少年は嘗ての故郷を望む   作:黒いラドン

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どうも。思ったより本文に時間が掛かりました。出来たら一万文字以内に収めようと思ってたけど、無理でした。

じゃ、どぞ〜。


二十六話 『底知れぬ悪意』

 

 

 

 

 

 洗脳されたポルカとねねを止める為に、フブキ達は二人一組に別れて対応することになった。

 

 フブキとミオが対応しているポルカは、洗脳されていても戦闘スタイルは普段と変わらない立ち振る舞いを見せる。

 

 大玉に乗りながらもバランスを崩すことなく、ちょこまかと移動しながら大量のナイフを発現させ、フブキとミオに刃先を向けて躊躇なく飛ばす。

 

 

「うわっ!?ナイフがめっちゃ⋯!!この量は捌き切れないよっ!?」

 

 

「ウチに任せといて!焔天拳『緋打(ひてい)昂穿(こうせん)』!!」

 

 

 『囲繞追撃の小刀会(ロデ・ア・ジャス・ナイフ)』を前にしたフブキは、刀一本では捌き切れないと足を止めてしまう。

 だが、そこへミオが庇うように前に出て、拳に焔を纏わせると豪快に大きくアッパーを繰り出す。

 

 すると、空中に噴火したように焔が現れると波状になって覆うように二人を守る。妖力を扱う彼女の焔はそこらの炎とは一味違い、触れたものを一瞬にして灰に変える。

 

 少ししてナイフは止み、その瞬間を逃さなかったミオは焔を消して走り出した。

 だが、その次に目にした光景は異様なもだった。

 

 

「今度は人形だらけっ!?あーもうっ!邪魔くさっ!!」

 

 

「ポルカの技は質より量だからね⋯!こっちも手数で攻めるしかないか!幻像『月下の』!」

 

 

 今度は大量の『舞い踊る人形劇(ダンザ・ディスタル・マリオネット)』が列を乱しながら、無造作に襲い掛かって来る。

 しかし大した威力もなく、ただの威嚇ようで邪魔でしかないブラフであるのは周知。

 

 だが、この大群で為せるこその強みがあり、時間稼ぎや妨害には打って付けの撹乱法である。

 

 ミオは人形を鬱陶しく殴り飛ばしても、次から次へと道を阻む。

 そこでキリがないと思ったフブキは、ヴィラン戦で使った技を再び利用することにした。

 片手で印を結び、自分自身の分身を創る。人形達より数は劣るが無いよりマシである。

 

 

「まだまだ!幻武『(げん)(そう)(けん)』!」

 

 

「このまま押し切れそう!」

 

 

 それだけでは足りないと続けて技を使う。印を結ぶ手の形を変えて技を発現させると、フブキの両脇から頭上にかけて五つの蒼く幻想な剣が浮遊して出現する。

 

 幻蒼剣は彼女の意思で動く他律型で、好きな時に動かすことが出来る。

 だが、銃のように放つことしか出来ない為、使いどきを見極めなければならない。

 

 分身に何体か相手をしてもらい、幻蒼剣で直線を切り開く。

 強引な打開方法になるが、ポルカに接近するならこの方が手っ取り早い。

 

 

「ウチが道を作るから、フブキはポルカをお願い!!」

 

 

「任せんしゃいっ!!」

 

 

 幻蒼剣も使い切り、あと少しという所でまた人形達が詰め寄って来る。

 そこで後を追っていたミオは、更に速く駆けてフブキの前に出ると、己が囮になると提案した。

 

 ポルカはフブキに任せてもらい、ミオは迫って来る人形を一蹴して一本の道筋を作り出す。

 

 ある程度の距離まで詰めた時、フブキは一瞬だけ身を屈めてから高く飛び、一気にポルカの所まで降りて行く。

 

 しかし、ポルカも黙って見守ることはなく『華咲く火玉(ラ・フラワレム・ジャグリング)』を何度も投げ付けて貢献する。

 何時もサーカスのように歓楽のある笑顔が特徴の彼女は、今や感情も何もない虚無で振舞っている姿が痛々しく感じる。

 

 

「っ!なら⋯幻視『夢居(むい)(てん)(てん)』!」

 

 

 慌てることなく素早く印を結んで攻撃の対策する。淡く蒼白いオーラを纏い、瞳を輝かせながら鋭くさせる。

 しっかり者で可憐なフブキからとは思えない程の威圧感が、ポルカの体を強ばらせた。

 

 火玉はフブキに向かって吸い込まれるように飛んで行くが、それを避けようともせずに真っ直ぐポルカから逸れようとしない。

 

 そして、火玉が触れたと思いきや⋯彼女の身体が蜃気楼のように空気中へ消えた。

 

 視界の正面にいた筈のフブキは何故か左端に、するとまた消えて次は右下端に⋯右上、左下端、中央下、左上へと連続で瞬間移動のようになって着実に距離を詰められる。

 

 

「目を覚まして!ポルカッ!!」

 

 

「⋯⋯」

 

 

(やっぱり声を掛けても無反応⋯仕方ないですね、出来ることなら無傷で助けたいけど⋯ちょっとだけ痛いからね!)

 

 

 ただ声を掛けても、ポルカの瞳から暗闇が晴れることはなかった。やはり洗脳の力が強いのか、簡単には終わらせてはくれない。

 

 事前に気絶をすれば戻る体で話は決まっていた為、声掛けが通用せずとも焦ることはないが、本当に戻るのかが懸念ではあった。

 しかし、このまま暴れられる訳にもいかない。

 

 距離は充分に手が届く位置。後は単純なこと。

 

 ポルカが次の手段に移る前に、背後に瞬間移動して⋯───

 

 

「当身ぃっ!!」

 

 

 

 ───ゴッ!!

 

 

 

 項に手刀を叩き付けた。

 

 ハンマーで殴ったようなとても鈍い音が響き、ポルカは崩れるように体を倒した。

 その拍子に大量の木偶人形も消失したので、気絶したと確信出来る。

 

 フブキも術を解いて分身を戻し、妖力を抑えているとミオが慌てて近付いて来ていた。

 

 

「フブキッ!?思いっきりやばい音がしたけどっ!?」

 

 

「大丈⋯夫だよ!獣人だったらこのくらいの威力の方が確実に気絶するし⋯!」

 

 

「本当に大丈夫!?今のはウチでも喰らいたくないよっ!?」

 

 

「だ、大丈夫だって⋯多分⋯!それにポルカならこのくらい大したこと⋯」

 

 

「ポルカの顔見てみ?なんか魂抜けてない?」

 

 

 尻を突き上げた状態でだらしなく倒れているポルカは、白目を剥いて口から魂のような何かが出ている。

 そんな故人みたいな様子に、フブキは頑なに納得しようとしない。

 

 

「ま、まぁ兎に角!こっちは一件落着です!このままころねとおかゆの助太刀に行くよ!!」

 

 

「はぁ⋯まぁいっか。一旦ポルカを安全な場所に置いて行こうか」

 

 

 強引に話を切り替える姿に、ミオもこれ以上気にしてられないと諦め、ポルカを担いで先に行くフブキの後ろ姿を追い掛けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「う〜ん⋯迂闊に手が出せないねぇこれ」

 

 

「動きには付いて来れてないみたいだけど⋯暴れまくってる所為で無理に詰められないし、こぉね達も武器が武器だからね⋯」

 

 

 おかゆところねの二人は対面している人物に、困ったように眉を下げていた。

 

 身の丈以上のコミカルなハンマーを持つねね。彼女は洗脳の影響によって少女らしからずの身体能力を得ていた。

 おかゆ程のスピードはなくとも、パワーはころねの同等かそれ以上に値するもの。

 

 それ故に困ることが多い。彼女の強大な力は喰らいたくないこと、ねねは人間だから下手に手を出せないこと、自分達が持つ武器の殺傷力が高いから余計に攻めずらい。

 

 ころねはうーんと頭を悩ませていたが、おかゆにはそう言った様子はなくて何処か淡々としていた。

 

 

「でも戦ってみた感じ、そう難しくないんじゃない?」

 

 

「え?何が?」

 

 

「ころさんのパンチだったら直ぐに終われそうだけど」

 

 

 おかゆから伝えられる言葉に少し沈黙する。そして疑問と困惑が同時にやって来て、ねねとおかゆを交互に見ながら慌てだす。

 

 確かに武器がダメなら生身しかないのは分かる。が、接近する為には先ず⋯───

 

 

 

 

 

 ブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンッッ!!!

 

 

 

 

 

 竜巻の如く回転してるねねをどうにかしなければならない。

 

 

「で、でもどうやって攻めるの!あんなハンマーで回転してるねねちゃんに近付ける訳ないじゃん!」

 

 

「速さに自信はあるからそこはボクに任せて。隙は作るから、その後はお願いね?ころさん」

 

 

「うぅ〜⋯や、やっぱり無理だって!!」

 

 

「ボク、ころさんのかっこいい所見たいな〜⋯うるうる⋯。 」

 

 

「うぉううぉううぉうっ!!やったるぞおらぁああああああっ!!」

 

 

「さっすが〜ころさん!⋯⋯チョロいね

 

 

 なんとういう切り替えの速さだろうか。おかゆの涙にあっさりとやる気を百倍に引き出したころねは、目的も変わり瞳に闘志を燃やして挑むようになってしまった。

 

 おかゆの一芝居だとつゆ知らずに。

 

 だが、やる気を出したなら都合が良い。何時までもくっちゃべても状況は変わらないので、おかゆもさっさと行動に移す。

 

 

「へいへい〜!こっちだよ〜ねねちゃ〜ん。ほらほら〜どうしたの?そんなに回ってたら気持ち悪くなっちゃうよ〜?」

 

 

 自分へのヘイトを向けるよう煽ってみれば、簡単に標的をおかゆに決めてくれた。

 まるで独楽のように移動してくる光景は中々にシュールだが、威力は確実に殺人事件が起こる程だ。

 

 だが、脅威はそれだけで当たらなければ問題ない、と言うやつだ。

 

 

「にゃ〜ん!ざんねーん、こっちでした〜!当てるんだったらちゃんと狙わないとだよ?」

 

 

 おかゆは猫の獣人。その移動速度や跳躍力は軽々と常人を超える。

 

 余裕そうに口を開いて煽りは止めない。近付けば簡単に頭上を飛び越え、触れたと思いきや後ろに回り込まれる。

 

 それを繰り返している内に、次第に回転力の勢いが弱まっていた。

 そしてとうとうハンマーで竜巻を止めて、ねねは普通におかゆを襲うようになった。

 

 ただ構えながら走っているのだが、その姿に何処と無く苛ついているようにも見える。

 

 攻撃のパターンを変えたねねに、口角を上げながら目を細める。

 依然として対処の仕方は変わらず、おかゆとしてはより正確に狙って来てくれる方が都合が良いと思っていた。

 

 

「がんばれがんばれ〜♪おぉっとっと⋯!───な〜んてね♪」

 

 

「⋯⋯!」

 

 

「隙ありっ!今だよ!ころさん!」

 

 

 態と油断したと思わせながらギリギリまで距離を寄せて、焦って攻撃してきたその瞬間を狙って躱す。

 

 叩いたと思ったねねは、ハンマーから手応えの無さに気付くも遅かった。背後から伸びてきた腕で、両腕を羽交い締めで拘束された。

 そうして動きを止めさせたおかゆは、待機していたころねに合図を送る。

 

 それを聞いてニヤリと口元と歪め、待っていたと言わんばかりにころねが駆け出した。

 外ではしゃぐ犬のように、しかし凶暴さを付け加えて。

 

 ねねもどうにかして離れようと暴れるが、おかゆが必死に食い付いてその場から離さない。

 手が届く距離まで詰めた瞬間、おかゆは拘束を解いて距離を取った。

 

 

 

「しばきあげパンチングッ!!」

 

 

 

 ───ドゴッ!

 

 

 

 容赦ないテレフォンパンチがねねの腹部を捉えた。

 

 綺麗に弧を描いて上空へ吹っ飛んで行き、地面に落ちる前におかゆがキャッチをして二次被害を阻止した。

 ころねが放った威力の強さに慌てて状態を確認する。

 

 抱えられたねねは、だらりと手足に力無く垂らしていて、顔を覗いて見れば白目を向いて口から魂のようなものが出ている気がした。

 

 その様子で一目見て気絶したと分かったが、おかゆはころねに咎めるように目を向ける。

 

 

「ころさん⋯今のはやり過ぎだよ⋯」

 

 

「⋯⋯加減はしたけど⋯起きたらねねちゃんに謝る」

 

 

 本人は加減したつもりだったらしいが、ねねからすれば砲丸を受けたようなものだろう。

 洗脳の影響で覚えているかは分からないが、罪悪感があったころねはシュンと耳を垂らすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「これ不味いね⋯団長達の武器も殺傷力高いから迂闊に攻められないよ。」

 

 

「でもぼたんちゃんのフィジカルもイカれてるから、中途半端に攻めたにしても全部避けられちゃうよ!」

 

 

「るしあの骸骨も全部壊されるのです⋯でもどうにかして止めないと⋯!」

 

 

「うぅ⋯射撃マスターのぼたんちゃんだから近付けねぇし、おっかねぇぺこ⋯」

 

 

 洗脳されたぼたんを止める為に戦っていた3期生は、それぞれの連携を活かして迫っていたが、ぼたんはたった一人で五人の勢力を振り切っていた。

 

 彼女はホワイトライオンの獣人。素で高い身体能力に加え、熟練された銃や手榴弾の扱いがより厄介さを招き、苦戦を強いられていた。

 

 

「てやぁっ!!」

 

 

「ノエル!無理しないでっ!」

 

 

「団長の頑丈さに任せて!異能のお陰でこっちもあんま痛くないから!」

 

 

 「鉄壁」の異能を持ち頑丈さに自信があるノエルが率先してぼたんの前に飛び出す。

 フレアの不安な呼び声に、振り返らずに心配無用と怖気なく牽制する。

 

 実際にノエルは異能があることで、肌に撃たれてもかすり傷程度で済むくらいなのだ。

 それを自分が一番理解しているからこそ前線へ出て、ぼたんをどうにかして動きを止めようと、自分の持ち武器であるメイスを振るって攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、ぼたんにも洗脳の影響で強化されてしまい、様々な機能が鋭くなっている。反射神経、視認力、判断力が彼女を更に困難を呼ぶ。

 

 素早さに余裕で買っていたぼたんは、適切な距離を保ち続けながら弾丸を放っていた。

 ノエルは身体への被弾を無視し、無理矢理にでも拘束してやろうと一気に詰め寄った。

 

 

「⋯⋯!」

 

 

「っ⋯!?」

 

 

 だが、そこでぼたんは懐から手榴弾を放り出した。

 

 ノエルはそれに驚愕するのだが、何より驚いたのはぼたんとの距離が近いままなこと。

 自分は軽い怪我で済むのだが、このままだとぼたんの方が被害が大きい。

 

 まさかの自爆特攻かと、そう思わされた。不味いと、咄嗟に手榴弾に注視した時だった。

 

 

 

 ───ダンッッ!!

 

 

 

「うぁっ⋯!?」

 

 

 それが罠だった。転がされた手榴弾は()()()()()()()()()()()状態。

 

 ″爆発の恐れ″というその注意逸らしが命取りになり、ノエルの頭部に被弾した。

 いくら頑丈さが取り柄でも、ぼたんの持っていた″ライフル銃″の威力の衝撃には耐えられなかった。

 脳震盪のように脳が揺らされ、そのまま倒れてしまった。

 

 

「っ!ノエル!!」

 

 

「るしあ!カバーお願い!」

 

 

「くっ⋯『追巡(ついじゅん)(こう)()』!」

 

 

「⋯⋯!」

 

 

 マリンが咄嗟にるしあに指示をして、フレアは焦ったのか弓矢で技を放った。

 

 るしあが呼び出した骸骨を、ぼたんは拳銃を用いて次から次へと壊しながら距離を取っていた。

 そこへ追い討ちに、フレアが一度に放った数本の矢は、黄金に光り輝きながら別々の方向からぼたんを追い掛ける。

 

 それに気付き、すぐ側までやって来た一体の骸骨を、体術で足を崩させてから迫り来る矢に向けて投げ飛ばした。

 骸骨と矢が衝突すると同時に、どちらも爆ぜるように消失した。

 

 残りの矢も同様に行い、効率化を図ったように二つの攻撃を同時に捌き切った。

 

 

「何とか逃げたはいいけど、全く通用してないのです⋯!」

 

 

「いったぁ⋯ごめんね、みんな⋯」

 

 

「気にしないで、ノエルが無事ならいいんだよ。でも、あんまり無理しないでね?それにしても⋯ぼたんちゃんって、あんなに動けるんだね⋯」

 

 

「流石はぼたんさんだね⋯話には聞いてたけど、やっぱ強さのレベルが違いますね⋯うちのぺこらと違って」

 

 

「こんな時にまで言いやがって⋯!仕方ねーだろ!ぺこーらは直接戦うのが苦手なんだよっ!」

 

 

「じゃあこの騒動が終わったら、マリンとマンツーマンで稽古をつけてやるんだワ!いいね?ぺこら!」

 

 

「もう分かったから!目の前に集中しろぺこ!」

 

 

 ぼたんの意識が外れている所を狙っていたぺこらは、倒れたノエルを回収する。

 タンク役が迂闊に行動が出来ない為、瓦礫に陰に隠れながらもう一度状況を立て直すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ラミィちゃんの魔法がこんなに強いなんて⋯っくしゅん!うぅ、さっぶい⋯」

 

 

「元々、ラミィちゃんは氷の魔法に関しては私達でも叶わない程の熟練さ。それに洗脳の影響もあって更に厄介になってるわ⋯」

 

 

「まさか、ボク達の魔法の殆どが効かないなんてね⋯」

 

 

「それもそうだけど⋯咄嗟の対応力もあるからかな」

 

 

 5期生の最後の一人であるラミィと戦闘をしていたハニスト組も、3期生と同様に戦況が悪い方向へと傾いていた。

 肉弾戦が一切無い魔法での戦いは、ラミィの方に勝機が現れつつある。

 

 彼女達の周辺には所々に氷塊が転がっていて、地面から隆起した氷結や、凍結した建物に結露した道路が状況を物語っている。

 

 その光景に伴ってどんどん気温も下がっているのが肌で分かる。

 真夏の筈なのに、今や真冬に変わらせる程の実力さに、みんな揃って頭を悩ませていた。

 

 しかし、思考の邪魔をするかのように、ラミィが唐突に攻撃を仕掛けてきた。

 

 自身の背後から氷結を呼び出して、パトラ達に向けて雪崩の如く氷の壁が迫って行った。

 

 

「まず⋯!蒼魔(アズール)・『水穿の鉾(ハイドロング・トライデント)』!!」

 

 

「勢いが全然衰えてない⋯!魔力がまだ有り余ってるってこと!?」

 

 

 シャルが咄嗟に同じ氷魔法で対抗し、硬度の高い氷で出来た三叉槍を大量に放った。ガトリングのように魔法陣から絶え間なく発射し続け、迫り来る氷壁を削りまくる。

 

 しかし、メアリの言う通りで、シャルの魔法だけじゃ塞き止められず勢いが収まらない。止めようがない為、致し方なく横に跳んで躱す。

 

 氷壁が横切ると、遅れて強風と冷気が運ばれて来る。

 そして、建造物にまで直進して行って激突した途端、そのまま崩壊せずに建物ごと凍結した。

 

 

「これ以上使われたら、ここら辺が氷漬けにされちゃうよ⋯!」

 

 

「どうにかして、気絶は出来なくても⋯せめて行動不能にさせれば⋯!紅魔(ブレッディ)・『枷鎖(グリゲーチェーン)』!」

 

 

「そうね⋯!茈魔(ヴィオレ)・『花咲く重禍(フルール・グラヴィオン)』!」

 

 

 魔法同士のぶつかりが四人掛かりでも叶わないのであれば、直接その本人を叩くのみ。

 

 パトラは空中に数個の魔法陣を出現させ、ラミィに向けて拘束用の鎖を飛び出させた。その同時にメアリは魔法陣を彼女の足下に大きく展開させる。

 

 ラミィは咄嗟にメアリの魔法から逃げるように、氷結を足元から生やしていって、直ぐにそこから跳んで離れる。

 

 だが、地面に着地す前に途中で身体が別方向に引っ張られた。

 

 

「⋯⋯!」

 

 

「⋯よしっ!!掛かった!!」

 

 

 予め、逃げ先に張って置いたメアリの魔法陣が功を奏したのだった。

 

 まるで磁石がくっ付いたように魔法陣に背中から張り付く。腕や脚を動かそうとしても、藻掻くことしか出来なかった。

 そこへパトラの拘束魔法が加わり、紅い鎖が身体に巻き付いて離れない。

 

 

翠魔(ベルデ)・『翠雷の烈風(エレライド・ゲイル)』!」

 

 

 ミコがその隙に、更に追い討ちをかける。

 

 地面に魔法陣が展開されると、次第に巨大に変わりゆく。その時に仄かに微風が強くなったと思えば、旋風が巻き起こって空高く伸びていった。

 その勢いは中から強へ、強から暴へと、荒々しく甚大な竜巻が完成した。

 

 妖しく光る稲妻を纏い、雷鳴を轟かせながら、吹き飛ばさんと翡翠色の竜巻がゆっくりとラミィに迫る。

 

 加減が出来ない程、ミコの腕は落ちぶれてはいない。多少の怪我は覚悟させてもらい、意識を奪うまでこの嵐は止まないだろう。

 

 その直前、ラミィは小さく白い息を吐いた。

 

 

 

 ────ピシャアッ…!

 

 

 

『───っ!?』

 

 

 次の瞬間には、全てを覆すように何もかもが氷色に染まった。

 

 ミコが放った竜巻も消失し、パトラの拘束魔法の鎖も、メアリの魔法の効果すらも⋯それどころか″魔法陣そのものが凍った″。

 

 後にパラパラと細氷となって崩れ去り、完全に効果を失ったことでラミィは静かに着地する。

 

 

「嘘ぉ⋯魔法そのものを氷漬けにされた⋯!?」

 

 

「私達が思ってるよりもラミィちゃんは強い⋯!」

 

 

「これは⋯持久戦になっちゃうね」

 

 

 その光景に圧巻される四人。

 一瞬にして広範囲に亘る魔法を難なくやってのけるラミィに、そう簡単には終わらずに長い戦いになると覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「俺が⋯⋯ファントム・ヴィランと同類⋯?何を言ってやがる⋯!」

 

 

「貴様も薄々感じたりはしなかったか?あの喋る奴や、他の雑魚共と戦っている時に」

 

 

 ルラから衝撃的な内容を聞いた龍成は一瞬だけ呆けたが、直ぐにそのことに対して否定を込めた眼差しを強く向ける。

 

 だが、それに構わずルラは確証を探るように話を続けた。気にしなくていい、してはいけない気がするのに⋯不本意にもその内容に自然と思考してしまう。

 

 

(確かに⋯こいつの言っていることは合ってる。とは言え本当に微妙な感覚だったが⋯ヴィランには僅かながらも、″俺の気が混じっていた″気がする)

 

 

「⋯⋯まぁ、あくまでもこれはオレの憶測だがな。だが、もし同類でなくともこれだけは言えることだろう」

 

 

 

 

 

「貴様とファントム・ヴィランには深い関係にある」

 

 

 

 

 

 それだけは確信していると、迷わず口にする。だが何を持ってそんなことが分かるのだろうか。

 

 

「⋯だからなんだ。俺の記憶じゃあんな化け物と関わることはないし、深い関係に該当する理由が分からない。直接的にも間接的にもな。はっきり言って⋯俺からすれば無関係としか言いようがねぇ」

 

(けど⋯正直、少しだけ懸念が出来た。俺は″あの頃″から随分と()()()()()。それから暫くしてヴィランが現れ始め、奴らも独自に日々強くなってしまっている。現にこいつはヴィランの基準を大きく凌駕してやがる)

 

(⋯あながち奴が言っていることは⋯⋯間違っていないのかもしれない)

 

 

 彼からすればヴィランとはなんの因果性もないのは火を見るより明らか。

 

 それだけは確かな筈なのに⋯どうしてか、強く否定出来ない内容だった。悔しいことにルラの言うことが少なからず正しいと思っている自分がいる。

 その違和感が気付き始めたのは、最初に遭遇した自我持ちヴィランの時だった。それからと言うものの、色々と考えてみたが結局分からず仕舞いだった。

 

 

「少し話し過ぎたな⋯さて、続きと行こうか」

 

 

「⋯⋯。」

 

 

 腕組みを解いたルラは、一時中断した戦いを再開しようとする。それに龍成も黙って戦闘態勢へと意識を切り替える。

 

 その最中、呼吸を整えながら怪我の痛みを和らげる為に、気を全身にではなく重傷を負った部分のみに集中させて纏わせる。

 

 それから気を解放⋯せずに、そのまま殴り込みに行く。

 

 

「どうした?力の漲りが無くなってるぞ!!諦めたかっ!?」

 

 

「⋯⋯!」

 

 

 単純な攻撃などは防がれ、さっきまであった龍成の圧力がさっぱりと消えて、手を抜いているかのように力が入っていない感覚があった。

 ルラはそのことに不敵に嗤いながら煽っているが、そんな言葉が耳に入っていないかのように、素早い攻防に集中していた。

 

 蛇腹剣を振るえば、刀身は蛇行しながら風を切り裂いて、不規則な動きを見せながら迫って来る。

 捉えずらい動きに切れ味も抜群で対処は難しいが、龍成にはそれ以前の問題があることに気付いていた。

 

 

「ふっ⋯!」

 

 

「なに⋯っ?」

 

 

 見切ったように一太刀を紙一重で躱してみせると、ルーラから笑みが消えて、強ばった顔を初めて見せた。

 

 その後の襲い掛かって来る刀身を、何食わぬ顔で次々と躱して距離を縮めて行き、鋭い一発の拳を振るう。

 

 

「っ⋯!」

 

 

 咄嗟に蛇腹剣でガードしたその瞬間を逃さずに、余裕を崩させて相手に防戦一方な状態にさせる。

 段々と勢いが乗ってきた打撃の連続は、徐々に奴の焦燥感を煽っていく。

 

 ルラはキッと龍成を強く睨んでから、一度距離を取って体勢を立て直そうと後ろに遠く跳んだ。

 

 

「───そこだっ!!」

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

 その僅かな無防備を見逃さず、超スピードで一気に詰め寄り、鳩尾に深い突き蹴りをめり込ませた。

 漸く真面に攻撃が入ったこの瞬間のチャンスを逃しはしない。

 

 

「はぁあっ!!」

 

 

「う⋯ぐぉ⋯!!」

 

 

 一度蹴り飛ばしてから、間髪入れず追い討ちの打撃をお見舞いする。

 

 残像を残す程の空拳の連撃、単調を変える為に足蹴り・膝蹴り・蹴り上げを混ぜながら、体勢を崩させダメージを負わせ続ける。

 

 しかし、ルラもやられっぱなしはプライドが許さない。

 

 だが無理矢理にでも機転を作ろうと力を振り絞った所で、容赦なく身体に打ち込まれる衝撃と苦痛に、込めた漲りが霧散する。

 一撃一撃に込められた敵意と怒気は、確実にルーラの身を削っていた。

 

 そして、放たれた掌底がルラの胸部を撃ち抜いた。さっきまでと違って貫くような威力に身体を吹き飛ばされたルラは、転ばされて行くが蛇腹剣を地面に突き刺して勢いを止めた。

 

 

「チッ⋯!なんだ、何が起きた⋯?何故、このオレが押し負けている⋯!」

 

 

「⋯⋯戦ってて思ったんだけどよ⋯お前、戦い慣れてねぇだろ。いや⋯経験が浅いって言うのが正しいか」

 

 

「なんだと⋯」

 

 

 経験が浅い、言い換えれば素人と伝えられてることになる。それが侮辱に聞こえたルーラは、眉を吊り上げて睨み付ける。

 

 だが、彼はそんな虚仮威しに通用することなく話を続けた。

 

 

「お前言ってただろ?俺が力を増せば増す程⋯気を高めればお前も呼応して強くなるって。だったら対策法は単純なことだ。俺が気を利用するのを止めただけ。つまり、俺のこの肉体のみで戦えばいいだけのことだ」

 

 

「くっ⋯!だとしても、貴様のその身体は怪我で思うように動かない筈だろ⋯!例え呼応がなくとも、このオレの方が有利な筈だ!」

 

 

「んなもん気合いで堪えんだよ。それに⋯俺はお前より遥か昔から戦ってんだ。まだまだ未熟者のお前なんぞに後れは取らねぇよ」

 

 

「み、未熟、者⋯だと?このオレが⋯!この⋯このオレがっ⋯!!」

 

 

 龍成の言うことに外れはなかった。実力の差、経験の差、どちらを取っても彼の方が上であると迷いなく伝えられた。

 

 おまけ感覚に鼻で笑われながら軽蔑の眼差しを向けられると、ルラの顳顬(こめかみ)に青筋が浮かび上がった。

 

 

「下等生物がぁ⋯!!調子に乗るなぁっっ!!

 

 

「⋯⋯」

 

 

 ビリッと空気が劈くような怒号を上げながら、蛇腹剣を力任せに振り回しながら突っ込んで来た。

 

 なんと愚かな⋯と思った束の間、俺もさっきはそうだったわと心の中でツッコミながら、怒りを顕にしたルラを冷静に往なす。

 

 

「ふんっ!」

 

 

「このっ⋯!?」

 

 

 蛇のように伸びてくる刀身。不規則で読みずらい蛇腹剣の腹を、拳で弾いて勢いを殺す。

 龍成は透かさず一歩を踏み出して目の前まで移動する。

 

 ルーラもそれに殴打で対応するが、彼がいた筈の先には何も無い虚空を殴っていた。

 

 

「はぁあっ!!」

 

 

「がぁあああっ⋯!?」

 

 

 すると、いつの間にか背後から現れた龍成に、後頭部を蹴り飛ばされ、ルラは顔面から地面を抉りながら吹っ飛ばされて行った。

 

 相当な衝撃だったのか、なかなか起き上がる気配がない。だがこんな程度じゃやられる筈もないと見ていた龍成は、突き出した脚を下ろして語り掛ける。

 

 

「お前の攻撃は直接的で面白みの欠片もない。力に頼り切ってるのが目に見えて分かるから、お前には隙が多い」

 

 

「ぐっ⋯な、なんだとっ!」

 

 

「俺が言えたことじゃないが、感情的になるとどうしても隙が目立つんだよ。特にお前みたいな素人にはな。力ばっかに頼ってると大した実力も出ねぇぞ」

 

 

「お、おのれぇ⋯!!このオレが負けるなど有り得んっ⋯!あってはならないことだ⋯!貴様も⋯貴様さえ支配すれば⋯!!」

 

 

「はぁ⋯どこまでも自己中だな。逆に惨めに見えてきたよ」

 

 

「黙れっ!!オレがこの世界の全て⋯!オレが全てを統べて当然⋯!この偉大な力を持っているからこそ!このオレが中心なんだっ⋯!!オレが頂点になることは絶対なんだっ!!」

 

 

 何処にそんな確証があって、自分と比べる者がいないと思っているのか。ここまで偏見な思考と驕った台詞ばかりに、龍成も強ばった表情が崩れてジト目になって呆れていた。

 

 絶えず大きな溜息を一つ吐いてから、静かに瞼を閉ざす。

 

 

「聞いてて本当に呆れるぜ⋯この際だからハッキリと言うけどよ⋯───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おめぇ如きがなれる訳ねぇだろ戯けが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ⋯!?」

 

 

 瞬きせずとも、気が付けば龍成は音も無くルラの目睫まで迫っていた。

 

 その静かなる威圧には、今まで感じてきた時よりも鋭利で、金縛りを錯覚する冷酷さに、何もかもを破壊するような狂気があった。

 

 射抜いてくる瞳には、全てを覆すような、絶対的なナニカを感じ取ったルラは恐怖した。

 

 その目の前にいるのは本当に人間なのかと⋯───

 

 

 

 

 

 ────ズドッッッ!!!

 

 

 

 

 

「ごっ⋯へぉ⋯⋯ぁ⋯!!?」

 

 

 瞬間、腹部から強烈な衝撃が全身へと響き渡った。自分の身体に穴でも空いたかと思う程に。

 拳をめり込ませられたルラは、目を見開きながら胃液を逆流させ、身体をくの字にして、大砲のように遠方へ吹っ飛ばされて行った。

 

 暫しの空中浮遊の最後に、瓦礫がクッション代わりとなって不時着した。

 

 

 

 

 

「うわっ!?なに⋯!?」

 

 

「何か飛んで来たぺこ⋯?」

 

 

 そこは彼女達が戦っていた近くだった。不意に大きな音が聞こえたノエルとぺこらは、驚きながらその方へ目を向ける。

 

 

「ん?待って、あれ龍成君じゃ⋯!」

 

 

「あっ!ホントだね!よかった⋯なんとか無事みたいだけど⋯」

 

 

「じゃあ、今飛んで来たのってさ⋯」

 

 

 その時にミオが、ルラに向かって歩み寄る龍成を見つけた。フブキとおかゆもそこで気付き、一先ず彼が無事であることに安堵する。

 

 

 

 

 

「洗脳出来るからなんだ?おめぇはただその力に酔ってるだけで大した実力も持っていない。世の中にはな⋯そんなもんで勝てない相手なんざごまんといる。俺より強い人がいるのを俺は知っている」

 

「本当になっさけねぇな⋯己は強くならず、能力に縋ったおめぇなんぞ俺の相手にならねぇよ」

 

 

 龍成は彼女達の近くに戻って来たことに気付いていたが、それに気にすることなく倒れ伏すルーラを見下しながら話を続けていた。

 

 無慈悲に、冷徹に⋯そこに優しさなど微塵も無かった。否、奴に向ける感情に優しさも何も必要無い。

 

 

 

 

 

「りゅう君⋯!良かった⋯無事だったんだ」

 

 

「龍成、一体どこであんな体力を身に付けたんだろ」

 

 

「本当に⋯りゅう君って私達よりも何歩先にいるんだろう⋯」

 

 

「でも、今じゃとても頼り甲斐のある子だから⋯あんな奴の始末はあの子に任せよう」

 

 

 パトラ達も彼が無事な状態を確認して安心し、戦況の方も見るからに優勢な状態を維持していたことに、自然と尊敬な眼差しが向く。

 自分達より後から学園に入って来た彼が、まさかここまで大きな戦力になるとは、当時は誰も想像もしなかっただろう。

 

何故、ここまで実力のある者が今までいなかったのか不思議で疑問に思うが、彼女達にとって龍成の存在は、今や信頼も安心感も強くあった。

 

 

 

 

 

「ごっ⋯ぉ⋯!っくぅぅ⋯!!」

 

 

 ルラは身体を震わせながら、自分に乗っかっている瓦礫を投げ捨てるように退かす。

 殴られた腹部を抑えながら無理に立ち上がるが、直ぐに膝を着いて大きく咳き込む。

 

 それを黙って眺め続けていた龍成は、容赦なく挑発の言葉を発してルラから余裕を更に剥がそうとしていた。

 

 

「どうした?さっきの威勢とは変わって随分としおらしくなっちまったなぁ。図星を突かれたからか?否定出来ないから黙りか」

 

 

(この糞餓鬼めぇ⋯!これから世界の頂点に立つこのオレに⋯なんと言う屈辱だ⋯!!こいつにさえ⋯こいつにさえ触れれば支配してオレの人形となるが⋯その望みは薄いな⋯)

 

 

 苦しみで言葉を発するのが出来ない代わりに、鋭い目付きで憎々しく睨み付けていた。

 今すぐにでも殺してやりたいと、抱えた恨み辛みをぶつけたかった所だが、一度冷静になって考える。

 

 

(⋯⋯ん?いや待てよ⋯───っ!!)

 

 

 そして、あることを思い付いた。

 

 

(クッハハハ⋯!そうだ!その手があったじゃないか⋯!!自分のことながら忘れていたとは⋯これならば、奴も下手に動けまい⋯!!)

 

 

 そうだ⋯これだと、これならばこいつにさっきまでの屈辱を倍にして返せる。

 そんな考えが表に出てしまっていたのか、自然と口角が三日月のように上がった。

 

 そんな不気味に嗤うルラに、龍成は眉をピクリとさせて訝しんだ。

 

 

「おい、何が可笑しい⋯?」

 

 

「それは直ぐに分かるさ⋯!───駒共っ!オレの役に立てっ⋯!!

 

 

「なにっ⋯!」

 

 

 急に調子が変わったルラに疑問を投げ掛けると、奴は突然と指鳴らしをした。

 パチンッと指から乾いた音が鳴っただけだが、それが一体何を意味するのか⋯。

 

 

 

 

 

「あれっ、動きが⋯⋯っ!?」

 

 

「えっ⋯ぼ、ぼたんさん!?」

 

 

「何で自分に銃を突き付けて⋯!?」

 

 

 それは、悲劇の呼び起こしだった。

 

 3期生と対峙していたぼたんは、奴の指鳴らしをした直後に動きを止めて、片手に所持していた拳銃の銃口をゆっくりと自分の顳顬に向けた。

 

 暗い瞳で無表情のまま、突然の自殺行為に走り出した彼女を見たマリン達の顔色は驚愕と恐怖に染まる。

 

 

「ラ、ラミィちゃん⋯?」

 

 

「あんなでっかい氷塊を⋯大量に⋯」

 

 

「一体何する気なのっ⋯!?」

 

 

 しかし、その行為はぼたんだけじゃなくラミィにまで起きていた。

 

 パトラ達と攻防していたラミィは、前触れもなく動きを止めて両手を祈るように握り始めると、彼女の頭上に何個もの小さな氷塊が生まれる。

 

 それが次第に大きくなっていき、最終的には巨大な氷河のようにまで膨張していき、そのまま空中で浮遊していた。

 あれが落ちてきたら即死は確実だろう。

 

 

 

 

 

「おめぇ⋯まさかっ⋯!!」

 

 

 その様子を見た龍成は、嫌な予感に顔を顰めながらルラを睨んだ。

 

 

「あぁ、貴様が想像している通りさ⋯!オレがもう一度、指を鳴らして合図を出した瞬間───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの二人は自害する⋯!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────っ!!?』

 

 

「くっ⋯!!この⋯クズ野郎⋯!!」

 

 

 

 優勢だった状況は、一気に絶望へと変わってしまった。

 

 

 

 

 





次回はもっと早う投稿出来るよう努めます。

では〜。
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