怪奇! キヴォトスのチェンソー男!   作:アマテ_V3

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非常にお待たせしました。レゼ編が映画になりますし、ブルアカも三周年なので再開します。


2-3 『ハロウィン』の宴

 

 

 トリニティ自治区内の中心部に程近い銀行周辺に、デンジ達はこっそり張り込んでいた。周辺には私服の正義実現委員、自警団員、そしてヴァルキューレの警察官も複数名潜んでいる。

 

 ハスミらは『ハロウィン』の標的になりうる施設をリストアップし、それぞれに人員を配備して対策している。シャーレへの協力の要請により───目的としていた『先生』にではないが───トリニティ以外の組織の力も借りることができた。それは───。

 

『コールサインダブルオー、異常はねえ』

『コールサインゼロスリー、こちらも異常はありません』

 

 無線から二名の女性の声が聞こえる。

 ミレニアムサイエンススクールのエージェント集団、Cleaning&Clearing。四人のメンバーから成り、ミレニアムにおいてトップの戦闘力を誇る組織。中でもリーダー美甘ネルの『コールサインダブルオー』は、その実力から『約束された勝利』を意味している。加えて『コールサインゼロスリー』の室笠アカネも作戦に加わっている。残る二人のメンバーは別の依頼に取り掛かっている為に参加していない。

 

「なあ……今ンとこ三日来てねえけど、ホントに来んのかあ?」

「来る……はずよ、多分……」

 

 張り込みももう四日目。違和感を与えないように配置を変えつつ警戒をしている。しかしやることは同じ、それでいていつ来るか解らないが為に常に気を張らなければいけないのはデンジにとって厳しいことだった。

 

 『ハロウィン』はトリニティの犯行をおよそ一〜二日に一回のペースで行っていた。しかし今度はいくら待てども姿を現す気配がない。

 

「もうやめて帰っちまったんじゃねーの……ふぁァ……」

「油断は禁物よ、デンジ君。相手は何度も逃げおおせてる犯罪者よ。これも何かの作戦かもって思っておいたほうがいいわ」

「お、おう……」

「あとデンジ君、『ハロウィン』が現れたときの私たちの動きは頭に入ってる?」

「おう……できるだけ逃げさせないってーのと、あとは…………ん?」

「……?」

 

 デンジとユウカ、そして正義実現委員などの人員が近くのカフェから銀行を監視していると、三台の黒い車が列を成して銀行正面の道路に停まる。一斉に空いたドアからはトリニティの街並みにはそぐわない仮想をした人間がゾロゾロと降りてくる。

 

「っ! 来た!」

「おう!」

 

 

「はいホームラ〜ン」

 

 

 デンジとユウカが立ち上がって銀行に向かおうとしたそのとき、背後から聞き馴染みのない気怠げな声がする。僅かに目を見開いて後ろを見やると、バーテン服に無骨なガスマスクという意味不明な格好をした人間がデンジの方へ、まるでそれがバットであるかのように鉄パイプを振り抜こうとしていた。

 

「うォアいッ!!」

 

 不意を疲れた打撃のクリーンヒットは間一髪防いだが、身体と鉄パイプの間に挟んだ腕のガードは甘く、大きな衝撃と痛みがデンジに襲いかかる。

 

 向かいの席に座っていたユウカはすぐさま脇に置いておいた銃を襲撃者に向けようとするが、襲撃者はデンジを打撃した後に鉄パイプを片手で切り返し、ユウカの顔めがけて横薙ぎにする。ギョッとして体勢を崩しながらもすんでの所で回避したユウカを待っていたのは、いつの間にか襲撃者の左手に握られたスタンガンの電撃だった。

 

「あぅ……ぐっ……」

 

 そのスタンガンの電気出力は市販の物と比較して数段上であり、強力な電撃をなんの心の準備もなく浴びせられたことでユウカは倒れてしまった。

 

「痛え、おいテメうォア!?」

 

 一瞬の攻防が終わったとき、襲撃者の標的は瞬時にデンジへと切り替わる。襲撃者は軽く一歩踏み込んだ後に鋭い蹴りをデンジの鳩尾へ繰り出す。デンジのいる場所はカフェの席。そもそもスペースが狭い上に後ろは壁。足を掴んで防御するしかなかった。

 

 しかし掴まれたと見るやいなや、襲撃者は高速で足を自分の方へ戻す。足を掴んでいたデンジはそのままバランスを崩して襲撃者の方へ倒れ込む。襲撃者はそんなデンジの胸倉を掴むと、左手のスタンガンを躊躇うことなく首筋へ当てて電源を入れる。

 

「ギャアああ!?」

 

 こうしてデンジも倒れてしまい、僅かな間に二人が沈められてしまう結果となった。二人を片付けた襲撃者を正義実委員たちが銃を構えて取り囲む。

 

「お、おっお客様、一体何を……!」

「やあ、すみませんね店員さん。迷惑料ならこの人たちに請求してください」

 

 困惑するロボット店員に明るい声で襲撃者は返答する。その間にも委員たちはじりじりと慎重に近づいていく。

 

「こんな包囲網を敷かれるものだから、余計に時間がかかってしまって……この人たちがいなければこんなことする必要もなかったんだから、ね?」

 

 表情は見えない、その筈だが何故か笑っていると確信できる口調でそうまくし立てる。──次の瞬間、袖の中から小さな袋を取り出して正面の委員に投げつける。それはぶつかると破裂し、視界を遮る粉塵を撒き散らす。

 

「うっ、なにこ……ゲホッゲホッ!! こ、れは……いッ!」

 

 粉塵が散ると同時に襲撃者は正面の委員に素早く接近する。次いで的確な右フックで顎を打撃し、脳震盪で気絶させる。他の委員たちが態勢を整えようとするとまた新たな袋が投擲される。中身がばら撒かれると、粉塵に混ぜられた胡椒等による眼や鼻の不良で連携どころではなくなり、委員たちは各個撃破されていってしまったのだった。

 

「ふむ、こんなものかな。向こうはうまくやってるといいけど」

 

 煙くない所の窓から銀行の入口を介して覗けば、順調に鞄に金を詰めているようだ。これなら増援が来る前に逃走に転じられるだろう。

 

 そうして店から出ようとした瞬間──耳に届いた僅かな足音。

 

「おっと」

「だァクソっ」

 

 ギリギリで意識を保っていたデンジの手が僅かに、襲撃者の首襟に掠る。ギリギリで気づいたことを感じさせない余裕さを見せる襲撃者はデンジに少し感心する。

 

「スタンガンの出力、弱かったのかなあ……これ以上上げたら殺しちゃうんだけど。それとも電気浴び慣れてるとか?」

「俺にゃあご褒美みてえなもんだぜ〜? おかげで目ぇ覚めたしよ〜」

 

 不思議そうに問う襲撃者に不敵な笑みで返すデンジ。実は結構効いたのだが『カッケエ所を見せてえ』という心だけでまた起き上がったのだ。デンジの身体には若干の痺れが残っている。

 

「大人しく寝てくれたら楽なんだけど、そういうわけにもいかないか……ね、見逃してくれない?」

「えっ………………マスク取ってくれんならいいぜ?」

 

 顔を見たいデンジの言葉に肩を竦めると、襲撃者は右手の鉄パイプを振りかぶって投げつけようとする。

 

 ──その瞬間、銃声が響く。

 

「ぐっ……」

 

 襲撃者の左方からの銃撃。それは、同じく意識を手放さなかったユウカによるもの。体勢が崩れたのを、デンジは見逃さない。すぐに接近して格闘に持ち込む。

 

(これは、ちょっとマズい……)

 

 鉄パイプはある程度の長さがある。故に接近されると逆に扱いづらい物になる。鉄パイプを持ち続けるのは無駄だと瞬時に悟った襲撃者は、すぐさま鉄パイプを左方のユウカの方へと投げつける。そして左へ向く勢いを利用して右脚でデンジの顔を狙ったハイキックを放つ。回避しきれず、爪先が頬に掠る。

 

 デンジは手錠を手に持っている。ヴァルキューレの生徒に借りた物である。相手は女の子だろう、だからできるだけ殴らず蹴らず、組み伏せて捕まえる──そんな勝手に設けたハンデのもと捕縛を試みる。

 

「!?」

 

 パンチを繰り出した襲撃者の右手首に、手錠の輪がかかる。デンジはそのまま手錠を引っ張って、体勢を崩させての転倒を狙う。

 

 しかし電撃による痺れが残っていたために、デンジの動きは精彩を欠いている。デンジの足払いを予測していた襲撃者がそれを避けると、体勢を崩されたことを利用してデンジへタックルを仕掛け、そのままマウントポジションをとる。すぐさま手のスタンガンを首へ押し当て、電源を起動させる。

 

「ギャィアッ!!」

 

 本日二度目の強力電撃。今度こそデンジは意識を手放した。

 

「ッ!!」

 

 距離のあったユウカが遮蔽物から顔を出せば、デンジが既に敗北していた。そして襲撃者がユウカの目を見据える。次いで何かを取り出していくつか床に転がす。だんだんと、白煙が立ち込める。

 

(煙幕! 逃げられる!)

 

 瞬時に意図を理解したユウカは最速で接近するが、襲撃者は煙幕の中へその姿を消す。真っ白な視界の中、窓を開ける微かな音がユウカの耳に届く。空気の流れから開いた窓を特定し、無線で状況を報告しながら襲撃者を追う。

 

 

 

 

「もっとだ、もっと飛ばせ!」

「これ以上は追いつく前に事故になります! てか舌噛まないようにしてください!」

 

 場所は変わって、ネルが警戒していた銀行。デンジたちと同じように奇襲による妨害を受け、強盗の時間を稼がれた。

 

 そんなものに足止めされて、あまつさえ犯人をまんまと取り逃がす──C&Cのリーダーである彼女にはそれは到底認められない。正義実現委員会の車で『ハロウィン』を追う最中、助手席の窓から身を乗り出してタイヤを銃撃する。最後尾の一台に当たったようでタイヤがパンクし、速度が大幅に落ちる。ネルの乗る車両はそれの処理を後続車に任せることにし、残る二台の『ハロウィン』を追いかける。

 

(資料に推定正メンバーって記されてたデカ女は一番前の車だ……虚仮にされた分、きっちりお返ししてやんよ!)

 

 そうして『ハロウィン』と正義実現委員たちのカーチェイスが続いたが──突然、一番前の車両から何かが投擲される。それは道路上で二回ほど跳ねると炸裂し、けたたましい爆音と爆風を放つ。

 

「うわあっなになになに!!?」

「クッソが……!」

 

 爆発に一番近かった『ハロウィン』の二台目の車は爆風に煽られて横転し、走行を停止する。正義実現委員たちの車は周囲の物に擦ったりしたものの、大事故に至った車はなかった。しかし事故を避けて緊急停止したことにより、『ハロウィン』の車一台には逃げられてしまった。ネルは悔しさから軽い悪態をつく。

 

「クッソ……ナメたことしやがって……!! …………こちらコールサインダブルオー、主犯格に逃げられた……! …………あ? おいそりゃマジか? ならいい、それで一網打尽だ」

 

 無線でユウカと言葉を交わす。初めは悔しさを露わにしていたネルも、ユウカからのある事実を聞いて笑みを浮かべる。無線を切ると事態を委員と共有し、車に乗り込む。その眼には、次こそとっ捕まえるという強い意志が宿っていた。

 

 

 

 

「す、すみません。遅れて……」

「おせーぞサヤカ〜! 待ち過ぎて死ぬかと思ったわ」

「ごっ、ごめんね……」

「マミー、本名はアジトでしか呼ばないってルールだよ」

「え〜いーじゃんかよ、別に今までそれで捕まったことないだろ」

「マミー」

「……へいへい、わーったよバロン」

 

 薄暗い路地裏で、仮装をした三人組──黒いライダースーツに顔を彫り込んだカボチャを被った『ジャック』、小柄な全身に包帯をグルグル巻にした『マミー』、バーテン服に不気味な笑顔の仮面をつけた『バロン』──が言葉を交わす。傍らにはそれぞれが強奪した金の入ったバッグが置かれている。

 

「それじゃずらかろう。バッグ持ってね」

 

 バロンがバッグに手を伸ばす。その時、何かが落下するような音が路地裏に響く。

 

「? ……!?」

 

 マミーが音の発生源を見るやいなや瞬時にそれを蹴り飛ばす。それは路地裏から少し出た所で爆発した。

 

「ひううう!!」

「あっぶねえな!! 誰だよ!!」

「……バレてるのか、どうやって?」

 

 路地裏の横への通路へ退避しながら、バロンは冷静に考える。逃げ切れるいつもと今回、違うこと……そう考えたときに一つの結論に辿り着き、右手首にまだついている手錠を拳銃で破壊する。

 

「今更気づいても遅えよ!」

 

 爆風の中からメイド姿の人間が飛び出してくる。それは最も近かったマミーを両手の銃で的確に撃ち抜くと、急接近して追撃とばかりに蹴りを入れる。意趣返しのような奇襲に『ハロウィン』は完璧な対応ができない。

 

(この狭い通路、その上戦闘、流石に分が悪い──)

「逃げるよ!」

「!」「ぐっ……わかった!」

 

 バロンたちは路地の反対の出口から大通りに出ようとする。しかし出た瞬間に両脇から捕縛用ネットが放出され、バロンたちの脚を絡めとる。

 

「ぐえっ!」「きゃあ!!」

「……あ〜、詰みか……テンパったなあ」

 

 

 

 

「よお〜ホームラン姉ちゃん」

「ん? あ〜もう、顔も見たくないってのに……」

 

 『ハロウィン』は捕らえられた。デンジには『ハロウィン』がクソ程犯罪をやらかしている集団だと思っていたので、案外すぐ捕まったことを意外に思っている。

 

「あの手錠、発信機ついてんでしょ。おかげでゲームオーバーだよ全く……」

「せいか〜い。つけときゃなんとかなるってよ、ホントなんだな」

「沢山雇った捨て駒も無駄になっちゃったな。お金かかったんだよ? まあでも、知り合いの頼みは成功っぽいから金は足りる……? まあいいや、とりあえず弁償してよ」

「いっ!? 俺あそんな金ねえし貯めてんだよ!」

「冗談だよ、犯罪者に弁償するやつはいないよ。からかい甲斐があって面白いな」

 

 金属製の拘束具で縛られたバロンに揶揄われるデンジ。こっちが捕まえたのに、なんだか敗けた気分。

 その後、護送車の手配などで忙しなく委員たちが動く中──ある急報が入る。

 

『……えしお伝えします。現在、七囚人の一人『狐坂ワカモ』がD.U.シラトリ区にて暴動を起こしています。上空からの映像によりますと、巡航戦車が少なくとも二台稼働しており、またワカモに加えて不良集団も暴徒化している模様です。繰り返しお伝えし』

 

 画面にはワカモが破壊活動をする多数の生徒を従えて、何処かへ向かっている映像が流れていた。

 

「あん時のキツネお面……!」

 

 デンジの脳裏に過る、シャーレの地下で相対したキツネお面。それは油断して取り逃がした苦い記憶。

 

「何よこれ……! 懲りずにまた!?」

 

 横でユウカも驚きに声をあげる。そしてそんな喧騒が耳に入ったのか、バロンが独り小さく呟く。

 

「ふむ、もう知られたか。ならもうこうしている意味はないね。……皆、逃げるよ」

「オッケー」「はい」

 

 見張りの委員がバロンの動きを不審に思った。先程まで微動だにしなかったのに、突然貧乏ゆすりのように揺れ始めたからだ。

 

「……?」

「ん? いや、何でもないよ、見張りさん。ただちょっと背中が……痒くてね、っと」

 

 次の瞬間、後ろに回されたバロンの手から前方へ、何かが放物線を描いて跳ねる。それは地面に到達すると同時に激しい光を放出し始める。

 

「うわあっ目、目っ……」

「何だァ!?」

 

 白い光が容赦なく眼球を刺激する。少しして視界が回復するとそこにはもう『ハロウィン』たちの姿はなく、拘束具が二つ落ちているのみだった。

 

「! あそこ!」

 

 ユウカが指を指した方向、すぐ近くの建物の上には拘束具から抜け出したバロンとジャック、変わらず拘束具に捕われてジャックに背負われているマミーがいた。

 

「何でそれずっと着けてんの? 拘束抜けミス?」

「……ミスったんだよ、何か悪いか?」

「いや、いつも通りだね。むしろ安心する」

「大丈夫だよマミーちゃん、逃げるのも捕まるのも三人一緒ってルールだから……!」

 

 『ハロウィン』はそのまま建物の屋上を移動していく。正義実現委員会はハスミの指示で『ハロウィン』を追跡する。

 

「早瀬さんたちはワカモの方へ!」

「解ったわ!」

 

 

 

 

「……こうも簡単に成功すると、拍子抜けですね」

「ブッ壊せ〜!! 連邦生徒会はクソだ!!」

「連邦生徒会は七神リンを退陣させろォ〜!!」

「オイコラ金出せよオラ!!」

 

 まさしく混沌。ワカモの予想と寸分違わぬ光景が眼前と後方に広がっている。

 

 ワカモは『ハロウィン』と接触し、トリニティで集中的に強盗事件を起こすよう依頼した。彼らの確かな腕を見込み、トリニティが対応しきれず連邦生徒会に援助を求めると踏んで。

 

 その策謀は上手くいき、ヴァルキューレの数も少ない。シャーレという組織も出張ってこない。シャーレに関しては事を構える事も考えてはいたが、『ハロウィン』で釣れたのは嬉しい誤算だった。

 

 ワカモの目的は前回と変わらない。サンクトゥムタワーの地下にあった謎の装置を破壊すること。連邦生徒会が後生大事に保管する物品……失踪した連邦生徒会長の物だろうか。いずれにせよ、破壊への期待は膨らむばかりだ。

 

 ──ワカモたちのタワーへの行軍の最中、急に曇天になったかと錯覚するくらいに辺りが暗くなる。ワカモはふと空を見上げる。その視線の先には──陽の光を遮りながらこちらへ降ってくる謎の物体があった。

 

「!?」

 

 サッと脚代わりに上に乗っていた戦車から降りて盾代わりにする。数瞬の後、轟音と共に戦車さえも吹き飛ばされそうな強風が吹き荒れる。

 それらが収まり、次いでその発生源から聞こえたのはこの世のものとは思えない野獣のような声だった。

 

『ウゥ、この辺りのはずだ……忌々しい神秘如きが、我の妨害をしおって。()()()()()の臭いを辿れぬではないか』

 

 それは、まさしく怪物。

 一般的な2階建ての家屋を越えようかという大きさ、四肢の筋肉は異常に発達し、荒々しく生やした髭に獰猛な目、額から天を突くように生える太い角。それを形容するならば『鬼』という言葉が合うだろう。

 

()()()()()!! ()()()!! ()()()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

 怪物がそう叫ぶとビリビリと空気が震え、辺りが揺れる。かろうじて先程吹き飛ばされなかった不良たちはもれなく耳を押さえている。

 

「……全く、悉く邪魔が入りますね」

 

 苛立ちを隠せぬ口調でワカモは呟く。そして一度は降りた戦車の上に再び躍り出たのだった。

 

デンジの役割は

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