少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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ども、お久しぶりです。黒いラドンです。

待ってた人いるか分からないけど、大変お待たせ致しました。
え〜なんでこうも遅くなったかと言うと、仕事もそうっちゃそうですがねぇ…。最近になってバイオREシリーズにどハマりしてしまって没頭していました。だってバイオ面白いんだもん。勿論、ちょいちょい小説は書いてましたよ?
まぁそんな訳で、今回は四期生絡みになります。

じや、どうぞ〜。


十二話 『攫われた姫』

 

 

 

 

 

「んなぁ〜〜♪んな〜な〜♪」

 

 

 ある日の昼下がり、世間は土日の休日に疲れた体を休める為に羽を伸ばしていた。そんなある所、ベンチで寛いでいる一人の少女が小さい子供のように足をプラプラとさせながら独特な鼻歌を披露していた。

 

 その少女は姫森 ルーナ。煌星学園の一学年にして、とある異国のお姫様だと言う風説があるらしい。

 そう捉えられる理由はその見た目からだろうが、どうやら現在は私服のようである。

 それでも容姿に美が付く少女なので自然とそんな噂が世間では立つのだろう。

 

 

「今日もお菓子をたっくさん買うのら〜♪」

 

 

 彼女は友人である角巻 わためと共に買い物に出掛けてる約束をしており、今は御手洗に用を足しに行ったわためを待っている所だった。

 だが待っている間でも楽しみが抑えれずに、その和やかな表情を晒していた。

 

 まだかまだがと、わためが早く帰って来ないかと色々と待ち遠しいように貧乏揺すりせていた足はより強く揺れていた。

 

 

「そーだ!せっかくなのら、今日はルーナの機嫌がいいから天音ちゃ達にも偶には分けてやるのら」

 

 

 どうやら彼女は機嫌が良いらしく、他の友達である人達にも分けようと考えていた。

 ここ最近はヴィランの事件などで学園内では切羽詰まっていた状況が暫く続いていた。

 規模も被害も小さくても事件は事件。立て続けに起きることに気が滅入ってしまう時もあったが、それが漸く落ち着いてきたのだ。

 

 ルーナは前からわためとの買い物に行く約束をしていてて、それがやっと行動出来ることに嬉しさで沢山だった。だからか、機嫌が普段よりも強く現れていた。

 

 

 

 

 

「───ボス、目標の人物を発見」

 

 

《よし、ならさっさと捕まえて戻って来い。傷は付けたっていいが周りにバレねぇようにしろよ。そいつは俺達の金の成る木だ》

 

 

「了解」

 

 

 しかし、そんなご機嫌な彼女を遠目から覗く二人の男がいた。

 近くもなく遠くもない距離の道路脇に停車させており、その中で一人は電話で誰かに報告をして、もう一人は変わらず窓から黙って様子を見ているようだが、その手には縄と手巾を持っていた。

 

 電話先にいる者の命令で二人は動き始め、周りに通行人がいないことを確認してから足音を立てずにルーナへと近付いて行く。

 

 

「んな〜♪───んむっ!?」

 

 

「悪いな嬢ちゃん、俺達の大金になってもらうぜ」

 

 

「ん!?んん〜!!」

 

 

 邪悪に染まる魔の手が無慈悲にも彼女に届いてしまう。

 ルーナは咄嗟にその場から逃げようとしても簡単には離れない。手巾で口元を塞がれ、両腕はもう一人の男に縄で結ばれて身動きに自由が効かなくなってしまった。

 そして、その手巾には何かしら薬が染み込められていたのか、暫くするとルーナの抵抗は意志とは関係なく止められ、双眸は重くなった瞼にゆっくりと閉じられた。

 

 男二人は彼女が眠ったのを確認した後、即座に周りを確認しながら車に戻って行き、ルーナをさっさと後ろに乗せてそのまま何処かへ走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

「お待たせ〜…あれ?ルナち?」

 

 

 車が曲がり角で消えて行ったと同時に、トイレから戻って来たわためがルーナがいた所に目をやるも、その場から姿が消えていたことに足を止める。

 

 

「ルナち〜?ルナち〜!……どこ行ったんだろ?」

 

 

 辺りに人はいない。勝手に何処か行ってしまっても、そう遠くまで足は運んではいないだろうと思い、声を大きく出して呼び込んで返事も来ない。

 イタズラで隠れてるような心配かけることはしない筈と考えていたが、どうも変な胸騒ぎが起こり始める。

 

 少し周りを探してみても姿は全く見当たらず、スマホで何度も連絡しても全て音信不通。心配の色は濃くなり、鼓動が不安で慌て始めてくる。

 何か可笑しいと彼女の中で様々な考えが巡り、一度ルーナを最後に見掛けたベンチの方へ戻ってみる。

 

 

「あれ?これって…」

 

 

 そこには何かが反射している。金属製の何かが落ちているのだろうが、それが目に入った瞬間何なのか理解した。

 飴玉がデザインのヘアピン。それはルーナが付けていた物、それが虚しさを感じさせるようにそこに落ちていた。

 

 わためはそれを拾い上げて暫く見つめながら思考する。

 数分もしない内に消えたルーナ、音信不通の連続、落ちていたヘアピン。

 

 もしかしたらと、最悪なケースが起きてしまったのだろうかと考え着いた。可能性は低くも有り得ない状況ではないこの時、わためは咄嗟に表情を強ばらせて学園に連絡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ルーナが攫われたかもしれない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰もいない廊下を一人の小さな天使が酷く慌てた様子で廊下を走り抜ける。

 その見習い天使、天音 かなたは様々な事を学ぶ為に下界に降り、その生活の中で出来た大切な友達が危険な目に合っている。

 それが伝えられた瞬間、背中に冷たい汗が流れて普段とは違う緊張感が胸を締め付けられていた。

 自分以外は既に集まっている状態らしく、急いで皆がいる場所まで駆けつけて行き、勢いに任せて扉を開いた。

 

 

「ねぇ!!ルーナが攫われたってホントなの!?」

 

 

「かなたん…うん…わためが戻ってきた時にルナちのこれが落ちてて…」

 

 

 開口一番、焦燥し切った彼女の声に扉先にいた二人の少女が目を向ける。

 その内の一人である報告者のわためは、何処か負い目を漂わせながら静かに肯定した。

 その一つの証拠にあたる物、ルーナが身に付けていたアクセサリーを彼女に見せると、苦虫を噛み潰したように表情を歪ませた。

 

 

「攫われた場所は!?」

 

 

「落ち着きなよ、今えーちゃんも協力して色々と策を考えてる所だから」

 

 

 かなたは兎に角、一秒でもルーナを取り戻したい気持ちで沢山で視野が狭まっていることに彼女自身は気付いていない。

 そんな慌てようを見て、机に腰を掛けていたツインテールの少女が、悪魔の尻尾をゆらしながらかなたを宥める。

 

 その少女は″常闇 トワ″。かなたと似た境遇で、魔界からやって来た見習い悪魔である。

 容姿は紫に桃が混じったツインテールに角の生えた帽子を被っており、ライム色の綺麗な双眸に、露出が多いと思わせるような服装に悪魔の尻尾を生やしている。

 

 

「トワ…でも、今ルーナが何されてるか…」

 

 

「そのことだけど、トワ達が来る前にえーちゃんの所に電話が来たらしいんだけど…」

 

 

 ルーナのことで頭の中が不安で沢山のかなたを見て、トワがここに来る以前の出来事を気難しさを感じさせる表情で、えーちゃんから聞いた事を淡々と話し始める。

 

 

 

 

 

『はい、私立煌星学園のえーちゃ…有人 永です』

 

 

《どうもご機嫌よう》

 

 

 えーちゃんは何時ものように業務に勤しんでいた時、ふと固定電話が突如として鳴ったことに気付くと咄嗟に手に取った。

 意識を切り替えて耳を澄ませながら電話先の相手の出方を伺うと、初めて聞くようなタイプだった。

 そんな紳士のような挨拶の出方にえーちゃんは少し吃る。

 

 

『は、はぁ…?あの、どう言った御用で?もしかしてヴィランが───』

 

 

《御宅の可愛い生徒はこちらで預からせてもらっている》

 

 

『……は?』

 

 

 少し動揺してしまったが、改めて用件を聞こうとした時だった。電話の向こうから衝撃的な発言に、えーちゃんは思考停止し唖然とした声が漏れる。

 だがそんな彼女の反応を無視し、淡々と冷たい口調で男は話し続ける

 

 

《一時間以内に一億の金を″普通の人間″が持ってこさせるようにしろ。警察とかに連絡したら直ぐに人質を殺す》

 

 

『ちょ、ちょっと待って!一体誰を攫ったの!?』

 

 

《そんなことはどうでも──《え、えーちゃん…》ん?なんだ起きたか》

 

 

『その声…ルーナさん!!』

 

 

 淡々と条件を述べていく男に、えーちゃんは慌てて食い付く。

 その話は冗談でも笑い話にもならないし悪戯にしても度が過ぎている。そして一体誰が攫われたのか分からず焦って聞き返すと、男の声の向こう側からか細い声でルーナの呼ぶ声が聞こえた。

 

 

《大事なものならさっさとした方がいいんじゃないか?タイムリミットは既に始まっている。場所は東海岸近くの廃倉庫だ。それでは…期待しているよ》

 

 

 言い返す間もなく一方的に言葉を並べられる。なんの躊躇もないような冷淡な声色に恐ろしさを感じてしまう程に。

 雑把に居場所を伝えられ、本当に彼女が攫われたのに無慈悲にもそれは嘘ではないことを突き付けられた。

 

 

『……大変なことになった…』

 

 

 

 

 

「っ……」

 

 

「それで今はそいつらの言う通りに、大事にならないようトワ達だけが集められてるの」

 

 

「なんでルーナを…」

 

 

 トワから事の発端を知ったかなたは下唇を噛み、犯罪行動を起こした男達にふつふつと怒りが湧いてくる。

 何故こんなことをしたのか、何故ルーナを襲ったのか。考えても意味は分からず、ただ困惑と怒りが心中を渦巻いていた。

 

 

「煌星学園ってトワ達が思ってる以上の大きな組織だから、色々と資金が豊富な所に目を付けたんだろうね。普通なら強者ばかりの此処に狙うのは命知らずもいい所だけど、攫われたのがルーナだから変に手が出せない。もしかしたら結構念入りに計画してるかも、馬鹿だけど阿呆じゃないのかもしれない」

 

 

「…ごめんね…わためがもっと早く戻ってれば、こんなことにならなかったかもしれないのに…」

 

 

「わためは悪くないよ。全部悪いのはルーナを攫った奴らだよ!」

 

 

 わためは自分が早く戻ればこの事態は引き起こさなかったと思い込んでしまうが、かなたの庇護の掛けた言葉にトワも便乗して頷いていた。

 

 そんな時、かなたはふと二人の姿を見て一もう人足りないことに気付いた。

 

 

「そう言えば…ココは?…て言うかさっきから気になってたけど⋯…何で天井に穴空いてんの?」

 

 

 もう一人の女子生徒である″桐生 ココ″。

 最強に近い強さを誇ると言われている竜族であり、高身長で分かり易い見た目をしているのだが、そんな彼女の姿が何処にも見当たらない。

 それどころか不自然に出来ている天井の穴から見える青空を見やるかなたに、トワとわためが何処かバツが悪そうな、呆れたように目が泳ぎ始めた。

 

 

「あー…それがさぁ…」

 

 

 

 

 

『なにぃ?うちのルーナたんを人質に攫っただと…?へぇ……───』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カチコミじゃあああああああァ!!ゲス共全員の指詰めて蟹風呂に沈めてやるぞおおおおおおォ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───て言って、そのまま天井突き破ってどっか行った」

 

 

「何やってんのあの馬鹿ドラゴンはぁあっ!?」

 

 

 トワから真相を聞いたかなたは空いた天井に向かって叫んだ。彼女の悲惨な叫び声に、トワもわためも何も言えずただ苦笑いが浮かぶだけだった。

 

 

「何で止めなかったのっ!?」

 

 

「いやだって…トワ達が止める間もなく飛んでったもん」

 

 

「これわためぇは悪くないよねぇ?」

 

 

「下手に動いたらルーナが殺されるかもしれないってのに!話聞いてなかったんか!?」

 

 

 変に刺激させてしまった結果、最悪の場合で人質のルーナはそのまま殺害される可能性もあるのにも関わらず、横暴に相手を処しに出たココに対してかなたは噴火する勢いで大きく慌てだす。

 

 

「あ、かなたさんも来たんですね…」

 

 

「えーちゃん!ルーナは…!」

 

 

 状況が不味い方向に陥ったと知った時、部屋にえーちゃんが少し窶れた面相をしながらやって来た。

 かなたは直ぐに詰め寄るがえーちゃんは既に言いたいことを理解しているのか、黙って頷いてから口を開く。

 

 

「はい、一刻を争う事態です…このことは大事にはしないよう、私と″のどか″さんと学園長、トワさんとわためさんとココさん、そしてかなたさんの七人で解決していくつもりです」

 

 

「解決するにしたって…どうやって?相手はどんな奴らなのか、何人いるのか、素直に応じてもルーナが無事に戻してくれる保証なんてあると思う?」

 

 

 えーちゃんからの解決法にどんな意図があるのか分からないが、教師陣と生徒四人でどうやって打開していくのか。

 想像出来なかった三人であるが、トワが率先して訝しんで聞く。

 

 

「じゃ、じゃあ…どうやってルナちを助けるの?」

 

 

「…勿論、私達も素直に従うつもりはありません。そこで、とある作戦を考えてきました。ですが、色々とリスクを請け負うことになります」

 

 

「リスクなんてドンと来いだよ。何がなんでもルーナは助ける!」

 

 

 えーちゃんの神妙な顔付きになりながらこれから起こす作戦の詳細を話すが、どうやら危険が伴うものらしい。

 それでもかなた達の決意は変わらず、どんなに致命的な作戦だとしても自分達が必ず助けに行かなければならないことは変わらない。

 かなたの強い意志に、トワもわためも同じく頷いてみせる。

 

 そんな彼女達の一歩も引かない姿を見て、えーちゃんも何処か安心して任せられると思ったのか表情は柔らかくなり頷いて返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで…何で天井に穴が空いてるんですか?」(怒)

 

 

「「「……」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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────数十分前

 

 

 

 

 

「ふぁ〜…久々に長寝しちまったなぁ」

 

 

 町に買い物をしに行っていた龍成は、人気の無い歩道を欠伸と伸びを一緒にしながらゆったりまったりと歩んでいた。

 自我持ちヴィランとの戦闘を思い返しながら肩を回して、自分の身体の具合に少し悩んでいた。

 

 

「久しぶりにでかい力使うと結構身体に響くな…もっと身体鍛えとくべだなこれゃ………また、あのヴィランが出てこないとは限らないしな」

 

 

「そういや、そろそろスバルとぺこらの予定も合わせとくか」

 

 

 再び自我を持ったヴィランが現れるのも時間の問題だろう。もしかしたらあれよりも強いヴィランが出て来るのも可笑しくないし、それ迄に前よりも強くなっていなければならない。

 

 それはそれとして、前から話していた二人の予定を入れようかと考えていた。スバルは何やら他の友達と料理会みたいなことをすると、誘ってくれていた。

 ぺこらからは借りを返したいと言っており、予定を空けてて欲しいと頼まれていたのを思い出す。

 

 

「買い物もさっさと終わらせて、今日は一人でゲームでも…ん?」

 

 

 本当なら特訓もしたい所だが今日はゆっくりと休みたい気分な為、最近ハマり始めたゲームと言う娯楽に時間を使おうと思っていた時だった。

 

 何気なく真横を通り過ぎようとした一台の黒い車に目が向いた。その際に一瞬だけだったが、見覚えのある人物が見えた。

 

 

「今のって…確か…」

 

 

 彼が初めて学園にやって来て一日も経たない内に強力な鬼族のあやめとの戦闘試合を行った。

 その際に闘技場に向かおうと迷っていた時、かなたと共に出会ったルーナの姿が見えたのだが、その同時に見知らぬ男二人も見掛け、パッと見で良くない邪心な気を感じ取った。

 

 

「なんか、あまりいい雰囲気ではなかったよな…」

 

 

 移動する車のスピードもなんだか急いでいるような気がするし、見知らぬ男二人と眠っているルーナ。

 これだけでも見掛けたら、とある考えに到るのも変ではない筈だ。

 

 

「⋯⋯追った方が良さそうだな」

 

 

 咄嗟にそう思った彼は直ぐに気持ちを切り替えて、走り去って行った車を見逃さないようその場から跳んで建物を伝って行きながら、ルーナの行方を追うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、のどかさん…こんな危ないことさせて…」

 

 

「いえ!私がやりたいって言ったのですから。一人の生徒を助ける為なら何だってしてやります!確かに怖いですけど…ルーナさんの方がもっと怖い思いをしてる筈です。くよくよしていられません!」

 

 

 学園から場所を移し、ルーナを攫った男が言っていた廃倉庫付近までやって来ていた。

 そして取引に向かう前にえーちゃんはもう一人連れて来た煌星学園の一学年担当教師である″春先 のどか″に悲痛な面持ちで謝罪をしていた。

 

 何故そうなっているかと言うと、取引をしに向かうのが彼女だからだ。

 ワイシャツの上に黄緑のカーディガンを着て黒いミニスカートを履いており、ブロンズのショートヘアに萩色の円らな双眸。

 のどかはえーちゃんと同じ一般人女性であり、容姿からパッと見ても可憐な上に取引条件としても疑われるこてはないだろう。

 

 たが幾ら彼女自身からの要望で危険な場所へと赴くことに、見届けるしか出来ないえーちゃんは己の無力さに苛立ちが芽生えていた。

 のどかは怯えるどころか寧ろやる気に満ち溢れているのは、教師と言う立場もあるだろうが彼女の生まれ持っている性格からだろう。

 

 

「遠くからかなたさん達が見守っているから。もし何かされそうになっても、きっとあの人達が助けてくれますよ」

 

 

「はい!私はそれを信じて行ってきます!」

 

 

(凄いやる気だなぁ…却って頼りになっちゃうよ)

 

 

 命の危険があるのにも関わらず不撓不屈の精神で立ち向かうのどかには、えーちゃんも引き止めようと言う気持ちは不思議と無くなってきていた。

 そして、のどかは学園長から用意して貰った一億の札束が入ったアタッシュケースを持ち辛そうにしながらも、何とか目的の所へと入って行った。

 

 何か身に危険に合うようなことがあっても、来ているのはこの二人だけではない。既に手は回してある。

 えーちゃんは兎に角、状況が良い方向に転換することを願うばかりだった。

 

 

 

 

 

「───来たようだな」

 

 

 とうとう主犯と顔を合わせることになったのどかは、自分に話し掛けてくる男よりも攫われたルーナを気にしていた。

 周りを見てみると男は一人だけではなく、何十人と言う規模でこの場を制していた。

 

 

「の、のどか先生…!」

 

 

「ルーナさん…!」

 

 

 ルーナの呼ぶ声が奥から聞こえて直ぐにその方へ目を向けると、彼女は男達の後ろ側で椅子に縛られていた。

 直ぐにでも助けに行きたい衝動に駆られるが下手には動けない。

 

 

「まぁ、悪くない時間だ。それで早速本題だか…例のブツはそれか?」

 

 

 余裕綽々と言った感じに悠長に腕時計で時間を確認しつつ、条件として身代金が入っているアタッシュケースを見て口元を気味悪く歪ませていた。

 のどかも会話をする際には慎重にしないといけないと言う緊張感があり、頬を伝う冷や汗がやけに気持ち悪く感じていた。

 

 

 

 

 

「…トワ、今の状況見える?」

 

 

 その頃、のどかが取引に掛け合っている一方でかなたとトワは廃倉庫付近の上空にて待機していた。

 ボロボロとなっている廃倉庫の隙間から取引の様子が微妙だが垣間見えていた。かなたはそのことをトワと思念伝達(テレパシー)で会話をしていた。

 

 

《見えてるよ。今のどか先生が主犯と接触したね》

 

 

「あいつら…本当にルーナを引き渡すのかな?」

 

 

《えーちゃんも言ってたけど可能性はゼロに近いよ。大抵こういうのは約束なんざ守らないもんだし、証拠隠滅としてルーナものどか先生も殺される可能性は高いから信じない方が利口だよ》

 

 

「やっぱりそうだよね…」

 

 

《そして向こうもトワ達が素直に応じるとも思ってない筈だから、こうして立ち回っているのも⋯奴らの視野に入ってるかもしれないってこと、頭に入れといて》

 

 

 えーちゃんから伝えられた作戦とは、下手に動けないならその時を待つ。

 大体の人質事件となると要求を満たしても素直に応じないことはある為、その裏をかく方針で行こうと話してはいた。

 だがトワの言う通り、相手も裏を取ることを分かっているかもしれない。

 ルーナの命は常に奴らに握られていると考えておいた方がいいだろう。

 

 

「うん、分かった。絶対助けようね!」

 

 

《当然っしょ!》

 

 

 二人はお互いに顔を見なくとも、その声色から察して強い決意に漲っていた。必ず助ける。

 どんなに危険な状況が迫ろうとも、大切な友達を見捨てることなど出来やしない。

 ヴィランとは違った緊張感が身体を強ばらせるが、それを打ち砕くように拳を握り締めた。

 

 

 

 

 

「…貴方が言っていた通りちゃんと身代金を持って来ました。約束通り、ルーナさんを返して下さい!」

 

 

「…ちゃんと本物のようだな。よしいいだろう…」

 

 

 手下であろう者がアタッシュケースを取って行き、主犯の男と共に中身を確認していた所をのどかが勇敢にも強気に言葉を放った。

 だがそんな彼女の言うことに見向きもせず聞き流し、中身の金額を見てから頷いていた。条件を満たしていることに満足しているその様子を見て、のどかはルーナを解放するよう伝えようとした。

 

 

「じゃあ───」

 

 

「なんて言うとでも思っていたのか?甘いねぇ…姉ちゃん」

 

 

「っ!?」

 

 

 しかし、不気味に口角を上げながら彼女の言葉を遮ってきた。

 身代金を手下に任せて主犯の男は懐から拳銃を取り出すと、それをのどかに銃口を向けた。

 突然と殺人道具を取り出した男を見て、のどかは目を見開くもまだ残っている冷静さで意思を保たせる。

 

 

「まだまだ若気のある雌に教えてやろう。こう言う約束なんざ端っから守る筈がないんだよ!俺達は目的のモンが手に入った瞬間から…」

 

 

 

 

 

「───お前達を殺すと決めていたのさ」

 

 

 最初から逃がすつもりはなく、自分達の犯罪行為の口封じとして殺すことは既に決まっていた。

 奴らの目的は金。その目的が達成された今、のどかも人質のルーナも用済みとなり、奴らにとって残る作業は証拠隠滅をするだけ。

 

 

「のどか先生っ!!逃げてっ!!」

 

 

 男が拳銃の引き金を引こうとするのを見えたルーナが、大きく声を出してのどかに逃げるよう必死に伝えた。不幸にも周辺に遮蔽物で身を隠す所も身代金を持って来ただけで、身一つで拳銃に対抗する術など持っていない。

 

 それでも、のどかが逃げようとしないのは彼女達が守ってくれると信じているから。

 

 

 

 

 

「トワっ!!」

 

 

《あぁっ!!》

 

 

 かなたは咄嗟にトワを呼ぶと、トワも言われなくとも理解っている様子で返事を返しながら、彼女達は即座に彼女の下へ降り立った。のどかの前に二人が現れても男は特に驚いた様子は見受けられず、どちらかと言うと分かっていたようだった。

 

 

「…やっぱそう来たか。流石は天下の煌星学園の雌犬達だ、一筋縄じゃいかないようだなぁ…?」

 

 

「どうやらえーちゃんの考えは当たってたみたいだね。お互いにこう言うのを予測していた」

 

 

 取引は表向きなもので、結局は戦闘に持ち込むことになった。えーちゃんの言っていた通りの状況になっても、男の表情に焦燥感はなく寧ろ余裕が残っていた。

 トワはそれに違和感を抱きながらも、かなたに目線でのどかの安否確認を伝える。

 

 

「のどか先生、大丈夫?」

 

 

「ありがとうこざいます。かなたさん、トワさん」

 

 

 これと言った怪我をした様子はなく、取り敢えず一安心したが直ぐに視線を男の方へ戻す。

 次にかなたはルーナが近くで縛られていたことに気付いた。

 

 

「天音ちゃ…!トワトワ…!」

 

 

「ルーナ!無事で良かった…何もされてないみたいだね。待ってて!直ぐにこんな奴らぎゅっ☆ぎゅっ☆(握り潰して)して直ぐに助けるから!!」

 

 

 何やら隠語のような含みのある単語を加え、一先ずルーナの心に余裕を持たせる為に明るく振る舞って見せる。

 トワもそれを察して同様に強気の笑みをルーナに見せると、男はそれに対して口角を三日月のように上げて狂ったように嗤い出した。

 

 

「ははははっ!!こいつは随分と活きのいい雌犬達だなぁ?あぁ…勇ましいなぁ…憧れるなぁ…───壊してぇなぁ…!」

 

 

「な、何なのこいつ…こちとら何時もヴィランと戦ってる煌星学園の生徒だぞ!強いんやぞっ!」

 

 

「油断しないでトワ!」

 

 

 悪意のその奥にある、人とは思えない狂気が男を呑み込んでいた。あからさまな挙動不審に意味深な言葉を並べているのを見て、トワは不気味に感じて顔が引き攣っていた。

 

 

「あぁ…本当に世の中って腐ったゴミ溜めのように理不尽不条理が夢や理想を壊してくるなぁ…だったらこんな世界、一度真っ新にして綺麗にしてやろうか…」

 

 

「さっきからマジで何言ってるっての!情緒不安定かっ!」

 

 

「一体何する気…?」

 

 

 頭を掻きむしりながら不満気に今時の世間に苦の言葉を一概に並べる。

 ガリガリと掻き続け、髪の毛が抜ける所かそのまま血が出るんじゃないかと思うくらいに段々と激しくなっている。

 

 すると男は懐から何かを乱暴に取り出した。それに続いて、周りに囲んでいた手下達も同じように懐から何かを取り出す。

 

 

「俺はそんな綺麗事を吐きながらキラキラした瞳で前を向いて…⋯英雄気取りな奴らがいっっち番嫌いなんだよぉ!!」

 

 

 手に持っていたそれを高々に上げて怒声を放つ。隙間から入って来た太陽光でソレが反射していて、よく見れば何処にでもある注射器だった。

 ただ問題なのがその中身の色だ。ケミカルライトのように赤紫色の妙な禍々しさがあり、一目見てそれが毒か何かの有害物質が含まれているようにしか見えない。

 

 しかし男達は何の躊躇もなく、それを自ら注射器を自分の首に打ち付けた。そして刺した所から根っこのように紫色に変色した血管が皮膚から浮き出てくる。

 

 

「なんなのあれ…!?」

 

 

「ぐっ…ぉおおお…!はははっ!こいつはいいもんだ!気持ちいいくらいに力がどんどん増えていくのが分かる…!」

 

 

 すると今度は、身体中から耳を塞ぎたくなるような嫌な音が響き渡る。

 骨が軋み、骨が外れ、骨が形を変えていく。身体の骨格が変形し、体格が膨張したり角やら翼やらが生えだして、それぞれが人のような別の何かに変わり始めていた。

 

 

「あれって、もしかしたら前にココから聞いたことがあるやつかも…最近の裏組織で出回り始めて闇市場で買える薬…!その効果は身体機能の向上だけじゃなくて────」

 

 

 

 

 

「中には身体の″細胞を造り換えて″、人間をやめる奴だっている…!」

 

 

 

 

 

 かなたは変化した男達のとある事実に気付いた。

 この場にいない友人からの話で、裏の世界を生きる人間が密かに入手していると言う製造先が不明の薬物。

 それは名称も不明で手を出せるものでは決してないのだが、誰かが効果を試した結果、目の前の現象になり、いつの間にか薬の効果が忽ち広まっていた。

 

 

「何あれ……え、キモッ…なに?裏社会でバイオでも流行ってんの?」

 

 

「兎に角、早くルーナを助けないと!のどか先生は下がってて!」

 

 

「わ、分かりました!」

 

 

 状況は不味い方向へと流れて行く。かなたは咄嗟に避難するようのどかに伝えながら警戒態勢に入り構えだし、目の前の状況を冷静に分析して思考を働かせる。

 敵が何人いるか、ルーナとの距離、相手の強さ。かなたは行く手を阻む手下達を見て口を噛み締めた。

 

 

闇影鄭(あんえんてい)・『黒鎌』!」

 

 

 横でトワは自身の異能である『冥影(めいえい)』と魔法を掛け合わせて武器を創造する。

 影となっている所に手を翳して魔法陣を展開させると、その影がトワの手元へ集約して行く。

 そして形が形成されていき、次第にそれは等身大程の漆黒の鎌になった。トワはそれを手に持つと軽く振り回して構えだす。

 

 

「トワ、僕が様子を見てルーナを助けに行くから、こいつらをお願い!」

 

 

「任せなっ!」

 

 

 影で全体的に漆黒で見えないが紫色の輪郭で覆われいる為、遠目からでもそれが大鎌だと分かる。

 それを見た手下達は警戒しだして小さく唸り、威嚇するように相手の出方を伺っていた。

 

 双方で睨み合う時間が静かに続いていたが、先に動いたのはかなたからだった。その後にトワも動き始め、二人は交差しながら敵陣に突っ込んで行った。

 

 天使の羽根を駆使して迎え撃とうとして来た手下の攻撃を紙一重で躱しながら、脇をすり抜けて行き、その隙にトワが手下達に牽制をして注目を集めさせる。

 

 一直線に向かったかなたは、一際変形した主犯の男に拳を向けが、男も大振りで膨張した腕を振るう。

 そして拳がぶつかり合うと、衝撃波が一帯に広まった。かなたは細い腕なのにその数倍の大きさのある腕と拮抗状態になると、男は目を見開かせた。

 

 見た目は少女でも種族は天使な上にヴィランと戦ってきた経歴がある者で、本来ならサシで勝負を挑んだ所で男に勝ち目は無いだろうが、今の奴は″変異″した。

 禍々しく人ならざる者へと変わった男の力は計り知れず、奴も自身の未知の力に過信していた。

 

 

「図に乗るなよぉォ…!偽善者の烏合の衆があァ…!」

 

 

「そんなことない!確かに助けられない時だってある!それでも!僕達は全ての人を助ける気持ちで、何時だって諦めずに前を向かわなきゃいけないんだよ!」

 

 

 男の意図に何があるのかは分からない。何が気に入らずにこんなことを起こしたのか、分かることはない。

 ただ今は助けることだけを考えていた。ヴィランを人々から守っていても、それ以外でも、何時しか救えないその時が来るかもしれない。

 

 それでも前向きに貢献しなくてはならないと思っているのは、前に龍成が言っていたことを胸に刻み込んでいたから。

 

 

 

『力を持つ者が、人を脅かすそのものを倒すのは当然』

 

 

 

 自分には戦える力がある。だったらそれを兎に角、人の為に世の為に守る行動をすればいい。

 

 

「こいつら…!どんだけ硬いんだよ!」

 

 

 トワは熟練された身の熟しで手下達を鎌で捌いていくものの、手応えの感じはあるし斬り伏せているのにも関わらず、手下達は倒れる気配がなかった。

 斬った所で時間は掛かれど白煙を出しながら治っていき、疲れ知らずか全く膝も付かない。

 

 

「もうキモすぎっ!かなた!一気に止めるからその隙にルーナを!闇影鄭・『影喰い』!!」

 

 

 あまりにも厄介さにトワは苛つきだし、このままだと自分の体力が先に尽きると察して、一気に状況を一転に持ち込みさせることにした。

 影と言うのは色んな所に付いてくるもの、彼女は隙を見計らって意識を集中させて異能を使うと、敵全員の人影から触手のような黒いモノが絡み付いて行動を制止させた。

 

 

「そぉ簡単にィ!止められると思うなァ!!」

 

 

 しかし、手下達の動きは封じても主犯の男はそうはいかずに、咆哮を上げながら藻掻いて無理矢理引き千切った。

 この技はそれなりに高度な魔力も含まれているので、そう簡単に抜け出せるものではないのだが、難なく突破されたことに口を噛み締めた。

 

 

「こんの馬鹿力がっ…!かなたといい勝負してんじゃんっ!」

 

 

「おいそれどういう意味だ!握り潰しちゃう…ぞっ!

 

 

 トワのボヤきにかなたが反応するものの、戦闘の意識は逸らさずに隙を見計らって男に重い一撃の拳をぶつける。

 その小さな身体から出せるような威力とは思えない重低音が響くと、男は体を宙に浮かせて壁際まで吹っ飛んで行った。

 

 

「トワ!ルーナ!目瞑ってて!『セイクリッド・ルミナス』!」

 

 

「小癪なァ…!!」

 

 

 追加攻撃と言う訳ではないが、あくまでもルーナの奪還が最優先なので視界を奪うことにしたかなたは、天使特有の光魔法で廃倉庫内全体を真っ白な光で埋め尽くす。

 

 

「うおおおおおおおぉ!!───わためぇアタックッ!!」

 

 

「ぐぅおォっ…!?」

 

 

「ナイスわため!」

 

 

「くっ…!こっちはもう持たない!」

 

 

 そんな時、突如現れたわための渾身の突進頭突きが男に容赦なくぶつかり、再び吹っ飛ばされて大量のドラム缶のある所へ激突して埋もれる。

 その同時に、トワの拘束魔法は維持するのが難しくなり手下達を解放してしまった。

 

 

「邪魔するな家畜がァ…!!」

 

 

「ひいぃ!」

 

 

「わため!早くこっちに!」

 

 

 男はドラム缶を払い除けながら直ぐに戻って来ると、怒気の孕んだ瞳をわために向ける。

 獲物を狙う獣のような視線にわためは本能的に怯えるも、トワの『影食い』で自分の影から伸ばして、わためを巻き付けて安全な方に引き寄せる。

 男達との距離が空いたと見て、かなたは真っ先にルーナの下へと寄ろうと走り出した。

 

 

「ルーナ!今助けるから!」

 

 

「駄目っ!来ちゃ駄目なのら!!」

 

 

 だがルーナは危機が迫って来ていることに気付いて、必死にかなたに伝えた。咄嗟に足を止めたかなたの前に、男が行き先を阻むように上から跳んで来ふる。

 あれだけの様々な衝撃を与えたとしても、依然として暴走は収まりを見せない。

 

 

「油断したなァ…!!お前らが幾ら戦えようがァ今の俺には……ダレもトめられねェんだよォ!!

 

 

「っ!?」

 

 

 男の身体はメキメキと痛々しい音を立てながら更に肥大化しだし、最早人としての原型を留めていない程の巨体な化け物へと変わり果てた。

 

 身長は二メートル程に伸びて、両腕は丸太程に太く鉤爪のようなものが五指から生えだし、闘牛のような悪魔の角に白目は黒く染まり、瞳は憎悪を具現化したように紫色へと変色していた。

 その声も獣のように段々と重く低くなっていた。

 

 突然の光景を目の当たりにしたかなたは唖然として思考停止してしまい、その所為で男が突き刺そうと、鋭く尖った五指が迫って来ているのに反応が遅れてしまっていた。

 

 

「────シネエエエエエエエェ!!!

 

 

「天音ちゃっ…!!」

 

 

「かなたっ!!」

 

 

「かなたん!!」

 

 

 皆が自分の名を呼んでいるのが不思議と良く聞こえる。それなのに体は動こうとしない。

 それは何故かは分からない。足が震えている。それは緊張からか恐怖からかは今はどうだっていい。

 迫り来る死が何故かゆっくりと見えていて、かなたがとった行動は目を瞑ることしか出来なかった。

 

 トワもわためも助けに向かいたい気持ちでいっぱいだった。だが無慈悲にもそれを許してくれないのが、拘束から解放された手下達だった。

 

 トワは自分の無力さの所為で、こんなことになってしまったと後悔していた。

 わためは助けに行こうとしても、自分も二の舞になると恐れてしまっていた。

 ルーナは自分が捕まらなければこんなことは起きなかったのにと、自分を酷く憎んだ。

 

 誰もがもう間に合わないと思った時だった────

 

 

 

 

 

 ────ガシャアアアアンッッ!!

 

 

 

 

 

『っ!?』

 

 

 唐突に窓ガラスが勢い良く弾け、甲高い音が倉庫内に響き渡る。

 突然の事態にその場の全員がその方向へ視線を向けると、太陽の逆光で顔は見えないが二つの人影が降りてくるのが分かった。

 

 よく見ると一人は角に尻尾が生えた少女で、もう一人は白髪の混ざったごく普通な少年だった。

 その少女は男勝りな強気の笑みを浮かべながら声高に周囲に注目を集めさせる。

 

 

「オラオラオラァ!!うちのルーナたんを返してもらうぜぇ!!」

 

 

「攫われたお姫様がいると聞いてやって来たぜ。」

 

 

「ココ!?紫黒君!?」

 

 

 その正体は言わずもがなである。ココが何故この場所だと分かったのか、そして何故に龍成まで此処に来ているのか。

 気になる所ではあるが、かなた達にとっては来てくれただけでも強い安堵感が胸一杯に満し、自然と笑みが零れていた。

 

 二人は状況を見るなり即座に悟って、軽く準備運動をしていた。ココは交互に指の骨を鳴らしながら、目が笑っていない黒色な微笑みを浮かべる。

 それに対して龍成は肩を回しながら具合を確かめつつ、鋭い目付きを男達に向けていた。

 

 今ここに、最強と謳わられている竜と龍が降り立った。

 

 

 

 

 




はい、本当は一話で済ませたかったのが結局長くなりそうだったので前後で別けます。また暫くは時間が掛かるとは思いますが大体この後の展開とかは考えてあるので、まぁ気長に待ってて下され。

では〜。
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