花粉さんへ、宇宙のゴミとなれ。
じゃ、どうぞ〜。
「紫心龍拳奥義・参ノ気──『龍烈演武』!!」
突如、紫に燃える龍の一閃が雷の如くヴィランを葬り去った。
「⋯⋯え?」
「ギリギリ間に合った⋯大丈夫か、るしあ?」
「へ⋯?りゅ、龍成君⋯!助かったのです、ありがとう!」
マリンの視線の先にはるしあを抱えた龍成が佇んでいた。彼女も突然のことに唖然としていたが、彼に声を掛けられて初めて自分が助けられたことに気付いた。
彼女が無事と分かると丁寧に下ろして、るしあの状態を確認して見るが⋯顔が赤くなっていること以外は大丈夫そうだ。
何故赤らめているのか疑問に思っていると、マリン達が素早く駆け寄って来る。
「紫黒!来たぺこか!」
「あぁ、他の所が一段落してな」
「助かりました龍成君⋯!困った時に来てくれるなんて、流石気遣いも出来る男!船長の男になって下さい!!」
「丁重にお断りする」
「んも〜♪照れちゃって〜可愛いですね♪」
「何言っても駄目じゃねぇか」
「まぁ、冗談はそこまでにして⋯ごめんねるしあ、船長が傍にいれば良かったのに一人にさせちゃって⋯」
「ううん、大丈夫だったからいいよ。それに⋯るしあが弱かったのがいけないのです」
「そんなことない!るしあには色々と助かってるよ!」
るしあとマリンはお互いが自分に非があると責任を譲らない。
しかし、今はそれに拘っている場合ではないので、少し強引に会話に割って入る。
「あ〜悪いが⋯今の状況は?俺の方は0期生と5期生以外のグループの様子は見て回ったが、今は問題なくヴィランを抑えながら市民の避難誘導は出来ている。こっちは⋯どうやらそう簡単にはいかなそうだな」
少し周りを見渡した感じだと、ここが一番ヴィランの気配が密集している。そうなると⋯この区域が今回のヴィランが発生した根源とも捉えられる。
だとしたら何でこんな街の中心で突然現れたのか。いくら考えても分からないけど⋯確実に何かがあるよな。
実はさっきから妙な気配を時々感じてる。
普通のヴィランとはまた違った感覚、あの時の⋯自我持ちヴィランと似たような気配だ。
どの場所までは分かっていないが、もしかすると⋯今回もそんな奴が現れるかもしれないし注意した方が良さそうだな。
「見ての通り、こっちは気持ち悪いくらいヴィランが湧いてきてるぺこよ。さっきから倒しても倒してもキリがねぇぺこ!」
「でも龍成君が来たならさっきよりも余裕が出来る筈だよ」
「ここを全部潰せば、他の所も合わせて終わりが見えそうだな」
「おーい!こっちも一旦は終わったよ!るしあ大丈夫ー!?」
「ノエル、フレア⋯うん。心配掛けちゃったけど大丈夫だよ」
「ごめん、助けに行きたかったけどヴィランが邪魔してて⋯とにかく無事で良かった⋯」
そう会話しながら状況を見据えていると、フブキ達やパトラ達も状況が一旦落ち着いたのか此方にやって来た。
「白上達の方も落ち着いたので、こっちを集中に手伝いますよ!」
「まだまだ体力は有り余ってるからどんどんいくでな!」
「団長もいつでも行けるし、どんな攻撃も引き受けるよ!」
「私達の方も問題ないよ。ってあら、龍成君もいたのね」
「あ、龍成だ。久しぶり〜」
メアリとミコと話すのは、彼女達の働く喫茶店以来になる。二人の挨拶に軽く返事をする。
今この場には三つのグループが合流して、総勢十五人の勢力がいる。
これだけいればここいらのヴィランなど造作もないだろうし、さっさと終わらせよう。
丁度よく皆が集まってくれたし、手を挙げて注目を集める。
「色々と話したいことはあるかもしれないが、事態はまだ終わってない。一旦状況を整理しながら俺の憶測を交えて伝えるけど⋯此処がヴィランの湧く中心地だと俺は思い始めてる。証拠材料は少ないが、他の場所と比べても遥かに量が多いし湧いている範囲が広い」
「となると、ここを中心にヴィランが溢れてあちこちに移動して今に繋がるんじゃないかってな。どうやって急激に増加したのかは一旦置いといて⋯取り敢えずは此処を一体も残らずに倒せばいいんじゃないか?」
原因も確かに気になるが、今はそれよりも⋯だ。
また大量のヴィランの気配がこっちに近付いて来ているのが分かるし、今やるべきことはヴィランが湧かなくなるまで戦い続ける脳筋的な方法で行くしかない。
長い持久戦になるだろうが、その内なにか対策も思い付くだろう。
「要は全滅させればいいんでしょ〜?」
「このくらいの人数がいるなら余裕なんじゃない?」
「ちゃちゃっと片付けちゃおうか」
おかゆところねとフレアの三人は気合いが入っているのか、各々武器を持っていて今直ぐにでも戦おうという意気込みを感じる。
それに続いてか、一部の他の人も見習って鼓舞していく。
「よーし!もう少しの奮闘ですね!これ以上被害を増やさない為にも、早速行きましょう!!」
「うん。ウチらは問題なくやって行けるから、手分けした方がいいかな?」
「⋯いや、その必要はないみたいだな」
「⋯そうみたいね」
ミオの提案に俺はある一点を見つめながら静かに否定する。その傍にいたメアリも気付いたのか、賛同して警戒心を引き出していた。
彼女達も俺とメアリの視線に流された先を見て、絶句する。
「「「「「……!!」」」」」
その見詰める所には、想像を絶する程の大量のヴィランがこっちに向かって移動していた。
また数が増加して現れたのか、パッと見で数えても言葉を失う程だ。
谷郷さんの口からは五十体以上いると言っていたが、どうやらそれ以上のようだった。体感では一体一体の強さはそこまでではないが、こうも数が多いと足を引っ張られる。
わらわらと隙間無く並びながら攻め寄ってくるヴィラン達の光景を見て、こっちの士気は下がり始めてしまっていた。
「うわー⋯めっちゃ来たね〜⋯」
「こ、こんなに多いの⋯倒し切れるのかな⋯」
「こうやって見ると⋯本当に異常な光景ね」
「いけるのかな⋯私達で⋯」
上からおかゆ・シャル・フレア・パトラの順で口々に言う。
今までこんな経験は一度たりともない、生まれて初めての出来事。人は知らない事柄が目の前に来ると″不安″や″恐怖″の二つの感情に支配され、冷静さを奪われてしまうのも仕方ないだろう。
彼女達を発端に他の皆も眉が下がり、俯きながら自分の力を疑い始めていた。絶望的なヴィランの進軍、それに対して此方は少数。
圧倒的な迄の数の暴力を目の当たりにされ、何処まで通用するのか⋯終わりが見えない戦いに気力が削がれていた。
しかし、それでも尚⋯瞳に闘志を宿す者がいた。
「大丈夫だ、皆なら守れる」
『⋯!』
「りゅう君⋯。」
「俺はこの学園に来て半年どころかまだ三ヶ月も過ごしていないけど、それでも関わってきた人達はみんな⋯親身になって、友達になってくれて⋯とても暖かかった。」
「一緒に過ごしている内に俺も改めて色々と教えてもらった。人との繋がりの大切さ、共に過ごす楽しさ⋯皆は誰かを思いやって、身を削ってこの日まで戦って生きてきたんだ。」
「皆が自分の力を信じれなくても───」
「───俺は信じている」
彼は迷いなく彼女達にそう告げる。
龍成は自分の過去を振り返り、煌星学園に来た当時を思い返していた。女子生徒しかいなかった場所に一人の男子生徒が入って来たと言うのに、彼女達は軽蔑や差別など一切無い純粋な気持ちで接してくれていた⋯⋯一部は特殊な接し方もいたが。
それでも共に過して、共に戦って、気付けば親睦が深まり⋯その三ヶ月も満たない短い期間でもお互いに信頼を得るのは難しくなかった。
故に彼は⋯この前代未聞の状況を前にしても、彼女達の持っている力を揺るがない気持ちで信頼していた。
そうして彼の言葉に、自信を失いかけていた彼女達の闘志は再び呼び覚まされる。
「そう⋯だよね。ウチ達が戦わないと守れないんだから⋯ウチ達がくよくよしてちゃ駄目だよね!」
「いいこと言ってくれますねぇ龍成君!胸がときめきましたよ!」
「そうだね〜。ボク達が人を守る要でもあるんだし、しっかりしなきゃね」
一人、また一人とやる気を取り戻して前を向き出す。
自身の責務を思い出してそれぞれが手に武器を持ち直し、目元を変えて迫り来る紫黒色の塊を睨む。
各々の思う気持ちは一つになり、目的を果たす為に一歩を踏み出した。
覚悟は決まった。
「さぁ⋯こっからが正念場だ」
「何時でもいけるよ!!」
「私達が⋯やらなきゃ!」
「よし⋯そんじゃあ───」
龍成が一番前に立ち、大きく奮闘に繋げるように不敵な笑みを浮かべた。
「いっちょいくぜ!!」
『おおおおおおおおおぉ!!!』
そう叫びながら気を体外に放って燃えるような紫色のオーラを纏い、率先してヴィランの軍団に突っ込んで行った。
それに続いて彼女達も、鼓舞するかのように雄叫びを上げながら彼の後を追い掛け、全力でヴィランに向かって矛先を向ける。
今ここに少数対多数の戦いが幕を開ける。
「「「「「……!!」」」」」
「紫蓮牙・『
真っ先に龍成は高く跳んで、ヴィランの群衆の中心に目掛けて両足で踏み付け蹴りをする。
だが狙いは直接ヴィランに攻撃するのではなく
そうすると、その衝撃は彼を中心にして地面が隆起したのだ。
間近にいた複数のヴィランは空中に投げ出され、他何体かのヴィランも体勢を崩していた。
彼は自ら背水の陣に入り込んだが、そんなのお構いなしと言わんばかりに突撃する。
「あたしが狙い撃つよ⋯!『千本時雨』!!」
「るしあも⋯やるのです!!」
「オラオラァ!!ぶっ飛びやがれぺこっ!!」
「白上達も龍成君に続いて行きましょう!!」
後衛に徹することにしたフレア・るしあ・ぺこらの三人は離れた所から攻撃する。
フレアは魔法を利用して一本の矢を空中に向けて放つと、それが大雨のように無数の矢に増えて、空中に投げ出されていたのを含めて複数のヴィランを射抜く。
続いてるしあも敵の気を引き付ける為に、少ない魔力を振り絞って多くの骸骨を生み出し、一体一体を相手にさせてこっちの労力を少しでも減らす。
ぺこらはバズーカを連射してヴィランに牽制し、混乱を招かせる。
その隙にゲーマーズ組も龍成の後に続いて突っ込んで行く。
「猫パンチは甘く見ない方がいいよ?見切れるかな?」
「ウチだって⋯!怯えてられないもんね!焔天拳『
両手に鉤爪を装着させたおかゆは、姿勢を低くしながら猫のように素早い速度で移動しながら、ヴィランの懐に深く切り付けて致命傷を与えて次に移る。
その後処理はミオが行う。両拳に真っ赤な焔が纏うと、荒々しい炎の音が鳴り渡る。おかゆが傷付けたヴィランを狙って、重い一発一発をめり込ませて殴り上げる。
するとヴィランの身体が瞬時に焔が纏わり付いてその体を灰にした。
「こぉねのことも忘れんなよー!纏めて掛かってきな!!」
「数こそは多いですが⋯だったらこっちも同じことをしてやりますよ!幻像『月下の朧』!!」
ころねも負けじと自分の武器である両手剣を軽々と振るってヴィランに牽制する。
少女が持つにはとても重そうな筈だが、それは彼女の異能である「怪力」のお陰で簡単に扱っているのだ。
そしてフブキは刀を片手に、もう片手で印を結んでヴィランの数の多さに真似るよう術を使い、分身して自分を増やすことにした。
彼女の周りに蜃気楼のような淡い光が何個も灯ると、ポンッと白煙を立てて姿を現した。
分身の手元にも刀が添えてあり、ヴィラン一体につき一人で戦い始める。
「そいっ!せやぁっ!ほれほれー!どっからでも掛かってきんしゃい!団長が相手じゃあー!!」
「Ahoy!船長だって負けられないんだワ!『大海原の大砲劇』!吹っ飛びやがれえええぇ!!」
ノエルも勇敢に突っ込んで行き、一本のメイスでヴィランを無双している。
とても高い頑丈さも備わっていることで、ヴィランからの攻撃にも一切怯まずに次々と叩き潰して行った。
その後ろでは、マリンが魔法を用いて自身の横に大量の砲台を設置していた。
啖呵を切ると同時に腕をヴィランに向けて伸ばすと、大砲の弾が発射されて、広範囲にヴィランを爆散させていた。
「パトラ達もやろう⋯絶対にここを守らないと!
「手加減は必要ないし、さっさと終わらせないとね。
少し離れた所では、パトラ達がヴィランの進軍を塞き止める。
魔力をふんだんに使って高火力の魔法を使う。パトラは上空に大きな紅い魔法陣を展開させると、その紋様からヴィランに向かって大量の赤雷が天誅を下すように、雷鳴を響かせながら連続で落ち続ける。
横でメアリも魔法を駆使して牽制を行う。パトラとは逆に地面に大きな紫の魔法陣を発動させると、その中心に半透明の一輪の花が咲いた。
それは「テッセン」と似ていて煌々と光り輝いている。そしてその魔法陣内にいたヴィランは突如、地面に勢い良く倒れてめり込んだ。
彼女が使っているのは重力を操る魔法であり範囲攻撃は勿論、一個体のみに対象することも可能で、彼女は重力操作魔法を得意とする。
「私が動けなくさせるから、頼んだよせきしー!
「任せといて。動けない的は流石に外さないよ。
更にその横では、シャルとミコの二人が攻撃を合わせてヴィランを倒していた。
シャルは詠唱しながら腕を薙ぎ払うと、大きな青の魔法陣が手前に浮かんでその中から津波のように霜雪が勢い良く噴き出して、纏まっているヴィラン達を覆う。
するとその氷雪は瞬時に凝固して奴らの動きを止めた。
そして直ぐにミコが動いて魔法を展開させる。指で空間を切るように下から斜め上へ払うと、緑の魔法陣が顕現する。
そして次に横に払うと、魔法陣から何個もの斬撃が風を切り裂きながら連続で飛び出した。
その不透明な翠の斬撃は、無慈悲にも身動きが取れないヴィラン達を小石程にまで細切れにして、この世から屠った。
「はぁっ!───んどりゃあっっ!!」
先頭にてヴィランの集団を一人で翻弄していた龍成は、その身一つだけもで大きな戦力となっていた。
目にも止まらない速度で移動しながらヴィラン達を殴り、蹴って、掴んで投げる。
一体のヴィランを乱暴に掴むと、その場で自分を軸にして回転すしだす。そのまま勢いを乗せながら固まっている集団に向けてぶん投げる。
そしてボーリングのように多くのヴィランが弾き飛んだ。その隙に背後にいた一体に素早く懐に入り込む。
「紫蓮牙・『大翔』!!」
「……!!?」
「紫心龍拳奥義・参ノ気──『龍烈演武』!!」
目の前の奴を殴り飛ばして、先と同じように玉突き衝突させるがそこで終わらずに攻め続けた。透かさず構え直して気を纏う。
そして無防備になったヴィランに向かって跳び出すと、紫色の気は形を変えて一匹の龍の幻影が宿る。
すると目にも留まらぬスピードを繰り出して、ヴィラン達に大打撃を連続で喰らわせに行く。
拳を突き出せば体に風穴を作り、脚で蹴り出せば体が消し飛ぶ。
そして空中に投げ出されていたヴィランは、塵となって風に運ばれて消えていく。
「肆ノ気──『
彼の猛攻はまだ止まらない。
地上に残っている奴らに目を向け、空中で構えを変えながら立て続けに技を使い出した。
身を捻って地面に着地してから、奥まで固まっているヴィランに向かって一気に距離を詰める。
利き手である右腕を突き出して掌を一番手前のヴィランに翳すと、彼の纏っていた気のオーラが手に集約して一塊となり、強烈な光が広がる。
軈てそれは荒々しい紫焔の塊に変化して、灼熱の球が出来上がった。
そしてそれを、押し付けるように放つ。
「────はああぁっ!!」
「「「「「……!!?」」」」」
───ゴウッ!!!
その紫炎は広範囲で扇状に一瞬で燃え広がり、瞬きする間には目の前は火の海と化していた。
それを真面に受けた大量のヴィランは、もはや灰すらも残さない。
次第に紫炎が消えていくとその先の全貌が顕になる。
地面は溶けてそこら中に残り火が点々と燃えており、空気中には火の粉が舞っていた。
片手に少し残ったのを振り払い、その光景に構わず次に向かった。
「勢いが凄いですね龍成君⋯っと!危ないですね!」
「余所見してる場合じゃないよフブキ!」
「ごめんごめん!」
「にしても本当に数減ってるんかこれ?こぉね、そろそろ疲れてきたでな⋯」
「ね、ねぇ⋯心做しか数が増えてる気がするんだけど⋯これ以上はもう、るしあも魔力が出せないのです⋯!」
「そんなことないって言いたいんだけど、ちょっと否定できないんだよね⋯あたしも魔力が⋯」
「まだ全然いるってぺこかっ!?」
「もっと広範囲に⋯だったら!
確実に数は減らしていっている、それは間違いないことなのは周知のこと。
しかし、全員が共通して感じるその違和感も杞憂ではない。
答えは単純なこと、ヴィランの数が減るよりも増えて来るのが早いからだ。
バトラも射撃魔法を使って攻撃範囲も広くさせて一掃するが、無意味だと伝えるかのように奥から再びヴィランがぞろぞろと寄って来る。
「倒してる筈なのに、なんだか減ってる気がしないわね⋯パトラ!大きい技って出せる?」
「まだまだいけるよ!どうするの?」
「私がヴィランを一箇所に引き寄せるから、大っきいの一発お見舞してあげて!」
「おっけー⋯!」
こっちの体力は減る一方で、ヴィランは無限に入れ替わりで攻めてくる。
それに対して痺れを切らしたメアリが、一気にカタをつけようと大胆な攻撃をすることに決めた。
パトラに特大魔法の為に魔力の溜めることを任せて、メアリは自分で出来ることを全力で行う。
「出来るだけ大量に集めないと⋯!ちょっと魔力が持つか分からないけど⋯
疎らになっているヴィランに手を翳して魔力を操作する。すると奴らの隙間に魔法陣が展開され、その中から等身サイズで薄紫の六角柱状の結晶が現れた。
その結晶の中には一輪の花である「ダチュラ」が埋まっていて、一つの芸術作品のように独特な雰囲気が解き放たれる。
すると、その結晶が突然輝き出して渦巻き状に薄黒い空間が現れると、周りにいたヴィランが一斉にして吸い寄せられた。
「わっ!凄っ⋯踏ん張ってないと身体が引き寄せられる⋯!」
「見て!ヴィランが一つに固まってる!」
その勢いは凄まじく、気を抜いているとあっという間に自分達も吸われそうになりそうだ。
だがそんなブラックホールのような光景も束の間、ころねの言葉に再び目を向けた時には、そこには大量に密集しているヴィランが脱出しようと蠢いていた。
「パトラ!準備はいい!?」
「うん!いつでもいけるよ!!」
けどそれを見逃す訳がなく吸い込む力を強めながら、後方にいるパトラに確認を取ると、準備は万全だと意気軒昂な彼女の声に頼もしく感じた。
すると、パトラから強大な魔力が放出される。ジリジリと肌を焼くような激しさに、魔力濃度も高いからか少し目眩が起こる。
(本当に凄いわね⋯
バチバチと激しい赤雷が彼女を纏い、空間が小さくも震え上がっていた。
その真剣な表情は絶え間なくヴィランを射抜き、そして片腕を天に差し向けると、密集しているヴィラン達の頭上に超広範囲の魔法陣が空を覆う。
「いくよ⋯───」
そして今、ヴィランに終焉の宣告を唱える。
「
ヴィランに紅き一閃が降り注いだその直後、噴火したように巨大な爆炎が街に轟いた。
────────────────────────
「ほぉ⋯あの小娘達も面白い力を持ってるな、中々やるじゃないか。それにあの小僧⋯妙なものだな⋯ふん」
「奴の力も興味深いし、そろそろ″アレ″を仲間に入れてやるとするか」
ビルの屋上から見下ろす一人の男は、その眼下で起こっている街の惨劇に品定めするように眺めていた。
彼女達の持つ力に好奇心を抱き始め、小僧と言われた龍成には一瞬だけ眉間に皺を寄せていたが直ぐに不敵な笑みを浮かべる。
「あの出来損ない共を全滅に少し時間は掛かってはいたが、まぁ及第点⋯って所か。だが⋯宴はまだこれからだぞ?せいぜいこのオレを楽しませる出来の良い小物にでもなっていろ」
────────────────────────
「今の轟音⋯凄かったな。取り敢えずこっちはもう来る気配はないし、一旦あっちに戻るか」
皆と少し離れた所でヴィランを葬っていると、身体の芯にまで響く程の大きな衝撃波が貫通して来た。
誰かが起こした特大の攻撃なのは分かるのだが、一体誰なんだろうか。
「あっ!龍成君!そっちは終わりましたか?」
「あぁ、こっちは来る気配がないから大丈夫だと思うが⋯そっちはどうだ?さっきすげぇ衝撃があったたけど⋯」
「さっきパトラちゃんの大技でヴィランを一掃したんですよ!そりゃあもう凄かったですよ!メアリ先輩があの大量のヴィランを一網打尽にしてそのままドカンですよ!そのお陰で今はこっちも落ち着いてます」
「そうか⋯なら良かった」
近くにフブキがいたので彼女から状況を把握する。聞くにあの大爆発の根源はパトラからだったと聞いて驚いた。
彼女からあんな衝撃を出せる程の力を隠し持っていたとは⋯。
倒す前にメアリも片棒を担いでいたこともあり、一気に掃討が叶ったらしい。
ヴィランの気配は今ので完全に途絶えている。だが残りがまだいるかもしれないし、早めに処分しに行こうと思った矢先⋯。
《あーあー、こちら2期生の紫咲 シオンでーす。聞こえてる?》
「この声⋯シオンか!」
頭の中に違和感を感じたと同時に、シオンの声が直接聞こえて来た。
魔法を得意とする彼女が当たり前のようにこれをすると言うことは、俗に言う
どうやら聞こえているのは俺だけじゃなく、フブキや他の者達も彼女の声に驚いていた。
つーか念話する時ってこんな違和感あんの?頭ん中で突っ掛かってるのが取れない感覚⋯気持ち悪っ。
《さっきえーちゃんからの通達で、ヴィラン探知機のレーダーからあいつらの反応が無くなったって》
「ということは⋯終わったのか?」
「はぁ〜⋯!やっと終わったぁ〜⋯!!」
「良かったぁ⋯」
「うあぁ〜!疲れたぁ〜⋯!」
学園に設備しているヴィラン探知機からの反応がなくなったと、永先生を通じてシオンから伝えられた。
つまり、ヴィランの大量発生が終わったことを示めす。
それを聞いてマリンとシャルとフレアを始めに、他の者達も胸を撫で下ろしていた。
溜息を吐く者、へたれこむ者、安堵の笑みを浮かべる者、それぞれがこの瞬間に心を落ち着かせていた。
《一応、シオンんとこの2期生は1期生と合流してて、怪我人もいないし今は一般人の保護に対応してるところだよ。他はどんな?》
《私達の所も問題ないよ。こっちも避難誘導してたところ》
《おう!ワタシ達んとこもモーマンタイだぜ!なんならまだ暴れ足りねぇな!》
《吾輩達も余裕だったぞ!数分足らずで片付いてしまったからなぁ!ガハハ!》
各グループの状況把握の為にシオンが質問すれば、途中からそらとココとラプラスの声が割って入って来た。
念話の幅の広さに瞠目するものだが、変わらず違和感に地味に苛まれる。
「白上達も今終わったところだよ!」
「こっちはゲーマーズ組と3期生とハニスト組、あと俺で合流している。こっちは他よりヴィランが多かった所為か、流石に皆疲れてるな。終わったなら後は気が楽だろうし、少し休憩を挟んだらこっちも避難誘導をするよ」
「ところで⋯ラミィちゃん達は?」
そんな平和な時間は束の間。俺達の現状を伝えていた際に、ミオの一言により状況に変化が訪れる。
《シオン達の所には何の連絡も来てないけど⋯───ん?⋯え?ちょっと待って!!》
「どうした、シオン⋯?」
「何かあったの?」
シオンから五月蝿く思ってしまう程の驚愕の声が響く。やけに取り乱した彼女の動揺さに疑問を抱き、何があったのか聞く為にノエルと声を掛けるが⋯。
《今えーちゃんから連絡が来たけど⋯はっ!?ヴィランがまた出て来たの!?》
『───っ!!?』
予想だにしない言葉に、その場にいた全員に血の気が引く感覚を覚えた。
「どういうことっ!?」
「なんでまた!?」
《どうやらそっちだけじゃねぇみてぇだぞ⋯ワタシ達の所にも来てんのが見えた》
《吾輩の所もだ。恐らく全部にまた行き渡ってるようだな。ったく、どうなってんだ⋯?》
どうやら現れたのはシオン達の所だけじゃなく、ココ達とラプラス達の所にも出現したと言う。
混乱が再び巻き起こって焦燥感が冷静を欠かせられるが、今一度周りを見てみると⋯そこに奴らはいた。
「「「「「……!!」」」」」
「こっちもだ⋯」
《総員、引き続き戦闘準備をして!!》
そらの掛けた言葉を最後に頭の中にあった違和感が消える。
念話が切られたのが分かると、皆が行動に移すのは速かった。
しかし、満足に体力も回復していない状態で、次のラウンドが強制開始されるのに焦りが隠し切れずにいた。
「こいつらまた⋯執拗いぺこねっ!!」
「一体どうなってるんだろ⋯自然湧きだとはボクは到底思えないんだけど⋯?」
「全く⋯こんなおかわりは要りませんよっ!!」
「チッ⋯!とにかく戦える奴は備えてくれ!!体力が限界な者は後方で回復しつつフォローを頼むっ!!」
「ねぇ待って⋯!!
咄嗟に俺が短くも分かり易く各々で行動出来る範囲を伝えた時、シャルが何か異様な物を見つけたのか、一際驚きに満ちてヴィランの軍団の奥に指を差していた。
アレと呼ばれたものが一体何なのか、その目で確かめる。
少し目を凝らして見ると、奥から建物の壁を途轍もない速度で黒いナニカが飛び渡っていた。
何かの人か?何かの動物か?何かの物か?
否⋯どれも違う。
「あれは、まさか⋯───」
そして、その黒いナニカは俺達の前に勢い良く降りて来た。
マジか⋯嫌な予感が的中しちまった⋯ここで来やがるか⋯!
「スベ、テ…コワス…!」
「───自我持ちヴィラン⋯!!」
紫黒色の進軍は⋯まだ終わらない。
事態が急激に悪化しちゃいましたね〜。まぁ書いてんの俺だけど。
変わらず技名のセンスには目を瞑って下さい。
あ〜⋯花粉つらっ。
では〜。