怪奇! キヴォトスのチェンソー男!   作:アマテ_V3

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評価、感想ありがとうございます。


1-3 それいけチェンソーマン

 

 私は黒井ミヨコ。ゲヘナ学園の1年生で、風紀委員会に所属しています。

 

 昔から私はものすごく臆病です。ホラー映画を友達と見たときは一人だけビビりすぎて笑われて、その日の夜はトイレに行くのに数十分かかりました。寝不足で翌朝は遅刻して、本当に散々でした。

 

 その上運が悪いというか、巻き込まれ体質でもあるんです。不良に絡まれるのは日常茶飯事で、そこに別の不良やヘルメット団がやってきて因縁をつけあって抗争になる、という流れを何度体験したか分かりません。お気に入りのバッグが抗争の中で塵になったことは一度や二度ではありません。

 

 運動もあまりできなかったし、このままじゃ……と危機感を覚えて、勇気を振り絞って風紀委員会に入ったのはいいけど……訓練はキツいわ銃は当たらないわ先輩は厳しいわでもう心が折れそうです。

 

 そんな私でも見回り──ゲヘナ自治区の警邏には出動させられます。私の担当は学園に近いショッピングモールとその周辺。階数が多いし広いので同じ学年の委員と手分けして見回りをしていました。

 

 そして私はそこで、風紀委員会に入ってからは発動してなかった不運体質を久しぶりに呪うことになったんです。

 

『ウィィィ、ガガガがが』

「!?」

 

 突然、私の傍を通り過ぎようとしていた警備ロボットが不可解で珍妙な動きをし始めました。そしてピタッと動きを止めたかと思えば、二連ガトリングの銃口をこちらに向けて無慈悲に乱射してきます。

 

「ちょ! なんでなんでなんでなんでえええエエエエ!?」

 

 慌てて近くの商品棚の後ろに隠れましたが、薄い木の板で作られた棚は高威力の弾に対して無力に近くて、すぐ貫通してきました。

 

「ひゃあああああああアアアァ!」

 

 今度は女子トイレに逃げこんで個室の鍵を締めます。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせて、やっと落ち着いた頃、

 

『全風紀委員に緊急通達! 全風紀委員に緊急通達!』

「うひあああああああ!」

 

 携帯していた無線から放たれる大声に驚いて腰を抜かしてしまいました。どうやら無線の音量を『MAX』にしてしまっていたようです。

 

『〇〇〇ショッピングモールゲヘナ学園店にて警備システムが暴走! 現在無差別に暴れまわっている模様! 近くの風紀委員及び巡回担当委員は速やかに鎮圧せよ! 繰り返す! 〇〇〇ショッピン』

 

 耳を疑いました。信じたくありませんでした。でもほっぺを引っ張ったら痛かったので、夢ではないようです。残念ながら。

 

(まだ風紀委員になってそんなに経ってないのに……)

 

 ここでこのまま、他の委員が来るまで隠れてようかとも思いました。でも、それでは今までと何も変わらない。この状況より、ビビリのままになるという事実の方が私には怖かった。

 意を決してドアを開け、トイレの入り口からそっとさっきの場所を覗く。

 

『ウィィィ』

 

 どうやらロボットは背(?)を向けている。今しかない、とミヨコは震える足を無理矢理動かしてロボへ肉薄する。

 

「っ、でいやああああああ!!」

 

 銃を構えて走り出す。狙いは部品の接続部!

 弾を撃ち出す乾いた音と、金属同士が衝突する音が鳴り響く。ロボはこちらに向き直ろうとしたが、その前に接続部の一部が破損して動作を停止し、続く弾丸を無防備に受け続けた。

 

 ロボは破損した部分で軽い爆発を起こすと、それ以上動作することはなかった。

 

「……やった? やった! 私でも、私でもやれるんだぁぁ!」

 

 飛び上がりそうになったが、ハッと思い出す。事が起こっているのはこのモール全体。まだまだ暴走ロボットはいる。

 ミヨコは風紀委員会支給の銃を握って、騒ぎの中心になっている方へ駆け出した。

 

 

 

 

 後悔している。ミヨコは高揚と勢いだけで、想像の8倍は激しい騒ぎの中心に来るんじゃなかったと非常に後悔している。

 

ガガガガガガガガ

 

  パラララララララ

    「そっちに行ったぞ!」

 バン バン

 

「うぅ……来るんじゃ、なかった……」

 

 ハッキリ言えば、隙をついてロボを破壊した自分に酔っていた。臆病を自覚している彼女が銃弾の飛び交う戦場へ、勇敢に飛び込んで行けるはずもなかった。

 

    ガガガガガガガガガガガガ

「いっ! やったなロボめ!」

バン バン バン

 

    ブウン パララララララララララ

 

  ガガガガガガガガガガガガ  ヴヴン

 

 ミヨコも銃弾程度で死にはしない。しかし痛いものは痛い。他の子ならこの場でも耐え抜くかもしれないが、彼女は早々に脱落するという確信があった。

 

(結局隠れているしかないのかな……)

 

 ミヨコはエスカレーターの陰で頭を抱えて自己嫌悪に陥っていた。他の委員のおかげで数も減っている。増援の先輩達も来るし、私が加わっても足手まといになるだけだ。なんなら早く助けてほしい、とも心の片隅で思っている。

 

  ドゴン ドゴン

 

「おい! そっちに……って! 何だお前!?」

 

 ガガガガガガガガガギッ ギイィギギギ

 

   ヴヴヴヴヴヴン!!

 

 

「…………?」

 

 

 ギャリギャリギャリギャリ!

 

  ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

 

 

 何かおかしい。

 警備ロボットからこんな大きい駆動音はしない。何十体もいるのだ。そんなデカかったら騒音でクレーム物だろう。おまけに金属同士が高速で擦れ合う、不協和音のような嫌な音がする。まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()──しかもだんだん近づいて来ている気がする。

 

 ミヨコは顔を上げ、様子を確認しようと周囲を見て──見てしまった。

 

『お〜い、大丈夫か〜?』

「 へ 」

 

 橙赤色で金属的なマスク、突き出たチェンソー、三本のスリットの奥に浮かぶ瞳のような光、サメのような鋭い歯。両腕にもチェンソーが生えていて、腕から血が垂れている。着ているシャツが白のため、付着した血がよく映える。そんなやつが気さくに話しかけてきている。

 

 ミヨコ視点では、総評──()()()()だった。

 

「ひッ……ひゃあああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああぁぁぁ!?」

 

 想定外の恐怖──下手をすればホラー映画以上の──に曝され、ミヨコは意識を手放した。そのまま後ろにバタンと倒れてしまう。

 

「お、おいおい、大丈夫かよ!?」

 

 意識が暗闇に沈む直前に耳へ入ったのは、ミヨコを心配するような声。しかし、彼女の脳はその言葉を処理できなかった。

 

 ──今度チナツ先輩にあったら、やめるって言おう……。

 

 ロボを破壊した時の自信はどこへやら。これが現在の彼女の切実な願望だった。

 

 

 

 

 時を少し遡ろう。デンジは夕食のために足りない材料を買いに来ていた。

 

 広大なモール内を買い物ついでにふらふら探検。ゲームセンターなんかはよく知らなかったので、かなり時間をかけて見て回った。

 

 映画館があるのは、デンジにとって評価に値する点だった。上映されている映画はよく知らない──『ペロロジラ』という知ってるようで知らないもの等々──だったが、とりあえず面白そうなのテキトーに見ようと足を運び、買い物そっちのけで一本見た。

 

 レンタルビデオ店とかあんのかな、と散策を再開していると、警備ロボットが近づいてきた。

 

「おあ〜、すげーな…………あ?」

 

 機械が自動で動くことに感心していたデンジだったが、備え付けられているガトリングがデンジに向けられ、咄嗟に休憩用のソファに身を隠した。ロボットは無慈悲に掃射を開始する。

 

「アッブね! 何だよ、なんもしてねーぞ!」

 

 弾幕が止まったのを見計らってそそくさとその場を離れる。しかし、その先にも同じロボが待ち構えていた。

 

「ギャッ!」

 

 慌てて横に飛び、洋服屋の商品棚を盾にする。足にちょっと掠った。

 入った所から離れて、ロボを避けつつ洋服屋をあとにする。周りを見渡せば、買い物客であろう人々が次々と避難し、黒い制服を来た人々がロボに応戦している。

 

 デンジは、またしても閃いた。

 

(……もしかしてよ、今なんじゃね? ロボだったら別にチェンソー使っても大丈夫だろ? だったら俺が行って騒ぎを止めりゃ俺、ヒーローなんじゃねえ!?)

 

 ナイス。天才だ。そう思った。今度こそ自分のIQが500であると確信した。

 

「よ〜〜し!!」

 

 デンジは白シャツに手を入れ、スターターロープを思い切り引っ張った。

 

 

  ヴヴン

 

 

 

 

 そしてカッコよく助けたつもりが、この結果である。目の前の女子は自分の姿に驚いて気絶してしまった。

 

(こんなハズじゃねえのにィィ!)

 

 苦悶に頭を抱える。内心とても焦っていた。これじゃヒーローどころか悪モンである。

 

「ハッ!」

 

 そうこうしているうちに、ロボが近づいてきている。撃ち出される弾を避け、チェンソーをフル稼働で振り下ろす。

 

「オぉラ!!」

 

 不協和音が鳴る。装甲と回転する刃が高速で擦れ合い、背筋が震えるような音が響く。それは包丁で物を切るような『切る』ではなく『削り斬る』に近かった。

 

 司令部となる機構が破壊されたロボは、あっさり動作を停止する。

 

 周囲を見れば、歪な破壊痕を持つスクラップが転がっている。ロボの数は目に見えて減少しており、この後自分はヒーローになれるという期待で胸をいっぱいにしていた。

 

 しかし、その願望も儚く散ることとなる。

 

 遠くから銀髪ツインテールの女生徒がこちらを狙っていることに気づいた。その手の銃が何発か火を吹いた。

 

「イギャ!」

 

 間一髪避けることはできたが、1発が脇腹に掠った。少量の血が白のシャツにシミを作る。

 

「チッ、外した! おい、そこの規則違反の()()()()! おとなしく投降しろ!」

「あ〜? バケモノォ!? 俺あ人間だ!」

「人間にチェンソーはついてない! どう見てもバケモノだろ! 早く投降しろ規則違反者!」

「や〜だよ〜〜!!」

 

カワイイ女のコにバケモノと言われて少し傷ついたが、今はそんな場合ではない。どうやら悪ぃヤツだと間違われている。話も聞いてくれねえし、捕まったらマズい!

 

(チェンソーは人に使っちゃいけねえ! だから逃げる!!)

 

 そう決めたデンジの行動は速かった。遮蔽物からトップスピードで離れ、そのまま2階へジャンプで逃げた。

 

「はぁ!? おい待て!!」

 

 銀髪生徒は急いで追いかける。しかし2階へ辿り着いた頃にはもう姿はなく、完全に見失ってしまった。

 

「……ッ! 全風紀委員へ通達! チェンソーのバケモノが逃走した! 必ず捕縛しろ!」

 

 

 

 

「アッブね〜〜! 悪モン扱いはゴメンだぜ」

 

 あの後デンジは窓を割って逃走し、路地裏を彷徨ってやっと帰宅した。その顔には汗が滲んでおり、疲労が見てとれる。

 

「あ〜〜、なんでうまくいかねンだ……?」

 

 デンジは首を傾げて考え込む。うんうんと唸っても答えは出ないようだ。

 

「ま、助けたのは助けたし、誰かはカッケェって言ってくれるか!」

 

 答えを先送りして、ルンルン気分で夕食の準備を始めようとしたデンジは重大なことを思い出す。

 

「…………あ、魚買ってねえ」

 

 この後近くの商店街でなんとか買った。

 

 

 

 

 翌朝、デンジはテレビ番組を見ていた。テキトーに流し見していたが、驚くべきニュースを目の当たりにする。

 

『怪奇! 謎のデンノコ男!』

 

 飲んでいたお茶を吹き出しそうになるのを耐える。咳き込みながら茶をなんとか飲み干し、食い入るようにニュースを見る。

 

『昨夜、ゲヘナ自治区のショッピングモールで警備システムが暴走、それに伴って警備ロボットが暴徒化する事件がありました! 以前にも似た事件はあったんで・す・が!! こちらの映像をご覧ください!!』

 

 映し出された映像には、ロボをぶっ壊す自分の姿が映っていた。

 

『この男! なんとびっくり、チェンソーが頭と腕についているんです!! なんてバイオレンス! 正直()()見た目ですよね! カイテンジャーの敵役がふさわしい見た目じゃないですか!?』

 

 ツラの良い金髪のリポーターが『怖い』と言うと、デンジは肩をがくっと落とした。

 

『現在、ゲヘナ風紀委員はこのチェンソー男の行方を追っているとのことです! いや〜、また都市伝説が1個増えちゃいますかね!? 今後の続報を待ちましょう! 以上、お伝えしたのはクロノス放送部、川流(かわる)シノンでした!』

 

 ──制作・著作 クロノス放送部 終

 

「あ〜〜! 俺、なんか悪ぃやつみて〜じゃんかぁぁ!!」

 

 とことんうまくいかない現実に、デンジは不満剥き出しの声を上げた。

 

 

 

 

『ふむ……何でしょうね。かつてのB級映画……スプラッタ映画から飛び出して来たような……どのような記号に解釈すべきでしょうか』

 

「そういうこった!!」

 

『ふうむ……まあ、しばらくは様子見でしょうか。情報があまりにも足りませんからね。『()()』か『()()』か、はたまた『()()』か、見定めるには尚早ですから』

 

「そういうこったぁ!!」

 





時間としては先生がキヴォトスに来るちょっと前です。
ゲヘナの生徒やその他何人かと絡む単話をやったあとメインストーリーと絡みます。よろしくお願いします。
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