最初はヤツカダキをピックアップしたいつもりでしたが書いてる内にどんどん変わっていきました。サンブレイクで登場を期待していたのに最早望み0の二人に出演してもらいました
リオレウス…人間で言うならもう90歳くらいのおじいちゃん。昔みたいに長く飛べない
ヤツカダキ…幼体の頃から溶岩洞に住んでるこちらも古参。人間で言うと30歳くらい。つい最近おじいちゃんリオレウスが越してきたけどあんまり関わりは無い
アグナコトル…イキリモンスターその1。人間で言うなら10代後半くらい。溶岩洞の強者から上手く身を隠していたおかげで成体になれたがそのおかげで調子に乗ってる。
グラビモス…イキリモンスターその2。アグナコトルと同じ世代。こっちも特に挫折を経験していない調子ノリ勢
赤き大地の血潮が吹き出す灼熱の大地。流水浸る暗緑の洞窟。
ここは溶岩洞。炎と水の二面性が隣り合う僻地にて妃蜘蛛ヤツガタキは空を見上げていた。
ヤツガタキがいるのはエリア14。中央に溶岩の池があるドーナツ状のエリアで天井には穴が空いている。その穴から遠くに映る影、空を飛ぶ火竜リオレウスの雄姿をじっと見ている。
リオレウスとヤツカダキ、この二頭のモンスターは互いを良く知っていた。例えるならご近所さんというやつだろうか。縄張り意識や餌を巡る争いなどで複数の大型モンスターの縄張りが被ることは少ないが、リオレウスは主に上層、ヤツガタキが主に下層といった形で棲み分けていた。
リオレウスもまた眼下に覗く穴からヤツカダキの姿を確認する。このリオレウスは老齢と言って差し支えないほど長い年月を生きており、もう長い時間飛ぶのは難しくなっている。既に番のメスにも先立たれ何匹もの子供を育て上げてきた老リオレウスが終の住み処に選んだのがここ溶岩洞だった。
そんなリオレウスの事情を特に知ることの無いヤツカダキは、そこらへんにいた適当なウロコトルを捕食する。ツケヒバキから成長し成体になった彼女も長らく己の縄張りを守ってきた実力者である。流石に経験ではリオレウスに劣るものの、ハンターズギルドのクエストランクでは下位には登場せず上位終盤になってようやくハンターが挑戦できるヤツカダキは、溶岩洞に棲息するあらゆるモンスターの中でも最上位に位置するといっても過言ではないだろう。
そんな彼女の日常を穿つ轟音が天井から響いてくる。
異変を感じたヤツカダキは食事を止めすぐさま配下のツケヒバキに後退させるよう引っ張らせた。直後にヤツカダキがいた場所を長大な体躯を持った何かが錐揉み回転しながら上から通過しそのまま地面を掘り抜いていく。今度は地面からその何かがヤツカダキ目掛けてまるで地面を泳ぐかのように突進してきた。ヤツカダキはそれを今度は横に糸を引っ張らせて回避する。突然の奇襲ではあったもののしっかりと見ていれば回避に手間取ることはない。ヤツカダキのそんな様子に痺れを切らしたのだろう。地中から大きく上へ飛びながら着地しヤツカダキを襲おうとした者の正体が明らかとなる。
炎戈竜アグナコトル。溶岩獣ウロコトルの成体で長い全長を持った海竜種のモンスター。特筆すべきはその生態で水や泥、砂ではなく溶岩の中を住み処とし泳ぎながら溶岩そのものを体に纏うという特徴がある。溶翁竜オロミドロ亜種が似たような特徴を持つがあちらが特殊な粘液で岩盤を溶かすのに対し、アグナコトルは固い火山の岩盤を掘り抜くために口が碇のように細長く発達しておりそれを体を回転させながら突っ込ませることでドリルのような掘削能力を得ているのだ。肉食性で気性も大変荒く、過去にはたった一頭で小国を半壊させるほどの被害を出した事例もある。
溶岩洞では幼体ばかりでこれまで確認されていなかった成体だがいないはずがないというのは早計だろう。むしろ幼体が住む環境で成体がいないことの方がおかしい。
ヤツカダキは見慣れぬ闖入者を今まで多くの外敵にしてきたことと同じように迎撃することにした。大きく鋏角を振り上げアグナコトルはそれに応えるように咆哮した。
アグナコトルはその碇口で以てヤツカダキの頭を粉砕せんと突進する。素の機動力では劣るヤツカダキは回避せずそれを自慢の鋏角で受け止めた。二本の鋏角と一本の碇口が拮抗する。どうやら両者のパワーはほぼ互角といっていいようだ。
時に左右に体を揺らしながら長く取っ組み合っていた二頭だったがアグナコトルの方が痺れを切らした。ヤツカダキから抑えられる力を下に受け流し、そのままヤツカダキの目の前で潜行する。途中、ヤツカダキはアグナコトルを傷付けようと鋏角を振るっていたが既に冷え固まっていた溶岩が鎧のように守り傷付けることは叶わなかった。
アグナコトルが潜り切った時点でヤツカダキはその場からの退避を選んだが流石に真下に潜られては間に合わなかった。ツケヒバキに糸を引っ張らせての移動だったが退避を先読みしたアグナコトルがヤツカダキの真後ろから現れ背負う卵塊を急襲する。碇口で突きつつその長い体をくねらせて巻き付いた。
大きな痛手を負ったヤツカダキだがこのまま黙っているつもりは無い。卵塊から無数のツケヒバキが現れヤツカダキに巻き付いているはずのアグナコトルに纏わりつく。そしてアグナコトルを雁字搦めにするかのように糸を吐き出した。有利を取っていたつもりのアグナコトルはツケヒバキ達の行動に面食らって慌ててヤツカダキから距離を取ろうとする。だがその行動がいけなかった。既に纏わりついた糸が地面と接着剤のような役目を果たし上手く動けない。
そうして、ヤツカダキへの注意が逸れてしまったアグナコトルにヤツカダキから卵塊を使った痛烈な殴打が顔面に炸裂した。先ほどとは違ってそれほど冷えていない溶岩はあっさりと衝撃を通しアグナコトルを大きく吹っ飛ばす。呻き声をあげながらアグナコトルは地中に潜行し纏わりついたツケヒバキや糸を無理矢理解除した。
再び地中から姿を現したアグナコトルはヤツカダキから少し距離を置いた場所で、上半身のみを地上に晒していた。今度は無闇に突っ込む真似はしないと双眸を厳しく狭めよりつぶさにヤツカダキを睨み付ける。ヤツカダキもまた、感情こそ読み取り辛い複眼だが姿勢は雄弁に物語っていた。配下のツケヒバキをそこかしこに展開し劣る機動力を補おうとする。
溶岩洞の下層で行われる戦いは一進一退の攻防を迎え激化していった。
一方こちらは上層エリア5。
リオレウスは目の前の白い巨躯を前にため息をついた。怒り時に漏れる火炎混じりの吐息ではなく、本当に呆れて嘆息したため息だ。
それを挑発と受け取った白い巨躯────鎧竜グラビモスは憤怒の声を漏らしながらその巨体で踏み潰さんと突進して行った。
鎧竜グラビモス。岩竜バサルモスの成体で全身を発達した白い外骨格で覆われているのが特徴のモンスター。リオレウス同様飛竜種に属しているが、リオレウスの三~四倍はあろうかという体躯のおかげで飛行能力は退化しかけている。代わりに発達した鎧の如き外骨格は溶岩の中に潜行し得る頑強さと高い耐火性を併せ持つ。アグナコトルとは違い鉱物食で鉱石が豊富な土地なら火山以外にも姿を現す。成体になったおかげか岩に擬態していたバサルモスよりも縄張り意識が強く、外敵を積極的に排除する傾向にありその危険性はアグナコトルに勝るとも劣らない。可燃性の鉱物の補食や潜行中に溜め込んだの溶岩の熱を排熱する形で熱線を放つことも可能で、火山に棲息するモンスター中でも指折りの脅威度を誇る。
グラビモスの突進をひらりと躱したリオレウスは、はてどうしたものかと思案した。己を全く見ていないリオレウスに苛立つグラビモスは熱線で撃ち落とそうとするがこれもリオレウスは難なく躱して着地する。似たような攻防が会敵してからずっと続いているがその間リオレウスから攻撃を仕掛けることはなかった。
若い個体なのだろう。成体となったグラビモスに天敵らしい天敵はほぼいない。大抵はその巨体に恐れて戦闘になりえないし、よしんば戦闘になったとしても生半可な攻撃では傷一つ付けることすら叶わない。種族としての強さそのままに、この溶岩洞に進出してきたグラビモスの白い甲殻に歴戦の強者であることを示す傷らしい傷は見当たらなかった。
リオレウスが頭を悩ませているのは正にそこである。長く生きた経験からグラビモスがどんな生物か知っている老リオレウスにとってグラビモスは厄介な相手だった。何せ自慢のブレスも毒爪も通じない。アンジャナフすら持ち上げ投げ飛ばす脚力を持つリオレウスだが、流石にグラビモスを掴むのは無理がある。同様に、リオレウスのように空を翔る能力を持たないグラビモスでは巨体故の鈍重さが災いして如何なる攻撃も当てられそうに無かった。
どうあっても不毛なのだ。お互いの強みが全く活かされない無益な争いである。
リオレウスはちらりと洞窟の奥に視線を向けた。エリア13に繋がる洞窟である。糸を巧みに操る"彼女"なら何か打開策があるかもしれないと一縷の希望を向けるが、しかし洞窟の奥から火山の噴火とは違う断続的な震動が響いてくる。どうやらあちらでも招かれざる客を相手にしているようだ。
リオレウスの横で轟音が弾ける。懲りずに突進してきたグラビモスが壁に衝突した音だ。
多くのリオレウスが行う滞空戦法を行わない老リオレウスは、普段は地上に降り回避時のみ羽ばたくという形でグラビモスを相手にしていた。今の衝突も壁を背にした老リオレウスが、紙一重で突進を躱した結果である。それはまるで猛牛を前に華麗に舞う闘牛士のようだ。
さほど疲労を感じさせない老リオレウスだが懸念事項はあった。若く意気軒昂なグラビモスと老リオレウスではスタミナという土俵においてあちらに軍配が上がる。蝶が舞うようにひらりひらりとグラビモスの攻撃を避け続ける老リオレウスだがずっとこのままという訳にはいかないだろう。
自身がこの縄張りを離れるというのは論外だ。もう長くはない寿命に他の縄張りを探す時間は無い。他の大型モンスターが縄張りを適当にうろつく程度なら認める寛容さを持っているが、ここまで喧嘩を売られては買ってやらねば主としての格が落ちるというものだろう。
老リオレウスが視線を上に向ける。相変わらずグラビモスをろくに見ない様子に攻撃を一度も喰らっていないのにも関わらず怒りの吐息を滲ませるグラビモスだが、彼には学習能力が無かった。痛みの無い教訓に意義は無い、と言うが挫折を経験せねば変わる行動を変わらないものだろう。
グラビモスを観察してその実力に深みが無いことを悟った老リオレウスは突如として火球を放った。当然通じない攻撃だが、ただでさえ怒りを滲ませているグラビモスは最早咆哮を上げながら追い縋る。そうして、老リオレウスは上手い具合にグラビモスを誘導しつつエリア5からさらに上へと登って行った。
場所を戻してエリア14。
ヤツカダキとアグナコトルの戦いはより一層激しさを増していた。そこらじゅうに張り巡らされた糸の合間を一筋のドリルが間を縫うように動いている。掘りに掘られた穴と飛び散る糸の残骸でエリア14は混沌極まりない戦場と化していた。
今も糸の隙間からアグナコトルがヤツカダキに突進する。構えていたヤツカダキはそれを綺麗に受け流して反撃するがそれより早くアグナコトルはヤツカダキから離れていた。そうしてまた様子を伺い邪魔になりそうな糸を壊しながら、再び突進攻撃を仕掛けている。
アグナコトルがヒットアンドアウェイを仕掛けヤツカダキがそれを耐え抜くという戦い、根を上げた方が負けという勝負であった。幼体のツケヒバキがいるとはいえ自身も含めてヤツカダキの出せる糸の量には限界があるし、同じようにアグナコトルだっていつまでも泳いでいられる程スタミナがあるわけでもない。
最早意地と意地の戦いになっていた。お互いに有効となる攻撃が紙一重で躱される以上こんなチキンレース染みた戦いに終始するのは仕方のないことだった。両者共に焦りを募らせているが、だからといってその焦りを行動に移してしまえばそれこそ命取りである。状況に進展が無いまま戦いは激化していく。
そうして、何度目かになるかはもう分からない衝突の瞬間、変化は起きた。
アグナコトルがマグマの池から飛び出してすぐにエリア14の天井の穴から白い巨体が落ちてきたのだ。偶然にも僅かな間取っ組み合っていたアグナコトルに直撃したそれは上層部で老リオレウス相手に喧嘩を仕掛けていたグラビモスに違いなかった。
老リオレウスは悠々と穴から飛んで降りてくる。自身の策が上手くいったことにご満悦な様子で辺りを見回していた。
老リオレウスのやったことは単純、エリア12の更に上、ハンターが使うサブキャンプの横にある穴へグラビモスも誘導しそこから突き落としただけである。我を忘れて怒り狂っているグラビモスに冷静になれというのは酷だろう。ブレスも毒爪も通じないなら重力によるダメージを通してやればいい。そのつもりで誘導した老リオレウスだったがそれ以上の戦果にヤツカダキは驚いていた。
グラビモスとアグナコトル、二頭共甚大な被害を受けている。グラビモスは自慢の甲殻に裂傷が刻まれアグナコトルの溶岩の鎧も胴体を中心に大きく剥がれてしまっている。単純な傷も馬鹿にならない。
押し潰される形となったアグナコトルは何とか脱出しようと這いずって蠢いたがその先にいたのは老リオレウスだった。その細長い碇口はさぞ掴みやすい形状をしていただろう。老リオレウスは片足でアグナコトルの碇口を掴むと引きずるように投げ飛ばし噴火口のある壁へ投げ飛ばす。強烈な追撃を喰らったアグナコトルは毒爪の痛みも合わさって無様にその場でのたうち回っていた。老リオレウスはそんなアグナコトルの姿に手を緩めることなく毒爪でじわじわと確実に傷つけていった。
老リオレウスがアグナコトルの相手をしていたと同時にヤツカダキも行動起こしていた。ヤツカダキにとってグラビモスは初めて見る相手だがこれも侵入者には違い無い。そう結論付けたヤツカダキは未だ痛みに呻くグラビモスに乗っかりそれを糸で巻き上げていた。糸を巧みに動かし宙吊りにしていく。唐突な浮遊感から来る激痛にグラビモスは混乱してろくな反抗が出来ていなかった。可燃性ガスを噴出しているがヤツカダキも糸も耐火性が高いため何の痛痒にもならない。もうグラビモスはまな板の上の魚と変わらない存在になっていた。落下により負った甲殻の隙間へヤツカダキの鋏角が差し込まれる。グラビモスの悲痛な叫び声を皮切りに解体作業が始まった。
グラビモスを解体し終えたヤツカダキは、配下のツケヒバキも含めて久方ぶりのご馳走に満足していた。これだけの巨体、しばらくは食わずとも大丈夫だろう。もうすっかり夜も更けた頃合いだが未だに舌鼓を打っていた。それを昼間と同じように上空から老リオレウスが見ている。丁度、アグナコトルの返り血で真っ赤に染まった体を水浴びで綺麗にしてきたところだった。
弱肉強食、適者生存のこの世界、満足に寿命を全うして死ねる極一部の強者だけである。今回は乗り切った老リオレウスであったが次も上手くいくかは分からない。生存競争は常に命懸けだ。
孫娘でも見るかのような眼差しでヤツカダキを見ていた老リオレウスはそんなことを考えながら夜の闇へと消えていった。
アグナコトルとグラビモス、両方共に噛ませにされるオチ。もう開発は見放してるんだろうなぁと悲しみです。
もっとこうモンスターの生態にフィーチャーしたモンハン来ないかな。ワールドからグッとモンスターの生態が見られるようになったけどそれこそモンスターになってモンスターとしてモンハン世界でサバイバルするみたいな
あるいはフロンティア復活してくれませんかねぇ…