ハチャメチャにお久しぶりです。
最近はちょっと執筆する気力が減ってるのと、仕事も多忙でモンハンやら色んなゲームをしていたり⋯。
とりあえず、失踪とかはないので。
じゃ、どぞ〜。
「……ん…?朝、か…」
変わらぬ日々の始まり。カーテンの隙間から入り込む朝日の陽で瞼を焦がされ、その眩しさにより眠りに浸かっていた意識が呼び起こされた。
ベットから上体を起こしつつ欠伸を零しながら目を擦る。
何時ものように、起きたら先ず歯磨きを習慣にしている為、台所を目指そうとした時だった。
「んごっ⋯!!?」
半目になりながらベットから降りようとした時、布団が足に引っ掛かったのか盛大にすっ転んで顔面から床に落ちてしまった。
ゴッ!っと鼻から鳴っちゃいけない音が部屋中に響き、あまりの痛さに涙目になってゴロゴロと転がりながら悶える。
「うぅっ⋯ぐぐ⋯朝から最悪だ⋯」
涙目になりながら霞むくらい小さい寝起きの声でぼやく。朝っぱらから実に幸先の悪いことこの上ない。
だが運がいいのか悪いのか、どうやら幸いにも鼻血は出ていない。でもめっちゃお鼻がツーンってなってヒリヒリする。
しかし、目が覚めた所でとある違和感に気付く。
「……んぁ?」
なんだろう⋯?目の前の扉がやけに大きく見える。
それどころか他の家具も大きくなってないか?それに何か歩きずらい。
未だに寝惚けているのだろうか、それとも風邪でも引いたか?
だとしても鼻以外に特に異常は感じられないし、でもなんだか何時もより声色が高い気がする。
妙な違和感に少々頭が混乱したまま、何気なく傍にあった姿見に目をやると…。
「……───え⋯?」
その瞬間、思考が止まる。
目の前のそこにはそこには知らない…否、よく知っている
どう見たって目の前にいるのは間違える筈のない自分の姿、紫黒 龍成である。
しかし…────
身体が六~八歳程の子供になっていたのだ。
数秒間の放心。そして顔から血の気が引いていく。
一歩一歩と姿見に近付いて知りたくないものを察して、信じられないように⋯受け入れたくないように両手を頬に貼り付ける。
「な…な……ぁ⋯っ────」
もう今は、眠気も冷静も何処かに吹っ飛んでしまった。
「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっっっ!!!!?」
何がどうなっているのか分からず、かつてない程の絶叫をあげた彼の朝は⋯いつものではなくなり、波乱から始まるのだった。
────────────────────────
「それで⋯吾輩達の所にやって来たと」
「どう考えても、御宅のド阿呆頭脳が原因としか考えられないんだけど?」
その後、どうにか落ち着きを取り戻した彼は昨日の出来事から何があったか、記憶の中を勢い良く掘り返した。
その結果、一つの結論に辿り着いたのだ。
スマホを手に取って、秘密結社と名乗る小生意気な総帥へ鬼電。早朝だろうが夜中だろうがお構いなしな上に、有無を言わさず予定を合わせてもらった。
そして現在、秘密結社HoloXに乗り込んで、今朝の状況の説明をたった今終えたところだ。
あからさまに後ろめたさが目立つ表情をしながらソファに座る一人のピンク色のコヨーテ少女を睨み付けながら、ラプラスの言葉に淡々と確信的に反論する。
「ブカブカの服のままで来た時は驚いたぞ⋯」
「最初は迷子になった子供かと思ったでござる」
「そんで?こんこよが薬で先輩を小さくさせたの?」
「な、何でこよの所為だって思うのー!身体が小さくなるなら魔法とかでも有り得るでしょ?納得いかーん!!」
しかし、証拠もなく断言されたことに納得いかなかったこよりは異議を唱える。
「前にシオンから聞いたけど、身体系の魔法にも限度がある。体を若くしたりするのは時を戻す禁忌の魔法になるが⋯幾らシオンでもその希少な魔法は持ち合わせていないのだと」
「ラプラスはそんな魔法も扱えるらしいが、やるにしても俺に直接会って魔法を掛けなきゃ無理だろうし⋯なにより昨日最後に関わったのはこよりだ」
────回想
授業終わりの後の放課後に俺はよく一人で特訓しているのを日課にしているのだが、昨日も当たり前のように自分を追い込み続け、休憩しようと特訓施設にある共同控え室に行った時だった。
『ふぃ〜、ちょっくら休憩っと〜⋯⋯ん?』
『お、おお疲れさまー!龍成君!今日も特訓してたの?毎日頑張るねー!?』
掻いた汗を拭きながら水分補給をしようとしていたが、ベンチソファに置いておいた俺の水筒の前に不自然に佇んでいたこよりがいた。
『こよりか。まぁ昔からの日課みたいなもんだからな。身体を動かさないと落ち着かなくてね』
『そ、そうなんだー⋯じゃあこよはこれで───』
『ところで、何でこよりがここにいるんだ?随分と珍しいな?』
『ギクッ⋯!』
本当にただの疑問だった。
彼女は何時も心配になるくらいに研究に没頭していて、授業と緊急事態以外では全く見かけないので、こうしてプライベートで出会すのも珍しい方だし、更には運動とは無縁のような彼女がこんな場所にいることも滅多にない。
悪い言い方をすれば、研究室で常に引き篭っていた運動音痴が、特訓施設にいるのがとても珍しいのだ。
『べべべ別に深い意味はないけど!ちょっと少し!ほんの少〜しだけこよも息抜きがてらに運動しようかな〜⋯っと、ね?ほら、こよって周りがドン引きしちゃうくらいに研究に没頭してるし、平気で三徹も研究してるじゃん?』
『自覚があるなら無理するんじゃない⋯⋯⋯俺も人のこと言えないけどさ』
『わ、分かってるよー!でも科学の探究心がこよを突き動かすのです!まぁそれで⋯最近は動いてないから、ちょこ先生にも「軽い運動をしなさい」ってお説教されちゃってたからさー』
『なるほどな、それでここに来てたのか。あと悪いけど、水筒こっちに投げてもらっていいか?』
『ん?いいよ。ほい』
『ありがと』
理由も分かったことで会話は一段落し、喉も乾いていたのでこよりに水筒を投げ渡してもらい、礼を伝えてから水筒を飲もうと蓋を開けて飲み始める。
『⋯⋯?』
『ど⋯どうかしたのー?』
『⋯いや、なんでもない』
だがそこで違和感。中身はスポーツドリンクだと思うが、実は俺の好きないちごミルクが入っているのだ。
普通はいちご風味で甘い飲み物なのだが、どうも甘味を感じない。
不思議に思っていると、こよりが心配そうに声を掛けてきたことで、その思考を止める。
『そ、そう?⋯⋯じゃ、じゃあこよも運動しに行くねー?ばいばーい!!』
『あ、あぁ。また⋯』
すると、こよりは慌ただしく逃げるように去って行った。
それにも違和感を覚えたが疑問には思わなかったので深く考えず、残りを飲み干してから帰ることにした。
────回想終了
「じゃあ、もうそれって…」
昨日の最後に会話をしたのはこより。それがどう言う意味なのか⋯例えば殺人事件での第一発見者が犯人候補が高くて疑われるケースが良くあるが、それに近い感覚だ。
それに実際⋯昨日の彼女は挙動不審で怪しさがあって、尚且つ様々な効果を出す薬品を作れるそうじゃないか。ぶっちゃけ一番疑わざるを得ない人物だ。
ルイも今の話を聞いて疑心が強くなったのか、こよりへ向ける視線が少々冷たい。
「こんなことが起こる原因があるとするなら、薬品系ご都合展開要員のこよりしかいないと見た」
「まぁ⋯こんこよは色んな実験で薬も作ってるし、不可能ではないのは確かでござるな」
「疑われても仕方ないな。前なんて吾輩の身長が伸びる薬だって言って飲んでやったけど、角がめっちゃデカくなっただけだったし。博士ならやりかねないな」
「あの時はほんとにおもろかった〜!ラプラスが身動き取れなくなって泣きながらルイ姉に助けを求めてたの可愛かったね〜?」
「う、うるさい新人!!」
やはり一緒に行動している仲間なだけあって他のメンバーも、″彼女が起こしそうだな″と思っているのか、否定しようにも出来ない諦念の表情が見える。
それでも当人のこよりはまだ納得いかないのか、手をビシッと上げて反論する。
「で、でもー!確かに昨日は龍成君とは話してたけど、薬を使ったっていう証拠でもあるのかー!こよには全く身に覚えがありませんけどなー?いちごミルクに何時入れたって言うんだー!」
「……なんで中身がいちごミルクだって知ってんだ?俺は一言も水筒の中身が何かを伝えてないよな?」
「あ」
彼女の言い分からある言葉を聞き逃さなかった俺は、更に確信を持って聞き返した。水筒の中身を何故か知っているこより。
ペットボトルだったらともかく、水筒なので中身を把握するのは直接飲むかしかない。
これはもう″私が犯人です″とボロを出したようなもの。
と言うか今「あ」って言ったよな?「あ」って。
「すみませんでした。こよが原因です」
「全く⋯どうすんだよこの身体⋯」
(紫黒君、いちごミルク飲んでるのは本当なんだ⋯意外)
(可愛いもの飲んでるでござる⋯)
(てか何でいちごミルク⋯?)
墓穴を掘り、もう隠し切れないと悟ったのか目にも止まらぬ早さで綺麗な土下座を披露してくれる。故意でやったことを認め、誠心誠意で謝罪をした。
「てか中身知ってたならどうやって確認したんだ?水筒だったら中身見えないだろ?まさか⋯」
「そ、そこはちゃんと控えてますー!こよはコヨーテだよ?犬と同じく鼻が利くんだから、匂いで分かるんだよ!」
「ほー、なるほどな」
「⋯⋯ちょっとは残念そうにしていいんだよ?」
「この状況でそんな気持ちになれると思うか?」
ピキっときたが、一度冷静を保つ為に溜息を吐いてからこよりに聞く。
「はぁ…取り敢えずなっちまったものは仕方がない。何となくだが、治す薬は持ってなさそうだな」
「はい…」
「それは困ったわね…どうにかして戻れないの?」
「一応、服用してから一週間以内には戻る筈だよ」
やはり治る薬は持ち合わせていないようで、ルイが他に戻れる方法が無いかこよりに聞くが、今は時間経過でしか戻れることはなさそうだ。ただ、それでも安堵する。
「一週間か⋯でも戻るには戻れるんだな…よかったぁ……───それで…」
もしや一生このままだったら生活面やら色々と大変なことになるところだったし、こよりを恨み続ける心配もなさそうだ。
とは言え、これから一週間もこの身体で生活となると、色々と大変な思いをするだろうな。
取り敢えずは戻れると分かったことに一安心しよう。それはそれでいいのだが⋯⋯────
「さっきから鬱陶しいんだけどクロヱ」
「え〜?だって先輩が可愛いんだも〜ん!あんな凛々しかったのに、こんなに可愛くなっちゃってたら抱き締めるしかないじゃん!今だけはこんこよに感謝だね!」
「それって何時もこよには感謝してないってこと?」
ソファに座ってからなのだが⋯さっきからクロヱが抱き着いてきたり頭を撫でてきたりしてて寛ぎずらい。
あと無意識なのかわざとなのか分からないけど、豊満な胸が当たって気まずいんだよ。
でもそれよりも⋯⋯うぁ⋯!?
「……っ」
「あれれ〜?どうしたのかなぁ〜顔背けちゃって?もしかして照れてる?照れてるよね?やっぱり男の子はおっぱい好きだもんねぇ〜!」
「いや…その、あんまこんなこと言いたくないんだけど⋯⋯匂いが…」
「いい加減風呂入れよお前」
「まだ入ってなかったでござるか、近寄らないで欲しいでござる」
「放してあげなさいクロヱ。紫黒君にバイ菌が移っちゃうでしょ」
「おぉい!!言い過ぎだろ!!」
彼女から漂う悪臭につい顔を背けてしまったよ。これは人から放っていい匂いじゃないし、てか何時から風呂入ってないんだよ!?
うぅ⋯鳥肌が⋯⋯避難しないと⋯ん?いろは?なんで俺を持ち上げるんだ?
「はい、紫黒殿はこっちに来るでござる!ここなら大丈夫でござるよ!」
「あ、ありがたいけど⋯わざわざ膝に乗せる必要あるか?重いし邪魔だろ?」
悪臭が移ることを危惧してクロヱから離れるが、その際にいろはに持ち上げられて、ぬいぐるみを膝に乗せるのと同じような感覚で抱っこされる。
困惑していろはを見上げるようにして見ると、どことなく嬉しそうな雰囲気が⋯───
「ンフッ⋯そんなことないでござるよ?⋯⋯フ、フフッ⋯」
いやめっちゃニコニコしてるやん。笑い隠し切れてないやん。
「それでこより、どうにかして今からでも戻せる薬とか作れないの?」
「その〜⋯一応、戻れる製薬の設計図はあるんだけど⋯えっと、材料が⋯無くてですね⋯」
戻れる用はあるらしいがタイミング悪く材料不足らしい。その事に落胆するが、無いものは仕方がない。
「正直このままで授業とか出たくないし…服も変えなきゃだし⋯私生活も暫くは大変だな⋯でも仕方ないかぁ。まぁ、意識まで幼児化しなかったのが本当に救いだな」
「……純粋無垢なショタっ子の龍成君を見てみたかったなぁ」
「ん?」
「なんでもないです!!」
まだ懲りてないらしいのでここで威圧をひとつまみしておく。
しかし、それはそれとしてこの身体のままでは色々と心配する部分があり、今後が不安だ。
「でも大丈夫だろ、先生にもちゃんと説明すれば吾輩と同じような感じで扱われると思うぞ」
「……問題児扱い」
「そう言う意味じゃねぇよ!」
「はいはい、取り敢えず事情は分かったし私達の方からも他の人達に伝えておこう。あと、今の龍成君の代わりの服を調達しないとね」
「ありがとう、助かるよ」
ルイが話を進行させて、事の成り行きを他の全員にも知らせてくれる上にフォローまで率先して行動してくれる。そんな彼女には感謝しか出てこない。
確かに今一番なんとかしたいのは服装だな。ただでさえ今着てる普段着ですらかなりぶかぶかの状態。
そんな状態でどうやってここまで来たかって?ルイに頼んで運んで貰ったよ。
「じゃあ早速、紫黒殿にはこれを付けてもらうでござる!」
「却下」
いろはが懐から取り出したのは、猫耳なのか犬耳なのか分からんけどそういったカチューシャ。
勿論、着ける気は微塵にもないので間髪入れずに拒否する。
「いやいや、ここは沙花叉のマスクでしょ!」
「なんでマスク?」
そして次にクロヱが偶に着けているマスクを取り出して擦り寄って来るが、丁重にお断りさせてもらう。
「いっそケモ化する薬も混ぜておけばよかったな…」
「いい加減にしろ?殴るぞ?」
「ヒンッ⋯!」
ほんと懲りねぇなこのコヨーテ。一度お灸を据えてやろうか?
「はぁ……本当に大丈夫かこれ」
今日は日曜だから授業はないけど、明日から一週間はほんとに大変な思いをしそうだ。
それに御矼さんにもバイト出れないことを話さないと⋯また迷惑を掛けてしまうなぁ。なんて理由付けりゃいいんだよ⋯。
それから服を買いに行ったのだが、子供服選びにルイがやたら気合いが入っていたからか、その所為で姉弟だと勘違いされて周りからの暖かい視線を向けられたのは流石に恥ずかしい思いをした。
────────────────────────
「────と言う訳で、小さくなりました」
『ほんとに小さくなってる…』
次の日の月曜日⋯学校を休む訳には行かないので素直に向かった。
事前に教師陣や谷郷さんにも報告済みだから、今の俺の身長に合わせた制服も着ている。
そして⋯彼女達にお披露目ときたが、反応からするにやはり完全に信じてた様子はなかった。まぁ普通はそうよな。
「出来ればいつも通りに接してくれれば助かる」
「なんか⋯大変だったみたいだね」
「何時までその状態でいるの?」
「こよりが言うには一週間で戻るらしい。そんな訳で暫くの間は身長の問題で頼ることがあるかもしれないけど、よろしく」
フレアの労りの言葉を受け入れつつ、ころねの質問に軽く答えながら彼女達の表情を伺って見れば、困惑してる者もいれば興味深く観察してる者、なんかやべぇ顔してる者もちらほら⋯。
「これってこよりちゃんの仕業なの?」
「こよが興味本位で龍成君の小さい頃の姿を見てみたいと思ってまして⋯」
「この度はこより殿がご迷惑をお掛けしたでこざる⋯」
「ん〜〜⋯ナイスッ!!」
「ナイスじゃねぇよラミィ」
パトラの疑問にどこか少し控え気味で答えるこより。大勢の中で騒動の原因は自分にあるとこよりも言いずらそうにしていたが、素直に白状した。
あと、何がナイスだしばくぞ。
「それにしても……」
「「「可っ愛いいいいいいいいぃ!!」」」
「ぶっ!?」
やべぇ顔をしてる者に該当する三人、まつりとマリンとノエルだ。
恐ろしく速い飛び付きに反応が遅れて、三人の体で拘束されてしまった。
「こんなに可愛くなっちゃってまぁ!!」
「ちっちゃい頃の君はこんな犯罪級の可愛さを持ってるなんて、抱かずにはいられねぇ!!」
「はぁ…スンスンスンッ…」
「く、苦しい…てか誰だ匂い嗅いでるやつ!やめろ!」
包容力という名の圧迫が全体に包み込まれる。流石にこんな小さな体で三人分の体重には耐える筈もないので、されるがままの状態になっていた。
ヨダレを垂らしながらキモく顔を綻んでいるまつり、欲望を抑え切れず暴走するマリン、猫吸いみたいなことするノエル。地獄かな?
「ほらほら、龍成君が困ってんだから離してやりなよ。それに、ウチ達でしっかりとフォローしてあげないとね。いきなり身体が縮んだら感覚とか変わりそうだし」
「そうですよ!小さい身体じゃ限度があるし、龍成君のお世話はこの白上がします!!」
「こらそこ!流れに乗っかるんじゃない!!そしてさり気なく龍成君を抱っこするなー!」
そんな地獄から救ってくれたのはミオとフブキだったのだが、フブキもそっち側だったとは思わなかった。
彼女の腕に軽々と抱えられて、仕舞いには面倒を見ると声高々に宣言された。俺の意思を無視して。
それと、ミオの言葉にどことなく羨望があるなような気がするのは俺だけだろうか?
「あぁ〜ん!!団長のショタが持ってかれるぅ〜!!」
「船長にもっと癒しを⋯あぁんもぅ我慢が⋯⋯へ、へっへへへ⋯!!やっべ涎が⋯」
「待ってよフブキ⋯!これからまつりの匂いを覚えさせなきゃなんだから⋯返してよ!!!」
「⋯⋯⋯⋯こわっ⋯」ギュッ
「フヘッ…」
「見ちゃダメなのです龍成君。あれはもう人ではなく、煩悩に支配された哀れな者の成れの果てなのです」
もはや狂気の沙汰とも言えようその光景に身震いする。
本気で鳥肌が立ったせいで、無意識にフブキに余計にくっ付いてしまってた。その際に、彼女の表情が綻んで涎が出掛けてることには気付かない。
そして、るしあの言葉に耳を傾けつつ、少ししてからフブキの腕から降りる。
彼女はかなり残念そうにしていたが、俺の胃が持たないので勘弁して欲しい。
「そんな危ない人らより〜、ボクの方においで〜♪ボクならい〜っぱい甘やかしてあげるよ?なんなら〜⋯えっちなことだってしてあげよ〜か?」
「ダメダメ!おかゆちゃんよりメルのところにおいで?メルならいっぱい満足出来るようなお世話してあげれるよ?」
「それならラミィだって歓迎するわよ!して欲しいことがあるなら全部やってあげる!だから⋯おいで?」
「こぅるあっ!!なに誘惑してんだ!幼児わいせつ行為として大空警察が出向するぞ!!」
「おがゆっ!!そう言うのはこぉねと三人の時に言うんだよ!!」
「おめぇも変なこと言うな!逮捕すっぞ!!」
(帰りてぇ⋯)
もう収拾がつかない状態まできていた。
唯一まともに対応しているスバルもこの有様である。これはもう授業どころではなくなるんじゃないか。
心の底から家に帰りたい気持ちが芽生えるが、どうにか抑えていると、不意に頬を突かれる。
「うわ〜、ほっぺもちもちで本当に餅みたいだ余。触ってて気持ちいい」
「ほんとだー、やっぱちっちゃい子の肌ってスベスベでモッチモチなの羨ましいな」
「⋯トワ達も大して変わらなくないか?」
「お?嬉しいこと言ってくれるじゃん。うりうり〜!」
「
「ずりーぞ!みこも頬っぺ揉ませろー!」
あやめとトワの二人に満足するまで頬を弄られる。
実際にトワの言う通り、自分でも触ってみた感じだと普段の自分の肌より瑞々しいし張りがあってとても柔らかい。
動物を撫でるように両頬を挟まれて激しくこねられる。止めるよう小さな抵抗をするも、それも無に帰されてしまう。
「かっはは!されるがままになってんのおもろ」
「でも儲けもんじゃない?こうやって可愛がられるのも今のうちだぞー」
「見た目だけで中身は変わってねぇんだから少しは遠慮して欲しいもんだ⋯」
それを遠目から眺めていたぼたんとポルカに茶化される。
実際に他人事だからあんなこと言えるんだろうが、もう少しこの悩みの大変さを理解して欲しいものである。
それから暫く色んな人から弄られることになり、予鈴が鳴るまでもみくちゃにされて精神的疲労でグッタリすることとなった。
「大丈夫?りゅう君」
「無理しないで困ったことあったら言ってね?」
「ありがと。一応黒板は見えてるから大丈夫だけど⋯まぁ何かあったら頼るよ」
「うん!じゃあまた後でね!」
そんな俺を心配してくれるのはパトラとシャルだった。あんな感じに、ただ純粋に労ってくれるのは今のところこの二人である。
変だな、体が小さくなっただけで何でこうも周りの環境にまで影響が出るんだ?興奮する要素がどこにあるのか分からない。
あれこれ考えてみるものの、授業が始まってしまったのでその真理は謎のままで終わった。
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「はぁ〜⋯⋯急に身長が縮んだだけでこんなにも生活しずらいのか⋯」
夕方になり、精神的に疲弊してリビングのソファで脱力して凭れる。
普段の見てる景色が急に大きく感じていた所為か、違和感が所々あって落ち着くことすらままならなかった。
こんな生活があと一週間も続くと思うと、まぁまぁ溜息が出てくる。
不便と言えば確かに不便なのだが、なにも悪いことだけではなかった。
さっき商店街に買い物しに行ってたら、人当たりが良いおばあちゃんにお使いと勘違いされたのか、おまけと称して色々な食材を追加で貰ってしまった。飴も頂いた。
⋯⋯なんかものすげぇ申し訳ない気持ちになったわ。
見た目に似つかわしくない精神年齢なので騙しているような罪悪感があって流石に断ったのだが、結局押し切られてしまった。
「まぁ⋯あれは有難く頂いて、今日は豪勢にいっぱい作るか⋯⋯───そんで⋯」
「へ〜、結構いい所に住んでるんだね」
「一人暮らしでこの大きさって結構な贅沢じゃない?」
「しかも掃除も行き届いて清潔さがあるわね、クロヱも見習って欲しいもんだわ」
「すっげ〜、もしかして紫黒って家事とか得意なタイプ?」
「うぉ〜このソファすっごいふかふかじゃん。あたしも良いの買おうかな」
「何で俺ん家にいんの?」
呼んでもいないのに、何故かリビングで寛ぎながら新居に来たかのように部屋中を見渡す五人の少女達。フレア・メアリ・ルイ・トワ・ぼたんが、当たり前のように寛いでいた。
「いやほら、余計なお世話かもしれないけど、普通に過ごすのも大変そうだと思ってさ。」
「たまたま買い物してるところ見掛けたし、皆でフォローしようって話もしたからね。とりあえず料理は代わりにしてあげるから。今のその体だとやりずらいでしょ?」
フレアとメアリの言い分にはとても有難いのは確かだが、それでもキッチンに立つには人数が多いのでは?
「それは⋯素直に助かるけど、料理するのに五人もいるか?」
「あたしとトワ様はただ寛ぐだけだよ。」
「何しに来たんお前ら。」
「何ってご飯出来るまで一緒に遊んであげるんだよ。」
「俺は幼児じゃない」
「今の紫黒は幼児じゃん」
「精神的な意味でだ!分かってて言ってるだろ!」
理由にならないことを言いながら揶揄ってくるぼたんとトワに呆れつつ、手馴れたようにキッチンで準備しだした三人に顔を向ける。
「はぁ〜⋯今更帰れとは言わないけど、本当に良いのか?」
「うん。今回はうちのこよりが迷惑掛けたお詫びもしたかったから。今日だけに限らず、これから一週間は誰かしらお世話しに来ると思うから、そこだけよろしくね?」
「何それ初耳なんだけど」
「今言ったからね」
頭が痛くなってきた。何でそういう大事なことを早く教えてくれないんだろう。
ということは何?明日も誰かしら来るってか?それも何人来るかも不明で?
⋯⋯御矼さんに匿ってもらおうかな。
いや、でもやっぱ迷惑は掛けられねぇ⋯くそ。
「はいはーい。ご飯が出来るまでお姉さんと一緒に遊びましょーねー」
「ちょっ⋯!」
すると思考しているのを邪魔するように、ぼたんが軽々と俺を持ち上げて自分の膝に置く。
「な、何すんだよ。遊ぶって言ってもゲームとかそんなにないぞ」
「まぁ遊ぶってよりかは奉仕みたいなことするんだけどね」
「マッサージだよ、マッサージ。体小さいしやり易いから丁度いいと思ってさ」
「え、なんで急に⋯?」
「じゃあトワは足ツボやったげる」
「だからなんで急に⋯?」
俺の意思など無関係に何故かマッサージをしたがる二人。
もうツッコミも意味を成さず抵抗する気も失せたので、結局されるがままに身を委ねることにした。
ぼたんに膝枕される形でソファに寝転び、トワが足を担当してぼたんが両耳をこねるようにマッサージしてくれる。
「ほーら、どうだー?あたしとトワ様のマッサージの心地は」
「⋯うん、結構上手いんだな。擽ったいけど気持ちいい」
「それは良かったけど⋯あんた足ツボ固すぎん?小さくなったらそんなことないと思ってたんだけどなぁ」
程よい手加減で痛みは無く、凝りに効いてる感じもあって心地良い。
トワは懸命に足裏のツボを的確に揉んでいて、血行が良くなっているのか足がポカポカしているのが何となく分かる。
ぼたんも器用に両耳を軽くこねたり引っ張ってたり指を入れたりと、色々な手法で気持ちよさを堪能させてくれる。
「眠くなったか?寝ちゃってもいいんだよ。ご飯が出来たら起こすからさ」
「⋯⋯んぅ⋯」
疲労も溜まっていたこともあり、その心地良さに強い眠気が襲ってくる。
しかし、寝まいと睡魔と格闘しているとその様子に気付いたぼたんが、包容力のある囁きで意識にとどめを刺してきた。
そうして、彼女の言葉に応えるように深い眠りについた。
「⋯寝ちゃった?」
「うん。こうして見ると⋯あんなに強い龍成も小さい頃はこんな感じだと思うとさ、何してたらあんな力を持ったんだろ」
「そうだよね。すいちゃんやそら先輩は異能があってこそだけど、龍成はただフィジカルだけで戦ってる。ほんと⋯どんな生き方したらあんな風になれるんだろうね」
「⋯まっ、そんなことは後で聞けばいいさ。それよりも⋯⋯結構可愛い顔してんねぇ」
「それな」
自分の膝で安らかに寝息を立てる龍成の顔を眺めながら、ぼたんはあることを思っていた。
(龍成の強さの秘密も気になるけど⋯⋯それ以外にも何かありそうだな)
彼の頭を撫でながらリビング全体を目で一巡する。
至って何処にである普通の家。特に変な感じの様子は見受けられない。
しかし、確かな違和感が彼女の中で渦巻いていた。
(⋯⋯あんまり一人で抱えすぎんなよ)
その違和感に確信はないが、一人暮らしにしては思い出の置物が無さすぎる気がしていた。
その雰囲気はまるで、家族はいないと示唆するように。
ぼたんは、彼が人知れず無茶をしているのではないかと懸念し、ただただこの想いを心中で伝えるしか出来なかった。
後半へ続きます。
では〜。