続きになります。
じゃ、どぞ〜。
「忘れた頃にやって来たよ、ヤバそうな流れが…」
精神的にゴリゴリと削られてしまい、ぐったりとしながら俺らしくない調子で足を進める。
だがそんな気分とは裏腹に、前方から何者かが漸く見つけたかのような「あー!」と言う声が聞こえたその瞬間、胸元に何かが衝突して来た。
「りゅー先輩なのら〜!」
「おっと⋯!ルーナ、いきなり飛び付いて来たら危ねぇだろ。お前が怪我したらどうすんだ。」
突っ込んで来たのは、とある国の姫様(多分)である″姫森 ルーナ″であった。
「りゅー先輩ならちゃんと受け止めてくれるって信じてるのら!」
「だからと言ってな…」
そこまで言うと更に奥から多数の足音が近付いてくる。
順番に目に入って来たのは羊の獣人の″角巻 わため″と、怪力と謳われている天使の″天音 かなた″、小悪魔だけど天使よりの″常闇 トワ″、ゲボかわと呼ばれてる竜人の″桐生 ココ″。
「もー!急にどっか行かないでよー!」
「紫黒君を見つけたからって急過ぎ!」
「こんやっぴ〜。あれ、眼鏡掛けてんじゃん紫黒。どしたの?」
「おっすおっす!元気にしてっかー?うちのルーナたんを傷物にしたら落とし前に指詰めてもらうぞ。」
「出会っていきなり物騒なこと言うなよ」
こちらも中々の個性組であり、ココの言い分に苦笑いを浮かべながらも、眼鏡は一定の時間を捉えていた。
ピピピッ…
姫森 ルーナ
好感度《79》
角巻 わため
好感度《64》
天音 かなた
好感度《59》
常闇 トワ
好感度《58》
桐生 ココ
好感度《55》
(何かこの位の好感度が安定してるな…嫌われてるよりかは大分マシだろうが…)
さっきのるしあので少し怖くなってきた。でも好奇心が止まってくれない矛盾が行動を止めてくれない。
「りゅー先輩、目でも悪くなったのら?」
「そう言えばトワのクラスで噂になってたっけ。その眼鏡イメチェン?似合ってるじゃん」
「ほんとほんと、似合ってるよー!」
「あぁ⋯ありがとな」
今更になるが、どうやら全員からの眼鏡を掛けた姿は評判が良いらしい。
そこまで言われると、たまにはイメチェンで伊達眼鏡をするのもいいかもな…あ、勿論私服の時だけで。
いややっぱ止めとこ。服装のコーデとか下手くそだから無理だわ。
「紫黒君、さっき何かしてたの?げんなりしてたように見えたけど」
「かなたその言う通り、顔が疲れてたぞ。体力脳筋バカのおめぇに何かあったとか相当な気がするぞ」
「言い方に悪意が⋯」
そう言うお前も俺と似たようなもんだろ、と言いそうになったが何とかそれを飲み込む。
流石に女性相手にこれは失礼極まりないな、反省。
「まぁ大した事じゃないよ、気にすんな」
「そんなことより、ルーナはりゅー先輩とお出かけしたいのら!最近気になる喫茶店があったから、ルーナと一緒に行くのら!」
そんなことよりと一方的に片付けられ、駄々っ子のように喚き始める。それが次の話題となり他の面々も騒ぎ立てる。
「あっ、ずるーい!わためぇも一緒に行きたい!たまにはわためぇとどこか行きましょうよ!」
「そ、それなら僕とも!色々とお世話になったからお礼もしたいです!」
「トワとどう?最近、新しい服買いに行こうと思ってるんだけど。紫黒の服のコーデとか一緒に考えない?」
「人気者だな龍成、ちゃんと構ってやれよ?」
「他人事のように…」
「はっはっはっ!実際に他人事だからなぁ!っと言いたい所だが…そろそろ″あのこと″に返事が欲しいんだが?」
「「「「っ!?」」」」
四人はココの言う″あのこと″に酷く狼狽えだす。そんなことに真っ先にルーナが龍成の胸元を掴んで問い詰める。
「どう言うことなのら!りゅー先輩!」
「まさか、ココちが先を⋯!」
「そ、それって何時されたの紫黒君!?」
「いつの間に抜け駆けしたのかよココ!」
「⋯⋯お前ら何か勘違いしてねぇか?」
「あっはっはっはっはっ!!」
彼女達が一体何の話をしているのかと理解出来ず、ただ首を傾げているしかなかった。
ココの言っていることは、この間に彼女の極道の組に入らないかと言う誘いを受けていたのだ。
それを紛らわしく言う所為でややこしくなった状況に、溜息をつくしかなかった。
────────────────────────
「こうして見れば、意外と上手くやっていけてるんだな…」
あんまり考えてなかったが、今のところ友好関係に支障をきたしている人は見ていない。でもこんなやり方でしか確認出来ないのは、自分の不器用さが原因でもある。
でも、こう…変に知らない方が幸せというのも実感した。
「測ってない人の残りも少ないかな」
「あー!龍成君だー!」
おいこの流れさっきもしたぞ。
などと、そんな俺の思いも分かる筈もなく小さな特攻隊は飛び掛る。
「ぅおっ…!はぁ、危ないだろ?ねね」
「えへへー!こんねねー!」
デジャブを感じさせる状況を作り出した張本人は、隠れ努力家の″桃鈴 ねね″。先程のルーナと似たような気質がある。
「おーまるまるまるポルポルカー!」
「龍成君、こんらみ〜」
「おっ、噂通り眼鏡掛けてんじゃん」
変な鳴き声をしながら登場してきたのは、フェネックの獣人″尾丸 ポルカ″、透き通った声で独特な挨拶してきたのが華麗なハーフエルフ″雪花 ラミィ″、少し男勝りな口調が特徴の白ライオンの獣人″獅白 ぼたん″。
「ほぇ〜龍成君、眼鏡掛けたんだ!似合ってるよ!」
「おいおい〜、更にモテようと頑張ってのか〜?」
「どんなだいラミちゃん、龍成のイメチェン。大分雰囲気変わったよね」
「う、うん…!そうだね。いつもより増して…何だか目付きの穏やかさが際立って見えるね。えへへ…」
各々が龍成の眼鏡姿に感想を述べている所、その間に彼は彼女達に視線を向け続けていた。
(怖いもの見たさでついつい気になってしまうな…いや、もうやっちまえ!)
ここまで来たのなら、もういっそのこと最後まで調べてやろうという精神になった。
ピピピッ…
桃鈴 ねね
好感度《70》
尾丸 ポルカ
好感度《61》
雪花 ラミィ
好感度《69》
獅白 ぼたん
好感度《64》
(…普通で安心した。ねねはルーナと少し似てる所があるから、なんか納得しちゃうな。ラミィも高かったのは…ぶっちゃけ意外だな)
安心、と言ったように安堵の溜息を短く吐いてから、未だにくっ付いているねねに視線を向ける。
「それで、何時までくっ付いてんだねね」
「龍成君あったかいから、ずっとくっ付いてたい〜!」
「狡いよねねちゃん!こうなったら、ラミィもくっ付く!」
「なんでそこで張り合うんだ⋯お、おいやめろ」
何故か闘争心を燃やしだしてラミィも途中参加して来た。ねねが現状左腕にいるので、必然的に右腕を奪われる形になる。
それにしても、ルラが現れたあの大事件以降⋯彼女達のスキンシップがやたら大胆になってきたような気がするんだが、何でだろうか。
それよりも女性特有のモノが当たりまくってる⋯ねねも意外あるんだが、ラミィが更に上をいってるのを直で分かる。
羞恥心はどこ行った羞恥心は、それに身動きが取りずらいので止めて欲しかったのだが、そこにポルカが水を差してくる。
「つれないこと言うなよ〜、美少女二人から抱き着かれて両手に花だぞ?全国の男子が羨む展開やぞ?素直に喜べよ〜!」
「面白そーじゃん、あたしも混ざっていい?」
「無理だろ⋯この状態からどうやって?」
「それは〜…」
更にそこにぼたん迄もが混ざろうとして来たのだった。
だが見ての通り、ねねとラミィの二人が領域を作り出しているのだが、それでもぼたんは余裕な微笑みを崩すことなくどんどん近付いて来る…。
「こうすればいいじゃん」
「っ…!」
「あぁー!」
「ししろん!?」
「お、おぉ…」
なんと、彼女のとった行動は正面突破の抱きつき攻撃だった。
流石にこんな大胆な行動に、龍成も狼狽えてしまう。
「お、お前って…そんな大胆な奴だったか?」
「あたしはこう見えても肉食獣のライオンなんだよ?狙った獲物は絶対に逃がさない。それがあたしのモットーでもある。つまりは……そう言うこと」
顎を人差し指で添えられ、態とらしく妖しく舌なめずりをして色気の籠った眼差しがより妖艶な雰囲気を際立たせ、彼女からは想像つかない積極的な姿に固唾を呑み込まされる。
「あっははは!なんてね?どーよ、あたしの取って置きの演技は」
すると急に吹き出したように笑い、悪戯に成功した小悪魔的な悪い笑みを見せ付けられる。
俺としては何処かほっとしたが、逆に左右にいる二人には火が着いてしまったようだ。
「うぅー…ししろん!」
「もー龍成君!ラミィのこともちゃんと見てよ!」
(……腹空いたな)
そして、彼は思考を放棄した。
「あの、ポルカが空気なんですけど〜…?」
その空気からはみ出されていたポルカは、一人寂しそうに呟くのであった。
(あぁ〜やば⋯つい勢いでやったとは言え⋯めっちゃ恥ずかし⋯)
その最中⋯龍成達を遠目に眺めながら、ぼたんは薄く赤面させた顔をバレないように隠していた。
────────────────────────
今日という学業の一日が終わり、珍しく誰とも帰らずに帰路を歩いていると、少し離れた所から騒がしい音が耳に入った。
「ん…?なんの騒ぎだ?」
激しい物音とは全く異なる人のような声⋯怒号らしきものが聞こえ、只事ではなさそうと気になって見に来れば、大変なものに遭遇した。
「あれは…」
その声を頼りに近付いて行けば、使われてなさそうな倉庫へと辿り着いた。
除くように中を見ると、そこには知っている生徒のメンバーがおり、何かの集団であろう柄の悪く見える男達と顰めっ面で対面していた。
「おい貴様ら!このholoXである吾輩達に喧嘩売るとかいい度胸ではないか!」
「はぁ〜?てめぇらがあの煌星学園の何なのか知らねぇが、この数を前にしてよくそんなホラが吹けるな!」
「貴方達こそ、この数少ない女の子達に大勢で寄って集るなんて恥ずかしくないの?それに、元を言えば貴方達が原因じゃない」
「そーだそーだ!こよ達は悪くないもん!」
「そうでござる!」
「オタク君達なんて怖くないもんねー!べーだ!」
「誰がオタクだ!舐めてんのか!?」
先頭から順に話し出したのは、大きい角が特徴で小柄な悪魔なのが″ラプラス・ダークネス″、スタイルが良く出来る雰囲気を纏っているのが鷹の獣人″鷹嶺 ルイ″、見た目も頭も真っピンクなコヨーテの獣人″博衣 こより″、忍者擬きの純情可憐侍″風真 いろは″、異臭なる鯱の獣人″沙花叉 クロヱ″である。
「何してんだあいつら…?」
話の内容じゃ男の集団に非があるように見えるが、現状じゃあまだよく分からない。
だがあのルイもいろはも、皆してはっきりと相手が悪いと伝えている辺り、向こうに何か問題があるのだろう。
「舐めてるのはそっちだ!吾輩達は煌星学園の生徒だ。これだけ言えば、馬鹿でアホで単細胞で煩悩丸出しのクソゴミボケ野郎でも分かる筈だ!」
「言い過ぎなんだよてめぇ!!あぁクソっ!!もういい!!あの学園の奴等だろうが所詮は女だ!!やっちまえええええええぇ!!」
怒りが頂点に達したリーダー格は怒号を上げながら指揮をとる。数の暴力で攻めようとしたのか、各々が武器を手に持ちだしてラプラス達に突っ込んで来た瞬間。
「───そこまでだ」
「うぉっ!?な、なん⋯!?誰だてめっ!?急に現れて…!?」
「えっ!?龍成っ!?」
「あれ、龍成君が何でここに…」
瞬間移動でもしたかのような超スピードで割ってやって来た彼に、一同は驚愕に呑み込まれる。しかしそんなものに気にすることなく、彼は淡々と話を進める。
「悪いことは言わねぇ、素直に引き下がってくれ」
ピピピッ…
〇〇 △△(不良A)
好感度《-20》
(あっ、眼鏡外すの忘れて⋯ってちょいちょいちょい⋯こいつの名前出ちゃってるよ。え、なに⋯赤の他人の本名まで分かんのこれ?デ〇ノートかよ。つーかこんな時にまで機能するな気が散る⋯)
「⋯はんっ!ただの根暗な陰キャが前に出てカッコつけてんじゃねぇぞっ!!」
まさかの結果が出てくるとは思わず、つい表情を崩しそうになったがどうにか堪える。一応説得を試みたが、それでも奴は我関せずとその手で拳を作り、龍成に向かって全力で殴り掛かった。
「紫黒殿!!」
「危ないっ!!」
いろはとルイが龍成に慌てて呼び掛けるも、彼はそれでも避けようともしなかった。そのことで奴の拳が彼の頬に当たり、鈍い音が倉庫に響く。
「…気は済んだか?頼む、大人しく引き下がってくれ。ラプラスが悪口を言い過ぎたことは俺から謝る、すまなかった」
しかし、それでも痛がる素振りすら見せず、変わらない態度で話を終わらせようとしていた。
何もなかったかのような反応を貫く彼に、何処か不気味に思ったのか男は狼狽えていた。
(んだこいつ⋯!!確かに真面に入ったのにこうも平然とするか!?て言うか殴った手が痛ぇんだけど!?脅す為に手加減しちまったからか⋯?)
「な、何言ってんだ…!こんなんで済むかよ!それに…そいつらは相当な上物じゃねぇか。こいつぁ楽しまなきゃ損ってもんだろう?こちとら早くイジメてやりたくて下がうずうずしてんだからよ、邪魔すんな。どうせ今のもただの痩せ我慢だろ、次は本気で殺すぞ…?」
「……そうか」
少しの可能性を考えていたが、やはりと言うべきか⋯素直に引き下がることはなかった。
そんな男の言い分に龍成は低く短くそう呟いた。
その次の瞬間、空気が桁違いに重苦しくなる。その原因は言わずもがな⋯彼にある。
隠していた牙を剥き出した龍のように、紫色になった瞳が煌々しく睨みを利かせる。
「百歩譲って俺にだけ狙うならまだいい…だが、仲間に手を出すらなこっちも容赦はしない…」
そう言いながら腕を組み、少しだけ片脚を待ち上げ、地面を踏むようにそのまま足の裏から素早く落とすと───
────バゴォオンッ!!
その瞬間、人から到底出せないような地響きが空間一面を震わせ、彼を起点に罅が倉庫中に広がっていった。
「全員纏めて来い。
「っ…!?な、なん⋯だ⋯てめぇ…!ク、クソッ!帰るぞお前ら…!」
男達は龍成の並外れた威圧により、完全に戦意喪失となっても強がりを見せながら男達はその場を早足に去って行った。
「…はぁ、全く。どうしてこうも武力行使しようとしてくるんだか」
力で悪さをしようとする奴らを見ていると溜息が耐えない。
だが、彼の悩みに気にすることなく彼女らは現状に目を白黒させる。
「え…え?何したらこうなるんだよ…?」
「ほぼ全面にヒビ入ってるんだけど…先輩何したの」
「なに、足で踏んだだけだけさ」
地団駄を踏むような感覚と一緒である。
「色々ツッコミたい所だけど⋯そんなことよりありがとうね。正直、面倒事は起こしたくなかったから困ってたの」
「沙花叉は別にやっちゃっても良かったけどね〜」
「でも、問題起こしたら風真達の肩身も狭くなるし、他の人達にも迷惑をかける訳にはいかないでこざる」
「内容は分からないがヤバそうだったんで割って入ったけど、なんでこんなことになってたんだ?」
本題はそこである。何故このような事態が起きたのかだ。
「そうだ!ちょっと聞いてくれよ龍成!」
「お、おう」
ラプラスが前のめりになり、興奮気味になっているのを宥めてから話を聞くと、簡単に纏めるとこうだ。
皆で仲良く帰路にいたところ、怪しげな集団を発見。それがさっきの奴らだった。
何かよろしくない雰囲気を感じて尾行してみれば、囚われている少女達を見付けたらしい。
どうやら強姦しようとしていたのこと。咄嗟に行動して、なんとかその子達を解放させたその後に俺がやって来たと言う。
真相を聞いて逃がさなければよかった⋯いや、これはスバルに話してみよう。
早速スバルに連絡しようとしたが、ここで博衣が眼鏡について口に出す。
「ところで、どうしたのその眼鏡」
「そう言えば、風真達のクラスでも噂になってたでござる!」
「ゲームでもやり過ぎたか?」
「あー、まぁちょっとそんなとこ…」
理由を考えて伝えるのも面倒になり、ラプラスの言葉に適当に返事をしておく。
「似合ってるじゃない。でも、目は大事にね?」
「え〜先輩かっこいいじゃーん!ずっとそれでもいいんじゃない?」
ルイとクロヱの反応を皮切りに、他のメンバーもそれに頷いている。これがただの眼鏡じゃないことに気付かぬまま。
ピピピッ…
ラプラス・ダークネス
好感度《54》
鷹嶺 ルイ
好感度《60》
風真 いろは
好感度《57》
博衣 こより
好感度《64》
沙花叉 クロヱ
好感度《61》
(このメンバー達も悪くないんだな。初対面の時は色々あったが⋯結果オーライか)
結果を見据えながら龍成は苦笑いを浮かべたが、すぐに話題を切り替えてこの事態の騒動を代わりに報告する提案した。
「まぁなんだ。取り敢えずこのことは俺からスバルに話しておくよ、あいつの父親が警察みたいだからさ。煌星学園の生徒の言うことだから、簡単に信じてくれるだろう」
「む、わかったぞ。その⋯ありがとな」
「え…ラプラスがちゃんとお礼言ってる」
「舐めてんのか新人!!」
────────────────────────
「今日は一段と違った日を送ったな〜…」
ふぃ〜、と伸びをしながら一日を振り返ってみれば、この眼鏡を掛けてから一日の風景が酷く変わっていたものだ。
ああやって見れば、意外と学園生活は問題なく円滑に送れていることを知れた。
(…ん?通知だ…パトラからか)
そこに、スマホにとある悪魔の女王(自称)から通達がやって来た。内容は彼女の通う喫茶店に来ないかと言うお誘いだった。
「ハニストか…確かに明日は休みだし、少しお邪魔してみるか。何食べようかな〜」
彼女とその仲間達である喫茶店に招待され、翌日から土曜日だし、ここはお言葉に甘えて訪問することにした。
丁度お腹が空いていた為、ルンルン気分でその喫茶店へ早歩きで向かって行く。
その目的の場所に着くと、一度全体を見る。
喫茶店にしては少し小さいがとても分かり易い特徴的な見栄え。人通りは少ないが中からはわいわいと楽しげな会話。
扉には可愛らしく「CLOSE」の看板が⋯⋯ん?
「…あれ、営業してない。え、どうゆうこと?」
到着してみればどういう訳か、普段なら営業してても可笑しくない時間帯なのだが閉店となっていた。
当の本人は何を思って誘ったのだろうか。まさか何かパトって臨時閉店させたのか?
「あ、りゅう君来てたんだね!いらっしゃーい!ささっ、入って入って!」
そう考えながら店の前で困っていると、急に扉が鈴の音と共に開いた。
そこから呼び出した張本人の、魔界の甘美たる女王の″周防 パトラ″がひょこっと顔を出し、嬉々として彼の元へ。
「え…あ、あぁ。でも営業してないんじゃないのか?」
入るよう促されるが、本当に入っていいのかと戸惑っていると、彼女がそそくさと俺を後ろからぐいぐいと押して連れて行く。
「今日は食材の補充やら大掃除とかで、色々と準備する日だから閉まってるの。けどそれが早く終わったから、皆でお疲れ会的なのをやろうって!」
お疲れ会ということを聞いて納得はするが、関係のない俺がやって来ていいのだろうかと思っているのも束の間、目的の所まで強引に連れて来られると、そこにはハニストメンバー達が揃っていた。
「あっ、お疲れー!龍成君!」
「あら、丁度いい所に来たわね」
「やっと来た〜。ボクもうお腹ぺこぺこだよ〜」
「いらっしゃいませ、紫黒君」
「てっきり普通に営業してたと思ってたんだが…灰猫さん、場違いな俺が来ても良かったんですか?」
「ふふ、皆さんが誘おうって聞かなくて。特にパトラさんが一番気合いが入ってましたよ?何でも───」
「わぁー!それは言わないでってぇ!!」
「まぁまぁそこまでにして、皆揃ったんだしそろそろ始めよ?」
「そうだね、せきしーもお腹空きすぎてヤバそうだし」
「ごはんごはん〜」
机上には既に沢山の料理が並んでおり、香ばしい匂いに涎が出そうな程に食欲が余計に刺激される。
ミコも相当お腹が空いていたのか、語彙力が消滅している。
「俺も腹減ったな…」
「ボクはここで食べる〜」
「「「っ!」」」
「ちょいちょい⋯乗られると食べずらいだろ」
席に混ざって座わった時、ミコがごく自然に迷いなく俺の上に乗りだした。
狙って待ち構えていたのか、それとも純粋にただその時思い付いただけなのか⋯。
「ミコさん、行儀が悪いですし紫黒君にも迷惑ですよ」
「龍成、ボクここにいて迷惑〜?」
「…じっとしててくれたら、まぁ大丈夫だな」
チラッと顔を向けて一瞥した時、僅かに見えてしまう強調された双丘と遠慮なく体重を預けて俺に凭れることで、彼女の柔らかな身体の感触が直に伝わり⋯とてもドギマギする。
なにが大丈夫だ、大丈夫じゃねーだろ俺。強がんなよ俺。やべぇどうしよう。
「……せきしーばっかり狡いっ!」
「ちょっとはお姉さんの愚痴も付き合いなさいよ?」
「なぁっ!?」
「ちょっ…お、おい…」
おっとここで追い討ちですか、勘弁して下さい本当に。ただでさえミコで緊張してるのに、シャルとメアリの二人が両脇から挟んで来たら身動き取れんし、変に動けなくなる。
頼むパトラ。驚いてるところ悪いけどこの二人を⋯出来ることならミコも引き剥がして欲しい。パトラから言ってやって欲しい。
「こうなったらパトも特攻だー!」
「おい待てふざけんな定員オーバーだ!」
「全くもう…ふふふっ」
パトラまでそっち側だと収拾はつかず⋯結局、暫くは彼女達にもみくちゃにされていた。灰猫さんも楽しそうに微笑んでないで止めて欲しい⋯。
そして暫くしてから漸く落ち着いて、空腹を満たす為に色んな料理を食べて舌鼓を打ちながら、和やかに談笑をしていた。
色んな話題に俺もその時は楽しくなっていたのだが、ここで一つアクシデントが起きてしまった⋯。
「えへへぇ〜♪りゅーくーん♪」
「パトラだけじゃなくて〜、シャルにも構ってよ〜…」
「すぅ…すぅ…」
「ほら〜!もっと酒持ってこ〜い!」
「あぅ〜…私だって頑張ってるんですよぉ〜!」
ご機嫌にパトラは左からくっ付き、シャルも構え構えと右から寄り掛かる。変わらず俺の上で寛いでいたミコはそのままダウン。
メアリはでろんでろん状態になり、上機嫌に虚空に向かってお酒の要求をしていて、同じくななしさんは酔うと感情が暴発するタイプなのか、泣きながら机を叩いて一人愚痴を喋っていた。
(…これどーすんだ)
どういう訳か、飲み物にお酒を混ぜていたらしく、それを何本も飲酒した結果⋯見事に全員が飲んだくれ状態に陥った。
学生は飲酒禁止の掟の筈だが⋯パトラ達は八千歳をとっくに越えていると言う⋯あと悪魔だからだと。暴論が過ぎる。
俺?ずっとジュース飲んでたよ。
「ねぇ…?そういえば、今日のりゅーくん眼鏡かけてなかった…?パトラにもみせてよ〜!」
「シャルもみたい〜!みせろ〜!」
「はぁ〜〜…何となくそう言うと思って、持って来てたよ」
やはり知られていたかと察してはいたが、その内もしかしたら聞いてくるかと思ってたけど、まさか酔った勢いで来るか。
まぁいいやと投げやりになって、懐から眼鏡を取り出す。
「ほら、どうだい。変じゃないかな」
「ふわぁ〜…!かっこいいよ〜♪」
「眼鏡かけた君もすごくいい〜!」
「すぅ…んみゅ…」
酔っている勢いとは言え、流石にそう真っ直ぐに言われると少し照れてしまう。
酒の所為で呂律が真面に機能せずへにょへにょとなっていながらも、それが余計に色気が目立つ。
「んねぇ龍成君?君は一体この中で誰がいちばん好みなの〜?」
「えぇ…いきなり何を…」
するとメアリが唐突にそんなことを聞いて来た。いや、ほんとに急だな。
「そんなの、このパトラちゃん様に決まってるわ!りょーりだってできるし、さっきょくもできちゃうし、何よりも″癒し″や″バブみ″のじょーおー様なのよ!」
「そんなこと言ったら私にだってあるもーん!膝枕だって自信あるよ〜?というか、シャルにも構えぇ〜!」
「あらあら〜!みにくい奪い合いねぇ!龍成君なら私のみわくに吸いよられて〜…私の虜になるのよ!」
「ん〜ん…りゅーせはボクのものぉ…ボクの使い魔なのだぁ…」
質問に頭を悩ませていると、誰も彼もが自分だ自分だと言い張って相手に立場を譲らない。
質問にも答えずらいし、より収拾が難しい。メアリめ、一体なんてことを聞いてくれたのだろうか。
「頼むから気をしっかりと持ってくれ…ミコはもう寝てな」
「んむぅ……じぁ、おやしゅみ…」
一旦、パトラとシャルには離れてもらい、俺はミコを別のソファーに運んで制服の上着を布団代わりに掛けさせる。
ピピピッ…
堰代 ミコ
好感度《74》
(…お、思ったより高いんだな)
意外と好感度が高いことに心の中で驚くが、眠る彼女の頭を少し撫でてから戻る。すると直ぐに二人がまた挟んでくる。
「ねぇねぇ、りゅう君は誰がすきなの〜!こたえて〜!」
「私だよね!?パトラだっていいなさいよ!」
「違うでしょ?メアリおねえちゃんだよね?そうだって言ったら…いいことしてあげるよ?」
「……」
パトラとシャルだけでなく、とうとうメアリまで迫って来ていた。
藁にも縋る思いで、今じゃ頼りないが灰猫さんに助け舟を求めようと顔を向けるが、いつの間にか彼女はそのまま不貞寝していた。
あぁもう無理だなと、諦観せざるを得なかった。
ピピピッ…
島村 シャルロット
好感度《82》
西園寺 メアリ
好感度《78》
周防 パトラ
好感度《86》
⋯⋯たっっっけぇなおい。
その数値を見た時、俺はその眼鏡を取って懐に仕舞う。その同時に何やってんだろう俺、と自分に嫌気が差し始めた。
とても今更だが⋯誰にもバレないからと言い、人の心内と同じように無断で覗くのはやっぱ駄目だと自戒する。でも裏腹に強い安心感があった。
でもそれはそれとして、今はこの状況を収めよう。不本意だが⋯方法はある。
「なぁ、シャル…お前って、本当は寂しがり屋なんだな。ちょっと意外だったわ。」
「そうだよ〜…私って割と繊細だけど、みんなの前では元気でいたいからね…でも、誰か構ってくれないと寂しくてしょーがないのだぁ〜…」
「そっか…────なら、俺が何時までも傍にいるよ」
「…⋯へっ?」
「「えっ。」」
酔っていた状態でも唖然とする程の衝撃。
それはそうだろう、まさかの彼の口からそんな言葉が発せられるとは予想外でしかない。
しかし、そんな呆然とした彼女達を置いてけぼりにし、彼は構わずシャルに近寄る。
「ん?寂しいんだろ?だから俺が何時までも傍にいる。勿論、そのままの意味さ。なぁ…シャル」
「へっ…ぇ、ちょっ…」
「お前は…どうしたい?」
そして、彼女の頬に手を添えながら顔を近付け、作った声で耳元へ甘い言葉を囁いた。
「は…はぁうぅ…///」
(…マリンから借りた漫画やアニメでの入れ知恵だけど、こうすれば落ち着いてくれる描写もあったから試してみたが⋯ここまで効果があるとは⋯よし、先ずは一人)
ボンッと顔を真っ赤に爆発させて、目をぐるぐるとさせながらそのままショートして気を失った。
何故こういった行動を彼が出来るのかと言うと⋯ある日、″女を落とす行動″と言う知識をご教授したのは某船長から。
教えて欲しいとも言っていないのに、見てみたら意外にも内容が面白く、変に覚えてしまっていた。
何時使うかも分からない知識が、まさかこんな所で役に立つとは⋯。
そして次に彼がターゲットしたのは、メアリだった。
「メアリもさ、そうやってお姉さんぶってるけどよ。本当はこうやって…責められるのが良いって思ってんだろ…?」
「ぇ…ぁあの…」
同じように触れる距離まで近寄ればメアリは少し困ったように俯くが、何だか満更でもなさそう。
すると、強引に彼女の顎を摘んで顔を見合わせる。所謂、″顎クイ″というものをされる。
「どんな風にイジメて欲しい…?」
「あっ…♡///」
メアリ、撃沈。
ばたんきゅーした二人をソファーに預けてから暫し眺めた後、最後に残ったパトラに顔を向ける。
しかし、二人と違って直ぐには動かなかった。
「…え、えと…パトには?」
「パトラ」
「は、はい!」
「俺は⋯⋯昔は他者からの愛情を余り貰ったことがない。いや、それ以前に…俺は感情そのものを無くしかけていた」
「でも…お前達と出会ってから色んなことを学んだ。信頼し合える、背中を預けられる、お互いに任せられる。仲間と言う友達の関係の大切さ、それを改めて分かった。皆が…パトラが俺に関わり続けてくれて、俺はそれが幸せと思うようになった。独りでいるより、他者とのいる時間の大切さをお前達が教えてくれた。だから……ありがとう」
「ふぇあっ…!?」
すると突然、彼は自分でも驚く行動に出てしまっていた。パトラの身体を引き寄せて、頭を自分の胸元に収めるように抱き締める行為だった。予想外も予想外。
しかし、それだけで終わらず⋯────
「────好きだよ…*1」
「ふぇ…?」
思考が停止する。次第に彼の口から出た言葉に脳が理解していくと、弾けるように顔が熱くなる。
「ぅぁあわわ……しゅ、しゅき…」
「あぁ、好きだ*2」
「は、はひぃ…パトもしゅき〜…♡」
彼女の中でめぐり巡る羞恥と喜悦が激しく混ざりあって弾けた衝撃で、次第に眠るように脱力していった。
「……やっちまったな」
正気に戻った彼も、今しがた起こした言動にやってしまったと後悔するが既に遅い。
胸元で気を失ったパトラをソファーに寝かせ、ついでにななしも空いてる所で寝かせて置き、全員分の布団を被せてから一人片付けをし始める。
「はぁ〜……あっつ…」
この顔から発せられる熱は、片付けによるものだと思っておこう。
そうして片付け終えたら置き手紙だけ残して、彼は眼鏡を処分して帰宅して行った。
次の日、昨日の出来事を覚えていた彼女達は、朝から恥ずかしさのあまり暫く悶え続けていた。
手軽なものにしようと思ったら、結局こんな感じになっちまうなぁ。
まぁ、こういうのは仕方ないとして、こんな感じに思い付いたら書いてこうと思ってます。
では〜。