」

 

 とりあえず今日の夕飯は何にすっかな、肉じゃねえのがいいな。

 

 さっきまでの暗さそっちのけで、デンジは夕飯の献立を考え始めた。デンジはいつでも前向きなのである。

 




デンジ君はいつでもハッピー。
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