FAガールバーゼラルドととある少年の少しラブラブめな短編、オリジナル設定も多々ありますが……良ければ!
表紙(写真)もあります
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「ただいまゼルフィ。留守番ご苦労さま」
学校から帰って来たマスター、カツラギ・ケイ。とても真面目な青年で、将来に向けて勉強熱心でボクにも優しくしてくれる良い人なんだ。
「おかえり、ケイ。大学はどうだった?」
僕は棚からテーブルに飛び移ってマスターに近づいて訊いてみる。彼は目元のメガネの位置を整えてから、微笑みかけてくれた。
「いつもと同じだよ。勉強も良い感じだし、大学での研究も少し大変だけど……順調に励んでいるし」
「それは良かった。確か等身大のアンドロイドの研究をしているんだっけ。完成したらボクにも見せて欲しい」2
ボクの言葉に彼は、笑って応えてくれた。
「もちろん。その時にはゼルフィにも披露するとも。何しろ、うちのチームの最高傑作だから」
アパートで一人暮らししながら工学系の大学に通っているマスター。将来は父親と同じように立派な科学者になるのが夢なんだって。アルバイトと勉強、大学での研究の両立で忙しいけど、毎日頑張っている感じなんだ。
それからマスターは全長十数センチくらいのボクに顔を近づけて、こう伝える。
「『フレームアームズ・ガイ』……ゼルフィカール、父さん達が開発した自慢の発明品で、僕の相棒。実はちょっとした報告がある」
「報告って?」
「ああ。実はちょっと紹介したい相手がいるんだ。少し待ってくれ」
そう言うとマスターは背負っていたリュックを降ろして、中から箱を出して開けた。……中には。
「この為に前から少しずつ貯金していたんだ。……正直買うのは恥ずかしかったけれど、周りにも持っている人も多いし、それに女の子もいた方がゼルフィにとっても良いと思ったから」
僕が箱を覗き込むと、目を閉じて横になっている綺麗な女の子がそこにいた。
身長は僕より少し小柄な──同じ機械の身体の少女。
「僕達の新しい家族、『フレームアームズ・ガール』──バーゼラルド。
君と相性が良い相手を選んだつもりだ。だから……仲良くしてくれ、ゼルフィ」
────
家に新しく家族が増えてから、数日経った日のこと。アパートの窓際で外の景色を眺めて、ふと思う。
(いつもの留守番。……たまに一緒に出かけることはあるにはあるけれど、大学には持ち込みは禁止みたいだから仕方ないか)
あーあ。研究でアンドロイドを作っているのに、ボクはダメってわけか。少し不貞腐れ気味で寝そべった。すると──
「ゼルっ!」
いきなりボクの顔を見下ろす長い金髪少女の眩しい笑顔。突然の明るい声に驚きながらも、身体を起こして彼女と見つめ合う。
バーゼラルドはボクの事を『ゼル』と呼ぶ。ゼルフィカールを略して、ゼル。鈴のような可憐な声で、ちょっとこそばゆい気持ちになる。
「びっくりするじゃないか、バーゼラルド。いきなり声をかけるなんて」
「家には私とゼルの二人っきりだもん。……私、この前起動したばかりでマスターと貴方だけしか知らないから。
だから、仲良くしたいの!」
窓際の段差に座って、脚をぶらぶらさせる彼女──フレームアームズ・ガールのバーゼラルド。
「……まぁ、気持ちは分かる……けれど」
改めて見るとしなやかで、それに柔らかそうな身体つきで、控えめではあるけれど膨らんでいるところは──膨らんでいたり。知識では知っていたけれど、これが……女の子なのか。
「顔をそらして、どうかした? 変な事でも言っちゃったかしら」
「いや、別にそう言うわけじゃないよ。ただ……」
マスターと一緒ならまだしも、こうして女の子と部屋で二人きり。本当は結構、何ていうか……ドキドキしている。
「ねぇねぇ、ゼル!」
けれどボクのそんな気持ちも知らないようで、バーゼラルドは思いっきりボクに身体を近づけて言って来た。
「……どうしたんだ、一体?」
「ゼルは私よりもここに来て長いんだよね? もし良かったらゼルからお話とか聞きたいな。
マスターやゼルの事とか、どんな生活しているか……色々!」
こっちに向けられるキラキラした瞳。期待している純粋な眼差しで、断ることなんて出来なかった。
「分かった。ただ留守番も暇だし、ボクで良ければ」
「ありがとう! それとね、もう一つお願いがあるの」
「うん?」
不思議に思うボクに、彼女はニコッと満面の笑顔でこう言った。
「バーゼラルドって堅苦しいし、せっかく一緒に暮らすんですもの。だから──これからはバーゼって呼んでほしいな、ゼルっ!」
────
フレームアームズ・ガール、バーゼラルド……バーゼが家に来て最初は慣れなかった。女の子と一緒だなんて、やっぱりドキドキで。
けれど、その時の事がきっかけで、彼女と色々話せるようにもなった。知らない事を色々教えてあげたり、他愛のないお喋りをしたりもした。
「……今更かもだけど、ゼルみたいに『フレームアームズ・ガール』の男の子って珍しいんじゃない?
いろんな種類の子がいるのは知っているけど、みんな女の子ばかりでしょ? ねぇねぇ、どうして!」
その日はこんな事を聞いてきた、バーゼ。ボクは自分が知っている限りの事を答えることにした。
「『フレームアームズ・ガール』は大企業FA社が開発した少女型ロボットなのは知ってるだろ?
僕はそんな君たちを参考にFA社の子会社が新開発した男性型ロボット。言うなれば君たちの男版、『フレームアームズ・ガイ』と言うものさ」
「ゼルフィの言う通り。まぁ、フレームアームズ・ガールに比べれば彼はある意味珍しいかもしれないな」
ボクとバーゼのそばにはマスターもいて、僕達にこう話した後に続けた。
「僕の父さんはその開発プロジェクトに携わった一人で、ゼルフィは開発の成果と言うわけなんだ。
その関係で元々は父さんのだったのを、去年の誕生日プレゼントに譲ってもらった。今では一番の相棒だよ」
「へぇー、そうなんだね」
頬杖をつきながら、呟くバーゼ。そしてニコッと笑ってボクに身体をくっつけて言ったんだ。
「でもっ、同じ背丈の男の子がこうして傍にいるのって、何だかドキドキするんだ。
……不思議な気持ち」
「むぅ……っ」
こっちもつられて赤面してしまう。それをすぐ傍でくすっと笑う、バーゼの表情。
僕達の様子を横目で見ていたマスターも、優しい顔で。こんな事を話してくれた。
「二人が仲良さそうにしているようで、良かった。
──そうだ。良ければ今度三人で出かけてみないか? バーゼにとっては初めての外出だ」
「ほんと!?」
バーゼは目を輝かせて言った。それから急にボクに腕を絡ませて来て言ったんだ。
「嬉しいっ! マスターとゼルとお出かけっ、楽しみ!!
ねぇ、ゼル」
「……うん?」
「私とゼル、これで初めての……デートだよね。最高の思い出にしよう!」
これがボクとバーゼとの……デート? 思わず赤面しそうな気分になった。
────
「わぁ……っ! 自然がいっぱい! 原っぱを走る気分も、心地良いよね!」
「初めての外で気持ちは分かるけど、あんまり先に行かないでよ。……はぐれたらどうするんだ」
ボクたちの初めての外出先、そこは町外れの小高い山にある公園だった。マスターの他には人は来ていなくて、ボク達三人だけ。広めの原っぱをそれぞれ歩いたり駆けたり。
目の前で元気いっぱい走り回るバーゼ、そしてボクはその後ろをついて歩く。
(でも気持ちは分かる。だって外はこんなに気持ち良く思うのは、彼女と同じ思いだから)
「すまないゼルフィ。君にとっては何度も来た場所かもしれないが」
横を歩くマスターは申し訳ないように言うけれど、ボクは全然と、笑ってこたえた。
「大丈夫、この公園はとても良いところだから。何よりバーゼもあんなに喜んでいるし、何よりここは──」
言葉の途中だったけれど、向こうからバーゼがこっちに手を振って、大きな声で呼びかけて来た。
「ゼルっ、こっちに来て! とっても良い眺めなの!」
響く彼女の声、マスターは笑ってボクに向かってこう促す。
「……ゼルフィ、せっかくだ。行って来るといい」
ボクは先にバーゼが待っている場所に向かう。彼女は両手を後ろに回して、嬉しそうに出迎えてくれてた。
「ふふっ、初めてのデートだって言ったでしょ? ゼルは私と一緒にいなくちゃ」
「そうは言っても、バーゼが先に走って行ったからだろ?」
「ごめんごめん、ついワクワクしちゃって。……でもそれより、ほらっ!」
元気一杯なバーゼに手を引かれて、僕達は並んで二人である景色を眺める。
公園の高台にある展望台の、木製のデッキの上に立つボクとバーゼ。そしてそこから一望出来る、町の景色。こうして広く景色を見渡せるのはこの場所が一番だ。
(ボクはこれまでにマスターと来た事はあるけれど、良い景色なのはその通りで……バーゼが気にいるのも当然かもね)
「……ふふふ」
隣でバーゼは横目を向けてボクに微笑みかける。視線が合って、ボクはつい照れてしまう。
「こんなに景色を見渡せる場所があったなんて、最高の気分。ゼルもそう思わない?」
「まぁね。地方の町だけれど、景色はとても良いから。バーゼと一緒に見られて良かったよ」
「私もだよ。ゼルと一緒に来れて良かったの。本当に、素敵なデートだよね」
そう言いながらバーゼはボクの手を握って、自分の元に寄せて来る。互いに見つめ合うボク達二人。初めて会った時と比べて、随分と親密になった感じがする。
「そうだね。……それと」
ボクは彼女に肩を寄せて、そして、想いを伝えた。
「改めて、これからも宜しく、バーゼ。これからも二人で一緒にいよう」
告白に彼女は目を丸くしたようにして、それから同じように満面の笑顔を投げかけて──。
「うんっ! 私達はずっと一緒だよ──ゼルっ!」
「!!」
瞬間、バーゼはボクに一瞬で顔を寄せると、そのままそっと抱きとめた。
「だって大好きだもん。マスターも、そしてゼルも大切な人なの。
ゼルっ、素敵な私の恋人さん」
彼女からの想いと言葉に、つい嬉しくなって──一番の微笑みを投げかけて応えたんだ。
「光栄だよ、バーゼ。君の事はこの先も──大切にするよ」
幸せそうにしているバーゼを、ボクはぎゅっと抱きかえす。
彼女と出会えて良かった。ボクにも新しく特別で、大切な人がこうして出来たから。