どうも、ようやく十四話が完成致しました。
ちょくちょく書ける時間を見付けては書き込み、そして時々寝ぼけながらも書いていたので誤って一部文章がリセットしては萎えていました。
ということで、今回は二期生絡みになります。
さっ、今回も長いぞ〜!
じゃ、どうぞ〜。
姫森の誘拐事件から暫くが経ち、ヴィランは相変わらず出現はするものの、特にそれ以外大きな問題が目立つことのない日々が続いていた。
気付けば俺も煌星学園に来てから一ヶ月が経とうとしている。時の流れが早いように感じるが、色々な出来事もあったことでまだ一ヶ月かと思う部分はある。
何もない平和な時はバイト先で啓次さんと学園の話をしたり、誰かと偶にゲームをして過ごしたり、誰かに勉強を教わって貰ったり、誰かと鍛錬を励んだりと、今まで感じたことのない新しい生活感が、前までずっと心に付いていた虚無感が薄れていく気がした。
前まではこんな生活になると考えもしていなかったし、永遠に″あのまま″だと思っていた。生きていると、人生何が起きるのか本当に分からないものだ。
感慨深くなって話が逸れてしまったが、今日は予定があるんだ。
スバルから何人かで料理会をするから来ないかと言うお誘いがあったものの、あまり知らない人である俺も参加して大丈夫だろうかと思ったんだが…。
『料理会?パーティみたいなもんか?んー…俺が行っても大丈夫なん?』
『まだ知らない人いっぱいいるだろ?折角なら顔合わせも兼ねてと思ってさ!それにタダ飯が食えるぞ』
『行きます』
『即答だな…まぁよしっ!決まりだな!龍成の食欲は底無しだから気にせず″実行″出来るな!』
てな感じで行くことにした。確かにスバルの言う通り、この学園の殆どはあやめとの決闘の時に俺のことは周知済みだろう。
だが逆に俺はまだ知らない者がちらほらといる。この学園でヴィラン討伐活動する際には、前にあった自我持ちヴィランの時みたいに誰かと行動することもあるだろうし、把握することに越したことはない。
タダ飯が食えると聞いてついテンションが上がってしまって、その後にスバルが何か言っていたことにあまり聞き取れなかった。
何度も聞き直してもスバルは内緒と言って結局教えて貰えず、その時になるまで俺はその意味を知ることはなかった。
────────────────────
「第九回!!誰の料理が一番美味いか、料理王決定戦〜!!」
『いえーい!!』
「はあちゃまっちゃまぁあああ"あ"あ"あ"あ"!!」
時は食欲が一際湧いて出てくる白昼の頃、やたら広遠な家庭科室内にて唐突なタイトルコールが俺の身体を
それに続いて俺以外の人達が歓声で沸いて大きく盛り上がりを見せてくれる。
何か一人だけ変なのがいたが、あれは無視でいいのだろうか…まぁいいか。
「さぁっ!という訳で始まりました料理王決定戦!今回も進行を務めさせて頂きます!大空 スバルでーす!あじまうあじまう!」
テレビ番組でも良くありそうな企画モノがいきなり始まった。
何故か司会役になっていたスバルが手馴れた口調で進行し、雰囲気がもうそれっぽくなっていた。
そうこう思っている間に状況は進んで、スバルは俺の方へ紹介するように手を差し伸ばした。
「そして今回は特別な審査員をご用意しました!この方になります!」
「え、と…どうも…?紫黒 龍成です…スバルからタダ飯が食えると聞いたので来ちゃいました───ってそうじゃなくて何これ?何この状況、なんで大会?こんなん聞いてねぇぞ」
状況が読めずにいたが何となく挨拶をしたものの、やっぱり可笑しいよなと思って直ぐに意識を戻す。
料理会に誘われた訳だが、いざ来てみれば何故か大会が始まって審査係の立場に置かれていた。これは話が違うだろうと、透かさず異議を唱える。
「今回の料理王に挑むのはこの方達になります!右からどうぞ!」
「無視すんなよ」
しかし、スバルは満面の笑みで俺の声を受け流して次へと進めた。
何故だろう、今日に限って彼女は普段より羽目を外している気がする。虚しくも俺の言葉に反応してくる者はおらず、そのまま続行していった。
「わっしょーい!煌星学園一の清楚!みんなのアイドル夏色 まつりで~す!料理はぶっちゃけそこまで得意じゃないけど、龍成君の胃袋をがっちり掴んでやる!」
一番初めに声を上げたのはまつり。彼女とは時間があったらよく会話をして仲良くさせて貰っている。
最近はやたら距離感が近いようにも感じているが、彼女は元々活発で誰にも対しても愛嬌を振る舞いている性格だからか、話せば話すほど自然に仲良くなっていた。
今回は気合いが授業を受けてる時より強く感じられるので、楽しみにしていたのだろう。
「アローナ〜!はーいどうも、アキロゼこと″アキ・ローゼンタール″でーす!料理は得意分野だから大会って聞いたからには気合い入れてくよ!」
そして次は初対面の人だ。一目見て綺麗な人なのだが耳が尖っていた為、恐らくフレアと同じエルフ族なのだろう。
金髪のツインテール…なのだろうか、謎の原理で束の髪が両サイドに何故か浮いている。双眸は濃い紫色のおっとりとした印象があり、全体的に癒し系の強い大人な女性と捉えられる。
どうやら料理は得意な方らしく、両腕でガッツポーズを作りながら頼り甲斐のある笑みを浮かべていた。
「ちょっこーん♪怪我の治療も料理も癒しも得意な悪魔、″癒月 ちょこ″で〜す。何だか楽しそうだったから来ちゃった♪」
お次も初めましての人だ。悪魔の生えた黒い角に小さめの羽に片足に巻き付いている尻尾、この人も大人な女性の印象なのだが、アキロゼとは違った方向である。
それは見せ付けるかのように女性特有の二つの山の谷間に、必要以上の色気が備わっていて艶めかしさがもう学生の域を容易く越えている。
腰まで伸びている金髪に毛先にかけて紅色のグラデーションが掛かっていて、深海色の淑やかな双眸をしている。
彼女も料理も得意と言っているが、どうやら医療知識も得ているようだ。
「こんかぷー♪魔界の天才ヴァンパイア、″夜空 メル″です!今日はメルが最高に美味しいのを作って龍成君を喜ばせます!」
可愛さをふんだんに発揮している彼女は吸血鬼らしいが、そう言われて見ても人間としか見えない。
彼女とは同じクラスで偶に会話したくらいだが、愛嬌さも兼ねてよく話しをする子だ。金髪のショートボブに琥珀色のパッチリとした瞳をしていて、彼女もまた露出度が高い。両肩にお腹を出した服装には目のやり場にも時々困っていた。
まつりと一緒で気合いが入っており、彼女の新しい一面を見れるいい機会になるだろうな。
「ど、どうもこんあくあ〜…!湊 あくあです…きょ、今日は…頑張ります…!」
正直に言ってこの子が参加するのは意外だった。暫くは見掛けなかったのだが、再び会ってみれば前と変わらず落ち着かない挙動をしている。
この調子が続いていると少し心配が芽生えてくるのだが、ここは父親が娘を見守るような温かい目で見ていよう。
「はあちゃまっちゃま~!ワールドワイドの最強アイドル!はあちゃまこと″赤井 はあと″です!料理大会と言ったら、このはあちゃまの手料理は欠かせないわよね!」
最後は冒頭で発狂していた彼女である。金髪のロングに緩く結んでいるツインテにハートの髪留め、凛とした碧眼が輝いている。
料理の腕に余程自信があるのか意気に燃えている。クラスでは見掛けなかったので恐らくだが、あくあと同じ一年の子だろう。
あんなに気合いが入っているのを見ると、どういった料理を作ってくれるのか楽しみだ。
「えー、赤井 はあとさんはご退場願います」
「なんでよ!?何もしてないのにいきなり退場って可笑しいでしょ!!」
「いやそもそも呼んでねぇのになんで来た!?はあちゃまが参加する度に毎回やべぇ料理出した所為で審査役を何人も引退させただろうが!!それで前回で家庭科室を出禁されてんだろ!?」
「私はただ料理してるだけじゃない!それの何が問題なのよ!!」
「お前の料理の腕に問題しかねぇわっ!!」
先程の言葉を撤回しよう、不安になってきた。
彼女の料理にはどうやら前から問題視されている様子なのだが、どうやってこの会に乱入して来たのだろうか。にしても、料理で引退まで追い込むとかどんだけの下手さなんだ…。
「えー、別にいいんじゃない?龍成にとっては初めての手料理なんでしょ?だったらそのまま続行で。いい経験にもなるんだし、あと面白そうだし♪」
「後者が本音だろ」
「ねぇ〜余もお腹空いた〜。余もご飯食べたい〜!」
「えー、外野は黙ってて下さい。と言うかそもそもお前らは呼んでないのに何で来たんだよ。お前らにやる飯は、無ぇっ!」
野次を飛ばしてきたのはシオンとあやめだった。二人は参加せずに観覧しているだけで、何がしたいのか分からない。
ただあやめは多分、単純に空腹を満たしたいが為に来ただけだと思う。シオンに至っては楽しみ目的で来ているな。主に俺が苦しい思いをするだろうという含みのある理由で。
意地悪げのような怪しい視線がやけに刺さるが…まぁ放っておくか。
そしてスバルが二人に無慈悲にご飯を与えないと残酷に公言した後、態とらしく大きな咳を一つ零してから、いつもの調子に戻って本題へと移る。
「ルールですが、料理の題材は特に決まってないので各自好きな料理を作って下さい!制限時間は三十分!結果は龍成さんの手元にあるボードにて十点満点の何点かで決めて頂きます!」
「俺は普通にご飯食べたかったんだけど…はぁ、今更何言ったって仕方ないか」
「まぁまぁ、君の期待に応えられるように美味しい料理を作ってあげるから、楽しみにしててね♪」
「だいじょぶ…だいじょぶ……あ、あてぃしでも…料理くらい……」
「それでは第九回料理王決定戦…スタート!!」
料理開始の合図をスバルの声高が室内に響かせた。その同時に料理組はせっせと動き始め、作業する音が慌ただしく絶えず耳に入ってくる。
一人一人自分の自信作を作るのに気合いが入っている様子が一目見て伺える。包丁で切る音、フライパンで焼く音、油で揚げる音、料理でしか出せない音色を目を閉じて集中して聞いているとやけに心地良い。
こんなことを思っている自分は余程楽しみなのだろう。
何か赤井が「こら!暴れない!」とかなんとか言っているのが聞こえた気がするが、まぁそうい感じの人とかたまにいるしな、余り気にしないでおこう。
……それにしても…。
「……三十分もじっとして待ってるのは流石に暇だな」
「じゃあさー、それまでシオン達とUNOしてよーよ。暇対策にと思って一応持ってきてあるんだけど」
「余はトランプを持ってきているぞ!」
「あ、どうせならスバルも参加していい?」
「司会者まで遊びに来たらもうこの企画擬きは何なんだ?」
確かにじっとしていてて暇なのだが、自由が過ぎるだろ。さっきまで撮影ムードだったのが緩々になっちまってるよ。
スバルまであっち側に行ってしまい、俺の投げ掛ける言葉はもう意味は持たなそうだ。
そんな呆れ具合の俺を見た癒月が、微笑ましそうにして声を掛けてきた。
「別に待ってるだけだし気にしなくていいのよ?終わったら伝えるから、そのまま遊んでていいわよ」
「でも何か、申し訳ないな…折角作ってもらってるのに、ただ食べるだけの俺が横で遊んでるなんて」
「じゃあまつりのことずっと見ててくれる?まつりの頑張って料理作ってる所を見てて欲しいな?ねぇねぇ、こっちに来て?まつりの傍で───」
「やっぱ遊んで待ってまーす」
最近のまつりは何か俺に対してスキンシップが過剰な為、少し距離感を無理矢理にでも置く。
傍にいたらいたで高確率でくっ付いて来るし、やたら唇を尖らせながら迫って来るのは彼女なりのスキンシップなのだろうが、限度と言うものを超えている。
そして瞳から光りをどこかに置いていったまつりの視線から逃れるように、俺は一目散にスバルの所へ逃げて行った。
────────────────────
「余のターンだ余!くらうがいい!ワイルドドロー4だ余!」
「おいぃ!!これで何回目だよ!さっきからカードが増えてばっかじゃんか!?」
「はい、んじゃあスキップで」
「ね゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!これでシオン六回も連続で飛ばされてるんだけど!?意地悪にも程があるじゃん!!」
「その言葉、そのまま返す。」
「うわ〜…すげー良い顔でえげつないことしてんな」
なんやかんやで俺達はUNOでひたすら遊んで楽しんでいた。
スバルの手札はあやめの攻撃により大量になり、俺はシオンに一つ前の戦いでされた嫌がらせをやり返している最中である。
手札には運良くスキップカードが沢山やって来たので、出し惜しみせずに使用する。
「もぉ〜怒ったし!龍成には絶対勝たせてやんないから!覚悟しといてよねっ!!」
「そりゃあ楽しみだ。はい、じゃあスキップで」
「ね゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛! ! !」
「龍成、お前どんだけスキップ持ってんだよ!」
「ほい!またくらうがいい!ドロー2だ余!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! !」
「どうだ!余はスリーカードだぞ!」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…!あと一枚でストレートだったのに!」
「はい残念でした〜ww!ねぇ見て凄くない?シオン、フォーカードだよw」
「マジかよ!?」
「うぇ〜…!龍成はどうなったの?」
「あ〜、ははっ…まぁはい」
UNOを何回か遊んだ後、次はあやめが持ってきたトランプでポーカーをしていた。運要素が強く絡むこのゲームは中々に面白い。
そして、今は八回目の勝負なのだが…ここで誰もが驚く稀有な出来事が起きたのだ。
スバルはハイカードであやめはスリーカード、シオンはフォーカードとなり、俺は……苦笑いを浮かべながら手札を置いて見せる。
「はあっ!?ロイヤルストレートフラッシュって嘘だろっ!?イカサマでもしたんかっ!?」
「ね゛え゛え゛え゛え゛!!絶対やってるって!イカサマしてるって!」
「いや…俺も結構吃驚したんだけど」
「凄いな龍成!お主は相当な幸運の持ち主だ余!ぺこらちゃんと良い勝負するするんじゃないか!?」
「そんな澄まし顔で言っても信じられるかぁ!吐けっ!いつイカサマしたんだぁ!じゃないと大空警察としてお前を不正行為で捕えるぞっ!!」
「だからやってねぇって。てか何だ大空警察って…」
────────────────────
それから気付けば三十分が経過し、全員の料理が出来上がったと癒月から報告を受けた俺達は、最初の位置に戻ると再び撮影ムードに切り替わった。
「えー…ということでね。皆さんの料理の方が完成したということなので早速、龍成さんに食して頂こうかと思いますが、誰の料理からいきましょうかね?龍成、誰のからがいい?」
「あの……何か一品だけゲテモ…オーラが違う料理が混じってるんだけど」
「それはスルーしていいよ」
「はあちゃまの無視しないでっ!」
俺の目の前には机一個分先に皆が作った料理が一列に並べられている。誰が誰のが分からないがどれも美味しそうと思ってたが、何か一つだけ混沌が混じっていた。
あの一品だけ異様に存在感が違う。
他のは物凄くキラキラと輝いているのに、赤井が作ったやつは…まるで自我持ちヴィラン……いやそれ以上のやばい何かを感じた。
アレを食えと?ごめん多分無理です。
だが取り敢えず、そろそろ空腹も満たしたいし最初はガッツリ系のを食べたい気分があったので、真っ先に目が向いた料理に手を伸ばす。
「そうだな…じゃあこれから」
「あ!私のからいくの?一番最初に選んでくれるのって何か嬉しいな〜!」
俺が初めに選んだのは、アキロゼが作った山盛り唐揚げ丼にした。
一目見て中々のボリュームさにこれだと思い、実際に手元に置くと更に大きく見える。
丼のサイズはラーメン屋にある器と同じくらいの大きさで、大量のご飯と山になっている唐揚げで埋め尽くしている。実に素晴らしい眺めだ。
「んじゃ、いただきます!……あぁ、美味い…」
手始めに唐揚げを一つ食べてみる。結果は言わずもがな大変美味である。
出来たてというのもあり、外は食べ応えのあるカリカリ感に中は肉汁と旨味が凝縮された柔らかい鶏肉。そしてそのお供としてご飯で更に食欲が唆られる。
食べれば食べる程、身体がより欲するかのように口の中へと掻き込ませた。美味いという言葉が頭の中でいっぱいになり、夢中で食べていると…。
「む…もう完食しちゃった」
「はやっ!?あんだけの量で三分も経ってねぇぞ!?」
「良い食べっぷりで見てて気持ち良かったわ」
「もっと食べたかったなぁ……ご馳走様、物凄く美味かった」
「わ〜♪そう言ってくれると嬉しいな。良かったらまた今度作ってあげるよ!」
「機会があったらお願いしようかな」
「そ、それじゃあ…アキ先輩作の料理の点数の方お願いします」
数分と掛からずに完食してしまい、皆が各々の反応を見せてくれる。
アキロゼは夢中で食べていたことが嬉しかったのか、溢れ出る嬉々を醸し出してご満悦な様子だった。
そして俺はその料理に対して点数を発表する。
「はい、これは文句無しの十点満点。個人的評価にも程があるだろうけど、味も揚げ加減も俺好みで最高だった」
「やった〜!!お口に合ってて良かったぁ♪」
「いきなり満点って凄いわね。まぁアキ様の料理も上手だし美味しいから不思議じゃないわ」
「スゥー……凄い不安になってきた……」
本当にこれは満点でいいと思っている。文句は無いし凄く好きなタイプの唐揚げだった。
初っ端から満点を貰ったアキロゼに対して、少し空気に緊張感が増した気がした。
「さて、冷めない内に次行こうか。んじゃあ…これで」
「あら、次はちょこの料理ね。どうかしら?結構自信作なのだけど」
「これはカレー…じゃない?ハッシュドビーフか!」
次は癒月の作った料理を手に取る。これは子供から大人が好きな料理の一つ、初めはカレーかと思ったのだがよく見れば何か違うと気付く。
いざスプーンを手に取って口に入れた瞬間、ドミグラスソースの香ばしさと肉と玉葱の旨味が口の中いっぱいに広がる。
「うん…!美味い!コクも深くて肉も凄い柔らかいしバターの風味も効いて食べ易いし、こりゃあ手が止まらんわ!」
「ふふっ、満足して頂けて良かったわ♪そんなに嬉しそうに食べてくれると作ったかいがあるわね。また作ってあげるわよ?」
「お願いします!」
「お前、飯のことにになるとキャラ変わるのね」
「あっ……もう食い終わっちまった」
「だから早いって!?」
食べ始めると勢いが増していき、落ち着いて食事することを忘れてしまうくらいに美味し過ぎる。隠し味であろうバターの風味が効いていて、味に飽きが来ない。
そしてまた気付いたら皿から綺麗に消えていた。
「んっん…えーでは、採点の方お願いします」
「あい、これももう満点で決まってます。円やかでコクが深く上品な味だったし食べれば食べる程、更に食欲が引き立たせていて、また食べたい一品だった」
「満足してくれたならそれでいいわ。私としては、何よりも美味しく食べてくれるのなら順位なんてどうでもいいのよ。でも、嬉しいわ!ありがとね♪」
俺の感想に彼女は満足そうに微笑み、その姿は本当に華麗で魅了され掛ける。
手料理でこんなに美味いのを作れるのは羨ましい所はある、俺もバイトで料理するのだが負けた気がする。
そんなどうでもいいことを小さく気にしながらも、次に移る。
「オムライスかぁ〜久しぶりに食べるな。そういや、あくあってメイドやってるんだったな。やっぱり料理もお手の物で、色々と何でもこなせるっていいね」
「い、いえ…!あ、あてぇし…その、料理どころか家事も殆どやらかしちゃうし……出来ても掃除くらいしか…」
「でもこのオムライスとか凄い綺麗に出来てるぞ?」
「そ、それは……たまたまですよ…今日上手く出来ただけで、普段は……」
「あくあ…どれだけ自分に自信が無くても、最後までやることをやり遂げだんだ。結果がどうであれ、やり切るのは偉いことさ。それに例え失敗したとしても、折角作ってもらったのに食べなきゃ非礼ってやつだ」
まだ彼女は俺との会話には慣れていないようで、なんだか後ろめたさもあり視線があちこちへと落ち着いていない。
自分が作った料理にやたら自信が無いような言動をしているが、皆から見ても素晴らしい出来栄えなのに随分と消極的になっている。
しかし、その態度は間違っていると思っているのでもう褒めに褒めまくる。それはそうと、まだ俺の腹は満たされていないので取り敢えず一口食べてみる。
「ど、どうですか…?」
「うん、やっぱり美味いよ。何だか優しい味わいで卵もふわトロだし、チキンライスも量が多くて嬉しいし、ソースも絡むと更に美味くて最高だ。あくあお手製オムライスは幾らでも食えそうだ!さっきの二人もそうだけど、店に出しても可笑しくないくらいマジで美味いよ!」
「っ!……へへ…♪」
「嬉しいこと言うじゃない♪」
「そんなこと言われたら毎日作ってあげたくなるじゃん♪」
やはりあくあの作ったオムライスには失敗が無いくらい美味しい。アキロゼも癒月も、この三人の料理はレベルが高くて店に売られても可笑しくない。
そのことに彼女達は嬉しそうに反応を返してくれる。
「う〜…スバルもお腹空いてきたっす…」
「余もお腹空いたぁ〜…!ご飯〜…!」
「仕方ないわね〜、ちょこが作ってあげるから少し待ってて。簡単な炒飯作るから」
「シオンはもう…見てるだけで何かお腹いっぱいなんだけど…てかまだ食べれるって胃袋どうなってんの?」
時間が時間な為、昼飯を食べていない者からしたらこの光景に余計に空腹感に苛まれるだろう。スバルとあやめも限界が近付いてきたのか嘆き始める。
だがシオンだけは俺の食いっぷりを見ただけで満腹感の錯覚を起こしていたようだ。
そんな二人を見た癒月が仕方ないと言ったように少し呆れつつも、手軽な料理を作りに行った。
そして、あくあの点数も文句無しの満点で決定にした。スバルがちょっと不服そうにしていたのは敢えて無視しとく。
その理由は分かっている、割り当てる点数に正当さがないことだろう。
それをジト目で俺に伝えて来るが、俺は目を絶対に合わせない。合わせてたまるか、美味いのが悪い。
「むああああ!もう何でもいいから早く食べてよ〜!!腕によりをかけて作ったんだから食べないと無理矢理にでも食わせるぞ!!オラァ!早くまつりを食えぇ!!」
「もう少し言葉を選べ!!」
「はあちゃまのも忘れないでよねっ!絶対美味しんだからっ!」
「メルのもね!まぁ…デザートだから最後でもいいんだけど」
「…じゃあ次はまつりのにするか」
「よしきた!まつりが作ったのはね〜、お祭りにある屋台の食べ物だよ!」
その時にまつりが順番が来ないという不満が爆発を起こして暴れ出しそうになっていた。
だがまつりだけでなく、その不満さは赤井に夜空もまつり程ではないが小さくも持ち始めていた。
ということで、次はまつりの作った料理にする。
彼女の作ったのは祭りの屋台にあるであろう沢山の種類の食べ物が並んでいた。焼きそばやたこ焼きにイカ焼き、お好み焼きとかじゃがバターや串焼き等と種類が豊富だった。
「まだ温かいから美味いし、バリエーションがあって飽きないな。祭りとか参加したことないからどんなのか分からんけど、市販で売ってるのよりも手作りの方が余計美味しく感じるな」
「そりゃあこのまつりの愛情をたっぷり入れてるからね!ほらっ、このたこ焼き食べてみて!はい、あーん♪」
「あむっ」
「何の躊躇もなく食らいつくやん」
「餌付けされてるみたいでちょっと可愛い…」
いつの間にか傍に来ていたまつりに、たこ焼きを差し出されるがそのまま食らいつく。
何故かその光景に何人か驚いていたが、一体なんなんだろう。俺は単純に厚意でしてもらっただけだと思ってるんだけど、別の意味でも込められているんだろうか。
スバルとアキロゼが何か言っていたが気にせずにその後も自分のペースで食べようとすると、まつりが飽きずに食べさせようとして来て少し時間が掛かった。
「ふぃ〜全部食い終わった〜」
「じゃあ気になる点数の方ですが……まさかまた十点か…?」
「美味い時点で俺にとっちゃあ満点だ」
「やった〜!!」
「人選ミスったな」
何を言う、俺の判断で点数を付けていいんだったら文句は言わないで欲しい。こうして彼女も喜んでくれてる訳だしいいことだろう。
割と適当に見えているだろうが、これでも考えてはいる。
……まぁ、書き換えてもない十点のボードを堂々と見せ付けられてもそう思うのも無理ないか。
「この流れで行ったら次ははあちゃまの料理よね!」
「あ〜、いや……先に夜空のデザートでいいか?」
「えーなんでよ!?」
「あーほら、お楽しみは最後に取っておくみたいな…ね?」
「っ!そう…よね。それってやっぱり私のは一番って言ってるようなものよね!だったらいいわ!」
「ハードル上げたな」
「あぁ…何となくこの先の未来が見えてきたわ」
「大丈夫かな〜…?」
「あーあ、終わったねw」
確かに流れ的に言えばこのまま赤井のだとは思うのだが……ねぇ?ぶっちゃけたことを言えば、あのダークマター擬きを食べたいと思うか?あれが今までの審査役を陥れてきた元凶だろ。
作って貰って本当に申し訳ないけど、食べれる気がしない。
しかし、俺の不器用さがここで発揮してしまって己の首を絞めてしまった。うーん……解せぬ。
「はいどーぞ!メル特製のスペシャルフォアレッドパフェだよ!」
「これは凄いな…めっちゃ甘そう」
「うわ〜いいなぁ、余も食べてみたいな〜」
もう言ってしまったのは仕方ないとして、取り敢えず夜空が作ったデザートを食べることにする。
彼女が持って来たデザートは見たことのない大きなパフェだった。名の通り、赤一色に拘ったパフェである。
リンゴとイチゴとラズベリーにスイカが飾られていて、ストロベリークリームにイチゴジャムと赤色をふんだんに使っている。
大きく関心を持った後、一口食べてみる。
「美味い!すげぇ、これが手作りで出来るって身近にそういないだろ。いいね」
「ふふん♪そうでしょ?赤色のスイーツをふんだんに使って可愛く作ったの!」
「見てるだけでも何か甘いな…」
「でも美味しそうね〜、ちょっと私も食べてみたいわ。ねぇ、私にも一口くれて貰えないかしら?」
「ん?いいよ、はい」
癒月が食べたそうにこちらに寄って来て尋ねてきた。
別に否定する理由は無いし、甘い物が好きな人は女性の方が多いと聞くので善意で掬ったスプーンを癒月の口元に差し出した。
そしてそれを見掛けたスバルは驚き、メルも少し恥じらいのある反応をする。
「ちょっ…!おまっ!それ本気でやってのか!?」
「うわ〜…だ、大胆…!」
「え?何か不味いのか?」
「ふふふっ…盲蛇に怖じずって諺、覚えておいた方がいいわよ?でもそう言うの嫌いじゃないわ♪じゃあ遠慮無く…あーん♪」
「ああぁー!?」
「うわわわ…!」
(色々と面白そうだし、写真撮っとこ〜!)
癒月からさり気なく注意を伝えられたが、それが何を意味しているのか俺には分からず首を傾げるだけだった。
そして、癒月がそのまま食べるとまつりが大声を張り上げた。あやめは手で顔を覆ってるようだが指の隙間から見てしまっているし、シオンからは面白ければいいやという意志を感じた。
何処まで悪戯好きなんだ…しかし、食べさせ合ってる行為に何が羞恥心を揺るがしているのか俺にはさっぱりである。
「お、おい龍成!本当に何も分かってないのか!?って言うかちょこ先もなに受け入れてんだよ!」
「ふふふっ…大人の余裕ってやつよ♪まぁ誰でもいいって訳じゃないけどね。この子になら、不思議と抵抗感が湧かないのよね〜」
「別に食べさせることの何が変なんだ?」
「い、いや…口つけたので…その、かっかかかかん…か、関節キ───」
「もー!!そんなことしてないで早くはあちゃまの料理食べてよー!!もういっそ無理矢理にでも口に突っ込ませるわよ!?」
「似たような台詞さっき聞いたぞ」
赤井も我慢ならなくなったのかまつりと同じように喚き出した。
もうこれ以上は時間を掛けられないようだし、覚悟を決めるか…それはそうと、夜空のデザートの評価をしなければ。
食べた時を思い返しながら、どんな味でどんな感じだったか思ったことを口にする。
「そうだな…食後のデザートってなると量は多いかもしれないが、俺だから問題無し。甘さ加減もそんな諄くなかったし、色んな果物の味も楽しめつつ映えるオリジナリティなデザインがとても良かった。店にいい値で売っても違和感ない一品だったよ。と言う訳で、結果は文句無しの満点」
「やったぁあああ〜!!でしょでしょ!多分気に入ってくれると思ってたんだけど、良かった〜!」
「おいもうこれ全員が料理王ルートじゃねぇか!!……いや、はあちゃまだけ違うか」
「なんでよ!そんなことないから!私の料理を舐めないでよね!」
夜空は大いに喜びながら胸を撫で下ろしていた。それでも自信があったのか、他と比べて少し余裕感があった。
俺はこう見えても甘いの物は好物なのだが、夜空はそれを気付いていたのだろうか?
それはそれとして、スバルが異議あり!と勢い良く立ち上がったが、急に感情が冷静に支配される。
彼女の言い分に対して赤井が大きく否定しているけど、俺は机の上に堂々と最後に残った料理(?)を眺めて、舐めたくもないと心底思っていた。
いや……ほんとに何あれ?暫く時間は経っている筈なのに、依然としてぐつぐつと煮えたぎっているスープ、大雑把にカットされた何かの野菜、そんでどうしたら全体が紫色に覆われるのか、理解しかねる。
そしてド真ん中に佇む───
丸々一匹の蜘蛛が死んだ目で此方を見ていた。
「……本当にこれ、食えんの?」
「一応、過去の経験上なんだかんだ皆食べてはくれたけど……うん…」
「……でも、そろそろ腹一杯になってきたし───」
「″折角作ってもらったのに食べなきゃ非礼″って言ったのは誰かなー?」
自分でも見苦しい言い訳を言っているのは分かっている。分かってはいるけども……シオンが横から言質を晒すのは何か凄いイラッと来た。
見てみ?あの清々しい程のにやけ面、一瞬でもぶっ叩きたいと思ってしまったよ。
だが落ち着け俺、シオンが言っていることは間違いじゃない。
「……いただきます…」
手汗と共にスプーンを握り締める。何故か鼻が拒絶するくらいの匂いが襲ってくるが、ここは気合いで抜けれる。
スープを掬って口元まで運ぶが、ここで自分の息遣いが荒くなっていることに気付く。
だがもう、引けない場所まで来たんだ。固唾を呑んでから目を強く瞑って口の中へ入れ込む。
腹を括れ、俺…!
「────っっっっ!?!?!?!?!?!?」
舌に触れた瞬間、味覚が大爆発を起こした。
甘味、塩味、酸味、苦味、その四つの味覚が口の中で大喧嘩している。いや、喧嘩で表すにはまだまだ生温い、もう殺し合いだ。
それに大変なのは口の中だけではない、身体にはまるで雷が落ちてきた衝撃だった。
嫌な汗と悪寒が共に背中を這いずり、意識が少しづつ蝕まれていくのが本能的に解った。
体が既に拒絶反応を全力で引き起こしているが、それでも手を止めずに無理矢理にでも口に掻き込む。スープも、野菜も、そんで蜘蛛も。味と食感は無視しろ、とにかく無心で噛み砕いて飲み込め。
もちゃもちゃと嫌な音が口いっぱいに響くのに、嘔吐感が湧いてしまう。だがそれでも口は絶対に止めるな、止めたらそこが最期だ。
「うわぁ…すっごw」
「お、おい…大丈夫?」
「そんな一気に食べたら…」
「すっごい震えてるけど…」
「顔色も凄く悪くない…?」
「だ、大丈夫ですか…?」
「ふらふらしてる余…?」
シオンと赤井を除いて皆が心配の眼差しで様子を見届けている。
正直にヤバいと言えばいいのに、変に意地張って心配無用と伝えたくて一気に飲み込んで、無理のある引き攣った笑みを見せる。
喋れるかも分からない今、口を開いてみればか細い声しか出なかった。
「……っ…あ、あぁ…だい…じょぶ…」
「いや絶対に大丈夫じゃないよ!?目が死んじゃってるよ!!」
「どう?どう?はあちゃまの料理の味は!?」
「…う、うん……中々…いや…今まで、食べてきた⋯料理で…一番⋯刺激的な────ごふっ…」
興奮している赤井に感想を何とか述べようとしたところで、まるでテレビの電源が切れたように全身に力が入らなくなり、俺はそこで意識が途切れてしまった。
「うわぁあああああ!?龍成っ!?過去一でヤバいやつの状況だぁあああ!!」
「あら?気絶するくらい私の料理が美味しかったのかしら!」
「あ〜あ、あんな一気に食べるから…」
「や、やばいよ〜!泡吹いちゃってるし、何か口から魂みたいなのが出ちゃってるよー!」
「あ、あぁ…えと…!ど、どうしたら…!」
「ちょ、ちょこ先生!メルも手伝うから早く保健室に運ぼっ!」
「そうね、ちょっと急いだ方がいいかもしれないわ」
「だ、だったら余に任せて!余が保健室まで運ぶ余!」
不意に失神してしまった龍成にその場は大慌てに包まれた。
スバルとアキロゼたあくあは対応手段が思い付かずあたふたとしているが、メルは即断即決でちょこに提案し、あやめはそれに便乗して離脱した魂を龍成の口に無理矢理にでも戻して、抱き上げて速攻で保健室に向かって行った。
その場に残された四人は暫く沈黙に支配されていたが、スバルは思い出したように一言。
「取り敢えず、はあちゃまはもう料理大会から永久追放ね」
「なんでよぉおおおおおおお!!」
第九回料理王決定戦はアクシデントにより中止になって、はあとはスバルから永久出禁宣告を受けるのだった。
その後、残った四人は後片付けをしてから、龍成の様子を見に行くのだった。そしてちょこの介抱により、後に復活した龍成はこう語っていた。
赤井には料理を作らせてはいけない、死人が出る…と。
───後日
龍「はぁ……酷い夢を見た…」
ス「夢?どんな?」
龍「何か…赤井の面影のあるどデカい蜘蛛のような怪物に追われ続けてた」
ス「あー…うん、大変だったな…」
多少キャラが違うってるかもしれませんが、お許しを…。
そして、ちょっと各キャラの能力等の設定集的なのを書こうかなと思っとります。その場その場で説明を書くと頭ごっちゃになりそうなので(主に自分が)、てことでちょっと練ってきます。
まぁそれは追々として、お次は三期生とゲーマーズと絡ませようかと考えています。お楽しみに。
では〜。