少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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ども、一ヶ月ぶりです。
ちょっとスランプ気味だったのと、用事が詰まってて中々執筆に手が出せていませんでした。
まぁそんな言い訳は消し飛ばして、今回も一話で済ませようとしたら長くなってもうたので二つに分けますね。前回で伝えた通り、ゲーマーズと三期生との絡みになります。

じゃ、どうぞ〜。


十五話 『ゲームの世界へ 其ノ壱』

 

 

 

 

 

 ───俺は今、摩訶不思議な光景を目にしている。

 

 雲一つない青天に心地良い風が靡いては木々が揺らめいて、微風と共に自然の音色を運びながら奏でている。散歩日和にはいい所だろうが、注目すべき点はそこではない。

 自分の近くで小動物達がわいわいとじゃれ合っているしている様子に、つい微笑みが零れる。

 それで摩訶不思議と言っても特に変わり映えのない何時もの風景だと思うのだが、何がそれに当てはまるのかと…。

 

 ふと上を見てみれば、なんと()()()()あるではないか。この時点で有り得ない光景なのだが、しかしそれだけじゃない。

 

 現実逃避気味に良い眺めだなぁと穏やかになりつつ景色を一頻り楽しんだ後、ふと横を見てみる。

 

 

 

 

 

「グォオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

「そぉーい!!団長のハンマーが猛威を振るよー!!」

 

 

「船長のあっつぅ〜い♡砲撃も受け取って下さいね♡?いくぞオラァアアアアアアアッ!!」

 

 

「マリン情緒大丈夫?一回ウチの盾で頭()とうか?」

 

 

「昭和のテレビか!そんなこと言ってないで、さっさと終わらせるぺこよ!」

 

 

「魔法少女るしあに任せるのです!」

 

 

「ほらほらー!白上の太刀筋はどんなですかー!あ、YABE☆技外した」

 

 

「ちょ、本当にこれ私の弓矢とか効いてるの!?」

 

 

「ぉらよ〜!こぉねの大剣でその頭かち割ってやんよ!見ててねおがゆ!」

 

 

「頑張れ〜ころさ〜ん。ボクも斬りまくるよ〜!」

 

 

 視線を向けた先には、色物集団のノエル達に獣人集団のフブキ達が見たことのない武器を手にしながら、ヴィランとは大きく異なった怪物、別名称モンスターと戦っていた。

 そのモンスターは二足歩行の恐竜の面影のあるドラゴンの見た目をしていて、自慢の大きな角を存分に使って暴れ散らかしているのに対して、フブキ達は各々の武器で対抗していた。

 

 

「痛っ!?ちょ、フレア!?白上に当たってるよ!?」

 

 

「あ、ご、ごめん!でも、射線に入ってくるから…!」

 

 

「ちょっ…!なんか魔法が効いてないんですけど!?何でだよっ!!」

 

 

「でぃっひゃははははw!こぉねの攻撃全然当だんない!」

 

 

「なんかウチばっかり狙われてない!?ちょ、ちょっと誰か…龍成君も見てないで助けてよ〜!」

 

 

 そんな殺伐としつつも何処か和気あいあいとした光景に俺は、改めて実感した。

 

 

 

 

 

 ────本当にここが()()()()()()なんだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───数時間前

 

 

 最近は立て続けに快晴の天気で、更に夏季による猛暑の影響で若干クラスの士気が下がりつつなっていた。

 エアコンは搭載されているから暑さ対策はしているものの、それでもヴィランが現れれば現地に向かう為、結局汗で濡れることもしばしば…そのこともあって憂鬱気味に苛まれる者も少なくない。

 

 しかし、その気持ちを吹き飛ばす程にテンションが爆上げになった一人の少女がいた。

 

 

「つ・い・に〜……来ましたよぉおおおおおおおお!!白上はこの時をどれだけ待ち望んだことかっ!!」

 

 

「いきなりどうした?前から愚痴ってた色違いってやつが漸く出たのか?」

 

 

「はは…もう暫く徹夜しても全部赤かったなぁ……ってそうじゃなくて!遂に来たんですよ龍成君!!」

 

 

「だから何が…」

 

 

 興奮が抑えきれずウキウキと話し掛けてきたフブキに、例の話題を持ちかけてみたが瞳からハイライトが消え去ったので違ったようだ。

 さっきから来た来たって言ってるけど何が来たんだ?待たせに待たせた廃部の件のことだろうか。

 

 そう思った矢先、フブキはスマホで何かを表示して見せて来た。

 

 

「これですよこれっ!最新作のゲーム機で実際にゲームの世界にダイブ出来ると言われているVRですよ!知ってるでしょう!?」

 

 

「ごめん初耳」

 

 

「なにぃっ!!?」

 

 

 いやそんな驚かれても…知らなかった物は知らなかったんだし。なんかそんな1+1も知らんのかみたいな反応されても…。

 

 

「フブキ〜…って、龍成君と何か話してた?」

 

 

「あ、ミオ。昨日発売されたVRの話してたの」

 

 

 そんな所でミオがやって来るが俺との遣り取りに気を使って後にしようとしていたのか、フブキに寄っていた足を不意に止めた。

 けどそんな重要な話をしてる訳でもないので、小さく手を招いて問題ないと会話に誘う。

 

 

「あ〜アレ?あれって結構高いみたいだよね〜。まぁウチ達なら問題ないと思うけど、やっぱり買うの?」

 

 

「当然っ!一家に一台は必ず欲しい必須な物!ゲーム界隈の新たな時代を切り拓いた最先端ですよ!買わない選択肢などない!!」

 

 

「いつにも増して興奮してるね…」

 

 

「という訳で、龍成君も一緒に始めてみませんか?」

 

 

「いや…何がどう言う訳?」

 

 

 依然として冷めない興奮を便乗させて、よく分からん理由付けで勧誘して来る。と言っても何となくフブキの魂胆は察している。

 やはり真新しいゲーム機に、更には最先端の電脳技術を用いた新時代アクションとなれば、ゲームオタクの彼女からすれば喉から手が出る程欲しいのだろう。

 そして楽しさを布教して冒険やら戦いやらを一緒にしていきたいんだろうな。

 

 

「実は前からゲーマーズで話してたんです。このゲームが発売されたら皆で一緒にやろうって、それでもしだったら龍成君も一緒にどうかな?」

 

 

「まぁ…別にいっか」

 

 

「よーし!じゃあまた後程に色々と連絡しときますね!」

 

 

 断る理由も特になかったので頷いておく。実際にゲームの中に入れるとなれば殆どが興味を抱くものだろうけど、その反面で少し怖くもあった。

 どんな感覚で、どんな方法で、もし誤作動とか起きたら、などと安全の保証を考えるのも変ではないと思う。

 

 でもそんな心配は杞憂に終わることだろう、試験して問題無く作動したのだから売ってるのに、変な所で心配性な自分にちょっと自傷気味に鼻で笑う。

 

 そしてその後はいつも通りに過ごして、家に帰る前にちょこっと寄り道でゲーム関連の店に立ち寄ってみると例のVR機があった。

 ミオが値段が高いと言っていたが確かに高かった。ゲーム機一台で中古車は買えるくらいで、思わず店員さんに表記ミスではないかと聞いてしまった。

 遊ぶ約束はしたものの、いざ買うとなると中々手が伸びない。悩みに悩んで自分の財布とよく相談した結果、買うことにした。

 

 昔なら絶対に買うことはなかっただろうが、学園に通ってからヴィラン討伐の報酬もあり、懐が暖かいを通り越して最早熱い。かと言って無駄な出費はしたくないのも本音。

 けども誰かと楽しみを共有出来るのなら無駄ではないだろうし、少し楽しみな自分がいる。

 

 

「これが最先端…かぁ」

 

 

 確かにVRっぽい機械だが、バイクのヘルメットにも見えなくもない見た目だ。

 説明書をざっくりと読みながらフブキからの伝えられた情報を思い出す。このVRは、本機に備わってる一つのゲームソフトしかプレイ出来ないとのこと。

 

 膨大なプログラムのデータ量やらで現実と変わらない行動が可能なのだが、その代わりマップも超絶広大で、敵やNPCの種類も約五万と超大量で、様々な技や装備やetc…。

 ちょっと説明すると長くなると思うので割愛させてもらうが、要約するとこのゲームだけで一生が終わるまで遊べる要素がぎっしりと詰まっているのだ。夢だね。

 

 

「本当にこれでゲームの中に入れるのかよ?」

 

 

 自分の時間が出来たのでいざやってみようかと思ったのだが、今になって不安になってきた。

 起動方法としてはVRを頭に被ってから眠る感覚で仰向けの状態で起動してから目を瞑っていると、電波が脳内にジャックして意識を弄るのだとか…怖っ。

 

 溜息と同時に唸り声が無意識に口から漏れる。フブキからは時間指定で初期リスポーン地点で合流する話をしていたのだが、もうそろそろ起動しないといけない。

 頭のサイズを合わせて、ベストな位置を調節してから寝る体勢をとる。

 

 いざ電源を入れてみれば、眠気もなかった筈の意識が時間も経たずに徐々に沈んでいく感覚に陥る。

 

 あーこれか、と一人納得しながら力が自然と段々と抜けていき、そのまま意識を暗闇へと預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Now Loading...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ん…?ここは…」

 

 

 

《ニックネームを決めてください》

 

 

 

 不意に目が覚めた時、自分が今立っている場所が現実世界ではないと直ぐに気付いた。

 そこは真っ白な空間しかないのだが、正面の目線先には一つのメッセージウィンドが浮いていた。

 

 

「まさか本当にゲームに入り込む日が来るなんてな」

 

 

 本当に身体が自由に効くから少し実感は無いが、現実では寝てるんだよな俺…それはそうとゲーム名か、そのまんまだと良くないと聞いたのでどうするかな……────よし。

 

 

 

《『タツナリ』さんでよろしいですか?》

▶︎《YES》 ︎︎ 《NO》

 

 

 

 他に色々とあったかもしれないが、ぱっと思い浮かんだ名前がこれしかなかったのでこれにした。

 特に深い意味はなく、自分の名前を言い替えただけの飾り気もないネームだ。うん…深い意味はない。

 

 決定して次の選択画面へと変わって、役職(ジョブ)の選択になった。

 

 

「剣を扱うか、銃にするか…結構迷うなぁ〜。どれも面白そう」

 

 

 指でスクロールしながら選択肢をずらーっと見ても結構な量の役職が存在する。

 ゲームでしか味わえない武器を使って冒険するのも醍醐味だし、渋い武器とか持って少しハードなゲーム人生を送るのも悪くないかもしれない。

 けどまぁ、自分のしたいことをするのが一番か。

 

 

「ん?『拳闘士』……おいおい、俺にピッタリな役職があるじゃんか」

 

 

 その役職が目に入った瞬間これだと思った。やっぱり俺には格闘が似合っているかもしれない……いやでも剣とか刀とか振り回してみてぇ。

 二丁拳銃とかライフルとか、ぼたんみたいな戦い方とかしてみてぇ。…ん?

 

 

 

《ジョブは『拳闘士』でよろしいですか?》

(※ジョブは設定でいつでも変更可能です)

▶︎《YES》 ︎︎ 《NO》

 

 

 

 何時でもジョブチェン出来るならこれでもいいか。

 これに決定して、次は容姿の設定か…と言ってもモデルは自分自身な訳で、変更できるのは髪と瞳の色程度しかない。

 念の為に身バレ防止として髪色は青紫にでもしとくか。よしっと…。

 

 

 

《あなたはこれからゲームの世界の住人になります。そこでは想像を絶する程の自由奔放なゲーム生活を送れます。どんな生き方をするかはあなた次第…。自由気ままにDifferent World Gameをお楽しみください》

 

 

 

「うぉっ…!」

 

 

 すると辺りが突然と光出して思わず目を瞑る。数秒もすると瞼から光による微熱が冷めていくのを感じて、目を開いてみると景色が大きく変わっていた。

 驚愕しながら周りを見渡すと、そこは現実世界とは違った街中に囲まれていた。

 と言うか、レトロ感のある田舎と言えばいいのだろうか?確かに異世界感のある所だ。噴水の手前が初期リスポーン地点らしく、周りには店などが並んでいた。

 

 ふと自分の体を見てみれば初期装備に身を包んでいることに気付く。簡易で素朴な見た目だが、動き易いし関心が勝って少し感動を覚えた。

 それはそうと、メニューなど他設定がないか確認したいところだが…どうしたもんか。

 

 

(こういう場合って…念じるとか?───むんっ)

 

 

 

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【タツナリ】Lv.1

[役職]『拳闘士』

[所持金]0G

[装備]〈頭〉『見習い拳闘士の鉢巻』

〈体〉『見習い拳闘士の道着』

〈腕〉『見習い拳闘士の手甲』

〈足〉『見習い拳闘士の革靴』

[装飾品]『力の御守り』

[スキル]『二連脚撃』

[アイテム]未所持

HP(体力):20

MP(魔力):10

SRT(攻撃):6(+10)

VIT(防御):8

INT(知力):3

MND(魔防):5

DEX(器用):7

AGI(俊敏):6

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(あらっ、ステータスだなこりゃ。えーと、攻撃力が高いのは役職のお陰か?その代わり知力…確か魔法の攻撃力だよな?それは低いのか)

 

 

 役職によっては初期ステータスに差があるかもしれないが、如何せん初めてなので何とも言えない。ってそうじゃなくて、設定画面に移りたいんだけどどうやったら…あ、大丈夫だ。このままスライドすれば行けたわ。

 よしよし、まぁ別に設定弄りたい訳じゃなくてログアウトの場所を確認したかっただけなんだけどね。

 

 

「さて、取り敢えずはどうするか…もう少ししたら来るんかな?」

 

 

「あの〜…すみません」

 

 

「ん?」

 

 

 リスポーンしてから一歩も動かず、その場で色々と設定などを確認していると誰かが話し掛けてきた。

 何処か聞いたことのある透き通る声に、もしやと思いつつ声の主に目を向ける。

 

 

「人違いでしたら申し訳ないんですが……龍成、君…でしょうか?」

 

 

「そう言うあんたは…フブキ、か?」

 

 

「あぁ良かった!髪色が変わってたから最初気付かなかったんですよ!」

 

 

 どうやらフブキだった。約束通り合流出来て一安心し、ステータスを閉じて彼女と向き合う。

 

 

「そう言うフブキこそ、パッと見分からなかったぞ?何時もの尻尾と猫耳が無くなってるし…」

 

 

「狐じゃいっ!!もうそれわざと言ってるでしょ!」

 

 

 そう、普段からある獣人の特徴的である彼女の耳と尻尾がないのだ。

 恐らくはこのゲームの影響だろうけど、初めは本当にフブキに似た他人かと一瞬思った。

 

 

「悪い悪い、ちょっとした冗談だよ。んで…これからどうするよ?合流出来たのは良かったけど、先ず何からしたらいいのか分からんのだけど」

 

 

「そうだと思って、ちょっと白上に着いて来てもらえますか?来てるのは私だけじゃないんですよ?」

 

 

 冗談にプンスカと怒る彼女に軽く謝罪してから、これからの事を聞いみるも他にも人がいるらしい。と言ってもあの時に言っていた彼女達だろう。

 歩き始めて行くフブキに着いて行き、少し離れた所に見覚えのある三人の顔が見える。

 

 

「お、やっと来たでな〜。やっほー龍成君?であってるよね?」

 

 

「あぁ、にしても俺が一番最後だったか」

 

 

「待ってたよ〜。お〜それって拳闘士?龍成君だとやっぱり似合ってるねぇ、ボクが想像してた通りだ」

 

 

「おつかれー!揃ったみたいだし、早速始めちゃう?」

 

 

「そうだね!あっちの方に『始まりの森』って書いてあった看板があるから、そこ行こう!」

 

 

 ゲーマーズ部の全員が既に集合していたらしく、フブキが俺を連れて来たことに気付くと手を振ってくれた。

 軽く手を振り返しながら輪に混ざった所で、早速目的の地に向かう。

 

 その前に彼女達の装備を確認してみると、フブキは背に掛けてある等身程の太刀を扱う「太刀職」で、ミオは片手に盾ともう片方に剣を扱う「剣士」。ころねは…可愛げのある女性が扱うにしても少し違和感のある「大剣」だ。おかゆは器用さと素早さが問われる「双剣」を扱うようだ。

 

 ふむふむと、それぞれが扱う武器を眺めていると同時に一つの思いが常に引っ掛かっていた。

 当の本人達はもう慣れている…のかは分からないが呆気からんとしている様子に、逆にそわそわとしてしまう。

 

 

(……すっげぇ違和感!)

 

 

 だがその時、よく皆の様子を一番に気にかけているミオが、俺の様子を見て話し掛けてくる。

 

 

「どうしたの龍成君?なんか落ち着きないように見えるんだけど、何かあった?」

 

 

「あ、いや…フブキを見た時から思ってたんだけど、皆に何時もあった耳と尻尾がないと違和感が凄いなって」

 

 

「あ〜やっぱそうだよね〜、ボク達も最初は違和感あったなぁ。なんせ獣人特有でチャームポイントとも言える可愛い耳と尻尾が無くなって、ただの女の子になっちゃったもんね〜」

 

 

「このゲーム、キャラクターは自分がモデルにはなるんだけど、人間での容姿しか反映されないみたい」

 

 

「こぉねはそれでも可愛いと思ってるよ?無かったら無かったで新鮮だし!」

 

 

 そう、フブキに会った時からなのだが何時も見慣れている耳と尻尾がない。

 けど、ころねの言う通りまた良い意味で印象は変わる。でも違和感があるという変な蟠りがうざい。

 

 

「あっ、それより早速来ましたよモンスターが!序盤で定番のこのモンスターが!」

 

 

 それはそれとして、はじまりの森と書かれていた看板の先を通って木々の間を移動していると、フブキが興奮した様子で知らせてくる。

 この手のゲームでの序盤は決まってこれなのだろう。

 

 水色でゼリー状の体を跳ねさせるモンスター、スライムが行く手を阻んできた。

 一匹だけではなくその奥から何体も連れて来ている。表情はなくともその体をプルプルと揺らしているのを見るに、恐らくは威嚇しているのだろう。

 

 しかし、そんな様子を見た彼女達には逆効果であった。

 

 

「うわぁ〜可愛い!」

 

 

「逆に倒し辛いまであるね…」

 

 

「心痛めそう」

 

 

「よーし!それじゃあ早速レベル上げといきますか!」

 

 

「ぉらよ〜!!」

 

 

 

 ────バゴォオオオオオン!!

 

 

 

 逆効果と言ったが訂正しとく。そんなことなかったわ。

 戯れる雰囲気でもなかったので戦うとは分かっていたのだが、ころねが振り下ろした大剣の一撃が強過ぎて、多くの犠牲になったスライムについ同情してしまう。

 掛け声は緩いのになんだあの威力。地面割れたぞ。

 

 

「うわぁ…いきなり容赦ない」

 

 

「そう言う龍成君も思いっきり殴ってるけど」

 

 

 そんなころねの様子に引き攣ってしまうが、その近くにいたミオも俺の行動に少し引き攣っていた。

 俺はその場から動いてないがスライムが跳んで来るから殴ってるだけ。それに俺の役職上、殴る蹴る以外の攻撃方法が無いわけで…そんな顔されると遣る瀬無いんですけど…。

 

 

「よっ、ほっ!うーん…ヴィランと戦ってるから物凄く生温く感じるね〜」

 

 

「確かにそうだけどここはゲームだし、今はウチ達は初心者だからね。ゆっくりやって行こう」

 

 

「スキルとかいっちょ使ってみますか!まだ一つしかないですけどいきますよー!白上の太刀技!」

 

 

 おかゆの言う通り、俺達は戦いに慣れているから序盤の戦闘面は欠伸が死ぬ程出るだろう。

 でも後々どんな風になっていくかは分からない、進めば進む程ハードになっていく訳だが、それをどうやって攻略していくかを試行錯誤するのもゲームの良さだろう。

 もしかしたらその中で現実でも役立つかもしれない方法があるかもしれない。

 

 そうなことを考えていると、フブキはスキルを試し始めていた。

 役職にはそれぞれの固有スキルが備わっており、その役職でしか扱えないスキルが多々存在する。

 

 

「『抜刀十字斬り』!!」

 

 

「おぉー!すっご!かっこいい!こぉねもやってみよ〜!」

 

 

 太刀の扱い方にとても手慣れていると思うくらいに、流れるように等身大の太刀を素早く鞘にしまって抜刀の構えを取ると、大量のスライムが迫って来るタイミングを見計らって十字型に切り裂いた。

 

 それを間近で見ていたころねは興奮して、真似をするようにスキルを使いだした。

 

 

「いくよ〜!『牙天岩砕き』!!」

 

 

 初撃の時に見せた威力とは程遠く、叩き付けた大剣は地面を大きく割って見せた。前方に広範囲に及んで、複数のスライムを巻き込みながら衝撃波を飛ばして行く。

 

 

「俺もやってみるか…『二連脚撃』!!」

 

 

 何だか面白そうだったので俺もやってみることにする。

 スキル名を口にして構えると、頭の中でその技の詳細が入ってくる。

 自然と動き出して流れるように初めに風を切る程の鋭い突き蹴り、その次に広範囲の回し蹴りを放った。威力はころねまで届かなくとも使い回し易いだろう。

 

 

「わぁ……凄いねぇ。大暴れ過ぎてここら辺が更地になりそう」

 

 

「これ大丈夫かな…?初心者のやる動きじゃないと思うんだけど…強過ぎて不正とか疑われない?」

 

 

「それはないんじゃないかな〜。確かに元々ボク達は戦いに慣れてる集団だけど、威力云々は取り敢えず、戦闘のセンスがあるってだけで片付けられると思うよ」

 

 

「なら大丈夫…なのかな?」

 

 

 三人の暴れ具合にミオは段々と変な不安に悩み始めていた。おかゆは感嘆のようなことを言いながら、ミオの中にある不安の種を否定する。

 

 確かに戦いに慣れている者の集まりだが、傍から見ればスライム相手に過剰攻撃してる変な奴らとして見られるだけで済むだろう。

 納得出来るようで出来ないような気がするが、これ以上気にしても仕方ないので暴れ進んでいる三人にそのまま着いて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と奥まで来たけど、この先ってボスとか存在する?」

 

 

「いると思いますけどねぇ、実際に探索して回るってなると大変だけど新鮮で楽しいですね!そう言えば皆、レベルの方はどんな感じ?白上はもう八までいったよ!」

 

 

「俺は言うてまだ六だな。やっぱり拳が武器だと一体ずつ対応しないといけない所為か、レベル上げの効率は少し悪いかな」

 

 

「こぉねはもう九までいったでな〜。大剣だと範囲攻撃がある上に広いから一気に片付けられるの凄い楽〜!」

 

 

「ウチは五だなー、フブキところねと龍成君が暴れてたからあまり戦えてなかったんだよね…」

 

 

「ボクもミオちゃんと同じ〜。行く道行く道、仕留め損ねたのしか倒してないよぉ〜!」

 

 

 道中モンスターを倒しながら突き進んでいたのだが、ふとミオが思い出したようにボスの存在について口にする。

 入口から大分進んではいるとは思うのだが、フブキの言う通り実際に探すとなると時間が掛かるのだろう。

 

 それはそうと、今のレベルの状態がどうなっているのかと言う話し合いになった。初手から暴れ散らかしていたフブキところねの二人は既にレベルが二桁に近付いていた。

 

 かく言う俺も二人に続いていたのだが…拳闘士だと一対多より一対一の方がメインな為か、ころねとフブキのような範囲攻撃は無い。

 スキルとかならあるかもしれないが、暫くは地道にやっていくしかない。

 

 

「ん?何だここ、急にだだっ広い所に出たな」

 

 

「その割にはモンスターの一匹も見当たりませんねぇ。変だなぁ」

 

 

「逆にちょっと不気味なまであるよね…」

 

 

 彼女達とそんな話をしながら進み続けていると、草木の生えていない開けた所に出た。

 見渡す限りフブキの言う通りモンスターの姿が全くないし、出てくる気配も皆無だった。何かありそうで何も無いそんな空間に、少しばかり不気味に思うのも仕方ないだろう。そんなミオの言葉に皆が頷いていた。

 

 

「どうやらこの先は行けなさそうだな、引き返すか?」

 

 

「そつだね〜、何も無いならここにいる意味もないし。戻ろっか」

 

 変だなと思いながらも足は止めずに進んでたら、先を遮るように巨大な岩壁が塞いでいた。

 多分これは…これ以上進めないと言われてるようなものだろう。言わばこのはじまりの森の端っこ辺りなのかもしれない。

 特に目星いものも無かったので、おかゆが戻ろうかと提案した時だった。

 

 

「ねぇ、なんか揺れてない?」

 

 

「ウチもそれ思った……て言うか、段々強くなってってない…?」

 

 

「あの……これって、もしかして…」

 

 

 不意にころねが地面が振動する感覚に頭を傾げた。それに続いてミオが賛同すると同時に俺も気が付く。

 確かに揺れている。地震か何かだと思っていたのだが次第に揺れは大きくなっていくことに、フブキは何かに気付いたようだ。

 

 その直後、この揺れの原因が明かになる。

 

 

 

 

 

「ガァアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

「うわぁあああああっ!!やっぱり地面から出て来たぁあっ!?」

 

 

「うわすっげ」

 

 

「リアクションの差っ!」

 

 

 唐突に地面が割れてモンスターが飛び出して来た。

 フブキはホラゲーのような反応をするが、対して俺の反応の温度差にミオが堪らずツッコミを挟んだ。

 

 その飛び出して来たやつは、黒尽くめの巨大な図体に四足と、背には二本の翼脚、顔付きは竜のようにも見えるが獅子のような獣の面影もあった。

 見た目が見た目な為、その場にいる全員はとんでもないモンスターだと瞬時に察する。

 

 

「出方がもうイ〇ルジョーじゃん!」

 

 

「ど、どうしよう!戦う!?」

 

 

「待って!その前にあのモンスターのレベルは…?」

 

 

 フブキには見覚えがあるのか、何か嫌悪感のような叫びを上げる。

 急な介入者にころねは慌てて大剣を手に持って戦闘態勢に入るが、フブキがそれを一旦制して目を細めてモンスターを見つめだした。

 

 俺もそれに釣られて彼女と同じようにモンスターを見つめていると、不意に視界の右側にメッセージウィンドが現れる。

 

 

 

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【深山幽谷の幻竜獣『フォレアデス』】Lv.50

 

[詳細]はじまりの森の人跡未踏の地に生息するという言い伝えが存在していた。しかし、誰もそのモンスターの姿を目にしていない為、幻のモンスターと認知されていた。

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「───よし!逃げましょう!!

 

 

「うん、これは無理だね〜」

 

 

「流石にレベル差があり過ぎだね」

 

 

「装備もスキルも弱いしな」

 

 

「逃げろ〜!」

 

 

 全員同じものが見えたのか、迷うことなく即決だった。

 これには否定する要素はないし無理だと、装備もスキルも初期な上に前提としてレベル差だ。

 

 勝てないのは目に見えて分かる為、皆の意見は一致して逃亡を図り、来た道を戻ろうと走り出した時、モンスターはその巨体からは想像出来ない程の跳躍力をして俺達の頭上を越えて先回りし、逃げ道を塞いだ。

 

 どうやら簡単には逃がしてくれなさそうだな。

 

 

「ええっ!?はっや!!」

 

 

「…仕方ねぇ、やるしかなさそうだな」

 

 

「そうみたいだね…」

 

 

「勝てるかなぁ〜…」

 

 

 後ろは岩壁、前は巨大モンスター、正に背水の陣。

 装備とスキルは初期のまま、レベル差も絶望的である。半ば諦めムードではあるが各々武器を手に持って戦闘態勢へと移る。

 

 

「動きをよく見て、観察しながらパターンを覚えるしかない。声を掛け合って状況を鮮明に共有していこう。攻撃する際は慎重にな、喰らったら一発で死ぬと思う!」

 

 

『了解!』

 

 

 ゲームとは言え痛覚はあるのかは分からないが、兎に角一発でも受ければ俺達は死ぬのは確実だ。ゲームだから決まった攻撃しかしてこないだろうし、情報共有し合って隙を見て攻撃するしかない。

 俺の言葉に皆は強く頷いてからそれぞれ散らばる。そしてモンスターは大きく咆哮して戦闘の火蓋が切られた。

 

 それから、モンスターの挙動を細かく注視して隙を突いてはいるが…当然だけど体力ゲージは一向に減ってる気がしない。何だこの鬼畜は。

 

 

「こんないきなりハードコアなボス戦は、アニメでしか見たことないですよっ!」

 

 

「地道な道のりだけど…!ちゃんと効いてるみたい!」

 

 

「ほんっとにちょっとずつだね!?一ミリも削れてるのか分からないんだけど!」

 

 

「あっ!?っっぶね!!このジョブ失敗だったか!?」

 

 

 マジで危なかった…薙ぎ払ってきた翼脚を、半身を反らして躱したけど紙一重でスレスレだった。

 拳闘士を選んだのは失敗だったかもしれない、リアルでは戦い方に馴染みがあるとはいえここはゲームだ。

 一度でも喰らえば終わり、そして状況は絶望的。

 

 

「四人でも流石にレベル差があると無謀だったか…仕方ねぇ、これは一旦諦めた方がいいな。皆、俺が奴を引き付けるからその隙に離れてくれ!」

 

 

「でもそれじゃあ!龍成君が…!」

 

 

「大丈夫!俺に考えがある!」

 

 

 分かってはいるが、やはり無謀なことは無理して行うことじゃない。

 でも所詮はゲーム、死んだら初期リスに戻されるだろうし失敗したら仕方ないで済む。

 引き留めようとしたフブキを説得して、モンスターへと走り出す。

 

 

 

「グァアアアアアッ!!」

 

 

 

「…ここだっ!」

 

 

 左右にステップするように走りながら移動して奴の攻撃を誘えば、翼脚で大きな薙ぎ払いをして来る。ここまでは想定内だ。

 それを直前で跳んで躱してから体勢を整える。俺が攻撃する場所は()だ。

 

 そしてモンスターの目線が宙に浮いている俺に集中した時、身体を直立に伸ばすことで空気抵抗を最小限にしながら落下しつつ高速で前宙を繰り返し、勢いを付けまくって奴の目に踵落としをする。

 

 グシャッと嫌な音と感触がしたが、その直後に奴は大きく悲鳴を上げながら目を抑えて悶えていた。

 今まで見たことない反応だったから、どうやら相当効いてるのだろう。想定通りにいった作戦に少し満足しながら、木陰から見守っているフブキ達に向かって急いで戻って行く。

 

 

 

「グルァアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

「えぇ!?復帰はやっ!?──うわぁっ!!」

 

 

『龍成君っ!!』

 

 

 だが、少し安堵した直ぐだった。咆哮をした際に後ろを振り向いて見れば、あの悶絶からもう復活していたことに驚きを隠せなかった。

 レベル差での威力が足りなかったのかは知らないが、どの道もっと不味い状況に陥ってしまった。

 

 奴が大跳躍して、踏み潰さんと俺に向かって落下して来る。

 けど何とか当たらずには済んだものの、奴が着地した際に地面で割れたことで足元が縺れ、発生した衝撃波と共に吹き飛ばされる。

 体勢を整える暇はなく、ろくに受け身が取れずに地面を痛々しく転がって行ってしまう。

 

 

「龍成君っ!!」

 

 

「ころさん待って!行っちゃダメ!」

 

 

「なんで!?このままだと龍成君がっ!」

 

 

「でも…!龍成君が白上達に逃げる隙を…!」

 

 

「あっ…うぅ、どうしよう…!どうしたらっ!」

 

 

 フブキ達の叫び声が聞こえたが、既に目の前まで迫って来たモンスターに打つ手を考える間もない。これは…失敗したと痛感した。

 

 て言うかちゃんと痛ぇ…まじかよ…。

 

 

(あ〜くそっ…しくったなぁ、こりゃあ避けれねぇな…)

 

 

 せめてフブキ達だけでも逃げれるように、さっさと行けと手信号で伝え、モンスターの大口が視界いっぱいの光景を見て、万事休すかと諦念しながらその場から動くのを止め、目を閉じた。

 

 

 

 

 






──レベル上げをしてた時

龍(ふと思ったけど、この拳闘士って……かめ〇め波とか波〇拳みたいなのって出来ねぇのかな?丁度スライムも大量にいるし、今誰も見てないし、試してみるか)

龍「かぁ…めぇ…」スッ

こ「何してんの?龍成君。」

龍「仙人っ!」ドゴォ

お「わぁ、スライムが弾け飛んだ〜」

フ「龍成君もやっぱ男の子だねぇ〜」

ミ「男の子って皆やるよね〜」

普通にやりたいことバレていた龍成だった。



全メンバーが登場したら番外編的なのでも書こうかなと思ってます。それはそれとして、ちょっと今後の物語などちゃんと練ろうかなと思っています。それなりに大まかなもの思い付いてはいるものの、やっぱ細かい描写がいまいちなんすよね。ま、頑張っていきます。

誤字・脱字などがあれば報告してくれると助かります。

では〜。
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