乙女ゲーの世界で『ウェイクアップ』と叫んだ男   作:R1zA

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ep.XXI「変わりゆく人達」

 

 

 二人が戦闘中のパルトナーの甲板。

 そこへ来たグレッグとブラッドの二人は、彼らが戦うその光景を目に焼き付けていた。

 

 ―――アロガンツとダンの二機が瞬く間に空賊達を無力化していく、半ば蹂躙とも言うべき光景を。

 

 

「すげぇ……」

 

 

 グレッグの口から感嘆の声が漏れる。

 彼らの鮮やかな戦いぶりは正に一流の騎士達と比べても遜色ない領域にまで練り上げられており、グレッグも騎士を志す者の一人として、惜しみない称賛を送れる程だ。

 

 

 

 

 

 ―――ただ、同時にそれは()でもあった。

 

 

 自分が再戦を望み、追いつくと誓った相手(ヴァン)との間にあった強大な、見上げる程の高い壁。

 

 

『(……まだ、届かねぇ)』

 

 

 もし自分が彼らの鎧と同等の性能の鎧を使ったとして、同じような事が出来るだろうか。

 ……(いや)、確かに制圧自体は出来るだろうが、ここまで無駄のない動きではないだろう。

 

 

 分かっている。そんなことは分かっている。

 でも自分が悔しいと思ったのはそこじゃない。自分と(二人)の間にあった実力差などはとうの昔に分かっている。

 

 

 何よりも悔しくて、情けないと感じたのは―――学園で散々実践主義を謳いながら、こうして何も出来ていない自分自身だ。

 グレッグ・フォウ・セバーグにとって強さとは、自身が最も誇れる物であり、自分を形成するアイデンティティーでもあった。

 

 

 だが今、それは崩れようとしている。

 

  

 他でもない自身が求めていた筈の、ホルファートに生きる騎士として、冒険者としての本当の『強さ』を以前よりも間近で魅せられて。

 そして嘗ての自分の考えていた『強さ』を、何度も入念に抉るように、見せつけられて。

 

 

 

 彼らが空賊を制圧した後も、グレッグはその場に立ち尽くして自問自答を繰り返す。

 ブラッドの方は甲板に叩き付けられた空賊たちを拘束しており、グレッグにも「さっさと手伝え、脳筋!」と呼びかけていたが、グレッグには聞こえていなかった。

 

 

「……ガキ、か。そうだ、俺は粋がったガキだったのか」

 

 

 敵が来たと思えばすぐに動いた二人に対して、自分は何をすれば良いのかさえも分かっていなかった。

 自分は、誰かのサポートがなければまともに戦うことさえ出来ないと気付かされた。

 

 

 今もこうして何も出来ずに歯噛みして、でも出撃した所で足手まといになることを分かっていて―――

 

 

 ―――そんな自分が、酷く惨めに感じたのだ。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 目的地のウェイン領に着いたのは夕方だった。

 パルトナーを接岸できそうな土地が無かったことから、リオンの提案でパルトナー内の小型艇を使って上陸することに。

 

 

「それにしても、日が落ちるのが早くなったな」

「そうか? なんか寒い気はするけどな」

 

 

 しみじみと呟くリオンに相づちを打ち、姿勢を正す。

 何故わざわざ姿勢を正しているのかというと―――問題が発生したのだ。

 ブラッドが俺達を見て文句を言ってくる。

 

 

「いや、何でお前達はそんなに落ち着いているんだよ!」

「狼狽えるな……俺も困ってるんだよ」

 

 

 リオンの言う通り、結構まずい状況なのだ。

 何故なら俺たちは今――準男爵家の兵士たちに囲まれているのだ。

 姿勢を正しているのも、両手を上げているのも、銃口を向けられているからである。

 

 

「……お前ら、凄いのか駄目なのか全く分からないんだが」

「知るかよ。強いて言うならその両方だ」

 

 

 仮にここで発砲されたとしても、俺自身の身を守る程度なら、刀を抜けさえすれば行けるはずだ。

 まあ他の身の安全は一切保証されないから、ここで身体を動かず気などないが………誤解くらいなら解けるか?

 

 

「あの、俺達は怪しい者じゃ……」

「怪しい者ほどそう言うと思うが? それに空賊の船を連れておいて信じられる筈がない」

「あぁいや、その、本当に怪しい奴だなんてふざけた話、ある筈無いだろう? いきなり銃を向けてくるのも違うと思うんだが?」

「詭弁を弄すな! 何を言おうと、お前たちはこのまま連行して……」

 

 

 ダメみたいですね。

 横に居るリオンからは「お前もう喋るな」と視線で訴えられたので、諦めて連行されようと思ったが……。

 

 

「すぐに武器を下ろせ!……おお、やはり。ブラッド様ですね? お久しぶりです」

「え? あ、あぁ」

 

 

 ここの領主、準男爵と思わしき人が来たことでようやく兵士たちが武器を下ろして、事なきを得る。

 ブラッドへと挨拶をしていたが、ブラッド本人はこの人の事を覚えていなかったらしい。

 

 ブラッドが何故突然囲まれたのかを問う。

 

「その、どうして僕たちは囲まれたんだい?そっちの娘さんに助けを求められたから、駆け付けたというのに」

「助けを? 娘がですか?」

 

 

 全く心当たりの無いような顔をした準男爵は、どういう事かとカーラの方へと顔を向けると、カーラは慌てて弁明を始める。

 

 

「ち、違うの。私が相談をしたこの子が大きく考えすぎて。そ、それで――」

「……お宅の娘が俺に救援を求めるために、リビアに紹介して欲しいと相談したわけよ。だから俺たちは駆けつけたんだけど?」

 

 

 カーラの発言に割り込むように、リオンが入る。

 相手側はリオンが誰なのか把握して居なかったようで、ブラッドが紹介する。

 

 

「リオン・フォウ・バルトファルトだ。噂くらい聞いているだろ?」

「おお、男爵様でしたか。これはとんだご無礼を。し、しかし、我が領地はそこまで困っていません。救援を求めたのは本当なのでしょうか?」

 

 

 空賊に困ってるからカーラは救援を求めたのに、領主は空賊になど困ってないと言う。

 ここで目に見える形で矛盾が生まれたが、それに対する解は恐らく、俺含めた多くが持っていただろう。

 

 

「……どういう事?」

 

 

 ブラッドが目を細めてカーラを見ると、言い逃れの出来ないカーラはオリヴィアを睨みつけようとするが、話を余計に拗らせたくないので俺が間に入る。

 ―――もうこれ以上は止めておけ、という意味を込めて軽く首を横に振ると、自身の置かれた状況を察してか、泣きそうな顔になっていた。

 

 

 ……少し気の毒だが、彼女を助ける理由は無い。

 というか半ば自業自得でもあるので、仮に助けるとしても、より被害者としての立場が強いリオンとオリヴィアが断罪を選ぶなら、俺に打てる手はほぼ皆無に等しいのだ。

 

 

「申し訳ありません。娘も混乱しているようだ。ここは一旦、我が家にご招待しますので――」

「―――ハッ」

 

 

 そこまでの謝罪を聞き、それをリオンは鼻で笑う。

 情け容赦をかける理由が一切存在しない立場としては、ここで有耶無耶にされては困るのだろう。

 何故ならこの世界は―――乙女ゲーであり、特に女子に優しい世界だから。とはリオンの言だ。

 

 

 だからやる時は―――徹底的に、だそうだ。

 

 

「こいつが俺たちをここに呼んだ。報酬を約束して助けを求めた。準男爵、あんたも分かるよな? こっちも遊びじゃねーんだよ」

 

 威圧的に、そして脅すように詰め寄っている。

 年齢こそ俺達の方が下だが、準男爵に男爵と、爵位で言うなら俺達の方が立場が上。

 奇しくもリオンは、あれだけ嫌がっていた爵位に助けられている訳だ。使えるものは使う、と言えばそれまでだが。

 

 

「将来の男爵二人。そして正式な男爵二人。飛行船まで出させて、空賊の飛行船を二隻も拿捕した。これでやっぱり間違いでした、なんて言わないよな?」

「で、ですが、状況がよく分からないのでは――」

「だったらさっさと娘に聞けよ。可愛い娘を庇うのは良いよ。けど、そっちがその気なら、俺は俺のやり方で報酬を貰うから」

 

 

 そう言ってリオンがルクシオンにパルトナーを動かさせて居たので、俺も一応蛮刀を抜き、掲げて威圧する。

 脅しの道具にこれを使うのは少し気が引けるが、状況が状況なので致し方無い。

 準男爵も状況を飲み込めずにいたが、兎に角かなりまずいことになっているのだけは理解したらしく、カーラの肩を摑んで詰問していた。

 

 

「カーラ、いったいどういう事なんだ!? お前、本当に救援を依頼したのか? 説明しなさい!」

「―――あ、あぁッ、ああぁあぁあッッ!!」

 

 

 その後、その場に崩れて泣き叫ぶカーラによって、今回の件の事の顛末が明らかになるのだった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 その日の夜。

 俺はパルトナーの甲板の上に寝転がって特に何も考えることもなく、夜の薄明るい空を眺めていた。

 

 

 夕方の出来事を思い起こす。

 まあ思い起こすと言っても大体数時間前の出来事なので、その内容はしっかりと脳裏に焼き付いている。

 

 

 ―――あの後、カーラが全て話してくれた。

 命令で俺達を嵌めるために連れてきたことを、だ。

 

 

 リオンがハッタリでカーラに捕らえた空賊から事情は聞いている、って言ったのが決め手だったようだ。

 当の空賊たちは仕事柄と言うべきか、やはり最後まで口を割らなかったが。

 

 

 伯爵令嬢……オフリー家の奴等が、俺たちを騙して空賊に襲わせようとした、と。

 

 

 あとは空賊と繋がっていた証拠の一つでもあれば、オフリー家の改易及び取り潰しは確定。

 これ以上のオフリーへの罰則の差異があるとすれば、精々王家が潰すか、俺達(エルブレイブ)が潰すか程度の差しか無いだろう。

 もうこの方面に注意する必要も無さそうだ。

 

 

「……お前、居たのかよ」

「ん?……おい、どうした?そんな不貞腐れた顔して」

 

 

 誰かがここにやってくる気配を感じて扉の方へと視線を向けると、その正体はリオンだった。

 ただ、その様子はすっかり士気阻喪しているというか何と言うか……朝よりも血色の悪い顔をしている。

 

 

 オリヴィア辺りと何かあったか?

 

 

『ヴァンにも見破られましたね。やはり先程のオリヴィアの言葉は、マスターの中で図星だったと』

「……そうだよ」

 

 

 鉄格子にもたれ掛かったリオンは、横で浮かんでいるルクシオンの言葉を不服げに肯定していた。

 にしてもやっぱりオリヴィアと何かあったのか。 あの調子だと有り得なくは無いと思っていたとはいえ、出来れば当たって欲しくない予想だったんだが……。

 

 

「……なあ」

「何だ?」

「ゲームのストーリーに合わせる為、リビアがいつか聖女になる時の為に……って思って、俺がしてきた事って間違いだったのか? ――現実(ここ)創作物(ゲーム)を混同してたから、俺の行動は裏目に出たんだろうな」

「―――はぁ」

 

 

 思ってたより重症だわ、これ。

 なんかめっちゃ拗ねて不貞腐れてるし、これを聞く限りだと状況が予想以上に拗れてるし。

 まあ確かに知識の過信は褒められた事じゃ無いと思うが、この調子だと自分からオリヴィア達と疎遠になりに行きそうだよな……こいつ。

 

 かと言って三人の中に俺が割り込んでもややこしくなる故、俺が言えるのは、この一言のみ。

 

 

 そう―――

 

 

 

 

 

 

「寝ろ」

「眠れねぇ」

 

 

「……寝ろ」

「眠れねぇ」

 

 

「―――寝ろ!」

「だから、眠れる訳ないだろ。 それにこっちは真剣だってのに何ふざけて――」

「ふざけてない。……てかお前拗ねてんだろ。取り敢えず時間開けて一回落ち着け」

 

 

 恐らく今のリオンは様々な感情が錯綜していて、いつものように冷静な判断が出来ていない。

 何を言っても、何をしても、悪い方向へと考えるバイアスが架かっていて、一言で言うなら……めっちゃ面倒くさい。

 

 

 半年ほど過ごして分かったこいつの性格的にも、ある程度感情的にならない状態になった後、腹を割って話すのが一番効果的だろう。

 それに向こうにも多少の時間が必要だ。

 

 

「というか、何があった。そして何が駄目だったんだ? 俺何も知らないんだが」

『その疑問の答えと原因をあえて言うならば、彼女の―――オリヴィアの精神的な成長をマスターと、ヴァン。貴方達が阻害したのが原因ですね。 あくまでマスターの言うゲームとしての観点ですが、実際彼女は精神的に不安定なようです』

 

 

 俺の疑問に対して、ルクシオンが答える。

 ……というか俺もなのか。まさかとは思うが、俺も原因の一端を担っていたのか。

 そんな内心を読み取ってか、更にルクシオンが補足する。

 

 

『まあ、割合的にはマスターが限りなく10に近い9。ヴァンが1と言った程度ですが』

「俺の扱いが酷い気がするぞ。どこでそんな差が出たんだよ?」

『一番は手助けの回数ですね。ヴァンとオリヴィア個人の接点がそこまで大きく無いので。後、ヴァンは合理主義者のマスターとは違って気まぐれなので、打算やゲーム的利益が含まれていなかった、という程度でしょうか』

「いや気まぐれって……」

 

 

 まあ半分くらいは合ってるから言い返せないが。

 思い返せば、学園に入った後にこういう類の厄介事に関わる時は、そこまで何も考えたりしていなかった気もする。

 実際、助けたいと思える理由が無いと何もしなかったりと、結構薄情な所があるとは自覚してるが。

 

 

「明日だ。今日は落ち着いて、明日もう一度話してこい。こういうのは拗れた後に後悔しても遅いぞ」

「……ああ。ある程度気持ちの整理がついたらな」

 

 

 何はともあれ、後はルクシオンと当事者様方が自力で何とかしてくれるだろう。

 そう信じて、俺は冷たい夜風の吹く甲板を後にした。  

 

 

 

 ―――そういえば、出た後の廊下で丁度ブラッドとすれ違ったんだが、どこに向かっていたんだろうな?

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 自室に戻ったのまでは良かった。

 夜も更けてきたから寝ようとしたのだが、格納庫の方から声が聞こえてきて煩いのだ。

 部屋がそこに近かったのもあって、なんとなくで様子を見に来たのだが……

 

 

「エルブレイブか……何でここに来たんだ?」

「物音が聞こえてきたから、何事かと思って見に来ただけだ。お前こそ何してる?」

 

 

 積まれた空賊の鎧の側で槍を振るい、すっかり汗だくになっていたグレッグが居た。

 俺の問いかけに対して、グレッグは右手の指で頬を掻きながら答える。

 

 

「鍛錬だ。あと、使えそうな鎧を探しててな。次の空賊本隊との戦いでは、俺も力になりたいんだ」

「へぇ、鍛錬か。ここに来てまでやるとか随分真面目なんだな、お前」

「―――いや、俺なんてまだまだだ」

 

 

 自らを嘲るように、グレッグは冷たく嗤う。

 贔屓目なしでもこいつは同年代ではかなり優秀なのに、何故こうも意気消沈しているのかと、俺は疑問に思う中でグレッグは言葉を続けていく。

 

 

「前話した時、いつかお前に追いつくって言ったよな。 でもまだ俺の考えは甘かった。 俺は実践主義だと言いながら、家臣が近くに居ないと何も出来ないガキだったんだ」

「……」

「でもお前はあれだけやれて……本当の実践主義がどんな物かを、見せられた気がしたんだ。 今の俺のままじゃあ、いつまで経っても絶対にお前に追いつくことなんか出来やしねえって事が分かったんだ」

 

 

 ……思ってたより、色々考えてたんだな。

 グレッグが今悩んでいるのは、理想と現実のギャップ、という奴だろうか。

 思っていたよりも自分の力が及ばないことにショックを受けて、以前からまたもう1段階変わろうとしているらしい。

 

 

 グレッグを見てそんな事を思っていると、船内からフワフワと浮かんだロボットがやってきた。

 その手には木刀と木槍をを一つずつ持っていて、俺とグレッグに渡して去って行った。

 

 

「何だ……あの鉄の塊?」

「さあな」

 

 

 恐らく犯人はルクシオンだ。

 だが、これは好機だと言わんばかりに、グレッグが俺に槍を向けてくる。

 確かに、これの使用用途はそれ以外に無いよな。

 

 

「折角の機会だ……。教えてくれ、エルブレイブ。今の俺に、何が足りていないのか」

「……はあ」

 

 

 色々真剣に考えているのは分かった。

 最初に話したときの鼻につく態度は見る影もなく、自らが目指す先を見据えている。

 槍を向けてくるグレッグを見て、俺は面倒な事になったと溜息を吐いた。

 

 

「……俺が止めるって言ったら終わりだからな」

「構わねぇ。―――さぁ、来い!」

 

 

 速攻でけりをつけようと思い木刀を振りかぶると、グレッグが両手で構える槍の柄で防がれて、そのまま鋭い突きを連続して放ってくる。

 その突きを俺は後ろに下がりながら躱し、少し危ないと感じた一部を木刀の側面で受け止めていた。

 

 

「強くなりたい理由は分かった。でもここまで固執する理由が分からん。他も伸ばせば十分俺には勝てるだろ」

「他も当然努力してる。でも、お前にはコレで勝ちたい。だから俺はブラッドのようにするんじゃなく、自分の得意分野を限界まで伸ばすと決めたんだ」

「そうか。頑張れよ」

 

 

 互いが互いの攻撃を防ぎ、その後激しく一転攻勢。

 絶え間なく攻守が入れ代わり、わざと作った見え透いた隙にも引っ掛かってくれやしない。

 分かっていた事だが、やはりグレッグは強い。

 同じ性能の鎧や装備などといった状況下では、間違いなく同年代トップクラスの実力がある。

 

 

 まともにやっていると長引きそうなので、ここは一度無理にでも決着へと縺れ込もう。

 木刀と槍が鍔迫り合いとなった瞬間、グレッグの下半身に足を差し込んで強引に姿勢を崩す。

 

 

「なっ…!?」

 

 

 不意に受けた攻撃には、一瞬呆気にとられていた。

 普通に切り合っていた中でこれはルール違反な気もするが、足使うの禁止なんてルール無かったし良いよね。うん。

 まあこれで後で文句言われたら、実践だとこんなの日常茶飯事だって言って誤魔化すか。

 

 そんな事を思考の片隅で考えながら、体勢を崩して膝をついたグレッグへと木刀の切っ先を向けた。

 ……不服だが、負けは負けとでも言わんばかりに、グレッグは溜息を吐いていた。

 

 

「……俺の負けか」

「そうだな」

「というか俺、普通に武器だけで戦うと思ってたんだが、今のってアリかよ?」

「……誰も使っちゃ駄目って言ってなかったからな」

「それ、屁理屈って言うんじゃないか?」

 

 

 本当に返す言葉もない。

 次はまあ普通にやるかと思い木刀を構え直すと、グレッグが意外そうに首を傾げていた。

 

 

「まさか、もう一度戦ってくれるのか?」

「飽きたら止めるって約束だしな。お前が嫌なら今直ぐにでも止めるが」

「―――いや、やろうぜ!」

 

 

 そうして直ぐに好戦的な笑みをしたグレッグの槍と、俺の木刀が交差する。

 結局この後、俺も思った以上に気分が上擦っていたらしく、日付が変わって完全に真夜中となる数時間もの間、俺達は戦い続けた。

 

 ……明日寝不足になりそう。

 

 

 

 





 コイツ野郎の脳焼いてばっかだなオイ。

 今回は文字数削減の為に結構端折ったので、ヴァン視点の何があったか分からない人は、原作Web版の20話を読めば、内容の補完が出来ると思いマッスル(激寒)


では前回高評価をしていただいた、

【☆9】
八重垣八雲さん、翔悟さん、twurukusuさん

ありがとうございますm(_ _)m


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