少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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ども、最近マイクラに再熱した黒いラドンです。
共にゲームする仲間の存在がいないので、一人でする作業ってなんか虚しいね。でも楽しい。
まぁんなことはいいとして、今回は0期生の絡み…絡み?じゃないけど、登場しますん。

じゃ、どうぞ〜。


十八話 『特殊異能精鋭隊』

 

 

 

 

 

 もう少しで八月を迎えそうだが、未だ炎天は容赦を知らない。

 日に日に真夏の暑さが増してきている気がする今日この頃、ひんやり冷たいアイスが食いてぇなと思っていた所、何時しか忘れていたこの煌星学園の長である谷郷さんからお呼び出しを受けた。

 

 内容は来てから話すとのこと。少しだが久しぶりに連絡を寄越したと思えば、いきなり「今から来て欲しい」と。

 

 ⋯寂しん坊かよ?

 

 取り敢えず、学園長直々のお呼びだし今は昼休み中なので向かうしかない。

 

 

「お呼びで?谷郷学園長さん」

 

 

「急に呼んでしまって申し訳ないね。少し急ぎで伝えたかった内容だから、直接君に話さなくてはと思って。あっ、これちょっとしたお詫び菓子だよ。受け取っておくれ」

 

 

「頂きます」

 

 

 学園長室に向かえば、谷郷さんは相変わらずの柔和な様子で対応をしてくれた。

 そして気前良く、急用で訪問させた俺に詫び菓子を寄越してくれるので遠慮なく貰う。

 

 

「ははっ、甘い物が好きなのは認知していたがこうも食いつくとは、意外に可愛らしい所があるね」

 

 

「このまま吐いてやりましょうか?」

 

 

「冗談も言えるようになれたのなら良かった」

 

 

 個包装を取って、一口サイズのチョコを口に入れながら普段言わないようなことを言えば、谷郷さんは何故か嬉しそうに口角を吊り上げて俺を見据えていた。

 

 そんな短い遣り取りをした後、チョコを食べ終えてから俺は本題に持ち出す。

 

 

「それで?俺を呼び出したのは一体何用で。また変な契約ですか?」

 

 

「いいや、今回は折り入ってお願いがあって呼んだんだ。まぁ、最終的に決めるのは君次第なのだけどね」

 

 

「はぁ⋯で、内容は?」

 

 

「単刀直入に言うと、我々が組織化している『特殊異能精鋭隊』の″特別枠″として君に参加してほしいんだ」

 

 

(特別枠⋯?しかも精鋭隊って、あやめが前に言ってたあれのことか?*1

 

 

 嘗てあやめと戦った際に、話の流れで聞いた精鋭隊と言う言葉。

 正称は谷郷さんが今言った『特殊異能精鋭隊』で、しかもその特別枠に入ってほしいか…参加するとなると普通とは違う扱われ方をされるだろうな。

 

 

「それって俺が入らなきゃ困る感じですか?…と言うか、先ず精鋭隊についてまだよく分かっていないんですが」

 

 

「⋯そうだね。正直、これは政府が決めたようなものでね。軽く説明すると…先ず特殊異能精鋭隊とは、その名の通り異能を持ち合わせた集団であるが、今この学園には相応な人数が揃っていない。ので、今は学年や異能の有無関係なく何個か形成したチームでヴィラン対処をしている」

 

「そしてヴィランの対処可能なのは彼女達と軍事力のある組織だけ。今の時代は様々な種族が共存しているが、個々人が対処出来る程ヴィランも甘くはないし、訓練もされてなければ尚更だ。例え人間よりも強い獣人や魔族に亜人だろうと。それに軍隊も簡単には動いてはくれない」

 

 

 簡潔的に纏めれば切羽詰まり掛けてるってか。確かに世間は種族によってはヴィランに対抗出来る人も少なくはないと思うが、簡単にはいかない。

 ド素人が変に交戦したとしても、余計な被害を生み出す可能性だって高いしな。

 

 それは仕方ないとして、他にも軍事力を持つ組織がいるのなら何で協力をしようとしないのが謎だ。

 率直に思ったけど、連携が出来たら今より効率は良さそうに感じるのだが…。

 

 

「言ってしまえば、ヴィランに関することは全て私達に丸投げが現状さ」

 

 

「───っ…」

 

 

 丸投げ…か。

 

 ふざけているのか政府は?ヴィラン対策として企てたこの学園は、ただでさえ人数が極端だと言うのに一任とか…それにそうとなれば、大きな失敗をすれば信頼のガタ落ちは当然、余計な責任まで背負わされるかもしれない。

 

 思わず顔を顰めたそんな俺を、谷郷さんは変わらず柔らかい口調で心情を察していた。

 

 

「君の思う気持ちは解る。もしヴィランの凄惨な被害が出れば私達に責任がある。幸運にもこれまでは最低限の被害で済んでいた。とは言えそれが毎回続くとは限らない時もある。だが私達にだって限度はあるし、彼女達にも無理はさせられない。君もね」

 

「だが…それでも君はどうだ?無尽蔵の体力に、膨大な力、戦闘の知識力、対応力、技量。どれを取っても比類なき有望な人材とも言える。正に″戦いの天才″と呼べるものだ。君の実力が世間に伝われば、少しは安心出来そうだね」

 

 

「止めてくれ、俺はそんなモノを称賛されても全く嬉しくない。下らない名声や名誉の為に俺は戦ってるんじゃない、守る為だ」

 

 

 谷郷さんは心の底から戦闘技術を褒めてくれるが、俺はそれに対して喜びの感情は湧くことはなかった。

 

 俺が力を付けようと思ったのは…確かに最初こそ戦いは苦手だったけど、戦わざるを得ない時が来ると知ってからは、後ろ向きで無力なままの自分じゃ駄目だと反省して強くなろうと思ったんだ。

 

 …まぁ、兄ちゃんに無理矢理付き合わされて強くなったって言うのが正しいんだけど。

 でもその気持ちは本当にあったからこそここまで来れた。この力は人の為でもあり己の為でもある。

 

 

「…話が脱線してしまったね。それで、君の答えを聞いてもいいかい?」

 

 

「考えるまでもないですよ。どの道、俺が協力しなきゃならないなら選択肢は一つしかないですし」

 

 

「それが聞ければ大丈夫そうだね。では詳しい話はまた放課後にしよう」

 

 

 入っても特に問題は無いだろう。所属するにしてもプライベートまでは干渉しない筈だろうし、余程の緊急じゃなきゃ直接連絡してこないと思う。

 それにヴィランを積極的に殲滅する活動には出来るだけ協力したい。

 

 自分の手の届く内には、色んな人の命を救いたいしな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後は特に変わったことはなく、授業中はひたすら勉学にしがみついていた。

 未だに分からない所は多くて、追い付くにも苦労するし何とかして理解はするけど、これはこれで中々キツい。

 

 他の人は問題によっては平然と答えを導き出せているし、そう出ない時はあれど俺の場合はその差が酷い。

 簡単であろう問題すら解くのに時間が掛かる。(一部同じような人達はいるが。*2

 

 戦闘の特訓とは全く違う方向性で知識を絞らなければならないのが今の俺には苦しい。

 自業自得と言われれば仕方ないけど、俺は勉強しなかったんじゃない。出来なかったのが理由だ…なんて言い訳にしかならないよなぁ。

 

 

「あ、りゅう君」

 

 

「ん?どうしたパトラ」

 

 

「その…よかったら途中まで一緒に帰らない?」

 

 

 一人でそう悩みながら小さく溜息を吐くと、パトラが何処かもじもじとしながら気まずそうにしていたが、その雰囲気を飛ばすように無理矢理何時もの感じで迫って来た。

 

 今は放課後で皆はそれぞれ帰って行った。遊びに行く人もいれば用事で帰る人、まだ学園に残る人もいる。

 けど俺は昼に谷郷さんとの約束事がある為、少し罪悪感を感じながら断った。

 

 

「あ〜⋯悪い、この後大事な予定があってな⋯学園長との話があるんだ」

 

 

「あ、そうなんだ。分かった!⋯でも学園長からって珍しいね?」

 

 

「精鋭隊に関してのことだ。もしかすると、その内広まるかもな。俺もそろそろ向かわないとだから、またな」

 

 

「うん、ばいばい!」

 

 

 軽く内容を伝えると納得した様子で教室から出て行く。手を振りながら帰って行く彼女に軽く手を振り返して見送った。

 のはいいんだが、少し…少しだけ寂しい気持ちが芽生えたことに、ちょっと分からなかった。

 

 それはいいとして、俺もさっさと谷郷さんに会いに行く。

 だがその前に精鋭隊の専用部屋があってそこに向かいたいが、場所が分からないので永先生が案内すると聞いて教務室に向かうと、その教務室の前で永先生じゃない別の人がいた。

 

 その人は俺を見付けると、途端に笑顔になって俺の方へ寄って来る。

 

 

「あ、来ましたか紫黒君!」

 

 

「確か…のどか先生、でしたっけ?」

 

 

 名前は確かそうだった筈。この人と会ったのはこれで二回目になるのだが、初めて会ったのは姫森が攫われた事件があって、それが解決して後に合流した時だった。

 

 

「そう言えばあの時以来ですもんね、こうして話すのは。忘れちゃうのも仕方ないですし、一応もう一回教えときますね。一年担当の春風 のどかです。改めてよろしくお願いしますね!紫黒君のことは永さんから聞いてますよ!」

 

 

「どうも、改めてお願いします。ところで永先生は?」

 

 

「あー…それがですね」

 

 

 どうやら永先生は他の雑務が沢山残ってる所為で、その代わりにのどか先生が案内するとのこと。

 どうしたのだろうと聞いてみると、のどか先生はめっちゃ目が泳いで言葉に詰まっていた。

 

 やたら言いずらそうにしてたので、教務室の扉を小さく開けてチラッと永先生の様子を見たのだが…───

 

 

 

 

 

「お仕事楽しいぃ〜!!ぅうぃいいぃいぃい〜!!↑↑」

 

 

 

 

 

「土曜日も日曜日も仕事仕事ぉおお〜!!休みなんて要らないですねぇええええぇえぇ〜!!」

 

 

 

 

 

 

「うぃいいぃっっっはああぁあぁあぁ〜!!↑↑」

 

 

 

 

 

 ───俺はそっとドアを閉めた。

 

 何も見なかったことにしたいが、あのままだと本当に永先生が可笑しくなってしまう…いやもう手遅れかもしれないけど。

 後で気を別けてあげよう、そうしよう。

 

 そう決意をしてからのどか先生へと向くと、彼女は苦笑いしながら俺の言いたいことが分かっていたようだった。

 しかし敢えて何も言わず、早速向かうことにした。

 

 

「それにしても紫黒君って本当に凄い人なんですね!色んな人から聞いてますよ。あやめさんと勝負して勝ったり、ねねさん達と突然変異のヴィランを倒したり、前はルーナさんのことでも助かりましたし。凄く頼りになりますよ!」

 

 

「俺は別にそんな褒められるようなことは…戦いが少し得意なだけの変な奴ですよ」

 

 

 谷郷さんに会いに行くまで暫くのどか先生と会話していたが、唐突にそんなことを言ってきた。

 

 彼女の言う通り、いきなり来た編入生にしては濃すぎる日々を過ごしているのは誰もが思うだろう。

 あやめには圧勝はしたがあれでも彼女はかなり強い部類だし、自我持ちヴィランは前代未聞。他には事件に巻き込まれたりしたが、短い頻度で出会したのでそれを考えれば…結構色々とあったな。

 でも俺からすれば、事件とかは俺一人で解決した訳じゃないので、別に大したことしてたとは思っていない。

 

 その旨を自嘲を含めて否定すると、彼女はあからさまに悲しげな表情になった。

 

 

「…紫黒君はあまり自分を大したことないと思ってるかもしれませんが、私達は君がここに来てくれて良かったって思ってますよ」

 

「紫黒君が思ってる程、周りの人達は君の活躍には凄いって思ってるんですよ!その身一つで突然変異のヴィランと対等って今まで無かったですし、リスクも大き過ぎます。私もそのヴィランの詳しいことは聞きました。実際なら…犠牲者が出ても不思議じゃありません」

 

 

 …確かにこの人の言う通りだったかもしれない。

 仮に俺があの場にいなかったら、俺があの時に赴かずにパトラ達だけだったら…貢献は出来ても最悪は免れない結果になっていたかもしれない。

 

 あの時のヴィランは異質だった。

 それはこの身体で確りと体感した。あの異常さは例えあやめがいたとしても最悪なケースも有り得ていたかもしれない。

 

 

「でも紫黒君がいたお陰もあって最悪は免れた…その事実だけでも歴史になるものなんですよ?誇って下さい。紫黒君は自分を小さく見過ぎなんです。自分の中でそうでないって思ってても、紫黒君の活躍で大勢の命が救われてるのは確かなんですから」

 

 

 

 

 

『正義のヒーローみたいに、助けを求めている声が聞こえたら直ぐに助ける。きっと、お前はそういう奴になれる』

 

 

 

 

 

 のどか先生の言葉で、俺の記憶の中にいる兄が嘗て伝えてくれた言葉が蘇った。

 

 あの頃からだったな…兄ちゃんと約束を交わしたのは。戦闘は苦手だけど守る為に戦うと誓った。

 でも俺はヒーローになるつもりは毛頭ないし、でも色んな人を救える者になろうと思ったんだ。

 そしてそれが何時しか俺の中で、力を持つ者が守る為に戦うのが当然だと思うようになっていのかもしれない。

 

 でものどか先生の話で、少し肩の荷が下りた気がした。

 

 

「……そう…ですね。ありがとうございます。ちょっと…安心しました」

 

 

「いえいえ、紫黒君は良く頑張ってますから!と…そろそろ着きますよ!」

 

 

 すると彼女は何処か上機嫌になると、同時に会話の区切りがついた所で丁度よく目的の場所に着いた。

 

 彼女がノックしてから入って行き、俺もそれに続く。

 

 

「おぉ、来たかね。待っていたよ」

 

 

「やっほ〜!久しぶりだね!」

 

 

 中には谷郷さんと何故かすいせいがいた。

 彼女も精鋭隊の内容に関係あるのかと思い、気さく良く声を掛けてくれる変わらず元気な彼女に軽く口角が上がる。

 

 

「久しぶりだな、すいせい。元気なのは変わらずだな。最近テレビ出演したの見掛けたし、歌も良かったよ」

 

 

「ありがと!それじゃあ何時ものいくよ?すいちゃんは〜?」

 

 

「え?ぁ…きょ、今日も───」

 

 

「今日も小さ〜い!!」

 

 

 すいせい特有の挨拶のルーティンを不意に促されたが、俺はこの行為を何時もされることを忘れてしまっていた。

 焦ってしまって言葉が(つっか)え掛けたが大事な部分を言おうとした瞬間、何処からともなく現れたみこが被せて来た。

 

 

「何が小さいって…?あぁん?言ってみなみこち」

 

 

いだだだだだっ!?いつもの冗談じゃん!!なんで今回に限ってアームロックするんだよっ!!折れるっ!折れるにぇっ!!」

 

 

 暫しの沈黙後、すいせいはニッコリとしながらみこに近付くと一瞬の間にアームロックを決めた。

 そして可愛らしい微笑みから一転、般若のような表情で脅していた。

 

 小さいと言ったそこに、一体何の意味があったのかは知らないけど、どうやらすいせいの触れてはいけない部分なのかもしれない。

 

 

「助゛け゛て゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!」

 

 

「す、すいせいさん!落ち着いて下さい…!あ、あ〜う…紫黒君、何とかお願いします!」

 

 

「そこで俺に投げます?」

 

 

 のどか先生が何とか宥めようとするのが、今のすいせいは聞く耳を持たないようで困ってしまっていた。

 だが彼女ではどうにもならず、匙を投げるように無理矢理代わって頼まれてしまい、俺も少し参ったが一つ案が浮かんだので実行してみる。

 

 

「ぇ〜…す、すいちゃんは今日も可愛いー…!」

 

 

「ありがとう〜!君はバカみこちと違っていい子だね〜!」

 

 

「ぁうぇ…?すげー変わりよう…」

 

 

「み、みこさん…大丈夫ですか?」

 

 

 一体どんな情緒をしているのか、すいせいを褒めてみれば即座にアームロックを止めて俺の頭を撫でて来た。

 いや、何で撫でるの…?

 

 

「はぁ…はぁ…お、折れるかと思ったにぇ…」

 

 

「そろそろ本題に入ってもいいかい?」

 

 

「あっははーごめんヤゴー、じゃあ早速始めようか」

 

 

 一連の流れに区切りを見出した谷郷さんが言葉を挟むと、すいせいは短く笑いながら再び定位置に戻って行く。

 未だに悶えているみこはのどか先生によって介抱されているが、気にしている場合じゃないのか谷郷さんは構わず話し始めた。

 

 

「先ずは精鋭隊の隊長となる彼女と他二人を紹介するから、こっちに来てくれるかい」

 

 

(精鋭隊の隊長……確か、名前は忘れたけどシオンから聞いたことがあったな)

 

 

 前に屋上でシオンと初めて出会った時に、会話の中でそんな内容があったことを思い出す。

 しかし肝心な名を忘れてしまったのが、どっちにしろ知るなら丁度いい。

 

 部屋の奥の方へと向かい、谷郷さんがドアをノックして返事が来るのを確認してから入ると、中には三人の女性が机に向かって何か作業をしていたようだった。

 

 

「もう約束の時間でしたか。すいません…まだ作業が終わってなくって…」

 

 

「書類が多いよ〜…」

 

 

「ずっと座りっぱなしで体が痛いね…」

 

 

「こちらこそ、作業中なのに訪問して申し訳ないね。それで事前に伝えた通り、彼を連れて来たよ」

 

 

 谷郷さんはそう言いながら後ろにいた俺に視線を送る。

 その意図に察した俺が隣に立つと、真っ先に所々に機械のような身体をした人が立ち上がり、手を上げながら楽しそうに振る舞う。

 

 

「あ、噂の新人君だ!はろーぼー!″ロボ子″だよ~!よろしくね〜!」

 

 

「こんあずき~!私は″AZKi″って言うの、よろしくね!」

 

 

 始めに挨拶した人は桃色のパーカーのみでロボ子と言っていた。

 ワインレッドのグラデーション長髪に琥珀色の双眸、見た目は人間とさほど変わらないが両腕と内股から両足は機械になっていた。

 名前から連想出来る通り、彼女は機械人だ。

 

 もう一人はアズキと言う少女。

 同じくロングヘアで内側は 色で外と内で別れていて髪飾りを着けていた。薄紫の円なら瞳に白系を基調にしたワンピース風な服装を身に纏い、ロボ子とは違って何処かおっとりとした雰囲気があった。

 

 

「初めまして、私は″ときの そら″。生徒会の会長と精鋭隊の隊長を担当しています。君のことはある程度聞いてるよ。よろしくね」

 

 

 そして最後に、この学園の円滑を担う重要人。

 生徒会長と一団の隊長の二つの重い役割を一人で行っている彼女、ときの そらは茶色の横跳ねのあるロングストレートヘアに青い双眸。頭の左側には赤色のリボンと星の髪飾りを、右側にはダイヤ型のアクセサリーを着けていた。

 

 そんな彼女からは何か引き寄せられるカリスマ性がありつつも、その後ろには強い包容さが備わっているように感じる。

 そして小さくも統率者としての威厳があった。

 

 

「紫黒 龍成と言う、よろしく頼む」

 

 

「それじゃあ早速だけど⋯先ずはそうだなぁ、精鋭隊のことはどこまで知ってる?」

 

 

「谷郷さんからは、人数不足で異能の所持と学年の関係無くチームが作られていて、俺がその精鋭隊の特別枠とやらに入ることになった…今はそれくらいかな」

 

 

 改めて考えてみてもこの精鋭隊の現状やばいだろ。世界的存続問題に関わる事態だというのにこんなんでいいのかよ。

 

 そう心の中で思っていると怒りが募り始めて来たが、今はそこに気にしていても仕方がないので一旦片隅に置いておくことにする。

 ときのには要約して伝えると納得したように頷いた。

 

 

「なるほどね、大まかな部分は知ってるなら大体は大丈夫そうかな。そう、この学園は大きい役割に対して人数が著しく、多少の人手不足はあるんだけど、今は何とか問題は解決していけてる…でも最近、ヴィランの出現率は右肩上がりになってきているの」

 

「この一ヶ月で数は先月の倍になってて、現状を見てるとこれからも増えるかもしれないの。そこで、対策の一つとして君の力を貸して欲しいの」

 

 

 この一ヶ月…タイミング的に考えれば、俺がこの学園に編入してから頻繁に現れるようになったと言うこと。

 それだけでも溜息が絶えないのに、未だにヴィランは謎に包まれている。何か進展があったとしても、様々な形を保ちながら人々に害する存在で知性や理性は皆無、だが最近では自我持ちが現れた。

 

 短い頻度でこの増大さは素人目線でも異常なのは一目瞭然。そして今後も今よりも更に増える可能性も高い。

 そんな不安になる内容に頭を抱えながらも、ときのの協力要請に取り敢えず承諾して詳しく聞く。

 

 

「それは構わないが、一体何をすればいいんだ?」

 

 

「簡単に言うとチームのサポートとして手伝ってほしいの、それも″毎回″も」

 

 

「毎回か…ん?毎回?」

 

 

 全体のサポートとして協力するのはいいのだが、毎回と言うのははそのままの意味らしく、彼女は頷いて返した。

 

 

「そう。でもちゃんと君の意思を最優先していくつもりだよ。君も幾ら優れた子だとしても、無限は存在しない。だから君の意思と都合に合わせるから、決めた私達が言うのも変だけど…無理はしないでね」

 

 

「だったら問題無い。ヴィランは俺としても厄介だと思ってるし、早めに対処はしておきたい」

 

 

「その言葉を聞ければ頼もしいよ。精鋭隊のチームの振り分けはこんな風になってるから、一応目を通して貰えるかな?それと、精鋭隊の活動について話すと…」

 

 

 急増する被害、強くなっていく災厄。

 今は基本的に被害が起きてから赴いてから戦闘が多く、その繰り返しが続いて根本的な解決に至らない。

 

 じゃあどうするかと言うと、学園の屋上に″とある機械″を設置して今できる最大限の対策を施す。

 その機械というのはヴィランを探知するもので、所謂ヴィラン用のレーダー探知機の実施。ヴィランには特殊なエネルギーが放出されているらしく、それを元に探るようだ。

 

 元々の活動は出現した所を満遍なく調査するだけだったが、今後は反応を見つけ次第、その場所に向かって調査及び討伐をするのが追加方針となったそうだ。

 

 

「なるほどなぁ。出動したチームと一緒に行くのはあくまでも調査で、緊急出撃はまた別な感じか」

 

 

「そそ!そんな感じだから、一緒になった時はよろしくね!」

 

 

 ロボ子が相槌を打ちながら何処か嬉しそうにそう言ってくる。

 やはり人手が増えることは嬉しいのか、俺は微笑みながら彼女に頷いて返す。

 

 そして、ときのからはまだ話があったのか次の内容へ移る。

 

 

「それで、ここからが本題になるけど…いいかな?」

 

 

「まだ何かあるのか?」

 

 

「君の入隊する意思は聞いたけど、それだけではまだ確定にはいかないの。形式上、相応の実力があるかどうか…″戦闘試験″通して君の実力を改めて確認したいの」

 

 

「でも、前にあやめとの戦いで分かってたんじゃないのか?」

 

 

「それはそれ、だよ。あれはあやめちゃんとの私的な行いで、勝ったからと言ってそれだけで充分な理由にはならないの。それに、これから相手してもらうのは…あやめちゃんよりも強いよ?

 

 

 そう言うと彼女からは、同情を示さないような冷淡な雰囲気を放っていた。簡単にはそう行かない、と言うようなニュアンスが伝わる。

 そう一変した空気を余所に、ロボ子とアズキの二人は何故か遠い目をしていた。

 

 これからするであろう戦闘試験は、あやめの時の戦闘よりも更に難関と言うこと。

 そして鬼族の彼女より強いと言うことは、それ以上の格上の相手となる。

 

 

「その相手ってのは───」

 

 

「すいちゃんだよー!」

 

 

「っ!?」

 

 

 背後から突然現れた。タイミングを見計らっていたかのように飛び出して来た彼女に少し驚き、いつの間に傍まで近寄られていたのか気付かなかった。

 

 しかし、この一連の流れで俺は悟った。彼女は純粋な戦闘に於いて脅威的な存在であることを。

 今は気が引き締まっている所為で無意識的に気配には敏感になる方だ。

 

 実際に自我持ちヴィランと出会う前の奴は気配を遮断するのが上手くて、共に行動していたポルカ達は気付かなかったが、俺だけは気付けたのがいい例だ。

 だからすいせいの気配の殺し具合は、ぶっちゃけ人間でも異常と言っていい。

 

 

「すいせいと…?」

 

 

「すいちゃんは″こんなでも″!凄いんだにぇ。この学園の中で三番目くらいには強いんだよ!」

 

 

「一言余計だよみこち。まぁ取り敢えずそう言うこと!こう見えても私、結構強いんだよ?自慢じゃないけど、かなり前にヴィラン三体纏めて相手してたからね」

 

 

 それはそうと何故にすいせいなのか疑問に思い、ときのに疑問の眼差しを向けた所で後からやって来たみこが代わって答える。

 

 何処か皮肉を混ぜていたがすいせいの強さは本物らしく、猛者だらけのこの学園で三番目だと言う。

 更にはヴィランを三体も同時に一人で討伐したのも嘘ではないようだ。

 

 

「でも⋯本当にいいのか?」

 

 

「あっ、すいちゃんのこと甘く見てるなー?なら早く戦ってみようよ!大丈夫、君の実力に合わせて戦うから!」

 

 

「いや、そう言う問題じゃなく…」

 

 

「さぁ!戦場にれっつごー!」

 

 

「あ、すいちゃん待ってー!みこも見に行く!」

 

 

「私達も行こうか」

 

 

 俺は怪我をする懸念の意味で聞いていたのだが、すいせいは舐められてると思ったのか弁解する間もなく俺の手を引いて戦場に向かう。

 何を言っても無理そうだと察した俺は、そのまま連れて行かれることにした。

 

 その様子を見た他の者達も苦笑いを浮かべた後、二人に着いて行った。

 

 そうしてやって来た闘技場。

 ここに立つのは二回目ではなく、戦闘科目にて特訓と称して何度も足を踏み入れているのだ。どんなことをしているかと言うと、少し話が長くなるので割愛させてもらう。

 

 みこ達は観戦席へと移り、今この場には俺とときのとすいせいの三人だ。

 すいせいとはある程度距離を取って対面していて、その間にときのがいる。

 

 

「それじゃあ、戦闘試験においてルールを説明するよ。制限時間は十五分で、この戦闘は君の実力を確かめるのは言ったね。その目処の付け方としては、すいちゃんを倒すか降参させるか、十五分間耐え凌げるか。それで決まるよ」

 

 

「…なるほどな」

 

 

「内容はそんな難しくないでしょ?それじゃあルールも分かったことだし、早速始めようか!」

 

 

 ときのからルールを教わって納得していると、戦う気満々なすいせいはどっから出したのか分からないが、片手に等身大程の斧を持っていた。

 見たことないデザインなので、恐らく特注品なのかもしれない。

 

 彼女は何処か嬉々としているのように口角を吊り上げながら此方を見据えている。

 それに対して俺は両腕を脱力させて垂らし、肩幅程度に片脚を一歩後ろに引き、すいせいの行動を見切ろうと視線を外さない。

 

 

(斧か…見掛けによらず殺傷力の高い武器を扱うんだな。これがギャップと言うやつか。それはいいとして、すいせいはあやめよりも強いとときのは言っていた…だとすると″異能″は確実に持っているよな。それに…素の身体能力も侮れないな)

 

(それに異能が何なのか全く分からない。身体強化系か、干渉系か、超能力系か、はたまた人知を超えたものか…)

 

 

「それじゃあ審判は私がやるね。では……よーい!」

 

 

 互いに準備は万端と雰囲気で伝えるように無口になる。

 そしてそれを察したときのは、充分に俺たちから離れてから戦闘の火蓋を切る用意をする。

 

 その瞬間から場の空気は大きく変化する。

 息を忘れるような緊張感、不気味なぐらい静かな無音空間。これから起こることに誰もが目を離せない瞬間だ。

 不思議と神経が研ぎ澄まされ、相手の出方を注意深く伺う。

 

 すいせいがどんな戦い方なのか、どんな技を使うのか、どんな能力を持っているのか。

 

 今この世界で最も弱い種族と言われてる人間でありながら、どう頂点の近くに上り詰めたのか…。

 

 

 

 

 

 ───それはこの後に身をもって知ることになる。

 

 

 

 

 

始めっ!!

 

 

 

「────『黄道十二宮【アリエス】』」

 

 

 そらが戦端を開いた刹那。すいせいは何かを唱えたと思うと、瞬きしない内にその場から音も無く消滅し…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ドゴォッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍成は一秒足らずで場外の壁へと吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

*1
六話より

*2
??「わがった!……わがんない。」





まぁうん、長くなると思って区切りました。はい。
次は歌姫ことすいせいさんとの戦闘になります。すいコパスと言われてる彼女ですから、強くしておこうと思いました。
正直、戦闘描写は上手く書けるかは分からんけど、頑張って考えてきます。

では〜。
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