少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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仕事中に思い付いては、いざ書こうとして内容を忘れての繰り返し。
落ち着いて書ける時間が欲しい。

じゃ、どぞ〜。


【2025年3月4日 修正】オリ敵の名前を変更 「ルーラ」→ 「ルラ」
理由としてはルーナさんと似過ぎたからです。


二十五話 『5期生の行方』

 

 

 

 

 

「黄道十二宮『アクアリウス』!そいやっ!」

 

 

「レーザービーム発射ー!くらえ〜!!」

 

 

 一方でときのそらが率いる0期生は、再び現れていた大量のヴィランの処理を行っていた。

 

 すいせいは異能と斧を使って迅速な対応する。青いオーラを身に纏うと、残像を残して行く程のスピードで斬り伏せていた。

 この能力は移動だけでなく、全体の動きの速度が格段に上がるものである。

 

 その近くにいたロボ子は、ヴィランに掌を向けると腕の形が一瞬にして銃口へ変わり、紫光の一閃を横並んでいるヴィランになぞるように放つ。

 遅れて爆発が連鎖して起こり、確実に塵も残さない。

 

 

「うわあぁああぁあ!!こっち来るんじゃねぇ!!すいちゃん助けてぇええええ!!」

 

 

 そんな傍らで、みこはヴィランに追い掛けられていた。

 

 

「ったくも〜⋯!!多過ぎんだよっ!!黄道十二宮『アリエス』!」

 

 

「「「……!?」」」

 

 

 その叫び声に気付いたすいせいは、走って向かうのは無理だと直ぐに判断して、ワープ能力に切り替える。

 

 そして、追い掛けているヴィランの目の前に瞬間移動して、その場で横に一回転して薙ぎ払うように斬る。

 その勢いは緩むことなく、ヴィランを纏めて一太刀で体の上下を泣き別れにした。

 

 

「はぁ⋯はぁ⋯⋯速度上昇の加護が付いてなかったら死んでたにぇ⋯!ありがと、すいちゃん⋯」

 

 

「みこちは戦えないからね、仕方ないよ。それにしても⋯何でいきなりこんなことになっちゃったんかね」

 

 

「分かんないにぇ⋯みんなの所にも出てきたっぽいけど、大丈夫かな⋯」

 

 

「きっと大丈夫だよ。みんな頼れるくらい強いんだし、無理はしない筈だよ。それに⋯あの子もいるんだしね」

 

 

「それって紫黒君のこと?」

 

 

「あずちゃん!そらちゃんも!もう終わったのかにぇ!」

 

 

 みこはそれぞれの場所にいるグループに気に掛けるが、ロボ子の言うことに賛同しようとした時、そこへ別方向に赴いていたそらとアズキが戻って来た。

 

 

「こっちはあずきちと終わらせたから大丈夫だよ。そっちも終わった感じかな?」

 

 

「うん、こっちも問題なし!みこちを追い掛けてた奴らで最後だったみたい」

 

 

「もうホントにやばかったにぇ⋯みこが戦っても大して効かないから、殆どお荷物になっちゃう⋯」

 

 

「でもみこちの異能強化のお陰で、こっちは凄く戦いやすいよ」

 

 

 何も出来ていないと凹むみこだったが、すいせいは全く気にしていないと声を掛ける。

 実際にみこの異能である「異能強化」は、異能の強さを普段よりも倍に強化される。

 

 彼女自身も攻撃手段がない訳じゃないので、サポートの立場にしては貴重な存在になる。

 

 それはそうとロボ子は、生徒会長にして最強の名を持つそらに、この事態に対しての思想を聞く。

 

 

「⋯⋯それで、そらちゃんはこの現象をどう見てる?」

 

 

「そうだね⋯正直に言うと分からない。ヴィランは突然現れるのは変わらないけど、今回は度が過ぎてる。一度に数十体以上の出現⋯ヴィランの行動変化⋯そしてさっき起きた大量発生の再発⋯」

 

 

「異質⋯だね。偶然が重なって、何かしらこの現象が起きるトリガーが引かれた⋯っと言っても、それに関係する内容が少ないから全く分からないよね」

 

 

「でも、みんながどう考えても可笑しいって思ってるなら⋯何かがある筈だよ」

 

 

 そらの後に続けてアズキが不可解そうに言う。

 

 原因は不明。しかし偶然とは思えない程の異常事態の連発に、誰しもが違和感を抱いていた。

 

 

「それもそうなんだけどさ⋯みこ、一つ気になってることがあるにぇ」

 

 

「どしたんみこち。何かあった?」

 

 

「ほら、シオンたんがテレパシーでみんなと情報交換してたじゃん?でもさ⋯ラミィたん達だけ会話に混ざってなかったよね。それってやっぱ可笑しくない?」

 

 

 そこで、みこは自分の中で一番心配なことを全員に明かす。

 

 シオンによる念話での状況確認の時に、全メンバーは参加していたが5期生のみが話に全く入っていなかった。

 この状況下で確認必須の会話なのに、いくら戦闘中でも無視とかは考えにくい。

 

 

「そう言えばそうだよね⋯あの時はまたヴィランが現れたから中断したけど、5期生の状況どころか返事すらしてなかった⋯⋯───っ!」

 

 

「シオンちゃんは念話の高度な技術も余裕だって言ってた⋯みんな干渉してたのに、無視するとかしない筈だし⋯⋯だとしたらっ!」

 

 

 シオンの念話魔法は高い技術力を容易く扱える。

 いつ、どこへいる時にでも数人に絞って特定の人物や、先のように特定で大人数での広範囲の念話を操作することが可能である。

 

 だから、シオンが5期生だけ念話から外すことはまず有り得ない。そうなると、なんで彼女達だけいなかったのかと考えられるとするなら⋯。

 

 5期生の身に何かが起きた可能性が高い。

 

 

「急いであの子達を探さないと⋯!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面は変わって龍成達へ。

 

 自我持ちヴィランの対応を一人で行っていた龍成は、途中で深い傷を負ってしまい劣勢になった時、大量のヴィランを片付け終えたパトラ達と合流。

 

その後、人数差に不利と気付いたヴィランは逃走を図ったが⋯そこへ謎の男が突然現れて、龍成が手を焼いていたヴィランを一瞬にして葬り去ったのだった。

 

そして今、彼らは更なる未知と脅威に直面していた。

 

 

「先ずは初めましてだな、下等生物共。オレの名は″ルラ″と言う⋯あぁ、別によろしくしてやるつもりはない。」

 

 

「⋯こっちだってそんなつもりはねぇ。さっさと質問に答えろ⋯お前、ファントム・ヴィランの類か⋯?」

 

 

 男は丁寧な態度に見せ掛けた口調から、流れるように見下した罵倒を吐く。

 それに対して龍成は短く鼻を鳴らすと、冷たい言葉を投げ掛けて警戒を強める。

 

 その風貌から感じる気配はヴィランそのものと同じ⋯いや、自我持ち以上の強いモノを醸し出していた。

 

 自我持ちと違って言葉は流暢に、そして自身の名を晒した。

 

 

「ファントム・ヴィラン⋯⋯あぁ、貴様らの間では奴らをそう呼んでいるのか。回答としては⋯恐らくそうだろうな」

 

 

「恐らく⋯?」

 

 

「オレ自身も⋯自分が何者なのかはよく分かっちゃいないが、これだけは言える⋯───」

 

 

 

 

 

「オレは誰よりも孤高な存在だと⋯」

 

 

 

 

 

 なんだこいつ、と全員が心の中でそう思った。

 

 奇しくも意見が一致した時、フレアを始めに3期生が口を並べて皮肉った言葉を放つ。

 

 

「自分よがりにも程があるんじゃない?」

 

 

「いくら船長でも、貴方みたいな人にはときめきませんよ!」

 

 

「うっわ〜⋯ただの痛い奴ぺこじゃん」

 

 

「厨二病みたいな自分大好きマンだね」

 

 

「薄汚いナルシストなのです」

 

 

「散々な言われようだな?⋯で、お前は一体何が目的なんだ?」

 

 

 容赦のない口頭に龍成も軽く便乗して煽り、こちらも見下し返すように視線を強く向ける。彼女達も逃がさないと言わんばかりに睨みを利かせていた。

 

 しかし、その様子を一蹴するように鼻で笑うが、表情は何処か不機嫌そうにも見える。

 

 

「ふん⋯言動には気を付けてるんだな。俺の機嫌次第でこの世界なんぞ簡単に滅ぶ運命に進められる。それに、オレに目的なんてものは存在しない」

 

「いや、あるとするならば⋯───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()こと⋯それだけだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 その言葉に理解が出来なくて困惑した。それは全員も同じ気持ちだった。

 

 そんな唖然とした様子をする彼らに、ルラは小馬鹿にしたように口角を上げながら話を続けた。

 

 

「オレには面白い能力を持っていてなぁ?これがまぁまぁ便利なものよ。貴様らが必死で倒そうとしている奴らを、オレは簡単に()()出来る⋯⋯ここまで言えば、何となく気付くんじゃないか?」

 

 

「⋯⋯まさか⋯!?」

 

 

 ルラの口から出てきた洗脳する能力、そしてその内容から想像するに⋯奴の言っている言葉から察するのは難しくなかった。

 

 龍成はその意味に気付くと驚愕の表情を浮かべて、自分の中で生まれた嫌な予感をルラに聞き返す。

 

 

「あの大量のヴィラン⋯⋯お前が全部()()()()のか!!」

 

 

『っ!!?』

 

 

「ご名答。オマケにあの喋る奴もな」

 

 

 その衝撃の事実にルラは呆気なく認める。ついでにと、更にとんでもない一言を添えて。

 

 だが、それが本当なら今までの事態に合点がいく。

 

 急なヴィランの大量発生に集団行動、そして再発に自我持ちの出現。

 ある筈のない不可解な連続の事態に、ルラの洗脳の力で成しているのならば不思議ではない。

 

 そこで、シャルは何処か納得のいかない様子だった。

 

 

「でも⋯だとしたら、何でこんなことを⋯!!」

 

 

「言っただろ。楽しむ為に⋯だ。数多の命が絶望に染まり、心地の良い悲鳴、空に煌めく鮮血。まさに阿鼻叫喚の広がる景色を眺めているのが、オレには至高の娯楽だ⋯!」

 

「いやはや⋯まさか、オレ自身もこの力が宿っていたのは嬉しい誤算だったよ。たまたまとは言え、()()()()を触れるだけで簡単に戦力を増やせるのは実に楽だった⋯まぁ、結果的にゴミ同然だったが」

 

「支配⋯そして娯楽が好きなオレには、まさに歯車が噛み合ったように相性が抜群だった!⋯⋯だからオレにとっては、これはただのお遊びなんだよ」

 

 

 ルラは恍惚と嬉々が混ざったように表情を歪め、その口から伝えられる衝撃の内容に誰もが口を噛み締める。

 

 今の会話から分かるように、この混沌の事態を生み出したのはルラだ。

 

 多くの人々の命が弄ばれ、中には多数の犠牲者もいた。街の被害も甚大なものになり、かつてない大きな災害となっている。

 その非人道的な所業を娯楽と称するルラに、全員の怒りは大きく滾る。

 

 

「なんてことを⋯!」

 

 

「ふざけるなっ!!どれだけの命が亡くなったと思ってるんですかっ!!」

 

 

「相当頭がイカれてんのね、あんた⋯!!」

 

 

 パトラとフブキとメアリは、怒り故にルラの行為に強く非難する。勿論、三人だけではなく皆も同じ気持ちである。

 

 そして、言葉だけじゃ我慢ならなかった者もいた。二人の獣人がルラに素早く接近して武器を振るう。

 

 

「おっと⋯」

 

 

「調子に乗るのもいい加減にしとけよ。お前がどんなクズだろうが、ヴィランならぶっ倒すことには変わりないでな。でも、こぉね⋯お前のこと大っ嫌いだわ」

 

 

「ボクもさ〜⋯流石にこれは我慢ならないかな〜?これがお遊び?笑えない冗談は好きじゃないんだよ、ボクは」

 

 

 だが、ルーラはころねとおかゆの不意打ちに焦ることなく、身を引く為に更に上空へ浮遊したことで、二人の攻撃は届かなかった。

 

 ころねからは果てしない威圧を放ち、虚無のような瞳でルラを睨み付ける。

 おかゆも口調こそは変わらないものの、何時もの緩い雰囲気は完全に消え、獲物を狩る猛獣のように目を細めていた。

 

 

「お前、随分な余裕だな⋯?この人数相手に自分の手の内を明かしといて⋯一人でウチらと戦う気?」

 

 

 ミオも怒りを隠せないのか、冷淡な口調でルラを挑発気味に言葉を投げる。

 

 けど実際、もう他のヴィランはいないし自我持ちは奴が自ら葬った。龍成達を相手に一人で戦うのは、流石に無理があるだろうと誰もが思う。

 

 しかし、そんなことにもルーラの余裕そうな態度は変わらなかった。

 寧ろ、何を言っているんだと小馬鹿にしたように見下している。

 

 

「はんっ⋯オレがいつ一人だけと言った?丁度いい、貴様らに見せたかったモノがあるんだ⋯喜べよ?」

 

 

「何をするつもりだ⋯?」

 

 

 不穏な台詞を吐きながら、どこか楽しみ気にほくそ笑むルラに、龍成は警戒心を最大に引き上げて構え始める。

 彼に続いてパトラ達もそれぞれ構え出して、何時でも牽制出来るように見据える。

 

 

 

「────来い、()ども⋯」

 

 

 

 ルラが指を鳴らすと龍成達の正面から黒い渦が現れた。それは闇のように暗く、なんでも吸い込んでしまいそうな異質な現象に思える。

 

 何を仕出かすつもりなのかと、より強く警戒していると⋯その黒い渦から何かが出て来た。

 

 

 

「「「「⋯⋯」」」」

 

 

 

「なっ⋯!?」

 

 

「嘘⋯そんな⋯っ!?」

 

 

 龍成とるしあが同時に声を上げて驚愕する。パトラ達も信じられない、信じたくないと目を見開いた。

 

 それらは誰もが知っている人物達。

 

 何故、どうして、いつ何処で⋯暫く前までは当たり前のように話していた筈なのに、なんでこんなことになっている?

 

 そんな受け入れ難い事実を目の当たりにした全員は、呼吸も忘れる程の絶句をせざるを得なかった。

 

 念話での状況確認の時から、一つのグループだけいなかった。誰もが気になっていた彼女達の行方は、最悪の形で知ることになる。

 

 

「遊びにはちょうど良さげな駒がいたもんでね。どうだ?嬉しい再会だろう?」

 

 

 黒い渦から現れたのは四人の少女達⋯───

 

 

 

 ねね・ポルカ・ラミィ・ぼたんの5期生だった。

 

 

 

 目立った外傷はないが、その佇まいは魂の抜けたように放心していた。

 彼女達にあった色鮮やかで輝かしい瞳は⋯暗い紫色に侵食され、表情は死んだように虚無だった。

 

 見るから察するに、彼女達は操り人形にされていた。

 

 

 

 

 

 ───ボォウッッ!!!

 

 

 

 

 

 その瞬間、龍成から莫大な圧力が放たれる。

 

 今までのとは大きく異なり、その中には″殺意″が込められている気がした。その感情を表すように、炎が燃え上がったように紫色の気が激しく噴き出す。

 

 

 

───貴様⋯っ!!!

 

 

 

 ゆらゆらと髪が逆立ちだして、睨み付ける瞳は黒紫色に変色して瞳孔も細くなり、噛み締めた口から見える八重歯は異様に鋭くなっている。

 

 その姿は普段の彼から想像出来ない程の恐ろしいモノに変わり果てた。ルラに向けている形相は正しく⋯逆鱗に触れた龍と呼ぶのに相応しいだろう。

 

 

「りゅ、りゅう⋯君⋯?」

 

 

 パトラ達はそんな彼に酷く驚いていた。

 あまりの変化に、あまりの迫力に、あまりの恐怖に、ルラへの怒りも忘れて龍成に視線が離せない。

 

 

「クッハハハ⋯!いいねぇその反応⋯力が呼応しているのが分かる!さぁて⋯余興もここまでだ。そろそろ本番へといこうか⋯!!」

 

 

「俺が貴様の相手だ⋯───腰抜け野郎⋯!」

 

 

「ふんっ⋯いいだろう、オレも貴様の相手がしたかったところだ⋯!誰にも邪魔されないよう場所を変えるか。着いて来い⋯!!」

 

 

 ルラは彼の風貌に怯むことなく、漸く遊べると興奮した子供のようにはしゃぎだす。

 そして奴がこの場から飛んで離れると、龍成も直ぐに後を追おうとしたが既の所で、パトラが怯えながらも声を掛ける。

 

 

「ぁ⋯ちょ、りゅう⋯君⋯?」

 

 

「⋯⋯悪い、ぼたん達は任せた。俺は⋯奴を潰す⋯!

 

 

 しかし、何かを言う前に彼はルーラを追い掛けて行ってしまった。音も無くその場から消えて、気付けば遥か向こうに跳んで行った。

 

 今の龍成には冷静なんてものは無くなり、怒りの感情に身を任せているのが見て取れる。

 

 

「ちょっと⋯龍成君っ!?」

 

 

「彼があんなにキレてるの⋯初めて見た⋯」

 

 

「それよりも⋯!ラミィちゃん達を止めないと⋯!!」

 

 

 ミオは慌てて声を掛けるも龍成にはもう届かない。フレアの呆然とした言葉もフブキによって掻き消される。

 

 

「っ!?みんな避けてっ!!」

 

 

 その時、ノエルが何かに気付いて全員に避難するよう叫んだ。

 何故と聞く前に、全員は彼女の言う通りにその場から大きく跳んで離れる。

 

 すると、さっきまで立っていた場所に巨大な氷結晶が隆起していた。

 

 

「な、なんか⋯ラミィちゃんの魔法ってあんな強かったっけ!?」

 

 

「いや、ここまでじゃあ⋯」

 

 

 

 ───ダンッ!ダンッ!

 

 

 

 前とは違って威力があるラミィの魔法に、シャルとるしあは混乱していた。

 そんな無防備な状態の二人に向かって鉛玉が飛んで来ることに、気付くのが遅れる。

 

 

「二人共ぼさっとしないで⋯!!」

 

 

 だが、メアリの重力魔法によって強引に引き寄せられたことで被弾は避けられた。

 ぼたんが撃った弾は二人のいた場所を素通りし、虚空へ消えて行く。

 

 

「ぼたんちゃんも、前よりも動きが格段に速くなってるぺこ⋯!」

 

 

「もしかして⋯洗脳だけじゃなくて余計に強くなる要素まで加えたの!?面倒臭いことしやがりますねっ!!」

 

 

「いつメンのグループに別れて対応しましょう!!3期生はぼたんちゃんをっ!パトラちゃん達はラミィちゃんをっ!」

 

 

『了解っ!!』

 

 

 どうやらただ操られるだけじゃなく、強化までされていることに厄介だと思わざるを得ない。

 

 5期生の集団行動力は元からかなり高い為、一度に四人相手だと手厳しいと判断したフブキは、各グループに別れて対応することにした。

 

 

「じゃあウチらはねねちとポルカを止めないとねっ!」

 

 

「とっとと止めるでな!そんであのクソ野郎をしばきあげパンチングしに行ってやるっ!!」

 

 

「ボクもあいつの顔を引っ掻き傷だらけにしたいな〜」

 

 

 龍成のことも心配ではあるが、先ずはこの四人を止めなければならない。

 

 フブキ達は洗脳されたねねとポルカの二人を同時に相手にする。

 それぞれ構え始めて二人の動作を注意深く見据えるが、ミオの中では一つ不安があった。

 

 

「でも、止めるにしてもどうすれば⋯」

 

 

「あれじゃないかな?よく漫画やアニメだと、洗脳された仲間は気絶させれば元に戻る⋯!とか!」

 

 

「そんな都合良く⋯いや、でも⋯うーん⋯」

 

 

「まぁまぁ、取り敢えず思い付いたことからやってみようよ。ほら、来るよ」

 

 

 フブキの言うことに否定しようとしたが、ないとも限らないので当否に迷ってしまう。

 そこで悩んでしまうミオに透かさずおかゆがフォローすることで、目の前のことに意識を持ち直させる。

 

 そして、真っ先に攻撃を仕掛けて来たのはねねだった。

 身の丈のあるハンマーを軽々と持ち上げながら助走をつけて高く跳ぶと、ころねに向かって振り下ろす。

 

 それを大剣で受け止めたが、彼女の顔は顰めていた。

 

 

「ころさんっ!」

 

 

「くぅ〜⋯っ!大丈夫でな!でも⋯ねねちゃんの力が強くなってる!」

 

 

 「怪力」の異能を持ったころねでも手が痺れる程の衝撃。

 ねねとの鍔迫り合いにフブキが助けに入ろうとした時、それを阻むようにポルカが爆弾仕掛けの球を連続で投擲してきた。

 

 その所為で手助けに迎えずにいたが、ころねはなんとか押し退けて距離を取った。

 

 

「ボルカも厄介なサポート力に極振りされてますねっ⋯!」

 

 

「一筋縄じゃいかないね⋯面倒臭いことしやがってあの男⋯!」

 

 

 おかゆところねはねねを相手にし、フブキとミオはポルカを止める為に自然な流れで二対一に別れるのだった。

 

 多種多彩な手法を持っているポルカに、超絶パワーでねじ伏せるねね。

 

 そんな厄介な置き土産をしたルラに、ミオは静かに怒りを募らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら誰にも邪魔されずに対等に殺り合えるな」

 

 

 暫く移動したルラは浮遊していた身体を降ろし、地に足を着ける。

 

 そこは身を隠す遮蔽物も少ない開けた大通りの場所。辺りを軽く見回すと、納得したように小さく微笑み、片手に持っている剣を眺める。

 

 そうしていると、足音が聞こえて視線を向ける。

 

 そこには怒りを剥き出しにしている一匹の龍が、睨みを利かせながら威風堂々と歩み寄って来ていた。

 

 

「容赦はしねぇぞ、このクソ野郎⋯街を壊して、命を奪って、仲間にも手を出しやがって⋯!これが遊びだ?寝言は寝て言いやがれ⋯!」

 

 

「何をそんな怒る必要がある?お仲間と無事に再会が出来ただろう?オレは変に手を出しちゃいないぞ⋯まぁ、ちょっと弄らせてもらったがな?今頃、他の女共と楽しく殺し合ってるんじゃねぇか?」

 

 

「もう喋るなっ⋯!!」

 

 

 非常に嫌悪感のある言葉に、龍成は堪らず地を蹴る。その勢いで地面は抉れ、空気を裂く。

 

 ルラの顔面に目掛けて拳を振るう。一秒も満たずに距離を縮めて来たことに少し驚くものの、身を引いて避ける。

 無論、それだけで終わる筈がなく攻撃を続ける。

 

 気を更に激しく解放して素早く手足を繰り出して牽制するが、ルラは避けるか防御して、まるで様子を伺うように対応していた。

 

 

「へぇ⋯どうやら本当に口だけが達者じゃないようだな⋯───面白いっ!!」

 

 

「っ⋯!チィッ!」

 

 

 そして、初めてルラが攻めに入り始めた。

 

 受け止めていた龍成の脚を押し退けて、持っている武器で応戦する。剣を振るうと刀身が鞭のように撓り、不規則な動きを見せる。

 風を裂く音が連続で鳴り、視認が難しい程の速度で斬り掛かってくる。

 

 ルラが手にしているのは通称「蛇腹剣」というワイヤーで刃が連結しており、剣にも鞭にもなれる厄介な道具である。

 

 奴は本当に遊びのつもりなのか、急所を狙わず腕や脚ばかりを斬ろうとしていた。

 だが、彼もそんなことに怯むことなく攻防に持ち込んで行く。

 

 

 

────ズギッッ!!

 

 

 

「づぁ⋯!?」

 

 

 しかし、お互いに不利を譲らないのも束の間。怒りによってタガが外れた身体はそう長く続かない。

 龍成の興奮状態は余計に身体の負荷になってしまい、忘れていた左肩の切り傷の痛みが全身に響いてしまった。

 

 

「その程度か?」

 

 

「ごぅ⋯!?」

 

 

 その大きな隙を見逃すことなく、ルラは腹部に向けて鋭い蹴りを入れた。

 

 防御をする間もなくモロに受けた龍成は、肺の空気を吐きながら吹っ飛んで地面を転がって行くが、その勢いを利用して直ぐに体勢を立て直した。

 

 

「ふっ⋯クッハハハハ!」

 

 

「っ⋯何がそんなに可笑しい⋯?頭のネジでも外れたか?」

 

 

「貴様、まだ気付かないのか?」

 

 

「あぁ⋯?」

 

 

 そんな時、ルラが突拍子もなく笑いだした。何処に笑える要素があったのか分からず調子が狂いそうになり、龍成は不機嫌になって更に顔を顰めた。

 

 それからルラは何かに気付いているようだが、その意味が分からずただ苛立ちを募らせていた。そんな龍成の様子に仕方ないと言いたそうに鼻で嗤い、話を続ける。

 

 

「お前が力を増せば増すほど、オレもそれに()()するんだよ。何が言いたいか分かるか?つまりだ⋯お前が強くなればオレも強くなるんだよ

 

 

 衝撃的な発言をするルラに、龍成はそれがハッタリだとは思っていない。

 

 実際は何となくその事実に気付き掛けていた。気を操作して力を増した時、その同時にルラからも気が膨大になったからだ。

 

 それに連戦続きな上に怪我も負った状態で、無傷で疲弊もない万全なルーラを相手にしている。そこだけでも奴に分があると目に見えて分かる。

 

 言ってしまえば、戦況は悲惨なものだろう。

 

 

「⋯だから何だ?お前の言う通りだとしても、俺のやるべきことは変わらねぇ。必ずお前をぶっ倒してやる⋯!」

 

 

 だが、それがどうした?

 

 尊き命を遊び感覚で奪い、ぼたん達を道具のように扱い、長い時間を掛けて発展させた街を壊した。

 それをへらへらと楽しげに行うとはなんと度し難いことか。

 

 この煮え滾る怒りをぶつけられずにはいられない。勝てる勝てないなどどうでもいい。ただ奴を必ず倒すと、決して許さないと自分自身に発破をかける。

 

 

「はぁ⋯察しが良い奴だと思っていたんだが、オレの見当違いだったか。」

 

 

 しかし、ルラは呆れたと言わんばかりに溜息を吐いた。

 

 

「オレが言いたいのは勝敗の論点じゃない。気付かないのか?貴様はオレと⋯いや、オレ達⋯───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





「支配者」→「ruler」→「ルーラー」→『ルラ』


既存のアニメや漫画の二次創作と違って、ほぼ全て自分で考えなきゃならないから⋯結構むずいっすね。

初のオリ敵が登場しましたが、はい⋯名前まんまっすね。安直な名前に因んで俺様系にしたいんだけど⋯口調がそれっぽくなってるかわからん。

まぁ、頑張ります。

では〜。
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