めしくい・ざ・ろっくの主人公(サッカー未経験者)がブルーロック入りをしたIF。
おまけで投稿したのを分離させただけです。

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めしくい・ざ・ろっく・BADEND「前田一郎 in ブルーロック」

 

 

 

 

 

 

 IF「前田一郎 in ブルーロック」

 

 

 

 

 

 

 

 ブルーロック。

 それは、最も熱いサッカー選手強化プロジェクトが進められる場所だ。

 絵心甚八なる狂人により、プロジェクトの為だけに建設された施設の中に十八歳以下の優秀なストライカー三百名を隔離し、互いに競わせ、成長させて最終的に一人――世界一のストライカーを出産する。

 日本の総力をかけて進行されるプロジェクトであり、招集されたのは十八歳以下で全国レベルの活躍をした者たちばかり。 

 篩にかけられ、落ちないよう皆が死力を尽くす。

 その中で、自らのサッカーへの飢餓感を煽られ、さらなる先を求め、互いを蹴落とし、成長を噛み締めて進んでいく。

 

 

 俺――前田一郎は、その中にいた。

 

 

 

 

 

「あ゛ー、沁みる……」

 

 シャワーを浴びながら、俺は目の前の壁に手をつく。

 正面の鏡には、すっかりゴツくなった俺の肉体が映されていた。

 最初の肉体強化週間は吐きまくる日々だったが、今ではフィジカル面だけはブルーロック随一という名誉な称号を頂いている。身長もぐっと伸びたが、疲労ですぐ眠る質だったので成長痛に悩まされた事は無いのが幸いだ。

 本当に変わったな……俺。

 親戚のひとりが見たら『い、いっくんがバケモノに……』とか言いそうだけど。

 

「おい、雑魚」

「…………」

「自分の体に見惚れてる暇があったら、もう少しオレにパス回せるように練習するかブルーロック去れ」

「…………」

「返事は?」

 

 隣のシャワーを使用している切れ長な瞳の美少年――糸師凜が俺にこれでもかと辛辣な言葉をかけてくる。あの、ストライカー目指してる人間にパス回し上手くなれって普通は喧嘩売ってる言葉なんだが……。

 でも、俺は『特殊』なので気にしない。

 凜の言い回しは誰にでも刺々しい。

 最近では、その無遠慮さも可愛く見えてきた。

 同い年とは思えない傲岸な態度には苦言を呈したいところだが、この天才少年はプレーの凄さでそれらを完封するのでお手上げだ。

 

「無視かよ」

「なあ、凜」

「あ?」

「ブルーロックに来た時点では、俺がサッカー未経験者だって言ったら笑う?」

 

 凜がこめかみに青筋を立てて俺を睨む。

 どうやら笑えない冗談どころか侮辱と受け取られたらしい。マジでエースストライカーの精神は意味不明だ。

 しかも、男前が怒気を発していると迫力は想像以上だ。

 割と強面の男に睨まれた時の怖さと遜色無い。

 

 そう、凛の怒りは正しい。

 

 ブルーロックはサッカー未経験者が来る所ではない。

 

 絵心甚八が日本サッカーを分析して選出した三百人で始まっている。

 未経験者――つまり、サッカーをやってもいない人間はそもそも眼中に無い。目に留まる機会すら無いのだから、確実にブルーロック入りは不可能だ。

 うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、何で『未経験者()』は入れたのォオオオオオオオオオ!!!?

 

 

 

 

 未だに意味が分からない!

 最初、冬のバイトから帰った時に家のポストに封筒が入っていた。

 中を開けば、一枚の紙。

 

『え、『強化指定選手に選出されました』……?え、何の?』

 

 スポーツもやっていない俺がそんなメールを受け取って、まず本当に自分宛てかを確認し、次に如何なるスポーツかを確認する。

 サッカー…………ほーん………何で?

 疑問に思いながら、紙に書かれた連絡先に電話をして確認したが間違いはなく、俺は日本フットボール連合が指定した会場まで向かった。

 

 その会場に集まった三百人を見て――マジだと悟った。

 

 絵心甚八に煽動されて、施設へと駆け込んでいく三百人。

 彼らに言葉の魔法をかけたのだろう。

 ただ――俺にはかからなかった。

 ストライカーになりたいと思わないヤツは帰れと言われたので帰ろうとしたけど――。

 

 

『何してる』

『え?』

『お前は入るんだよ。――前田一郎?』

 

 

 なんで??

 ガンギマリ甚八にそう言われて、その後も三回拒否しても入れと繰り返すので、仕方なく入った。人権ェ………………!

 

 周囲の熱量に対し、自分は失礼な存在だと自嘲しながら最初の試験――鬼ごっこ。

 少し狭い空間で鬼が逃げる者にボールを当て、当たったら鬼という簡単なルール。

 制限時間終了時に鬼だった者が脱落らしい。

 

 ほーん……コレは俺だな。

 

 そう思ったのだが、全員が俺を認識していないかのように争い、一回も彼らに標的にされる事は無くクリアした。

 なんで???

 

 

 その後、何となくサッカーを続け、上手くなっていく過程が楽しくて、みんなとライバルとかクソ熱いバトル繰り広げて、いつか終わるとしてもサッカー楽しもうと玉砕覚悟で挑んで――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――何で生き残ってるねん!!!?」

「急に叫ぶんじゃねェ」

 

 凜に注意されて泣きそうになる。

 いつか落とされるまで楽しもうってハードモードを気楽に楽しんでいたら、ブルーロックランキング3位……何してん、俺!?

 最初から同じグループだったのもあるが、糸師凜とかいうヤツに目をつけられた。

 曰く、動画で見たとあるサッカー選手に似ている、らしい。

 後で調べてみたが、その選手の顔が何処かで見た顔だな……と思ったら、前田家に来た時に一度だけ見せられて自分で破り捨てた実父の顔に似ていた。

 皮肉な事に、選手の顔を見るまで忘れていたのである。

 サッカーは観ないから、今まで知らなかった。

 

 何も嬉しくはないが。

 俺が苦しい時間を過ごす中、アイツはサッカーで有名になっていたらしい。

 だからといって、憎くも無い。

 どうでもいい。

 もうブルーロックを楽しむだけ楽しんで、後藤家に元気にやっていると伝えたい。

 

「はあ……しんど」

「…………」

「なに?」

「最初に来た時、おまえの動きがあまりにも素人――…………何でも無ぇ」

「………」

 

 いや、何でも無いは無理があるだろ。

 ほとんど言ってただろ。

 ご明察というか、誰の目にも明らかなド素人です。

 

 まあ、気付いた所でどうともならないのだが。

 この二次選考を抜けた次で、落ちる予定だし。

 凜とチーム続きでサッカーなのも、きっとここまでだ。

 

 何だか、会ったのが遠い昔のようにも思える。

 最初は、凄く邪険に扱われたっけな……。

 

『凜、タオル使――』

『話しかけんな』

 

 一言も喋らせて貰えない勢いだ。

 変わったのは、一次選考だ。

 今までの試合は、普通よりは足が速いだけで何も武器が無いから引っ込んでようと、ずっと隠れていたら本当に試合でもボールが回って来ず、それ以外でも「あ、いたんだ」扱いで流石にイラッときてまず体から作ろうと強化した。

 そして、徐々に体力が増えていって――ある試合でパワーが爆発した。

 揺るぎない体幹、増した速力。

 筋肉が正解だった。

 それで、一人でゴールまでドリブルし、シュートを決めた瞬間だ。

 

『……名前は?』

 

 凜から名前を聞かれた。

 いや、把握してなかったのかよ……というツッコミはさておいて、これが地味に嬉しかったり。

 それからも、色々と一緒にこなして……特に一次選考と二次選考の間にあった強化トレーニング中はお互いに競争したな。

 

『オレの勝ちだ』

『あ、はい』

『チッ、張り合いが無ェ……』

『そうか(え、これ競争だったの?)』

『そのクセ、俺に食らいついて来やがる……』

 

 よく睨んでくる子だよな、ホント。

 その後もホラー映画が好きだと聞いて、少しだけ距離が縮まった感がある。

 その後すぐに『馴れ合うな気色悪ィ』とか『サッカー以外で盛り上がんな下手クソ』とか言われて少し泣きそうになったけど。

 

『一郎、何でサッカーやってる?』

『り、凜……オマエが他人に興味持つなんて……ブルーロックの外で槍でも降ってるんじゃ……!?』

『ボール替わりにして蹴り回すぞ』

『あ、はい』

 

 いや、絵心にやれと言われてやってます。

 そんな理由では、言っても蹴り回されるだけなのを瞬時に察して、俺は話題を逸らした。

 

『最初は特に無かったけど、今はまあ楽しいからやってる』

『ぬりィな』

『はいはい。俺はハングリー精神無いから』

『フン』

『どうせ凜がどんなヤツも超えて世界一のストライカーになる予定だし。今は俺がちょっとでもそれを支えればと思ってるよ』

『………』

『凜のサッカーは見てて心が踊る。動画で色んな人を見たけど、その中でも一番凜のサッカーが好きだな。俺は傍で見守れるように、頑張ってるだけで今もサッカーやるのに特別な理由は無いぞ』

 

 それを言ったっきり、凜は黙ってしまった。

 後で自分の台詞を思い返して、もしかして照れていたのではと思って後で茶化しに行ったら『調子に乗んな、媚売りに来んなら蹴る』って釘を差された。はい、友達になれたとか勘違いしてゴメンナサイ。

 

 あれから、随分経った。

 二次選考の最中、残るもう一試合で勝てば終わる。

 きっと、次の選考ではもっと厳選されて、最後の一人とかになるのかもしれない。

 別れは唐突になる。

 事前に言っておかなくては。

 

「凜、きっと俺が一緒なのは二次選考までだ。次の選考で、本当のストライカーが決められる」

「……?」

「『お別れ』だ、凜。――世界一になれよ!」

 

 万感の思いを込めて、感謝を伝える。

 すると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに勝手に諦めてンだよ………!!」

 

 

 

 

 

 なんで??

 

 退場する予定ですと暗に伝えたら、ブチギレられた。

 この子といい、他のみんなといい、絵心といい……言いたくないけどサッカー以外でもイかれてる……。

 不機嫌になって体を洗い終わるや浴場を出ていく凜を見送りながら、俺は早くブルーロック出ようと再決意したのであった。

 

 それから二次選考を勝ち残り、凜くんが潔世一という良いライバルを得たのにほっこりし、世界選手とプレーできる貴重なゲームを経て、遂に運命の三次選考にて俺は終わるのだと死の宣告を待っていたら。

 

 

『U-20日本代表VS“青い監獄”選抜の特別壮行試合だ』

 

 

 

 なんて??

 

 よく分からん試合が催されていた。

 メンバー決めの三次選考が行われ、結果的に俺はベンチメンバーとなった。…………いや、もう熱意注いでる皆に失礼だから嫌だこのポジションも。

 

 そして、凛と世一の爆発によって生み出されたシュートで幕引きとなり、俺たちは勝った。いや、彼らはU-20日本代表に勝ち、逆にその地位を簒奪した。

 す、凄いぞブルーロック!!

 でも。

 

 なんで俺いるん??

 

 結局、大試合の後は二週間の休暇が貰えるようになった。

 外出の許可、つまり家に帰れる絶好の機会。

 長かった……まあ、二週間後に再集合だけどさ。

 ここに来た時と同じくバスに乗って帰ろうとする時、乗車前に凜と遭遇する。

 

「お、凜」

「ああ」

「二週間、オマエに会えないのは寂しいが」

「気色悪ィ……戻って来ても、もうオレにベタベタすんなよ」

「そうだな。これからブルーロックは更に熾烈な争いの場になるだろうし」

「…………」

「暫しの『お別れ』だな!」

 

 元気よく再会を誓おうと、俺は笑顔で告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次に『お別れ』とか言ってみろ、ぐちゃぐちゃにすンぞ…………!!!」

 

 

 

 

 

 なんで??

 凜がバスに乗り込む。

 俺は黙ってそれを見送り、自分の言葉を思い返した。

 お別れって言葉が嫌なのに、ベタベタと付きまとうなというのは…………どういう事だ?

 分からん。

 

 

 取り敢えず、お疲れ様………俺………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 BAD END…………

 

 

 

 

 

 


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