少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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自分の中でこういう感じにしたいな〜って思ってても、書くと意外と上手くいかないもんですね。

じゃ、どうぞ〜。


二十二話 『激化する混沌』

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ったく、これで何体目だ…」

 

 

 あれから休むことなく移動し、戦闘へ⋯そしてまた移動へと二つの工程だけでも終わりが感じられない。至る所からヴィランの気配が続けざまにやってくるのだ。

 

 

(駄目だ⋯ヴィランが多過ぎて避難誘導も真面に出来ないし⋯完全にこの街はパニック状態だ。焦るな⋯冷静に考えて対処するんだ。何を一番に優先して次に何を優先するのか。俺が焦ったら終わりだと思え⋯!)

 

 

 身体が幾つあっても足りない。こう言うのを猫の手も借りたいと言うが、雑に言い換えて先手観音の手も貸してほしいくらいだ。

 

 そして道中走っていると、瓦礫に巻き込まれて倒れていた人を見つけた。

 

 

「っ!⋯⋯くそっ⋯」

 

 

 しかし、近付いてみるとピクリとも動いておらず、気を視認して見たがさっぱり無かった。

 そのことに拳を強く握り締めて、思わず苦虫を噛み潰したようになる。

 

 生命力の源である気を微塵にも感じない…これは即ち、()を意味する。

 それから周りを良く見渡してみると、その人以外にも死体であろうものがそこらに倒れていた。

 

 もう少し早くここに来ていれば、助けられたかもしれない命があったのに、どうして出来ないのだろうと自分に憤りを感じてしまう。

 救えることが出来なかったことに、心の中で謝罪しながらその場を去る。

 

 いい加減こんな事態が終わって欲しいと思った矢先、ある人の気を感じ取った。

 

 

「この気は⋯あやめか?それ以外にもいるな」

 

 

 正確な人数は把握し切れていないが、気を感じるに二つのグループが合流したのだろう。

 あやめの気が一際強く感じ取れたのでヴィランと戦闘だと分かり、加勢しに向かった。

 

 まだまだ動ける体力はあるが、先程から技を連発させていることもあって呼吸が乱れ易くなっていた。

 激しい動きは抑えて、体力の温存することを心の中で決めながら、あやめ達の所へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「メル様!そっちにヴィラン行ったわ!!」

 

 

「任せて!『ブラッディ・クロー』!」

 

 

「もう!ほんっとヴィラン多過ぎ!!『サンライト・ストライク』!!」

 

 

「執拗いと嫌われるわよ!あ、今更か⋯『シリアルハートレイン』!!」

 

 

 現場に着くと、一人一人が個性的な技でヴィランに貢献していた。ちょこは指揮に回っていて、恐らく怪我した人を素早く治す為の回復要員だろう。

 

 メルは懐から輸血パックを徐に取り出すと、それを破って自分の手の周りに纏わせて凝固させると赤黒い鉤爪になり、それを振り回しながらヴィランを切り裂いていた。

 

 まつりはヴィランに対して小言を言いながら両手を頭上に翳し、その掌から眩い光の玉が生まれる。

 そしてその光の玉をアンダースローのように投げ飛ばしてヴィランを爆散させる。

 

 はあとの攻撃は周りの中でかなり独特な方だろう。淡い桃色のオーラを纏い、手でハートの形を作ってからヴィランに向けて翳すと、細かなハート型の雨がヴィランに撃ち注いだ。

 

 

「百鬼流華焔剣術・肆ノ型 ──『焔燈鬼斬(えんとうきざん)』!!」

 

 

 複数のヴィランに囲まれたあやめは、二本の刀を大きく構えながら呼吸を整える。灼熱が纏う刃を構え、そして一閃。

 爆発したかのような衝撃波が発生し、ドーム状に斬撃の嵐が吹き飛んでヴィランを切り刻んだ。

 

 

「あくあちゃん!援護よろしくっ!」

 

 

「うん!任せて!」

 

 

「いくよー!『エレガンス・コンバット』!」

 

 

「スバルも全力で行くっすよ!!」

 

 

 シオンとあくあはペアで挑んでいた。シオンは杖を用いながら高威力の魔法で暴れまくり、あくあはぼたんと似たような戦術である銃を使って中距離からシオンをカバーしていた。

 

 それに続きアキロゼは両手に水と白銀でカラーリングされたガントレットを装着してヴィランに肉弾戦を持ち込んでいた。俊敏なステップで華麗に拳を連打してお見舞いする。

 

 スバルは前に言っていたアーマーとやらを纏っているのだが、ほぼ生身で挑んでるようなものだった。

 頭から胴体には何も着いておらず、両手足と腰に黄色の機体が纏っていて、背には翼のような羽がある。そして手には巨大な大剣を持っていた。

 

 しかし、動きに無駄がなく見た目とは裏腹に俊敏に動いていた。

 等身大以上の大剣を慣れた手つきで舞うように振り回し、ヴィランに優勢を渡さずに一方的に攻めていた。

 

 

「あっ⋯!?ちょこ先生!危ないっ!!」

 

 

「っ!?しまっ───」

 

 

 しかし、ちょこの背後から二体のヴィランが飛び掛っているのが見えた。

 その時に周りを確認していたあくあも気付いて咄嗟に声を張った。だが、気付いた時には既に遅く⋯。

 

 音も無く跳んで来たヴィランに襲われ掛けたちょこは、硬直してしまいその場から動けなくなっていた。

 

 

「紫心龍拳奥義・壱ノ気──『紫纏爆』!」

 

 

 するとそこへ、龍成が間に入ったことで事なきを得た。

 

 ヴィランに紫のオーラが包んで体を動かずに、時が止まったように空中で留まり続けていたが、龍成が翳していた手を握ると爆散して消えていった。

 誰もが突然の介入者に驚きを隠せず、歩み寄る彼に目を引いた。

 

 

「えっ、龍成様⋯!?助かったわ⋯」

 

 

「ふぅ⋯大丈夫か?あちこちにヴィランはいたけど、特にここら辺は多いぞ。俺も少し加勢するからもう少し頑張れ」

 

 

「助かるっす!!実はさっきから休まずに戦い続けてるせいでやばかったんよ!あやめちゃんも皆もいるけど、全然終わんなくってさ⋯!でももう大丈夫っすね!なんたって龍成が───」

 

 

 

「ダーリ〜ン!♡」

 

 

 

「ぐっふ⋯!」

 

 

「おいこらはあちゃま!!」

 

 

 流石に桁外れの連戦の所為で疲労感が何時もよりあったこともあり、彼が加勢しに来たことで皆の様子が少し晴れやかになった気がした。

 

 そして龍成がスバルの近くまで寄って来ると、はあとが爆速で龍成に飛び付いた。勢いが強過ぎるあまり龍成も身構えなかったこともあって、胸元に衝撃が走ってダメージを負った。

 

 

「やっと来てくれたのね!もうずっと待ってたんだから!はあちゃまの頑張ったご褒美にダーリンの成分を寄越しなさい!」

 

 

「おいマジか」

 

 

「ちょ、ちょっと!まだヴィランがいるのになにしてんだ余っ!?」

 

 

 はあとの訳分からん言葉に龍成も調子が狂い、あやめの言う通りまだまだヴィランは倒し切れていない。

 一旦冷静になって、一向に抱き締める力を緩めないはあとに諭す。

 

 

「赤井⋯⋯この際抱き着いてくる理由は敢えて聞かないが、まだヴィランがいんだぞ。もっと意識を持ってくれ」

 

 

「もうっ!ダーリンったら!はあちゃまのことはそんな風に呼ぶんじゃなくて!″ハニー″って呼ばないと駄目でしょ!!」

 

 

「おうマジか」

 

 

 しかし、論点がズレまくっている回答が返ってきたことに再び困惑する。

 自分のことをダーリン呼びされているのはこれが初ではなく、会う度に言われるのだ。

 

 この要求も何度目だろうか。だが、そうこうしている内にまたわらわらとヴィランが寄って来ていた。

 

 

「「「「……!!」」」」

 

 

「もう⋯!まだこんなに⋯!」

 

 

「キリがないよ⋯!こんなのが続いてたらシオンの魔力が先に尽きそうだよ!」

 

 

「本当に執拗いわねー!いつまで続くのよっ!!」

 

 

「⋯はあと。まだやらなきゃいけないことが残ってるだろ?俺も手伝うからやるぞ。」

 

 

 メルとシオンとはあとの三人がまだ湧いて出てくるヴィランに不満に表情を歪める。

 それでも未だに抱き締めるのを止めないはあとに、龍成は少し困っていたが一つ頭に浮かんだ案で彼女を動かす。

 

 

「っ!?ダーリンが名前で呼んでくれた!?うん!はあちゃま頑張るわっ!!」

 

 

「単純と言うか⋯素直と言うか⋯はぁ、俺も行くか」

 

 

 流石にハニーとは到底言えないので名前呼びで諭してみると、誰が見ても分かり易いくらいに目を輝かせながら、嬉々としながら気合いを入れていた。

 そんな変わり様に流石に呆れてしまう。

 

 そうして再び戦闘を始まったのだが、先程とは打って変わってはあとがヴィランの倒す速度が心做しか早くなっている気がするのは気の所為だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ラミちゃん!そっちは大丈夫?」

 

 

「今の所はね…!にしても数が多過ぎ!!」

 

 

 突然と街に現れた大量のヴィランにアタシ達のグループも決して楽じゃない状況だった。

 どれだけ倒しても次から次へと、まるで軍隊アリのように減らせているのかも分からなかった。

 

 

「もうっ!これってヤゴーが言ってた数よりも多いんじゃないの!?もうハンマー振り回すの疲れたよー!!」

 

 

「文句言ってる暇あんならさっさと倒すんだよ!!」

 

 

 ねねちゃんの弱音におまるんが喝を入れているが、実際はねねちゃんの言う通りでもある。

 皆の体力も無限じゃないし、アタシの使ってる銃の弾数もこのままだと無くなるのが早いと思う。

 

 取り敢えずは、からまた湧いてきたヴィランをなんとか一掃してこの辺りを沈静化させる。

 けど、被害は甚大な方だ。最小限に抑えるようにしても、これじゃあ厳し過ぎる。

 

 

「たくっ⋯懲りない奴らだな。これ以上SSRB達も特攻させると、あいつらも身が持たないし⋯このまま続くと弾も心許ないな」

 

 

「ラミィもこのままだと魔力が尽きちゃうよ⋯」

 

 

「このままだとキリがないなぁホントに!龍成とか来てくんないかなー!」

 

 

「はぁ⋯はぁ⋯ねね、もう疲れたー!」

 

 

 一旦休憩を挟みながら弾を補充したい所だ。喉も渇き始めて思考に影響が及ぶし、戦闘に支障を来たすから水分補給もしたい。

 おまるんの言い分に心の中で共感しながら、手持ちのサブマシンガンとライフルのリロードを行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々面白いのがいるじゃないか⋯───そうだ、いいことを思い付いた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───っ!!?なんだ⋯⋯この感じ⋯」

 

 

 そんな時、強い悪寒が雷のよう全身に流れた。

 

 この感覚は⋯あの時の自我持ちヴィラン⋯⋯いや、それよりも強い圧力だ。

 ただの強者の持つ圧倒的な覇気だけじゃない、その奥にある()()()()が肌で汲み取れる。

 

 

「あ⋯⋯ぁ⋯あっ⋯」

 

 

「こ、これ⋯って⋯⋯まさか⋯」

 

 

「嘘でしょ⋯?」

 

 

 皆もその違和感に直ぐに気付くが、体が硬直してその場から一歩も動けずにただただ⋯ゆっくりと目の前に降りてくる″何者″かに竦んでいた。

 

 そいつは見た目は人と同じ、黒の短髪に紫のメッシュが混ざっていて真紫の鋭い双眸。

 真っ黒なアンダーシャツにレザーパンツ、紫黒色のロングコートを羽織っていて()()()()()()()()()()()()()

 

 アタシ達は既に気が付いていた。確かに見た目はそこらの人と変わりない⋯それでも、そいつが人じゃないのはその瞬間から理解した⋯。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─ ──こいつは″ファントム・ヴィラン″だと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて⋯貴様らを()にさせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───みんな逃げてっ!!!」

 

 

 そいつの言葉にアタシの全身が総毛立ち、脳から送られる強い危険信号で反射的に手持ちの銃をそいつに向けて乱射し、ラミちゃん達に全力で逃げるように怒鳴った。

 

 

 

 

 

「活きがいいな。これは随分と楽しめそうだ⋯」

 

 

 

 

 

「がっ⋯ぁ…!?」

 

 

 けど、気付いた時にはそいつは背後にいた。

 

 いつ移動したのかも分からず、そんな仕草も全く見えなかった。

 項を強く手で締め付けられて咄嗟に離れようと体を動かした時、何故か思うように動くことが出来なかった。

 まるで、力を奪われていくかのようにどんどん身に入らなくなる。

 

 

「───ししろんっ!!!」

 

 

 ラミちゃんが悲鳴のような呼び声を最後に、アタシの意識はあっさりと闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…一先ず落ち着いた?輸血パックも少なくなってきたから勘弁して欲しい⋯」

 

 

「そうみたいだね⋯ここら辺のヴィランは一掃出来たと思う余」

 

 

「大変だったね⋯私ももう腕が疲れちゃった」

 

 

「もう終わってほしいっす⋯」

 

 

 それから休む間もなくヴィランを倒すことに集中していると、気付いた時にはヴィランの姿が何処にも見えなくなった。

 気配を探ってもこの辺には一体もいる気配がないので、終わったと捉えても良さそうだ。

 

 

「他にも怪我人がいないか探して来ないとね⋯」

 

 

「でもちょこ先生、この辺の人達はもうシェルターに逃げれたと思うよ」

 

 

「それでも逃げ切れずに怪我した人もいるかもしれないし、念の為に探そう。今の所ヴィランもいないし、手分けして今の内に移動しとこ」

 

 

 だがそれで終わりじゃない、まだまだやるべきことが沢山ある。

 

 ヴィランがいない今、次にやるべきことはシオンの言う通り市民の安全確認及び救出をすること。

 怪我などで逃げ遅れた人だっているだろうし、助けを求めている人を探しに行く。

 

 

「龍成君も一緒に探すの?」

 

 

「いや、俺は他のメンバーの加勢に行ってくる。だから現場に残された怪我人とかはまつり達に任せてもいいか?この辺のヴィランの気配はないから、今は大丈夫だ」

 

 

 だが、申し訳ないのだが俺は別の所へ移動することを優先した。

 

 今この瞬間でもヴィランが暴れているのに変わりはないので、人命救助も手伝いたいが倒さなければそれどころじゃない。

 

 

「えー⋯ダーリンもう行っちゃうの?」

 

 

「どんだけ龍成君のこと好きなん」

 

 

「それはもう世界一よ!!私の手料理を唯一最後まで食べてくれたんだもん!!」

 

 

「あ、はい⋯」

 

 

 移動する際に、はあとが不満げにそう言っていたが俺は気にしないことにした。

 しかし好意を寄せられている理由になんだが複雑な気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラァ!!堅気達に手ぇ出してんじゃねぇぞクソ共ぉ!!」

 

 

「ルーンナイト達も行くのらー!!」

 

 

「紫黒君!後ろのヴィランは頼むよ!!」

 

 

「任せろっ!」

 

 

 次に合流したのは桐生が率いる四期生のグループだった。ヴィランも数こそは多かったが、桐生が圧倒的な力で瞬殺を繰り返していた。

 

 勿論、かなたやルーナも油断せずに目の前のことに集中していた。

 

 

「切り裂けっ!闇影鄭・『深狩(しんが)』!!」

 

 

「残りはわためが⋯赫の旋律・『爆譜(ばくふ)』!!」

 

 

「紫心龍拳奥義・弐ノ気──『月輪』⋯!」

 

 

 俺とトワとわためで、後ろの方から攻めてきたヴィランを対象にする。

 

 横にいたトワが黒鎌を振るうと、幾つもの斬撃を飛ばして全体的にダメージを与える。

 だがそれだけでは倒し切れず、続けざまにわためがハープを片手にして旋律をする。

 

 この状況から似つかわしくない綺麗な音色が流れると、波状に赤い音符が散布した。それがヴィランに触れるた途端に、爆発を起こして吹き飛んでいった。

 

 それでも何体か倒し切れていない残りは、俺が直接叩く。

 

 空中で体の自由が効かない内に力強い殴打と足蹴りを繰り返し、ヴィランを足場にして次のヴィランに同じことを⋯それを肉眼で捉えられない程の超高速で繰り出す。

 

 そして地面に着地すると、一際大きな衝撃波が轟いてヴィランは霧散して消えていった。

 だが、いよいよ体力に疲労が追い付いてしまい、肩で息をしながら汗を拭う。

 

 桐生達の方も丁度終わり、ヴィランも続けて現れることもなくなったので一旦集まって談話する。

 

 

「りゅー先輩⋯大丈夫なのら?」

 

 

「なんだか少し顔色が優れてないよ?疲れてるなら無理しない方が⋯」

 

 

「大丈夫⋯っちゃあ大丈夫だが、ちょっと力を使い過ぎてな⋯流石に休まずに連戦続きだと疲れるな。でも休憩を挟む余裕もないし⋯」

 

 

「それならわために任せて!海の旋律・『治跡(ちせき)』」

 

 

 わためが心強く手を挙げると再びハープを持って旋律を奏でた。

 先の爆発を起こしたのと音色が違っていて、儚くも何処か優しい音色が流れてると、ハープから海色の音符と譜面のようなオーラが流れて俺の身体にまとわりつく。

 

 

「お⋯すげぇ、綺麗さっぱり疲労感だけ取れて体力が戻ってきた。ありがとな、わため」

 

 

「えへへ、これぐらい余裕ですよ!」

 

 

「⋯むぅ〜⋯⋯」

 

 

 自然と蚊帳の外に置れていたルーナは、二人の遣り取りに面白くなかったのかあからさまに不機嫌アピールで頬を膨らまし、龍成を睨み付けていた。

 

 そんな光景を後ろからココとかなたとトワの三人が眺めていた。

 

 

「ルーナたんが膨れっ面になってんのオモロ」

 

 

「あからさまにご機嫌ななめになってんね」

 

 

「傍から見たらルーナが妹みたい」

 

 

「天使より天使してるもんなルーナたん、どっかのゴリたんと違ってな!」

 

 

「は?潰すぞ」

 

 

「おー?ワタシは一言も″かなたん″だって言ってねぇぞ?やっぱゴリラの自覚あんじゃねーか!ウホウホ言いながらぺったんこにドラミングしてみろよ!」

 

 

「はぁーいお前ぶっ潰〜すっ!!」

 

 

「あんだけヴィランいたのにまだ元気かよ⋯」

 

 

 さっきまで殺伐としていた状況だったのに、気が緩んだ瞬間にこの二人の遣り取りに呆れていたトワは、何処か戦いよりも疲れを感じて溜息を零すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我ら秘密結社『HoloX』は⋯このエデンを支配するのが真の目的だ。だがその前に、先ずは貴様ら下等なヴィラン共をこの世から消す。さぁ、世界征服の為の一歩と行こうか⋯!」

 

 

 一本の道を阻むヴィランの大群に、一人の小さき悪魔が不敵な笑みを浮かべながら歩いて行く。見た目とは反して彼女から放たれる威厳は、確かな実力を持っていると分かる。

 

 今まで共に過してきた自慢の仲間達を引き連れて、これから起きる戦に向けて士気を鼓舞する台詞を唱える⋯。

 

 

 

 

 

「刮目せよ⋯!!」

 

 

 

 

 

「「「「いえすまいだーく」」」」

 

 

「おいこらぁ!!雰囲気が出来上がったのにやる気なくすなぁ!!」

 

 

「何してんだお前ら」

 

 

 ピリピリとし空気は何処へ。ラプラスの仲間であるルイ・こより・いろは・クロヱの四人は全力で気だるそうに掛け声を合わせたが、案の定ラプラスはそれに納得する筈もなく、ダボダボの袖の中にある両腕を上げて怒りだす。

 

 そんな光景をたまたま目撃した俺は、呆れながらも声を掛ける。

 

 

「あっ、紫黒殿!助太刀でござるか?」

 

 

「なになに〜?こよ達の手伝ってくれるの?」

 

 

「あぁ、ヴィランを倒しに走り回ってるついでに他のメンバー達の様子を見に来た。大変そうなら手伝おうと思ったんだが⋯案外大丈夫そうか?」

 

 

「え〜面倒だから手伝ってよ〜!沙花叉まだ三時間しか寝てなくてダルい〜!紫黒先輩ならこんな数いても余裕でしょ?」

 

 

「紫黒君、ごめんだけど手伝って貰っていいかな?今、私のホークアイで状況を確認したんだけど⋯後からヴィランが大量に湧いてこっち来てるの。だからクロヱもちゃんと働きなさいよ?」

 

 

「え、マジ?」

 

 

「⋯⋯分かった。なら、出来るだけ俺は向こうの方を潰しておく」

 

 

「紫黒君、一昨日のことは気にしなくてもいいからね?詳しいことは聞かないし、ラプももう気にしてないから⋯気に病まないでね?」

 

 

「⋯!ありがとう」

 

 

 すると、ルイが自然な流れでさり気なく俺の傍に寄ると、他の人に聞かれない声量でコソッとそう伝えてきた。

 そんな彼女の冷静な気遣いに礼を言い、俺も少し心に余裕が出来た。

 

 

「うむ!では改めて⋯我ら秘密結社『HoloX』に新たな戦闘員が入れば敵無しだ!誰がこの世界の支配者に相応しいか分からせに行くぞ!!」

 

 

 状況は更に困難へと陥ったのにも関わらず、ラプラスはペースを崩さずに一致団結をするよう率先して前へ歩き出して行く。

 

 

 

 

 

「刮目せよ⋯!!」

 

 

 

 

 

「「「「「⋯⋯」」」」」

 

 

「せめてなんか言えよっ!!」

 

 

 四人は兎も角、俺はなんて返せばいいか分からんのだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「団長が前を押すから、みんな着いて来て!」

 

 

「任せたよノエル!」

 

 

「数ならこっちも負けないのです。死靈術『集獄絶』!」

 

 

「全く⋯!こっちも罠が少なくなってきてるってのに!面倒な奴らぺこ!」

 

 

「ノエルはそのまま直進して道を作って!フレアは二時の方向にヴィランが跳んで来てるから弓で撃ち落として!るしあはそのまま他のヴィランの気を逸らしながら出来るだけ囲っといていて!ぺこら!準備はおっけー!?」

 

 

「いつでもいけるぺこ!!」

 

 

「それじゃあ⋯───発射ー!!」

 

 

 マリンが率いる三期生のグループはヴィランの大群に多少の苦戦を強いられていた。

 

 数こそは計り知れないが、一体一体の強さは大した強さはない。

 しかし質より量という言葉が今の状況似合うだろう。大群に囲まれながらも冷静さを欠かさずに、ノエルは自分の武器であるメイスを持って先陣を切り、ヴィランの群衆に突っ込んで道を作る。

 

 彼女を先頭に後を追い、フレアは自分達に向かって跳んで来た数体のヴィランを、走りながら弓矢で吸い付くように撃ち落とす。

 出来るだけ敵との距離を置く為に、るしあの死靈術で大量の骸骨をブラフにしつつ一箇所に集まるように誘導させた所で、ぺこらの特製人参バズーカとマリンが魔法で出した大砲で一網打尽にした。

 

 

「まだヴィランが残ってるよ!!」

 

 

「団長に任せて!全部叩き潰すから!」

 

 

「くそっ⋯ほんとぺこーらの異能ってこういう時に限って役立たねぇぺこね!」

 

 

 しかし、それでも全て片付かずまだ倒し損ねたのがいた。その残りをノエルが快く引き受けるが、それを阻むように上からまた数体のヴィランが邪魔をしてくる。

 フレアも続けて弓矢で一体一体を確実に射抜き、ぺこらは二人の後を追いつつ文句を言いながらバズーカの補填をして次に移る。

 

 

「まずいね⋯ヴィランがどんどん現れて来てる。るしあ、まだ召喚は出来る!?」

 

 

「正直⋯もう限界なのです。ずっと魔力を使い過ぎて、体に力が入らなくなってきた⋯」

 

 

「分かった!無理せず休んでて!」

 

 

 また囲まれそうになるくらいにヴィランが現れてくるのを見て、マリンはもう一度骸骨を囮にさせようと思ったが、るしあは魔力の枯渇により顔色は優れずその場で膝を着いていた。

 

 これ以上無理はさせられず、マリンは一言伝えてからるしあを安全な位置に置いていき、ノエルのフォローをしにカトラスとフリントロック・ピストルを手にしてヴィランに突っ込む。

 

 

「チッ⋯!執拗いですね!?マリンはあんたらみたいなのにモテても全く嬉しくないんですよっ!!どうせなら龍成君のような優男に迫られたいですっ!!」

 

 

「こんな時に何言ってるぺこ!!」

 

 

 ヴィランの動きを見極めながら剣と銃を的確にぶつけながら、攻撃を貰わないように立ち回る。

 執拗いくらいに湧いて攻めてくるヴィランに、マリンは舌打ちをして訳の分からない文句を言い放っていた。

 

 だがそんな時に四人の獣人少女がやって来た。

 

 

「マリンー!そっちの状況は大丈夫ですかー!?」

 

 

「ウチ達の方は片付いたから手伝いに来たよ!」

 

 

「うわ〜こっちもこっちで多いね」

 

 

「おうおうおうー!こぉねがぶっ潰してやんよ!」

 

 

「フブちゃん達!助かりますよ!」

 

 

 フブキが率いるゲーマーズ部であるミオ・おかゆ・ころねの四人が手助けにやって来た。

 彼女達は並々ならぬ実力を持っているのは知っている為、今この状況で来てくれたのはとても心強い。

 

 だが、来たのは彼女達だけじゃなかった。

 

 

「おーい!こっちは大丈夫ー!?パトラ達も手伝うよ!!」

 

 

「あれ、フブキちゃん達もいるのね。」

 

 

「酷い⋯もうこんなにボロボロになってるの⋯」

 

 

「ここ、街の中心地だからかな?ヴィランが凄いいっぱいるね。人間達は大丈夫なのかな」

 

 

 此方も四人組で取り組んでいる悪魔達であるパトラ・メアリ・シャルロット・ミコが並びながらマリン達の助太刀にやって来た。

 この四人も戦力としては十分に任せられるし、魔法の力も質も上位の地に踏み入れている。

 

 

「パトラちゃん達も助かりますよ!早速で悪いんだけど、フブちゃん達は東方面を⋯!パトラちゃん達は南方面をお願いします!」

 

 

「おっけー!」

 

 

「うん、任せて!」

 

 

 フブキ達とパトラ達には別の方向から攻めてきているヴィランを任せてもらい、マリンもノエルに並んで突っ込もうとした時⋯。

 

 

「マリン!るーちゃんは!?」

 

 

「るしあなら⋯───しまった⋯!!」

 

 

 しかし、そこでマリンは大切なことを忘れていた。それはこの異常事態で集団行動を疎かにするのは御法度にあたり、数を減らしたからと言ってるしあを一人にさせてしまっていた。

 

 そんな彼女は今、残り少ないの魔力を使って骸骨を呼び出し、迫って来ていた複数のヴィランを抑えていた。

 

 だが呆気なく骸骨は消滅させられて、るしあは身一つだけになってしまい、ヴィランの魔の手が直ぐ近くまで迫っている。

 

 表情は一気に焦りへと変わり、一秒でも早く着く為に全力で走り出す。

 

 

「うっ⋯き、来ちゃ駄目⋯!!」

 

 

「るしあっ!!」

 

 

 駄目だ、ノエルとフレアは正面のヴィランて手一杯。ぺこらのバズーカじゃ巻き込んでしまう。

 だから自分の銃で出来るだけダメージを与えるも、一向に消える気配がない。

 

 気を使ったとは言え慢心して、彼女を一人にさせてしまった愚かな自分をぶん殴ってやりたいと強く後悔しても⋯もう遅い。

 

 

 そして、そのままるしあは⋯───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如現れた紫黒に燃える炎の一閃に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





出来れば殆どの人を活躍出来る場面を描写したかったけど、果てしなく掛かりそうなので手短にしときました。技名とかのセンスは目を瞑っといて下さい。

それと、スバルさんの戦闘に関して補足説明しとくと、インフィニット・ストラトスみたいな戦い方です。分からない人は各自で調べて下さい。


では〜。
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