多脚ロボットに告白されまして   作:小栗チカ

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第十一話 皆とゲームで遊んだ 2

……雰囲気、暗っ!

空は真っ暗で、いかにもな赤い月? が世界を照らしている。

その月に照らされた建物は軒並み崩れている上に、良くない雰囲気を漂わせていた。

いかにもホラーで悪魔的な雰囲気の世界観だ。

作り込みの凄さはわかったけど、返す返すも暗い。

なのに人が大勢いて、明るく和気あいあいとしているのが何ともミスマッチだ。

ここがスタート地点の広場か。

さて、アイちゃんを探そう。

確か鳥っぽい彫像で待ち合わせだったはず。

程なくしてそれらしきものが見つかったが、人がいっぱいる。

待ち合わせ場所になっているようだ。

そちらへ向けて歩き出した時、モコモコした白い帽子とケープコート、フワフワのワンピースを着た女の子が大きく手を振っているのを見た。

 

「おーい、ナナちゃーん!」

「あ! アイちゃん! と」

「よお、ナナちゃん。バハギアへようこそ。俺のスカウトを受けてくれる気になったんだな!」

「ユーゴさん、この世界までそれ持ち込まないで下さいよ」

 

アイちゃんの隣には、黒と赤を基調とした鎧に、両手斧を持ったユーゴさんがいた。

私達は互いに駆け寄り、無事に合流を果たせた。

アイちゃんは満面の笑みを浮かべて私を見つめる。

 

「ナナちゃん、黒魔術師にしたんだね」

「魔法使いやってみたくて」

「衣装似合うよ! クールなのに可愛い!」

「ありがとう! アイちゃんのそれは」

「私は白魔術師だよー」

 

アイちゃんは杖を見せた。

私の杖とは違い、先端に十字架がついている。

 

「全部のジョブの衣装見たんだけど、この帽子の可愛いさが決め手になったんだ」

 

赤い帯がついたモコモコのベレー帽っぽい帽子に手をやるアイちゃん。

帽子も可愛いけど、漫画やアニメで見るショートケーキっぽい色のワンピースも可愛いな。

前時代のロリータ? っぽい。

 

「あの時はだいぶ待ったぞ。トラブルでも起きたのかと心配した」

 

苦笑しながら言うユーゴさんに、アイちゃんは頭を下げた。

 

「前にも謝ったけどゴメンなさい。でも妥協できなかったんだよ」

「わかってるって」

 

頭を下げるアイちゃんの頭に、ユーゴさんは優しく手を置いた。

そして微笑み合う二人。

……あのさ、早速見せつけてんじゃねーよ。

攻撃魔法を使いたい!

この二人にぶちかましたい!

しかし、味方に攻撃魔法は使えない。

運がいいカップルどもめ。

私は気持ちをおさめ、改めてユーゴさんを見た。

 

「ユーゴさんは、アタッカー?」

「いや、俺は戦士だよ」

「戦士」

「ロールはディフェンダーだ。アタッカーにも惹かれたけど、アイラを守りたくてな」

「もー、ユーゴったらやめてよ。恥ずかしいじゃん」

「どこがだよ」

「そういうところがだよー」

 

間髪おかずイチャイチャしだす二人に、私は思わず杖を握りしめた。

ああ! 何故味方に攻撃魔法が使えない!?

ダメージゼロでいい!

エフェクトだけでも出てはくれないものか?!

しかし、それはゲームの仕様で叶わない。

ならば、せめてできる限りの抵抗はしよう。

私は口を挟むことにした。

 

「えーと、私がアタッカーで、アイちゃんがヒーラーで、ユーゴさんがディフェンダー。ロールがバラけましたね」

 

私の言葉にユーゴさんは笑顔で頷いた。

 

「だな。バランスはいいと思うぞ」

「ユーゴ、大丈夫? ちゃんと私達を守ってよ」

 

するとユーゴさんは、私達に向けて丁寧にお辞儀をした。

 

「おまかせ下さい。不肖ユーゴ、この身を挺して姫様方を誠心誠意お守りしましょう」

「うむ! 頼りにしておるぞ、ユーゴ」

 

芝居かがった口調で言うユーゴさんに、同じように芝居がかった返事をするアイちゃん。

……だーかーらー、イチイチ雰囲気良く見つめ合ってんじゃねーよ。

私は内心ため息をつき、二人の邪魔をすべく口を開く。

 

「それじゃ、早速ゲームしたいんだけど」

「ああ。時間も限られているし始めるか」

「あ! じゃあ先にフレンド申請しようよ。あと、三人でスクショも撮りたい!」

「わかったわかった。一つずつやろうな」

 

というわけで私達はお互いにフレンド申請をし、三人でスクショを撮った。

何というか、お化け屋敷でコスプレしているように見えてちょっと笑える。

そしてパーティを組み、広場を出た。

暗くておどろおどろしい平原が目の前に広がる。

確かに暗いけど見通しは悪くない。

まずはザコ敵で操作に慣れつつ、お金稼ぎ──このゲームにはレベルはない──をするそうだ。

リーダーのユーゴさんに付いていきながら周囲を見れば、色んな人たちが色んなジョブで、不気味としか言いようのないザコ敵と戦っている。

道中はソロでもパーティでも好きに動いていいけど、ボス戦だけはマッチングが必要になるらしい。

 

「ルームを作って固定メンバーでやる方法もあるが、基本は野良、ボスを倒したい連中をシステム側で自動でマッチングして戦うのが主流になっている」

「知らない人とプレイするんですね」

「ああ。固定メンバーにはない緊張感はあるけど、一期一会を楽しむにはいいよ。いろんな奴がいて面白い」

 

ユーゴさんが戦いの合間に説明をしてくれる。

 

「私も最初は凄く緊張したけど、まだこの辺りなら失敗しても許してくれる人多いから、それで慣らしていったよ」

「そっか」

 

敵はいくらでも湧いてくる。

私は炎の魔法で、可愛さも綺麗さもないスライムを焼き払った。

魔法をバカスカ打っていればいいかと思ったけど、再詠唱まで待機時間(リキャスト)があってそうもいかない。

しかも、威力の強い魔法は発動まで時間がかかる。

そこがちょっとまどろっこしい。

そう話したら、ユーゴさんが斧を収めながら笑った。

 

「その間に敵の動きを見たり、安全な場所に移動したり、アイテムを使ったり、することは結構ある。今はザコ敵で余裕あるけど、ボス戦をやればそこら辺の大切さがわかってくるよ。後、呪文を打つタイミングとかな」

「なるほど」

「ねえユーゴ、ナナちゃんも余裕できたみたいだし、そろそろボスに行ってみようよ」

「そうだな」

 

アイちゃんの提案にユーゴさんは頷いた。

お! いよいよボスか!

私達は小さな砦? っぽい建物の前にたどり着いた。

元々世界観が暗くておどろおどろしいのも相まって、お化けとか悪魔とかの住処になっていそうな感じの不気味さがある。

砦の扉はきっちりと閉まっており、先をうかがうことはできない。

 

「ここが、このステージボスの根城だ。準備はいいな」

「いいよー」

「OKです!」

「じゃ、マッチング開始だ」

 

目の前に意匠の凝った砂時計が現れて、一定の周期でクルクルと回る。

さほど待つことなく、砂時計が消えて周囲が暗転した。

次に現れたのは、崩れてボロボロの砦の中と大きくてキメラな悪魔だった。

顔はドラゴンっぽいけど両腕と両足は人間っぽくて、丸まった背には悪魔の翼がついている。

漫画で見たことがあるぞ、ガーゴイルっぽいな!

周囲を見れば、アイちゃんとユーゴさんの他にも五人の人が確認できた。

目の前のステータス画面にはディフェンダーが二人、アタッカーが四人、ヒーラーが二人の構成になっている。

お、バランス良くね?

そういう風に割り振るようになっているのかな?

 

「よろしく!」

「よろしくお願いします!」

 

挨拶がかわされ、私も慌てて挨拶をする。

そして、戦闘がスタートした。

ユーゴさんともう一人のディフェンダーさんが走って敵に向かいながら攻撃を仕掛け、早速敵のヘイトを取った。

私はアイちゃんの後ろについていく。

まずは詠唱時間もリキャストも短い簡単な魔法で様子を見よう。

勝手なイメージだけど、こういう敵は火が弱点っぽいよね。

てなわけで、炎の魔法をくらえ!

間髪おかずにガーゴイル? な魔物から小さな火の手が上がり、ダメージの数字が表示される。

……よくわからんな?

私がモタモタしている間にも、ディフェンダーが敵を引きつけ、近接アタッカーが敵の背後や側面からザクザクと剣や斧で攻撃をし、中距離アタッカーの弓を持っている人がバンバン矢を放っている。

むむ、もっと積極的にやっても良さそうだ。

弱点属性がわからないから、一通りの攻撃魔法を仕掛けてみよう。

氷や雷の魔法を使ってみたところ、わずかながらに炎のほうがダメージが大きいことがわかった。

よし、炎の魔法を軸にして魔法を使おう!

そして、少し大きめの魔法を使おうとした時、地面が扇状に光り輝いた。

ん? なんぞ、これ?

 

「ナナちゃん、その光の外に出て! 全体攻撃だよ!」

 

アイちゃんのグループチャットの声に、とっさに身体が反応して光の外に出たのと、ガーゴイルが大きく口を開けて真っ黒なブレスを勢いよく吐いたのは同時だった。

あっぶねー!!

詠唱していたら避けられなかった!

他のアタッカーたちも避けきれたようだ。

 

「アイちゃん、ありがとう!」

「どういたしまして! 仮に攻撃受けても私が治すから、どんどん攻撃して」

「うん!」

 

な、なるほど、ユーゴさんがさっき言っていたのはこれか。

敵の動きをよく見て、呪文を打つタイミングを見極めなきゃならない。

アイちゃんはどんどん攻撃するよう言ったけど、でも脳筋じゃダメだ!

観察だ! 観察しなきゃ!

私は敵を観察しながら、先程よりも積極的に魔法をぶっ放すことにした。

しばらくして、敵の喉が膨れ上がるのを見た。

あ! またあのブレスかな?!

予感的中。

地面が扇状に光り輝き、私は慌ててその光の外に出た。

敵がブレスを履く間に、少し大きめの炎の呪文で攻撃をした。

敵のHPが半分を切った頃、敵が空を飛んだ。

と同時に、地面に円状の光があちこちに現れる。

な、何これ。

とにかく離れなきゃ!

でも光は結構まんべんなく散らばっていて、安全地帯の隙間が小さい!

それでも私は、外壁のそばに僅かにあった隙間に入った。

大丈夫だよね? 大丈夫だよね!?

壁にへばりついると、空から火球が降り注いだ。

衝撃が体を襲う。

さっきのブレスよりも威力が強い!

でも体力は減っておらず、辛うじて避けきれたようだ。

しかし、他のアタッカーやディフェンダーがダメージを受けていた。

と、私の体から緑色に光り輝く。

あ、これが体力回復の魔法か!

恐らくアイちゃんと、もう一人のヒーラーがやってくれたのだろう。

……なるほどね、ヒーラーも色々と考えて、良きタイミングで魔法を使っているのか。

地響きと共に敵が降り立った。

引き続き、ディフェンダーにヘイトは向いている。

私は集中し、敵を観察しながら魔法で攻撃を続けた。

前半よりも全体攻撃が多くなったものの、攻撃パターンは何となくわかった。

 

「ナナちゃん、あともうちょっとだよ!」

「うん!」

 

アイちゃんの言うとおり、敵の体力はもう残すところ僅かだった。

よし! ラストスパートだ!

全体攻撃をかわし、大きな炎の魔法を使った。

と同時に雄叫びを上げて剣士が何らかの技を使って敵を切り上げ、悪魔は断末魔とともに空気に溶けるように消滅した。

ファンファーレと共に目の前に討伐完了の文字が現れる。

やった! 勝ったぞ!

 

「お疲れ様でした!」

「お疲れでーす」

「ありがとうございました!」

 

挨拶が交わされ、私も挨拶を返した。

ザコ敵とは比べ物にならないくらいのお金が手に入ったと同時に、私の目の前に光が灯った。

何だ?

光は杖の形を作り、私の手元に落ちる。

今持っている杖よりも、精巧な作りをしたいかにも強そうなものだ。

もしかしてドロップ品か!

グループチャットで伝えると、

 

「幸先いいな! おめでとう!」

「いいなー! おめでとう! あとで見せてー」

 

二人から祝福された。

そっかー、運が良かったんだ。

んふふふ、やったぜ!

顔が思わずニヤける。

そして画面は暗転し、元の砦の前に戻ってきた。

時間としては十分も満たないだろうか。

しかし先程と違うのは、砦の扉が開かれていることだった。

ああ、これでこの砦より先に進めるってことか。

 

「これがロディアの流れだ」

 

いつの間にか隣にユーゴさんとアイちゃんが立っていた。

二人も同時に戻ってきていたのだろう。

ユーゴさんは腰に手を当て私を見た。

 

「各エリアを探索してザコ敵を倒し、お金を稼いだりドロップするアイテムを集める。ある程度、装備が整ったらボスに挑戦。ボスを倒してスキルを開放する。そしてボスは何度でも挑戦できるから、そこでアイテムを狙ってもいいし、腕を磨いてもいい」

 

ユーゴさんの説明にアイちゃんが頷く。

 

「あとでスキルの項目を確認しとくといいよ。使える呪文が増えていると思うから、セットし直すといいかも」

「了解!」

「あ! それがドロップした杖? 作りが細かくてキレイだね」

「ね」

 

今まで使っている杖と比較しても、段違いで性能が上がっている。

これはいいものですな!

 

「んじゃ、きりもいいし少し休憩するか。二人とも夕飯まだだろ?」

「あ、そういえばお腹空いてるかも」

「夢中でやってて忘れてました」

 

確かにお腹も空いたし喉も乾いた。

ユーゴさんは笑った。

 

「じゃあ、今から三十分後にこの場所に集合な。俺はここでボスと連戦してるから、何かあったらグルチャで連絡してくれ」

「夕飯はいいの?」

「社食で食ってきたから大丈夫だ」

 

そして私達は一度解散した。

 

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