少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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ども、ハッピーニューYear。今年も頑張って投稿続けますので(遅いけど)どうぞよろしくお願いします。
最近にゃんこ大戦争に再熱しだしたラドンです。
10年ぶりにダウンロードしてみたところ、既に11周年を迎えていて何かガチャが追加されキャラもステージも豊富に…。
初期からもうそんなに経ってたのか、時の流れは早いですね。

マイクラ?んなもん知るか。

つーわけで彗星のアイドルことすいせいさんとの戦闘回になりまっせ。


じゃ、どうぞ〜。


十九話 『戦闘試験』

 

 

 

 

 

 

 同時刻にて、その光景を見守る形で観戦していたみこ達は、戦場から少し離れにある観戦用スペースで、強化ガラス越しに二人の戦闘を眺めていた。

 

 一定の距離で対等する龍成とすいせいの二人は、どんな戦いを繰り広げるのか期待に胸を膨らませていた。

 しかし開始した矢先、その期待は少し怪し気に傾いてしまった。

 

 一秒足らずで吹き飛ばされた龍成に、各々が早速反応する。

 

 

「うわぁ…すいちゃん、初っ端から容赦ないにぇ…」

 

 

「突破出来ない訳ではなさそうだが、流石に彼でも簡単にはいかないかな?」

 

 

 谷郷は彼の強さは理解しているつもりである。けども、すいせいも異常な強さを持ち合わせていると知っている。

 

 何方が強いかと言われたら分からないと答える程、谷郷の中では天秤に掛けるのは難しいようだ。そしてそう思うのは彼だけではなかった。

 

 

「そうだろうね、すいちゃんは紛うことなき人間の身体ではあるけど…異能の力が桁外れなんだよね」

 

 

「それに付け加えて身体能力も並じゃないし、いや〜凄いよねすいちゃんは。アイドルもやって戦いも凄く強いってある意味恐ろしいよね」

 

 

「あれでも合わせるって言ってたけど、手加減してるのかその気になってるのか正直分からないにぇ…大丈夫かな、龍成君」

 

 

「それはあの子の実力次第だね。でも、きっと大丈夫だよ。彼はそう簡単には負けたりしない筈だよ」

 

 

 アズキ、ロボ子、みこの順でそれぞれが会話をしていると、いつの間にか観戦用スペースに来ていたそらが、みこの不安を打ち消すように伝える。

 

 すいせいの強さは、学園の間でも話題を持たれるくらいの注目度がある。

 龍成も大概ではあったが…彼女は普通とは離れたその身体能力に、人知を超えた天からの贈り物である″異能″。

 その要素がすいせいにとって更に驚異的な存在に成り上がった。

 

 一人での活躍度で言えば彼女はかなり貢献している。

 単独でも数体同時のヴィランを討伐した功績があり、街中での討伐の際は住民を最優先で避難誘導をさせてヴィランを人気の無い所へ誘き寄せたり、ほぼ一人で初めから終わりまで任せられる正にオールマイティな動きを熟せていた。

 

 そして龍成は、編入して二ヶ月も経たずに大きな話題を何個か生んでいる。

 

 彼も中々の異常さを耳にしたことはあるが、それを元に比較して二人の強さが衝突し合えば、彼女達は一番長く一緒にいたすいせいに軍配が上がるだろうと思っていた。

 

 

「お、みこちにそら先輩とアズキ先輩とロボ子先輩。ヤゴーも、皆して何してるんですかい?」

 

 

「ヤゴーもいるなんて珍しいね」

 

 

「こんにちはでござる!」

 

 

 すると、そこへ他の面々がそら達の背後から声を掛けてきた。

 

 

「あ!ししろんにトワぴ!」

 

 

「いろはちゃんにルーナたんも、お疲れ!」

 

 

「あと激臭叉 クロヱたん!」

 

 

「おいぃ!ついで感覚で言うなみこち先輩!あとちゃんと風呂入ったわ!」

 

 

「入ったって…それ一週間前のことでござるよ」

 

 

「うわっ、道理でさっきから臭ぇのら」

 

 

「臭くないし!フルーティーだから!」

 

 

「無理があるだろ」

 

 

 やって来たのはぼたんとトワと、ルーナにいろはとクロヱの珍しい組み合わせだった。

 みこに流れるように弄られてクロヱが逆上するが、その後にいろはからとんでもないカミングアウトにルーナは素で引き、醜い言い訳にトワが呆れるように呟いた。

 

 

「おや、皆さんも見に来たんですか?」

 

 

「いや、あたしらはちょっと特訓しようと思って来たんだけど」

 

 

「誰か戦ってるのら?」

 

 

 谷郷がそう言うと、ぼたんが軽く否定しながらその向こう側にある戦場に目を向けていた。

 誰かが戦っているのだろうとぼたんは目を細め、ルーナが彼女の肩からひょっこりと顔を覗かせながら同じ所に目を向ける。

 

 トワといろはとクロヱもそら達と並んで、戦場に誰がいるのか確認して見る。

 

 

「あれってすいせい先輩と…紫黒先輩じゃん!久々に見掛けた!」

 

 

「えっ!本当でござる!すいせい先輩は兎も角、紫黒殿までいるのは驚いたでござる!」

 

 

「紫黒って対人戦は嫌いなんじゃなかったっけ?」

 

 

「彼には精鋭隊の特別枠として入る為に、今はすいちゃんと戦闘試験をやってるの。だから、特訓はこれが終わったらでいいかな」

 

 

「成程ね…なら仕方ないか。折角だしトワ達も見てようよ」

 

 

「さんせ〜い。にしてもすいせい先輩とか…こいつは見物だね」

 

 

 龍成の″対人戦は消極的″と言う事実は既に周囲には知れ渡っているらしい。

 そのこともあり、すいせいと対戦している姿にクロヱといろはは驚くが、そこでそらが簡単に説明すると納得して頷いていた。

 

 トワは先約がいるなら仕方ないと、別の所で時間を潰すよりかは見学していようと提案すると、否定する者は誰もいなかった。

 

 そしてこれから起こる戦いに、一部は差を見せ付けられる程の戦況に釘付けとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 開始して間もなく行動に出たすいせいは、煌々と赤いオーラを纏いながら音速をも越えた速度で吹き飛ばした龍成を見据えていた。

 速度に追い付けずに峰打ちを受けた彼は、壁際まで吹っ飛ばされて砂埃に埋もれている。

 

 

「あちゃ〜…いきなり強くやり過ぎたかな?」

 

(…でも手応えがあまり感じなかった。衝撃を受けたと同時に身体を引いた感じかな。咄嗟に最小限にダメージを抑えるとはやるねぇ!)

 

 

 初っ端から少々力を入れ過ぎてしまっただろうかと思っていたが、殴った際の手応えは弱く感じた。

 となると、攻撃を受けたその瞬間に迅速な反応をして少しでもダメージを抑えたと睨んだ。仮にそうだとするならば、なんと恐ろしい反応速度だろうか。

 

 すいせいは短く軽口を零しながらも内心は称賛していた。この一撃目だけで彼の強さは垣間見えたと、少し好奇心と戦いへの楽しさが胸中に芽生え始めていた。

 

 

「ふぅー…こいつは驚いたな。いきなり仕掛けて来たか」

 

 

「どう?見切れなかったでしょ?」

 

 

 そして砂埃が未だに舞っている中から、龍成は肩を軽く回しながら戦場に戻って来る。

 

 すいせいの言葉に否定出来る要素はない。確かに見切れなかった⋯と言うより移動する仕草が全く見えなかった。

 自分でも見えない程の高速かと最初は疑ったが、だとしても構えの動作もなく超高速移動が出来るとは思えない。

 

 そこで、彼の中である仮説が浮かんだ。

 

 

「───ワープ⋯か?」

 

 

「正っ解!!」

 

 

 どうやらご名答だったようだ。

 

 ワープ⋯即ち瞬間移動。自分の意思で好きな時に好きな場所まで自在に移動を操れる能力。それがきっと彼女の異能なのかもしれない。

 

 

「驚いた?でも今ので何となく私の強さは分かったでしょ?」

 

 

「あぁ⋯あやめも大概だったが、すいせいは更に強い。それは身をもって知った」

 

 

 ワープで的確に移動して瞬時に攻撃を振るうのは、単純そうで意外と難しいんじゃないかと思い初めている。

 こういう場合、能力に頼り過ぎていて動きが単純になることはあると思っている。

 しかし、すいせいにはそう言った部分が見受けられないのは、この学園に長くいた努力の成果なのだろう。

 

 流石に強い。あやめの時は彼女もあれで本気だとは思っていないが、すいせいは確実に油断はならないし、あの纏っている赤いオーラが何を意味しているのかもいまいち分かっていない。

 

 ただ、本気のあやめよりも強いのは分かった。

 

 けども焦る必要はない。俺だってまだまだ好調は続いているし、余力は全然有り余っている。

 

 

「俺はあまり対人戦は好きじゃない、それも女性相手なら尚更な…でも今はそうは言ってられない。迷いはあるが…怪我させるかもしれねぇ。それでも本当にいいか?」

 

 

「ドンと来いだよ!怪我しても大丈夫、ちょこ先が綺麗さっぱり治してくれるから!」

 

 

 そう、今は実力を確かめる為の試験中だ。

 幾ら対人戦が嫌だからといって、やりたくないなどそんな我儘を言う訳にもいかない。

 それでもやはり自分の変な性が気が気でならない所為で、中々その一歩が踏み出せずにいた。

 

 たが、すいせいのその言葉に腹を括るように瞼を閉じる。

 確かに癒月は治癒系の異能を持っていると聞いたことがあるので、実際は彼女の言う通りそこまで問題視することはないのかもしれない。

 

 まぁ、怪我治るから大丈夫と言われてもそう言う問題じゃないのだが⋯とにかく気にし続けても仕方ないし、長引かせて迷惑を掛ける訳にもいかない。

 

 

「分かった。あと、ついでに言えば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────俺もかなり強いぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!そう、みたいだね⋯!」

 

 

 そう宣言すると共に妖しく光る黒紫色になった双眸を向ける。

 

 そして体から炎が噴き出したかのように紫黒の気が纏う。放たれた気の突風がすいせいを襲うと、彼女の顔色に一緒だけ余裕が失った。

 だが直ぐに調子を取り戻すと、俺の言葉に肯定しながら先手を取って来る。

 

 すいせいは斧を軽く振り回してから構えると、そのままその場から駆け出して高く跳んだ。

 一刀両断するかのように斧を振り下ろすのを右半身を後ろに反らして最低限で躱し、カウンターを合わせようと拳を彼女に向けて振るった。

 

 が、何となく想像した通りワープを用いて距離を置かれる。

 体勢を立て直そうとすると咄嗟に背後からの危険を察知して、腕に気を纏わせて振り返って直ぐに防御した。

 

 金属同士が衝突する甲高い音が響き、そこにはワープしたすいせいが驚愕の表情を浮かべていた。

 だが直ぐに屈託のない微笑みを見せると硬直した押し付け合いの末に、彼女が蹴りを放ってきた。

 

 それを後ろへ跳んで躱しつつ一旦距離を置いて思考する。

 

 彼女のワープ能力には体感で制限は無いように感じた。

 距離制限は今の状況じゃ関係ないだろうし、短い頻度で連続でワープしているとなると、クールダウンなども存在しないのだろう。何その便利な能力。

 

 音も無く刹那で‎懐に入られるのはかなり厄介だし、どう対策しようかと考えてみるがそう簡単に思い浮かばない。

 

 すいせいを見据えながら小さく唸っていると、彼女が何か仕掛けてくる動作に注視する。

 

 

「『黄道十二宮【カンケル】』!」

 

 

「っ!⋯っぶね!斬撃⋯?どいうことだ?」

 

 

「まだまだ!すいちゃんの力はこんなもんじゃないよ!」

 

 

 そう叫んだ瞬間だった。

 

 先程まで赤みがかったオーラは銀色へと変色して、その場で斧を振るった際に扇状に斬撃が飛んで来た。

 それもかなりの速度だったが紙一重でそれを躱し、後ろを見てみると壁には斬撃跡がくっきりと残っていた。

 

 しかし問題はそこじゃない。彼女の異能はワープだけじゃなかった?まさか二つの異能を⋯?

 

 咄嗟に頭の中で様々な仮説を立てるが彼女はその思考させる時間を与えないかのように、斬撃を何個も飛ばしながら突っ込んで来た。

 

 始めの数個の斬撃は身を反らして躱していたが、避け切れないと判断したものには強化した手刀で弾いて相殺し、斧を振るって来るすいせいにタイミングを合わせるように構える。

 

 その際に、彼女の崩さない微笑みに違和感を覚えて警戒を強めた。何か考えがあるのか、余裕そうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

「『黄道十二宮【タウルス】』!」

 

 

(っ!オーラの色が変わった⋯⋯だけで特には───っ!!

 

 

 そして今度は緑色のオーラへと変わった。

 ワープに飛ぶ斬撃、なんとも不思議で異能の本質が分からない。

 

 次はどんなことをして来るのか知らないが、これ以上彼女の流れに乗せられない為に、振るってきた斧にカウンターを合わせようと気を纏わせた腕で受け止めた時だった。

 

 重い。さっきよりも重すぎる。まるで、さっきまでが木刀と例えるなら今のは巨大な槌で振り下ろされたようなものだ。

 

 先程の受け止めたものよりも何倍も重い衝撃が腕から全身に伝わった。

 咄嗟に正面から受け止めるのを止めて、両腕でクロスにするようにして受け止めつつ、そのまま衝撃に乗って後ろへ下がって行く。

 

 

「すいちゃん相手には油断しない方がいいよ?」

 

 

「油断してるつもりはなかったんだがな⋯!」

 

 

 これは醜い言い訳になるかもしれない。確かに油断せずに集中していたのだが、気付くのが遅かった。

 

 けど、これで彼女の力の一端が分かった気がする。

 どうやらオーラの色によって身に宿る力が変わり、重複は出来なさそうに見える。だから今はワープも出来ず斬撃も飛ばせない。

 

 そして懸念すべき点は彼女のフィジカルもそうだが、異能の正体が不明なこと。今の今までは何かしらの″身体能力に付与する技″と捉えた方が正解かもしれない。

 

 慎重に考えれば、流石に一個一個が異能とは思えないだろう。

 

 少し鍔迫り合いしていた状況を変える為に、受け止めていた腕に一層力を込めて弾き返す。

 その拍子に流れるように両手を握り合わせて、バットを振るうように両拳を向けると、斧の側面で受け止められて衝撃で少し下がった。

 

 

「そいっ!」

 

 

「っと⋯!」

 

 

 すいせいはそのまま下がると見せかけて、下がりつつ回転しながら斬りかかった。

 それを屈んで躱したら、そのまま低姿勢で彼女に向かって小さく跳んで距離を詰める。

 

 それを見たすいせいはまた斧を振り下ろそうと頭上へと持ち上げ、振り下ろされる。

 

 俺はそれを注視して斧に視線が集中してしまい、振り下ろされると同時に横から迫って来た()に気付かなかった。

 

 だが直前で気付いて咄嗟に腕でギリギリ受け止めるが、振り下ろされた斧は既に目睫。

 

 

「───っっ!!」

 

 

「わっ⋯!?」

 

 

 そこで俺は眼を力一杯に見開いた。

 すると、弾けた音と共にすいせいが軽く吹っ飛んで行く。そんな予想外の衝撃に彼女は驚かされたのか、体勢が崩れた。

 

 今のは気を眼に集中させて見開いた勢いで放つ衝撃波だ。けどこれは、易々と連続で出来るものじゃない。

 眼という部位は脆く、酷使すれば神経を傷付けて最悪の場合には失明することもある。やむを得ず使ったが、あまり慣れていない所為で少しばかり眼が痛い。

 

 そして、すいせいは直ぐにバランスを保って地に足を付けた時、何故か斧を虚空へ振り下ろした。

 

 

「『黄道十二宮【サギッタリウス】』!」

 

 

 すると纏っていたオーラは紫色へ変わり、途端に彼女の頭上から幾つもの星屑が現れて俺に降り注いで来た。

 咄嗟に横に飛んで避けるが、彼女は構わず縦横無尽に斧を振り続けていた。

 

 斧を振る度に星屑が現れ、俺に向かって堕ちる。

 

 それを見るからに追撃系だと察しながら連続で迫り来る星屑の集団を、移動しながら躱したり弾いたりして、何とか被弾を避ける。

 次に来る攻撃に警戒しながらすいせいを見据える。

 

 

「色んな技があるな」

 

 

「残念!これは正確に言うと技じゃなくて、これがすいちゃんの異能⋯「星座」だよ。この異能には能力が()()()もあるの。だからさっきから使ってたのはその内の能力なんだよ」

 

 

「星座⋯?また変わったタイプだな。それに十二個の能力か⋯とんでもないな」

 

 

「なかなか面白いでしょ?だからこんなことも出来ちゃうんだよ!」

 

 

 すいせいの異能の正体を彼女自身から告げられ、その内容は普通とは掛け離れていることに驚いた。

 異能が一つにつき能力が一個だけだと思っていたが、彼女の場合はそれが十二個もある。それに彼女は能力に頼りきってるような弱さが見えないし、手馴れてるようだ。

 

 軽く会話をした後、すいせいが自慢するように異能の能力を発動させた。

 

 

「『黄道十二宮【ゲミニ】』!」

 

 

「分身か⋯すいせい相手だとちょっと厄介かもな」

 

 

 すいせいの体が黄色のオーラに包まれた時、何も無い空間から突如現れたスライムのような黄色の物体が、彼女の横に並ぶように浮かんだ。

 暫くしない内にそれは人の形を形成していき、軈てそれはすいせいとそっくりな形になった。おまけに同じ武器をちゃっかり持ってやがる。

 

 

「いくよっ!」

 

 

 二人が同時に真っ直ぐ走り出すが途中でステップをして左右に別れると、俺を挟むようにして距離を詰めて来る。

 左右別々からの同時攻撃、二つの迫る斧をそれぞれ両腕で難なく防御する。

 

 受け止めた感じ、あの緑色のオーラの時より弱かった。

 

 

(あやめの時は撹乱するやつだったが、すいせいのは完全な分身⋯しかも強さは分身の方が若干だが弱い⋯けど放っておけないし、こっちも守ってばかりじゃ拉致があかねぇ)

 

(十五分間耐え凌ぐのもありとは言われたが、何も身を固めて防御だけでやり過ごせる訳じゃない⋯!)

 

「はっ!!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

 一先ずこの状況を打開するように力を込めて斧を押し返した刹那、両手を左右に広げて押し出すように気の衝撃波を放つ。

 すると、すいせいと分身はそのまま吹っ飛んで行き、一瞬で連携を乱させる。

 

 本体より分身の方が脆い筈なので優先的に潰しておく。

 

 そう思いながら分身の方に一瞬で移動して、拳に気を纏わせて思いっきり腹を殴る。

 重々しい殴打の衝撃音、めり込んだ拳は深々と刺さっていた。

 

 そんな時だった。

 

 

「うぐっ…!!?」

 

 

「え…!?」

 

 

 分身に攻撃すると苦しそうな声が後ろから聞こえた。

 

 咄嗟にその方へ振り向いて見ると、本体であるすいせいが苦痛の表情を浮かべながら、腹部に手を添えて悶えていた。

 

 まさか⋯分身の受けたダメージが本体に影響するデメリットが⋯?

 

 俺はその様子に驚愕して気が緩んでしまった。痛がる彼女の表情を見て、罪悪感の波に心が呑み込まれてしまう。

 直接じゃないにしろ、女性に苦しい痛みを与えてしまった。

 

 しまったと⋯と、どうしていいのか分からなくなって混乱していた。

 

 

 

 

 

「───なんてね?」

 

 

 

 

 

「っ!!ぐっ…!」

 

 

 不意に彼女の口元が歪んだ。その同時に分身の攻撃を受けてしまった。

 

 咄嗟に気で身体を纏ったからか制服が斬られただけで済んだ。だが真面に喰らった所為で痛みに顔が歪む。

 すぐに反撃して蹴り飛ばすと、分身は受身を取りながらすいせいの近くで佇む。

 

 人の心を悪く利用した彼女の不当な戦い方に、俺は少し怒りに苛まれる。スポーツマンシップではないが、それなりの道理があるだろうと思いながら、目を細めて少し睨み付けた。

 

 

「今のは…ちょっと酷いんじゃないか?」

 

 

「使い方は違うかもだけど、必要悪ってやつだよ。君は根っからの優しい心の持ち主だから誰に対しても傷付けたくないと思う反面、でも戦わなくちゃいけないと言う自覚はあるよね。それでも、やっぱり心の奥ではそれに気が引けている」

 

「今ので余計分かったでしょ?君は自分が思っている以上にストッパーを掛けてしまっているの。その優しさは君の良い所であるけど、時には弱点にもなる」

 

 

「……」

 

 

 すいせいの言い分に俺は何も言えなかった。

 

 彼女の言うことには確かに一理ある。その中途半端な気持ちで挑んでは身を滅ぼすと言いたいのだろう。

 

 だがそれが自分の中で分かっていても、どうしてか…強気に行けない。

 

 

「もしも…本当にもしも、仲間が敵になったら君は戦える?」

 

 

「…それ、は…」

 

 

 そんな事など考えたこともなかった。仲間が敵に…今までそんな事実なんて出会したことなどないし、あるとも思っていなかった。

 

 しかし、すいせいの不安げな表情を見て色々と考えてしまう。

 

 

 

 もしも、フブキ達と敵になったら?

 

 

 

 もしも、スバル達と敵になったら?

 

 

 

 もしも、パトラ達と敵になったら?

 

 

 

 もしも…全ての人達が俺を敵と見做されたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───俺は戦ってしまうのか…?戦えるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズギッ…!

 

 

「っ…!!?」

 

 

 そんな時、不意に頭が弾けそうな程の鋭い頭痛に口を噛み締めた。

 咄嗟に片手で頭を抑える。その痛みは一瞬だったが、余韻があって落ち着かない。

 

 それになんだ…?今僅かに…何か()()()()()()()()ような…。

 

 頭痛が起きたと同時に、ほんの一瞬だけ全く別の景色を視たような気がする。

 はっきりとまでは言えないが、何処か良くない雰囲気だったのは分かった。

 

 それがどんな景色だったかと言うと…。

 

 

 

 

 

 ────見覚えのある女性達が倒れ伏せていた。

 

 

 

 

 

 一体…何だったんだ?過去の記憶にはない景色だ。

 憶測にするにしても非現実的だが、まさか未来の景色…?それとも別の何か…存在しない記憶?

 

 解らない…わからない…。

 

 

「龍成君!!」

 

 

「っ!…ぁ、あぁ。なんだ…?」

 

 

「大丈夫?ごめんね…別にそこまで深く考えなくてもいいよ。今のはあくまでも君が知っておくべきだと私個人が思ったの。無理に答えなくていいんだよ、もしもの話だし。今はこの戦いに集中しよ!」

 

「さっきも言ったけど、怪我なんてしてもちょこ先が治してくれるから本当に大丈夫!すいちゃんはそう簡単に傷痕なんか付かないし、怪我しても怒らないよ!骨折なんて慣れてるし!」

 

 

 意識が混乱に陥っている最中、すいせいの声で現実に戻される。

 深く思考して様子が可笑しかった所為か、やたら心配させていたようだった。

 

 彼女が言うには、ただそのことも頭の片隅にでも覚えておいて欲しい内容だったらしく、怪我の件も全く問題ないと伝えられる。

 そんな力説をするすいせいを見て、俺は一つ深呼吸をして冷静を取り戻しつつ頭の中を空っぽにする。

 

 

「…分かった。じゃあこっからは本当に気にしない」

 

 

「うん!思っきりぶつかって来な!」

 

 

 本当に遠慮はしない。本気で怪我を負わせる覚悟で挑む。

 

 内なる気を全面に解放し、発火したように紫黒色の気が身体に纏う。

 巻き起こる突風に空気を一変させる圧力。先と一風変わって佇む龍成に、すいせいは視線を外さずに斧を構える。

 

 そして一歩、彼が足を踏み込んだ瞬間…その場が爆ぜた。

 

 

「ふんっ!」

 

 

「わっ!…っとと!」

 

 

 瞬間移動でもしたのかと疑うくらいの速度で、すいせいの懐に入り込んだ。

 彼の放つ拳に一足遅れてしまったが、横にいた分身が身を呈して割って入ることで喰らわずに済んだ。

 

 すいせいは一瞬慌てたが直ぐに意識を切り替えて、龍成の動きに注意深く見据える。

 分身を利用しながら相手の動きに合わせ、意表を突けるように予測を立てながら誘導するように攻撃する。

 

 だが、容赦を捨てた龍成の方が上手なのか、先程よりも動きの速度が桁違いに速い。

 すいせいと分身の二人の腕を掴むと、乱暴にすいせいを別方向へぶん投げて、分身をジャイアントスイングのように振り回して空中へと放り投げる。

 

 そして、その場から驚異的な跳躍して追い付くと強烈な踵落としを喰らわせて、そのまま勢い良く地面に激突させる。

 

 

「紫蓮牙・『空波』!」

 

 

 そこで終わらず、両拳に気を集中させて連続で衝撃波を分身に向けて放つ。

 降り注ぐ衝撃波の雨を真面に喰らえばただじゃ済まないだろうと思っていたが、存外そんなことはなかった。

 

 

「やるねぇ!でもそれだけじゃあ私どころか分身も倒せないよ!」

 

 

(マジか、思ったより分身硬ぇんだな。スライムみてぇなのに)

 

 

 舞っていた砂埃が振り払われたように晴れると同時に分身が突っ込んで来た。

 斧を構え直して斬り掛かってくるのを受け止め、瞬時に蹴り飛ばす。すると交代するように次はすいせいが攻撃して来た。

 

 

「ほらほら!どんどんいくよっ!!」

 

 

「ふぅー…」

 

 

 深呼吸を一つしてリラックスを保つ。集中力を緩ませないよう意識は冷静に、身体は熱を帯びさせる。

 

 すいせいの振りかぶる斧の軌道が見える。最早、今の状態なら防御する必要すら無くなった。

 彼女からすれば、まるで先を読まれているように感じるだろう。実際、すいせいの表情に僅かにだが動揺が浮かび上がっている。

 

 

(さっきより動きが鋭くなってる…!それに攻撃がさっきよりも避けられてる…!)

 

 

 斧の振るう速度が上がり始めていたが、変わらず当たることはなく避け続けられる。

 分身も加わろうと背後から接近するが、彼はは恰も知っているように迷いなく裏拳を分身にぶつけたことで再び吹っ飛される。

 

 しかし、ここで焦ることなく隙を探っていたことに心の中で賞賛した。

 

 だが、意識がそこに傾いた所為か自身への守りが疎かになってしまっていた。

 

 

「紫蓮牙・『大翔』!」

 

 

「うっ…!!」

 

 

 そこに虚を衝く。

 

 すいせいが攻撃をする時に僅かに懐が開けるのを見逃さなかった龍成は、その瞬間に合わせて腹部に向けて拳を振るった。

 

 ドスッと鈍い音が響き、すいせいの表情に苦痛が浮かび上がった。

 

 さっきのように嘘や演技などではない、本当の苦しそうな顔色に龍成は眉を顰める。

 やはりと言うか…当然、女性に直接手を下すのは慣れるような行為じゃない。触れた時、まるで豆腐のように柔らかい感覚だった。

 

 追撃する気も起きず、佇んですいせいの様子を観察して待っていた。

 

 

「くぅ〜…!今のは効いたよ!でも何となく分かるよ…やっぱり攻撃する直前で無意識に弱くしてるね。そんなんじゃあ何時まで経っても次に進めないよ?」

 

 

「…どうやら、俺は自分が思っている以上にブレーキを掛けてるみたいだな。幾ら治せると分かっていても、やっぱりすいせいに怪我を負わせるのが怖がってしまってるみたいだ」

 

 

「ここまで来るともう紳士じゃん!」

 

 

「殴った時点で紳士もクソもないけどな」

 

 

「あっはは!それもそうだ、ねっ!!」

 

 

 やはり頭では分かっているつもりでも、潜在的に気持ちが力を強く抑えてしまう。

 すいせいもそれが本意じゃないと知ってユーモアを混ぜたことを言うが、龍成に冷静に返される。

 

 そんな短い会話をした後、話を断ち切ると同時にすいせいが仕掛けて来る。分身を傍に呼び戻して、今度は二人交互で攻撃をして来た。

 

 そうなるとまだ避ける分には問題はないが、逆に攻めるのが難しくなった。

 先のことを学んで隙の無い連撃が続いているが、俺はその時が来るまで待つのみ。すいせいの振るう斧を避け、分身の攻撃を弾く。

 

 そして二人の攻撃が()()になった時、そこが機転のチャンス。

 

 攻撃の軌道を読み、二つの斧の柄腹を掴む。そして分身の方を無理矢理引き寄せてから、すいせいを巻き込むように横に蹴り飛ばして、玉突き状態のようになる。

 

 吹っ飛ばされたすいせいは、なんとかバランスを保って転ばずに済むと、此方に向かって屈託のない微笑みを浮かばせた。

 

 

「本当に良い動きしてるね!流石、優等生君!」

 

 

「すいせいもな」

 

 

「もう少し戦いたかったけど…時間も無いし、すいちゃんの取って置き!見せてあげるよ!!」

 

 

 また何か起こすつもりなのか、横にいた分身を消失させる。

 そして斧を掲げると、頭上で軽く円を描いた。斧の先端に何か眩い光が密集しており、不思議な力が集約していた。

 

 あれは、気とは違った力の流れ…もしかして魔力か?

 

 そんなことを思っている束の間、すいせいは円を描いたそばから斬るように振り払うと、青白い光が空間全体を満たした。

 

 強い眩しさについ腕で目元を覆うが直ぐに晴れる。何が起きたのかを確かめると…。

 

 

「おいおい…そんなんありか?」

 

 

 彼女の頭上には″巨大な蒼白の塊″が留まっていた。

 

 そんな突然と空中に浮かぶ物体に目を見開いた。

 何なんだあれは、と…全くもって底が知れない。彼女の力は範疇を超えて…更に超えている。

 

 煌々と輝く青白い光の塊からは、悍ましい程の魔力量の収束が感じた。

 頭で理解するよりも、身体で危険だと悟った。

 

 

「『黄道十二宮【カプリコルヌス】』!!」

 

 

「っ!」

 

 

 それだけではなく、更には異能による能力を使った。

 薄い茶色に輝くオーラが彼女を包まれるのを見て、それが一体どんな能力で何をするのか分からず、大きく構えて警戒する。

 

 

「これに耐えたら合格と言っても過言じゃないよ!!」

 

 

 彼女がそう言いながら斧を塊に向けて高々に掲げると、纏っていた茶色のオーラが伸びて行き、塊を覆った。

 すると空間が地震のように大きく揺らぎ、爆発したような破裂音が轟くと塊に変化が訪れた。

 

 

(うっそだろ……あんなの人間業じゃねぇよ)

 

「───やっっべぇな…」

 

 

 塊が更に()()()したのだ。

 

 半径十五メートルにも及ぶ巨大な塊が今、彼女の頭上で待ち構えている。それと対峙した龍成の心は焦燥感に酷く駆られていた。

 

 あれは避けても受け止めても確実に無事じゃ済まない。

 すいせいに躊躇いが見えないのはどう言う心理なのか、なんであんなのをしようと思ったのか正気を疑った。

 

 けど、もう遅い。

 

 

「いくよーっ!!」

 

 

 猶予はない。選択肢は受けて立つと言う一つの道しかなかった。

 

 そして、彼女は掲げた斧を振り下ろした。

 

 

 

 

 

彗星(コメット)』!!

 

 

 

 

 

 ゆっくりとだが彗星は徐々に動き始め、軈て空気を貫く勢いでダストテイルを伸ばしながら落下して来る。

 

 これは出し惜しみなど生半可なものでは通用しない。今出せる全力全開の力で挑むしかない。

 

 そう決めて、両拳を腰に添えて全力で気を解放する。

 

 

「───はぁあああああああっ!!」

 

 

 声を張り上げながら気の出力を最大限に引き出す。

 身体から噴火したように溢れ出す紫黒色のオーラは更に炎々と燃え盛って天にまで昇って行き、スパークが全身に沿って迸る。

 

 嵐のような風圧、震撼する空間、滾る力の重圧。

 

 彼はここに来て初めての全力で挑む。落ちてくる彗星を睨みながら冷静にタイミングを計りつつ、気を胸中に収め始める。

 彗星はもうそこまで迫って来ていた。

 

 一か八かの勝負。対処法はただ一つ…。

 

 攻撃こそ最大の防御…!

 

 

 

 

 

「紫心龍拳奥義・伍ノ気───『紫龍(しりゅう)』!!」

 

 

 

 

 

(え…!?まさか…突っ込むつもりっ!?)

 

 

 地面にめり込む程の大きな一歩を踏み出し、爆発したように彗星に向かって跳んで行く。

 集約させた力を一気に解放しながら拳を突き出すと、莫大な紫黒の焔が全身に包まれる。

 

 その焔は形が変わっていき、畝ねる紫黒龍へと転ずる。

 

 全てを喰らわんと大口を開けて咆哮する。そしてそのまま伸びて行き、巨大な箒星と獄炎の龍は衝突した。

 

 その瞬間、まるで天地を揺るがす程の衝撃波が学園全体に轟いた。お互いの力が勝とうと必死に、激しく壮絶に競り合う。

 

 膨大なエネルギー同士の、そのぶつかり合いの末に勝利を掴んだのは…。

 

 

 

 

 

「───っっだああああああぁ!!!

 

 

 

 

 

「嘘っ!!?」

 

 

 紫黒に輝く龍は天体である彗星を貫いた。

 

 砕け散った彗星の欠片は光の粒子となって、幻想的な風景を巻き起こす。

 そして紫黒龍はそのまま、驚愕と唖然に棒立ちとなっているすいせいに突っ込んだ。

 

 しかし、紫黒の炎龍は直前で消失して焔から龍成が飛び出して来ると、すいせいに回し蹴りを放った。

 

 だが狙ったのはすいせいではなく、彼女の持っている()だった。

 

 反応し切れなかったすいせいは、呆気なく斧を手放されるのを許してしまった。斧は弾かれてそのまま地面に突き刺さり、それに構わず彼女の首元に手刀を寸止めした。

 

 

「はぁっ⋯はぁっ⋯⋯俺の勝ちでいいよな?」

 

 

「そう…だね。うん、私の負けだよ。斧が手元に無いんじゃ何も出来ないも同然だし。それに力も殆ど使っちゃったし」

 

 

 漸く事態に理解が追い付いたすいせいは、そっと両手を上げて降参の意を伝えた。

 技の反動で息を酷く乱した龍成は、すいせいから少し離れて呼吸を整える。

 

 

「いやぁ〜!それにしても本当に凄いねっ!まさか無理やり突き破って来るなんて思わなかったよ。とんだ無茶したねぇ」

 

 

「誰の所為だと思ってんだ全く…お陰で右腕が痛ぇよ。んで、すいせいは怪我してないか?」

 

 

「寧ろその怪我で済んでるのが可笑しいんだけどね…お腹の方は全然大丈夫だよ、問題無し!」

 

 

 想像を絶する行動した龍成に大いに興奮しながら称賛するすいせいだが、それをジト目で睨みながら小さく反論して右腕を見た。

 流石に彼でも無傷で突破は困難だったらしく、制服は上下共にボロボロで全身にかすり傷などはあったが、右腕は深い火傷を負って血が酷く流れていた。

 

 しかし、すいせいからしたら…いや誰もがあの光景から見て、この傷で済んでる方が可笑しいと捉えるだろう。

 

 

「それで、これで合否はどうなんだ?」

 

 

「勿論、合格だよ。とても良い戦いだったし、君の戦い方には目を惹くものが沢山あるね」

 

 

 すると審査役だったそらが戻って来るなりそう伝えて来た。何処か満足そうな微笑みを浮かべて此方を見る彼女に、龍成は彼女の存在を忘れてしまっていたと、思い出したように眉を上げていた。

 

 そして彼らを他所に、一人の少女が此方に走って来る。

 

 

「りゅー先輩〜!」

 

 

「ぅおっと…!来てたのかルーナ。何でここに?」

 

 

「ルーナだけじゃないのらよ?」

 

 

 ルーナは一目散に龍成に抱き着いたのだ。彼も何処か慣れたように受け止めながら彼女の頭を血で濡れてない左手で撫でる。

 

 あの誘拐事件の一件から、救い出したルーナにかなり懐かれてしまい、会う度にこうして抱き着いて来るのが、何故か日課のようになっていたのだ。

 龍成も初めは戸惑いはあったものの、今となっては慣れて少し満更でもなさそうである。

 

 そして、何故ルーナがここにいるのかと問い掛けると、腹部に埋もれさせたまま此方を見上げて、自分一人だけじゃないと言った。

 

 そこで何人か此方に近寄って来たことに気付く。

 

 

「おつかれ〜。あんなすげーもん見せつけられたら、アタシ達も火がついちまったよ」

 

 

「紫黒殿!次は風真と戦って欲しいでござる!」

 

 

「駄目だよいろは、紫黒君も疲れてるだろうし無理はさせられないよ」

 

 

「つーかルーナ、何時まで紫黒にくっ付いてんの」

 

 

「んー?トワトワもりゅー先輩に抱き着きたいのら?」

 

 

「そ、そんなんじゃないし!!」

 

 

 ぼたん達や谷郷等も集まって来ていた。先程の戦闘で興奮が収まらないいろはに連戦を持ち掛けられるが、否定する前にロボ子が止めてくれた。

 彼女に目線で礼を伝え、トワとルーナの遣り取りを横目で眺めていると、今度はみこが慌てて龍成に近寄る。

 

 

「てか、龍成君!腕の怪我は大丈夫なのかにぇ!?」

 

 

「うわぁ〜紫黒先輩、血が出てんじゃん」

 

 

「こんぐらいなら大丈夫だ。放っておけば治る」

 

 

「もーダメだよ?ちょこ先生にちゃんと診てもらわなきゃ悪化しちゃうんだから」

 

 

「アズキさんの言う通りだよ。制服も新しいのを用意しておくから、保健室に向かいなさい。ちょこさんはそこで何時も治療の研究をしているから、直ぐに治して貰えるよ」

 

「それと、必要な書類が何枚か渡さなきゃならない。治療が終わり次第、ときのさんの所へ取りに来てくれるかい?」

 

 

 治しに向かうことを否定すると、アズキと谷郷に優しく諭されて渋々行くことにした。

 ルーナに離れてもらい、一度保健室に向かうことにする。

 

 

「ルーナも付いて行くのら〜」

 

 

「ルーナも特訓すんだろっ!おら、さっさと始めるよ!」

 

 

「んなぁああああ〜!離すのら〜!」

 

 

「かっかっか!んまぁ、これで正式に精鋭隊に入れたんだし、改めてよろしくね。」

 

 

「あぁ、一緒の時はよろしく」

 

 

 着いて行こうとするルーナの腕をトワが強引に掴んで引っ張って行き、ぼたんはそれを見て一頻り笑った後、龍成に拳を差し出した。

 彼もぼたんの言葉にふっと微笑み、拳を突き合わせた。

 

 そうして龍成は一人その場から移動して保健室に向かって行った。

 それを遠くから見送ったみこは、怪訝な表情を浮かべたままのすいせいに話し掛ける。

 

 

「それにしても、すいちゃんが負けるって珍しいよね。あんな大技も使ったのに」

 

 

「ま〜正直…時間制限にしろ降参にしろ、どちらにしてもあの技を攻略されたら負けてたと思う。ただ、強行突破して来るとは流石に思わなかったな」

 

 

 そう淡々とその時のことを話していたが、依然として変わることはなかった。

 

 その時すいせいの中では、彼の力について冷静に思い返していた。

 

 何であんな実力者がこの時期になって学園にやって来たのか。何処で培ってきたかも分からず、あからさまに慣れてる戦闘、力の使い方、状況把握。

 どれも生半可な経験から得られるモノじゃないのに、まるで…前から戦い慣れているような感じだった。

 

 それに不審感を抱いたのはそこだけじゃなかった。

 

 

(それに驚いたのはそこだけじゃないんだよね…)

 

 

 

 

 

(幻覚だと思うくらい本当に一瞬だったけど…龍成君の姿が何処か″ココちゃんと似てた″んだよ)

 

 

 

 

 





──その後、保健室での出来事

ちょ「はい、これでお終い。止血はしたし無理に動かさなければ生活に支障は出ない筈よ」

龍「ありがと。まぁ…別に治療しなくても治るんだけどな」

ちょ「何言ってるの。放置してたら黴菌が入って最後には腕が使い物にならなくなって大変なことになるのよ?例え小さい怪我でも、消えない傷痕になったりでもしたら嫌でしょ」

龍「あぁうん…まぁはい」

ちょ「それにしても、すいせい様の技をよく正面から受けたね。実戦だとあまりにも強力過ぎるから、被害拡大の防止として使わないくらいなのに」

龍「まぁ…なんだ、過去に似たような経験があったから対処出来たって言うか…」

ちょ「貴方一体どんな過去を持ってるの…」

ちょ「…ちょっと気になったのだけど、いいかしら?」

龍「ん?どうした?」

ちょ「龍成様の体つきって思ってたよりがっしりしてるわよね。治療する時に腕に触れたけど、なんだか見た目よりも力強い感じがしてね…ねぇ、ちょっとでいいから貴方の体…見せてくれない?」

龍「それはどう言う…」

ちょ「知ってると思うけど、ちょこって医療知識はあるし実践経験もある。けれどそれは、あくまでも女性相手が多いだけで…男性の治療経験は殆どないのよ。だからね?」

ちょ「───君の身体……よく見せて?♡」

龍「ァ゚…」

龍「勘弁してくれよ…!その言葉の意味は上辺だけで、本音がもっと別な所にありそうに見えるんだが!?てか力強っ!?」

ちょ「あっはは!そりゃそうよ、だってちょこは悪魔なのよ?女だからって甘く見たら痛い目見るわよ。ほら…大人しくしてさっさと脱ぎなさい?♡大丈夫、優しくしてあげるから♪」

龍「何も大丈夫じゃねぇよ…!!ちょっ…止めっ!何でズボンに手を掛けるんだよっ!?おい止めろっ!!」

ト「ちょこてんてー、ちょっと膝擦りむいたから───ってなにしてんだぁあああああああ!?

龍「ト、トワっ!癒月を止めてくれ!何かに目覚めてるっ!!」

トワも加勢に入ったことで事なきを得たのだった。





読み直してみたら、もはや龍拳で草。
どうしても主人公君の戦い方が戦闘民族野菜人みたいになってしまうなぁ。まぁいいや。
如何でしたかな、面白かったなら幸いに存じます。
因みにすいせいさんの星座の異能などはラテン語を利用しています。どれがどの星座か気になったら調べてみてね。

では〜。
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